テンプレ最強勇者に転生したら魔女が妻になった

紡識かなめ

文字の大きさ
29 / 35

第29話 揺らぐ信念、光の下の真実

しおりを挟む


 「……一旦、引こう」


 ルークのその一言で、玉座の間を出た一行は、王宮から城下町へと足を運んでいた。





 城壁の内側に広がる神聖国家《ルミナシア王都・セレスティア》――

 そこは、魔女が君臨する国家とは思えないほどに、平和で、整った街だった。


 石畳の広場では子どもたちが楽しそうに遊び、大道芸人に拍手が飛び交い、

 商人の屋台からは焼き菓子の香ばしい匂いが流れてくる。


「……なんか、普通に豊かよね」


 クラリスがパンをかじりながらぽつりと漏らす。


 「人々の顔が、穏やかです」

 フィオナも小さく頷く。


 ミレイアは、道を行く巡礼者たちの姿をじっと見つめながら、


 「信仰……というより、“信頼”に近いわね、あれは」


 と、真面目な口調で言った。


 セフィナは表情を変えず歩いていたが、その観察眼はどこか冷静に、正確に街を把握していた。





 一行はやがて、城下の裏通りへと足を踏み入れた。


 路地裏。建物の隙間。物流の影となる区域――

 だが、そこにも“貧しさ”の影はなかった。


 痩せた子どもも、腐った果物も、物乞いもいない。


 「まさか……裏道まで整備されてるなんて……」

 ジークが目を丸くする。


 ルークは、道の脇に咲いた小さな花を見つけて、足を止めた。


 (……俺は、何を“倒そう”としていたんだ?)


 思えば、これまで出会ってきた魔女たち――

 ミレイアも、クラリスも、グレイアも、リィナも、セフィナも。


 誰一人として、人間を無差別に殺したり、蹂躙したりしてはいなかった。


 (たしかに、彼女たちは“力”を持っていた。

 だが、それは暴虐ではなく……大陸の“均衡”そのものだったのかもしれない)


 「……魔女は“悪”だと……思い込んでいたのは、俺のほうだった……」





 その夜。

 一行は城下の宿を借りて、一部屋を囲んで夕食をとっていた。


 焚き火のような静かな明かり。落ち着いた調度品。外は静かに夜風が吹いている。


「ねぇ、ルーク。なんか、難しい顔してる」

 リィナがぽすっと彼の膝に頭を乗せてきた。


 ルークは彼女の頭をそっと押し返しながら、顔を上げた。


「……みんなに、改めて聞きたい」


 五人の魔女――ミレイア、クラリス、グレイア、リィナ、セフィナが、次々に顔を上げる。


 「俺は、ずっと“魔女=悪”だと思ってた。……でも、違った。

 お前たちは、別に人間を滅ぼそうとしてたわけじゃない。

 ただ、その大陸の“役目”を担って生きてきた……それだけなんじゃないかって」


 ミレイアが、静かに目を伏せる。


 「私たちの存在は、“災い”として語られてきた。

 けれど、少なくとも私は“治める”ために力を使っていたつもりよ」


 クラリスが軽く肩をすくめる。「人間ってすぐ決めつけるからね。火が熱いからって、全部悪者呼ばわりされても困るわ」


 グレイアは母のような優しさで言う。「私は、ただ“この地の子”を守りたかっただけ。

 その結果が“魔女”と呼ばれても、それは……私にとって誇りだったわ」


 リィナは少し考えてから、小さく呟いた。


 「うーん……あたし、風で遊んでただけなんだけど……でも、怖がられてたのかなぁ……?」


 セフィナはほんの少しだけ、口元をゆるめて言った。


 「あなたがそれに“気づけた”のなら、ここにいる価値はある。

 そしてその“気づき”こそが、勇者の第一歩よ」


 ルークは、改めて深く頷いた。


 「ありがとう。俺は……もう一度、自分の“正義”を見つめ直してみる」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

ダンジョン経営から始める魔王討伐のすゝめ 追放された転生ダンジョンマスターが影から行う人類救済

斑目 ごたく
ファンタジー
 異世界でドッペルゲンガーとして転生した、しがないサラリーマン古木海(ふるき かい)は、意外な事に魔王軍の中で順調に出世していた。  しかし順調であった筈の彼の生活は、あっさりと崩壊してしまう。  中央の魔王軍から辺境のど田舎へと追放されてしまった彼は、しかしそこで自らの天職とも言える立場を手に入れる。  ダンジョンマスターとしてダンジョンを運営し、こっそりと冒険者を強化することで人類を滅びの危機から救いたい彼は、恐ろしい部下達の目を盗みながら彼らの味方をしていく。  しかしそれらの行動は何故かいつも思いも寄らぬ方向へと転がっていき、その度に彼らは周りからの評価を高めていってしまう。  これは戦闘能力が皆無の主人公が、強大な力を秘める部下と恐ろしい上司の板ばさみに苦しめられながら、影から人類を救済していく物語。  毎週水・土 20:10更新です。  この作品は「小説家になろう」様にも投降されています。

嫁に来た転生悪役令嬢「破滅します!」 俺「大丈夫だ、問題ない(ドラゴン殴りながら)」~ゲームの常識が通用しない辺境領主の無自覚成り上がり~

ちくでん
ファンタジー
「なぜあなたは、私のゲーム知識をことごとく上回ってしまうのですか!?」 魔物だらけの辺境で暮らす主人公ギリアムのもとに、公爵家令嬢ミューゼアが嫁として追放されてきた。実はこのお嫁さん、ゲーム世界に転生してきた転生悪役令嬢だったのです。 本来のゲームでは外道の悪役貴族だったはずのギリアム。ミューゼアは外道貴族に蹂躙される破滅エンドだったはずなのに、なぜかこの世界線では彼ギリアムは想定外に頑張り屋の好青年。彼はミューゼアのゲーム知識をことごとく超えて彼女を仰天させるイレギュラー、『ゲーム世界のルールブレイカー』でした。 ギリアムとミューゼアは、破滅回避のために力を合わせて領地開拓をしていきます。 スローライフ+悪役転生+領地開拓。これは、ゆったりと生活しながらもだんだんと世の中に(意図せず)影響力を発揮していってしまう二人の物語です。

転生したら鎧だった〜リビングアーマーになったけど弱すぎるので、ダンジョンをさまよってパーツを集め最強を目指します

三門鉄狼
ファンタジー
目覚めると、リビングアーマーだった。 身体は鎧、中身はなし。しかもレベルは1で超弱い。 そんな状態でダンジョンに迷い込んでしまったから、なんとか生き残らないと! これは、いつか英雄になるかもしれない、さまよう鎧の冒険譚。 ※小説家になろう、カクヨム、待ラノ、ノベルアップ+、NOVEL DAYS、ラノベストリート、アルファポリス、ノベリズムで掲載しています。

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...