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第3部 初めてのお使い 初めての・・・
第47話 悪党どもの提案
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ぼくは、結局のところ、せっかくの初めての外出日を、「神竜の息吹」のおそらくは地下にある独房ですごした。
退屈?
久しぶりに考えごとだけに集中できる時間はそれなりに意味のあるものだった。
とにかく、ここをつぶして「終わり」でないことはよくわかった。
糸を引くのは、冒険者ギルドへの影響力を高めようと、策謀を巡らせる聖帝国。
それが正しいのか。
学長戦に負けて引きこもったルールス教官が正義なのか。
どうでもいいや。
だが、「神竜の息吹」みたいな冒険者ギルドそのものの信用を失わせるようなクズを使う時点で、聖教会も聖帝国もダメだ。
ランゴバルドからは、退場いただこう。
ああ。
ほんとに都会は怖い。先進国どもはほんとに怖い。
いっそ、まっさらにして一から作り直したらどんなに楽だろう。うむ、帰ったらリウに相談してみるとするか。
きっといい知恵を貸してくれそうだ。
「魔王」と「魔王の再来」が世界を破滅においやる相談をするという楽しい空想に心を踊らせていたら、時刻は夕方。
門限やら、無断外泊やら。
最初の外出から、やらかしてしまった。
まあ、いいや。ネイア先生になんとかしてもらおう。
いやあ、担任をテイムしておいてホント、よかった。
そんな我ながらひどいことを考えているうちに時間は過ぎ。
リンクスくんがぼくを呼びに来たのは、ほぼ夕方に近い時刻だった。
「サブマスターのアグは、きみみたいのなのが好きなんだ。」
牢の鍵を開けながら、悲壮な顔で、言う。
「ぼくみたい?」
「顔のいい、経験のない子供にひどいことするのが、だ。」
「なるほど。」
「アグは、たぶんおかしくなっている。」リンクスくんは吐き捨てた。「相手を壊す・・・精神的にじゃなくて実際に大怪我や死なせてしまうまで責めることで興奮するんだ。」
「ぼくはなんだか、人質じゃなかったっけ?
殺してしまったらまずいんじゃないのかな?」
「あいつらにはそんな判断ができない。そろいもそろって、その場の『ノリ』と欲望で動く。
どうにもならない連中だ。」
「なるほど。」
としか言いようがない。
「いいか、ボスを頼れ。」
リンクスくんは、ぼくの肩に手を回すようにして囁いた。
「ボスも、きみみたいな見た目のいい少年は、大好物だ。
少なくともボスは、行為の最中に、きみに大怪我をさせることもないし、殺してしまうこともない。
それにたぶん、薬を使ってくれるから、きみ自身の苦痛もないはずだ。」
リンクスなりの現実的なアドバイスなのかもしれないが、正直、呆れた。
せめて、ここから逃してくれよ。かっこ悪いぞ、リンクスくん。
連れて行かれたのは、先にも訪れた応接室だった。
「神竜の息吹」の人数は増えていた。
新顔の痩せた男、明らかにそういう目をこちらをジロジロと眺める男は、巨人と言っていいほど、身長が高く、それに見合う骨格、筋肉を身につけていた。筋肉を誇示したいのかわからないが、身につけているのは、派手な刺繍をした下履きだけで、その股間部分が、盛大に盛り上がっていた。
「いいか。あれがアグだ。」
リンクスくんが耳元で囁いた。
「言うことには逆らわずに。いいか。ボスに媚びるんだ。できればシナを作って寄っていけ。」
「ひたすら胸のでかい女の子がタイプかと、思ってたよ。」
「引き締まった体の美少年も好きなんだ。」
ぼくは別に、自分が美形だと思ったことはないのだが。
「待たせたな、ガキっ!」
ボスが叫んだ。すでにかなり酔っていて、午前中にあった時とは違う女が両脇にいた。
髪の色が違うので、まあ、別人なんだろうが、揃いも揃って似たタイプだった。
「まず、そいつに着替えろ。」
とボスが指し示したのは、床に落ちた・・・・ひも?
どう言うふうに、これを「服」として「着る」のは想像もつかないけど、想像してみよう。頭使うのは楽しいから。
丸い輪になったところに頭を通すのかな。そのあと、あそこの結びべと結びべの間に両足を通して、あの浮いたところをおなかと腰で結んでずり落ちないようにする。
なんでパッと見てそこまでわかったのかというと、ボスの両脇の女の子たちが似たようなカッコだったからだ。
「手伝ってやるぜ。」
アグがのそのぞと歩み出た。
目がすでに血走っている。
下履きの滲みを見て、ぼくはいやあな思いになったが、仕方ないよね。
コミュケーションの取り方は、相手によって千差万別。ある種のスライムは有機物とみれば、飲み込んで溶かしにかかるのが、彼らのコミュニケーションのやり方だ。そうすると大抵の場合、ぼくらは火炎球かその類の魔法でコミュニケーションを取ろうとする。
わかりあえない異種属同士の悲劇だが、この場合に適用してもいいだろうか。
そうだな。
リンクスくんの顔をチラリと見る。
彼の「魔法封じ」がまだ聞いてることにした方がいい。
ニタニタ笑いならが、紐服の紐を輪っかをぼくの首にかけようとするのを自分で受け取り、そのままアグの両手にかけた。
なにが起こったかわからないうちに輪を締めて、アグの手首を縛る。
足を通すべきとこにそのまま、両腕を突っ込ませて、彼の頭を飛び越えて反対側にジャンプ。
で、足首を残った紐で縛る、と。
なにが起こったのか、アグは分からなかったと思う。
だが、実際にもがくと、自動的にそれは、彼の手首と足を海老反りに締め上げていく結果になった。
ボスが手を叩いて笑うと、周りのものも安心したように笑った。
確かに、筋骨隆々の大男が、床に海老反りにされて顔を真っ赤にしているのは、滑稽な見せものと言えなくもない。
「ほどいてやれ。」
と、ボスが、命令すると給仕と用心棒を兼ねたような制服の男たちが歩み出て、アグの体に絡んだ紐を取った。
アグは顔を真っ赤にして立ち上がった。
そのまま体当たりでもするように、ぼくに向かって突進する。
流儀を問わず。体術の経験はないようだ。
すれ違いざまに、ぼくは彼の顎の先端を撫ぜる。伝わった衝撃は、アタマに響いたはずだ。
たぶん、意識のないまま、その巨体は勢いを失わずに、酒瓶のならんだテーブルをなぎ倒して、壁に突っ込んで、止まった。
「こりゃ、見事なもんだ。」
ボスはゲラゲラと笑って、テーブルを片付けて、改めて酒を持ってくるよう命じた。
「オレは、仕事のできるやつが好きでな。」
彼はぼくを手招きすると言った。
「どうせ、リンクスの魔法封じも聞いちゃいないんだろ?
ステキな提案をひとつ、してやる。
メイリュウの、代わりに俺に、1000万ダルを支払う気は無いか?」
ぼくはちょっと考えて答えた。
「それはステキな提案ですね。」
退屈?
久しぶりに考えごとだけに集中できる時間はそれなりに意味のあるものだった。
とにかく、ここをつぶして「終わり」でないことはよくわかった。
糸を引くのは、冒険者ギルドへの影響力を高めようと、策謀を巡らせる聖帝国。
それが正しいのか。
学長戦に負けて引きこもったルールス教官が正義なのか。
どうでもいいや。
だが、「神竜の息吹」みたいな冒険者ギルドそのものの信用を失わせるようなクズを使う時点で、聖教会も聖帝国もダメだ。
ランゴバルドからは、退場いただこう。
ああ。
ほんとに都会は怖い。先進国どもはほんとに怖い。
いっそ、まっさらにして一から作り直したらどんなに楽だろう。うむ、帰ったらリウに相談してみるとするか。
きっといい知恵を貸してくれそうだ。
「魔王」と「魔王の再来」が世界を破滅においやる相談をするという楽しい空想に心を踊らせていたら、時刻は夕方。
門限やら、無断外泊やら。
最初の外出から、やらかしてしまった。
まあ、いいや。ネイア先生になんとかしてもらおう。
いやあ、担任をテイムしておいてホント、よかった。
そんな我ながらひどいことを考えているうちに時間は過ぎ。
リンクスくんがぼくを呼びに来たのは、ほぼ夕方に近い時刻だった。
「サブマスターのアグは、きみみたいのなのが好きなんだ。」
牢の鍵を開けながら、悲壮な顔で、言う。
「ぼくみたい?」
「顔のいい、経験のない子供にひどいことするのが、だ。」
「なるほど。」
「アグは、たぶんおかしくなっている。」リンクスくんは吐き捨てた。「相手を壊す・・・精神的にじゃなくて実際に大怪我や死なせてしまうまで責めることで興奮するんだ。」
「ぼくはなんだか、人質じゃなかったっけ?
殺してしまったらまずいんじゃないのかな?」
「あいつらにはそんな判断ができない。そろいもそろって、その場の『ノリ』と欲望で動く。
どうにもならない連中だ。」
「なるほど。」
としか言いようがない。
「いいか、ボスを頼れ。」
リンクスくんは、ぼくの肩に手を回すようにして囁いた。
「ボスも、きみみたいな見た目のいい少年は、大好物だ。
少なくともボスは、行為の最中に、きみに大怪我をさせることもないし、殺してしまうこともない。
それにたぶん、薬を使ってくれるから、きみ自身の苦痛もないはずだ。」
リンクスなりの現実的なアドバイスなのかもしれないが、正直、呆れた。
せめて、ここから逃してくれよ。かっこ悪いぞ、リンクスくん。
連れて行かれたのは、先にも訪れた応接室だった。
「神竜の息吹」の人数は増えていた。
新顔の痩せた男、明らかにそういう目をこちらをジロジロと眺める男は、巨人と言っていいほど、身長が高く、それに見合う骨格、筋肉を身につけていた。筋肉を誇示したいのかわからないが、身につけているのは、派手な刺繍をした下履きだけで、その股間部分が、盛大に盛り上がっていた。
「いいか。あれがアグだ。」
リンクスくんが耳元で囁いた。
「言うことには逆らわずに。いいか。ボスに媚びるんだ。できればシナを作って寄っていけ。」
「ひたすら胸のでかい女の子がタイプかと、思ってたよ。」
「引き締まった体の美少年も好きなんだ。」
ぼくは別に、自分が美形だと思ったことはないのだが。
「待たせたな、ガキっ!」
ボスが叫んだ。すでにかなり酔っていて、午前中にあった時とは違う女が両脇にいた。
髪の色が違うので、まあ、別人なんだろうが、揃いも揃って似たタイプだった。
「まず、そいつに着替えろ。」
とボスが指し示したのは、床に落ちた・・・・ひも?
どう言うふうに、これを「服」として「着る」のは想像もつかないけど、想像してみよう。頭使うのは楽しいから。
丸い輪になったところに頭を通すのかな。そのあと、あそこの結びべと結びべの間に両足を通して、あの浮いたところをおなかと腰で結んでずり落ちないようにする。
なんでパッと見てそこまでわかったのかというと、ボスの両脇の女の子たちが似たようなカッコだったからだ。
「手伝ってやるぜ。」
アグがのそのぞと歩み出た。
目がすでに血走っている。
下履きの滲みを見て、ぼくはいやあな思いになったが、仕方ないよね。
コミュケーションの取り方は、相手によって千差万別。ある種のスライムは有機物とみれば、飲み込んで溶かしにかかるのが、彼らのコミュニケーションのやり方だ。そうすると大抵の場合、ぼくらは火炎球かその類の魔法でコミュニケーションを取ろうとする。
わかりあえない異種属同士の悲劇だが、この場合に適用してもいいだろうか。
そうだな。
リンクスくんの顔をチラリと見る。
彼の「魔法封じ」がまだ聞いてることにした方がいい。
ニタニタ笑いならが、紐服の紐を輪っかをぼくの首にかけようとするのを自分で受け取り、そのままアグの両手にかけた。
なにが起こったかわからないうちに輪を締めて、アグの手首を縛る。
足を通すべきとこにそのまま、両腕を突っ込ませて、彼の頭を飛び越えて反対側にジャンプ。
で、足首を残った紐で縛る、と。
なにが起こったのか、アグは分からなかったと思う。
だが、実際にもがくと、自動的にそれは、彼の手首と足を海老反りに締め上げていく結果になった。
ボスが手を叩いて笑うと、周りのものも安心したように笑った。
確かに、筋骨隆々の大男が、床に海老反りにされて顔を真っ赤にしているのは、滑稽な見せものと言えなくもない。
「ほどいてやれ。」
と、ボスが、命令すると給仕と用心棒を兼ねたような制服の男たちが歩み出て、アグの体に絡んだ紐を取った。
アグは顔を真っ赤にして立ち上がった。
そのまま体当たりでもするように、ぼくに向かって突進する。
流儀を問わず。体術の経験はないようだ。
すれ違いざまに、ぼくは彼の顎の先端を撫ぜる。伝わった衝撃は、アタマに響いたはずだ。
たぶん、意識のないまま、その巨体は勢いを失わずに、酒瓶のならんだテーブルをなぎ倒して、壁に突っ込んで、止まった。
「こりゃ、見事なもんだ。」
ボスはゲラゲラと笑って、テーブルを片付けて、改めて酒を持ってくるよう命じた。
「オレは、仕事のできるやつが好きでな。」
彼はぼくを手招きすると言った。
「どうせ、リンクスの魔法封じも聞いちゃいないんだろ?
ステキな提案をひとつ、してやる。
メイリュウの、代わりに俺に、1000万ダルを支払う気は無いか?」
ぼくはちょっと考えて答えた。
「それはステキな提案ですね。」
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