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第8部 残念姫の顛末
第365話 邪神様と闇姫と黒い聖女
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「どうした?」
と、オルガっちに声をかけられて、わたしは顔をあげた。
さっきからずっと、結婚式の招待状とにらめっこをしていたのだ。それはたしかに奇妙に感じるだろう。
「いや、ソノ。この日程を少し書き換えられないかって、そう思って。」
「ルトの術式に介入するのか。出来るのか。」
「何言ってるか、オルガっち。わたしは魔導師ではないんだぞ。」
わたしは胸を張った。
「ただの神さまだ!」
「そこで威張るのは分からん!」
オルガっちは、一件の店を指さした。
「ここだな。既成を中心にドレスを即日で仕立ててくれる。幸いにもわたしもアキルも標準的な体型だから、似合うものが作れるじゃろ。
しかし、本当にぶち壊すための結婚式のためにわざわざドレスを作るのか?」
「なんていうか」
わたしはにっこり笑った。
「ぶち壊すのに会場にはいるのに、ドレスが必要なんだよ。
それにわたしは、ドレスってきたことがないんだ。オルガっちは?」
「わらわは、銀灰のお姫さまだからな。とはいえ、ここ数年は旅暮らしだ。最新の流行はアドバイスできない。」
「そこは、店員に頼むから大丈夫だよ。。」
ドアを引くとカランカランと鐘が鳴った。
「いらっしゃいませ。」
わたしは、扉をそっとしめた。
「オルガっち。シャーリーがいるよ。」
「見間違いだろ。彼女はウィルニアの異界にいるはず。」
カラカラと扉の鐘がなって、黒き聖女が顔を出した。
「いらっしゃいやせええ。」
「オルガっち!」
「慌てるなアキル。」
オルガっちは冷静に言った。
「店に入ってアンデッドの店員が出てくるのと、入ってきた客が邪神だったのとどっちが嫌だ?」
「どっちもどっちかなあ。」
「なら、我慢して入ろう。先だっての様子を見てもこちらに害意はなさそうだ。」
黒い聖女は、にこやかにお茶を振る舞ってくれた。彼女の主人、賢者ウィルニアは、エロ魔王と一緒に別世界にぶち込んでおいたのだが、とくにシャーリーに影響はないようだった。
「あらまあ。」
とシャーリーは品良く笑った。
「わたしは、別にウィルニアに、使役されてるわけじゃないんです。
お友だちなんで頼みをきいてあげてるだけで。」
「アンデッドが、か?」
と、疑り深そうに、オルガっちが言う。
「わたしは並のアンデッドではないし、ウィルもほら、いろいろと普通じゃないひとなので。」
そう言って、はあ、と物憂げにため息をついた。
「ほんとに久しぶりのミトラなので困ってしまいます。とりあえず、ここが空き家だったので、借りて店舗に、してみたのですが。」
か、勝手に?
「呪霊が、いましたのでたぶんずっと空き家の店舗ですわ。一応商店会には話をしましたのよ。そうしましたら、」
「そうしたら?」
「止められました。あそこは何人もの魔法士や司祭さんが除霊に失敗したいわく付きの物件だとか。」
シャーリーさんは、かたかたと震えるお盆から茶器をうけとった。
それは、なにも、ない空に浮かんでいた。
「これがここの呪霊です。
もともとは知性のないただの意識の残滓に、それによって呪い殺されたものの思念が絡み合って、とっても残念なものに、なっていますわ。」
「危険は無いのか?」
「それはもう。わたしが制御を放したら」
わたしはごくっと唾を飲んだ。
口の中がからからだが、その呪霊のもってきたお茶だ。手をつけにくいこと!
「たちまち、とんで逃げていくでしょうね。」
「え? そうなの?」
「あなたはご自分がなにか忘れたのですか?
肉体の目を通さない霊の目には、あなたが邪神ヴアルゴールたと」
きひいやぁぁあああ
叫びを残してなにかが遠ざかっていく。落としたお盆はシャーリーがキャッチした。
「あら、すいません。あの子が怖かってたのは、闇姫さんのほうでした。
アキルのことは、わたしが名前をだしたので気がついてしまったようです。」
頬に手を当てて、ふうっと息をついたシャーリーさんはきれいだ。
「本当にたまにお客さんが来ると、邪神だったり闇姫だったり」
気を取り直したように、立ち上がる。
「さて!ドレスでしたかね?
おふたりにピッタリの、ものがあります。まずはこちらへ。」
30分もしないうちに、わたしとオルガっちはドレスを身にまとっている。
「こ、これは」
わたしは、かえってみっともないのがわかってはいたが、それでも胸を隠さざるを得ない。
腰から上の布地が少なすぎるのだ。
スカートのほうは、ふんわりと広がってレースをいくつも重ねた豪奢なつくりなのに。
下半身縫ったところで、仕立て屋が入院したとでもしか思えない。
「落ち着け、アキル。」
オルガっちは冷静に言った。
こちらは、完全にビキニ以外の何者でもない。それも泳いだらポロリしちゃうようなちっちゃいやつだ。
それにヴェールをまきつけてなんとなく、ドレスっぽくみせている。
「で、でもオルガっち!
おっぱいが見えちゃってるんだけど。」
「乳首が見えない限り、胸を露出したことにはならないと、おまえ自身がその」
形の良い眉をひそめ
「おまえの世界の『ぐらびあ』というものを説明する時に言っていたぞ。」
「で、でもでもでも!」
「さあ、それでは」
シャーリーさんが、胸をかくすようにタスキをかけてくれた。
「アキルはもう少し工夫するとして、さきに闇姫さまのアクセサリーを、合わせていきましょうか。」
姿見を除くと、シャーリーのかけたくれたタスキでとりあえず胸は隠れている。
光沢のある素材出できたタスキは、肌触りもよく、真っ赤な文字ででかでかと、「邪神☆参上」と描かれていた。
完全に遊ばれている。
わたしが文句を言おうとした時。
「ミトラ中心部、大聖堂付近に多数の転移体。」
それはなにもなに空間から聞こえた。
「どうする、シャーリー。ここはおまえの故郷だろうが。打ってでるか?」
「馬鹿なことを言わないで、ギルバルス。」
シャーリーは落ち着いた様子で、声の主に答えた。
「ひとの生と死に介入するつもりは無いわ。それにわたしはいま忙しいのよ。」
「転移体だと? なんだ。」
声はうやうやしく、(姿ほ目えないが)一礼した。
「蜘蛛の魔物です。魔王宮にてギムリウスが、使役していたものに、似ていますが、色が緋色です。」
いや、やめて!
姿も見せないアンデッドが、私に、敬語使わないで!
「行ってみるか、アキル」
オルガっちがデスサイズをひらく。
わたしは頷いた。
「あ、まって、そのままじゃあ」
シャーリーが指先から金の粉のようなもの降りかかった。
姿見を見ると。
タスキの文字が
「勇者☆見参」
に変わっていた。
やっぱり、完全に遊ばれている。
オルガっちに抱えられるようにして、わたしは大聖堂へ急いだ。
と、オルガっちに声をかけられて、わたしは顔をあげた。
さっきからずっと、結婚式の招待状とにらめっこをしていたのだ。それはたしかに奇妙に感じるだろう。
「いや、ソノ。この日程を少し書き換えられないかって、そう思って。」
「ルトの術式に介入するのか。出来るのか。」
「何言ってるか、オルガっち。わたしは魔導師ではないんだぞ。」
わたしは胸を張った。
「ただの神さまだ!」
「そこで威張るのは分からん!」
オルガっちは、一件の店を指さした。
「ここだな。既成を中心にドレスを即日で仕立ててくれる。幸いにもわたしもアキルも標準的な体型だから、似合うものが作れるじゃろ。
しかし、本当にぶち壊すための結婚式のためにわざわざドレスを作るのか?」
「なんていうか」
わたしはにっこり笑った。
「ぶち壊すのに会場にはいるのに、ドレスが必要なんだよ。
それにわたしは、ドレスってきたことがないんだ。オルガっちは?」
「わらわは、銀灰のお姫さまだからな。とはいえ、ここ数年は旅暮らしだ。最新の流行はアドバイスできない。」
「そこは、店員に頼むから大丈夫だよ。。」
ドアを引くとカランカランと鐘が鳴った。
「いらっしゃいませ。」
わたしは、扉をそっとしめた。
「オルガっち。シャーリーがいるよ。」
「見間違いだろ。彼女はウィルニアの異界にいるはず。」
カラカラと扉の鐘がなって、黒き聖女が顔を出した。
「いらっしゃいやせええ。」
「オルガっち!」
「慌てるなアキル。」
オルガっちは冷静に言った。
「店に入ってアンデッドの店員が出てくるのと、入ってきた客が邪神だったのとどっちが嫌だ?」
「どっちもどっちかなあ。」
「なら、我慢して入ろう。先だっての様子を見てもこちらに害意はなさそうだ。」
黒い聖女は、にこやかにお茶を振る舞ってくれた。彼女の主人、賢者ウィルニアは、エロ魔王と一緒に別世界にぶち込んでおいたのだが、とくにシャーリーに影響はないようだった。
「あらまあ。」
とシャーリーは品良く笑った。
「わたしは、別にウィルニアに、使役されてるわけじゃないんです。
お友だちなんで頼みをきいてあげてるだけで。」
「アンデッドが、か?」
と、疑り深そうに、オルガっちが言う。
「わたしは並のアンデッドではないし、ウィルもほら、いろいろと普通じゃないひとなので。」
そう言って、はあ、と物憂げにため息をついた。
「ほんとに久しぶりのミトラなので困ってしまいます。とりあえず、ここが空き家だったので、借りて店舗に、してみたのですが。」
か、勝手に?
「呪霊が、いましたのでたぶんずっと空き家の店舗ですわ。一応商店会には話をしましたのよ。そうしましたら、」
「そうしたら?」
「止められました。あそこは何人もの魔法士や司祭さんが除霊に失敗したいわく付きの物件だとか。」
シャーリーさんは、かたかたと震えるお盆から茶器をうけとった。
それは、なにも、ない空に浮かんでいた。
「これがここの呪霊です。
もともとは知性のないただの意識の残滓に、それによって呪い殺されたものの思念が絡み合って、とっても残念なものに、なっていますわ。」
「危険は無いのか?」
「それはもう。わたしが制御を放したら」
わたしはごくっと唾を飲んだ。
口の中がからからだが、その呪霊のもってきたお茶だ。手をつけにくいこと!
「たちまち、とんで逃げていくでしょうね。」
「え? そうなの?」
「あなたはご自分がなにか忘れたのですか?
肉体の目を通さない霊の目には、あなたが邪神ヴアルゴールたと」
きひいやぁぁあああ
叫びを残してなにかが遠ざかっていく。落としたお盆はシャーリーがキャッチした。
「あら、すいません。あの子が怖かってたのは、闇姫さんのほうでした。
アキルのことは、わたしが名前をだしたので気がついてしまったようです。」
頬に手を当てて、ふうっと息をついたシャーリーさんはきれいだ。
「本当にたまにお客さんが来ると、邪神だったり闇姫だったり」
気を取り直したように、立ち上がる。
「さて!ドレスでしたかね?
おふたりにピッタリの、ものがあります。まずはこちらへ。」
30分もしないうちに、わたしとオルガっちはドレスを身にまとっている。
「こ、これは」
わたしは、かえってみっともないのがわかってはいたが、それでも胸を隠さざるを得ない。
腰から上の布地が少なすぎるのだ。
スカートのほうは、ふんわりと広がってレースをいくつも重ねた豪奢なつくりなのに。
下半身縫ったところで、仕立て屋が入院したとでもしか思えない。
「落ち着け、アキル。」
オルガっちは冷静に言った。
こちらは、完全にビキニ以外の何者でもない。それも泳いだらポロリしちゃうようなちっちゃいやつだ。
それにヴェールをまきつけてなんとなく、ドレスっぽくみせている。
「で、でもオルガっち!
おっぱいが見えちゃってるんだけど。」
「乳首が見えない限り、胸を露出したことにはならないと、おまえ自身がその」
形の良い眉をひそめ
「おまえの世界の『ぐらびあ』というものを説明する時に言っていたぞ。」
「で、でもでもでも!」
「さあ、それでは」
シャーリーさんが、胸をかくすようにタスキをかけてくれた。
「アキルはもう少し工夫するとして、さきに闇姫さまのアクセサリーを、合わせていきましょうか。」
姿見を除くと、シャーリーのかけたくれたタスキでとりあえず胸は隠れている。
光沢のある素材出できたタスキは、肌触りもよく、真っ赤な文字ででかでかと、「邪神☆参上」と描かれていた。
完全に遊ばれている。
わたしが文句を言おうとした時。
「ミトラ中心部、大聖堂付近に多数の転移体。」
それはなにもなに空間から聞こえた。
「どうする、シャーリー。ここはおまえの故郷だろうが。打ってでるか?」
「馬鹿なことを言わないで、ギルバルス。」
シャーリーは落ち着いた様子で、声の主に答えた。
「ひとの生と死に介入するつもりは無いわ。それにわたしはいま忙しいのよ。」
「転移体だと? なんだ。」
声はうやうやしく、(姿ほ目えないが)一礼した。
「蜘蛛の魔物です。魔王宮にてギムリウスが、使役していたものに、似ていますが、色が緋色です。」
いや、やめて!
姿も見せないアンデッドが、私に、敬語使わないで!
「行ってみるか、アキル」
オルガっちがデスサイズをひらく。
わたしは頷いた。
「あ、まって、そのままじゃあ」
シャーリーが指先から金の粉のようなもの降りかかった。
姿見を見ると。
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