美人生徒会長は、俺の料理の虜です!~二人きりで過ごす美味しい時間~

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第二章 動く五月

24.デートバイデイライト その2

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 ショッピングセンターまでは横並びで歩いていたけれど、店内に入ってからは先輩に先導される形になった。
 だから俺は、背後から存分に先輩の私服姿を眺めることができた。

 白いレースのシャツに、だぼっとしたカーキ色のパンツ。足元は黒いスポーツサンダルで、チェーンのついた小さなバッグを斜め掛けしている。
 可愛さとカッコよさが混在していて、なんかすごく大人っぽい。
 しかも、シャツから黒いインナーが透けている。たぶん、見えても問題ないものなんだろうけど、ドキドキするのはとめられない。
 最初、黒いブラだと勘違いして、危うく天に召されるところだった。

 そして、さらさら揺れるショートヘアの耳元には、花飾りのついたヘアピンが刺さっている。俺のために、ちょっと特別なオシャレをしてきてくれたのかな、なんて思ってしまった。

 『多少は意識されてるんじゃないか?』という瑛士の言葉が頭をよぎったけれど、慌てて打ち払う。
 うぬぼれは身を滅ぼす。今日はただひたすら、フツーに振る舞えばいいんだ。

「どこに向かってるんですか?」

 エスカレーターで上階に向かいながら、俺の前に立つ先輩に尋ねる。

「まず、三階の三百円ショップを見てもいい? それから、五階の雑貨屋さん」
「わかりました」

 平静に答えながらも、俺は先輩のうなじを眺めずにいられなかった。白くて細い首に、たくさんの産毛が生えている。……触りたい。
 やり場のない思いを発散するため、俺は自分の首の後ろを撫でておいた。……ジョリジョリする。

 三百円ショップは、エスカレーターを降りたすぐ先にあった。
 このショッピングセンター自体にはたまに来るけれど、三百円ショップや雑貨屋には足を踏み入れたことはない。客層はほぼ女性だし、欲しいものもないし。

 先輩の後ろを歩きながら、商品棚を眺め、百均との違いに感嘆した。置いてあるものは、どれもこれも小洒落こじゃれていて、やっぱり男一人で来るようなところじゃないなと改めて思う。

「シンプルでいいですね」

 弁当箱コーナーに並べてある品物を見て、俺は率直な意見を述べた。
 値段相応の安っぽさはあるけれど、食洗器OKだし、箸を収納する場所もあるし。
 でも、先輩は難しい顔で「うーん」とうなっている。

「雑貨屋さんも見ていい?」
「もちろんです」

 雑貨屋には、女子ウケしそうなデザインの弁当箱がたくさん置いてあった。値段はそこそこするけれど、そのぶん造りがしっかりしているように思える。

 先輩はあれこれ手にとって、めつすがめつしては売り場に戻していた。
 そんな先輩の隣に立つ俺って、はたから見たら彼氏に見えるんだろうか。見えてるといいな。よし、背筋を伸ばして、キリッとした表情をしておこう。せーの、キリッ。

「ゴウくんは、どんなのがいいと思う?」
「はいっ?!」

 いきなり質問を向けられて、俺は慌てふためいた。もはやキリッもくそもない。たしかに、俺も多少は意見を言わないと、一緒に来た意味がないよな。

「ええっと、先輩は少食だから、これくらいのサイズのものはどうですか」

 一段式のスリムな弁当箱を指さすと、先輩は「えっ……」と小さな声をあげてうつむいた。わずかに頬が紅潮している。

「え、先輩?」
「……わたし、ぜんぜん少食なんかじゃないよ」

 消え入りそうな先輩の声に、俺は戸惑う。

「そうなんですか? お昼はいつもサラダとおにぎりだから、てっきり……」

 すると先輩は、少しもごもごしたあと、意を決したように語り出す。

「わたし、ママから五百円もらってる、って言ったでしょ? その金額内で、コンビニで買えるものがサラダとおにぎりくらいなの。菓子パンだけ、とかだったらもっとたくさん買えるけど、カロリー高いから」
「つまり、いつものお昼ご飯じゃ、ぜんぜん足りてなかったんですね」

 俺の言葉に、先輩は再びうつむいてしまった。あ、無神経なこと言っちゃったっぽい。
 でも先輩はぱっと顔を上げると、俺の方を見て照れくさそうに笑う。

「まぁ、ね。五限目のあとにお菓子食べたりしてるんだ」
「そうだったんですね……。じゃ、じゃあ、これくらいの弁当箱はどうですか?」

 売り場にある中で一番大きな弁当箱を指さすと、先輩は眉根を寄せて考え込む。

「うーん、それくらいの大きさでもいいと思うけど……そんなに食べて、太らないかな」

 先輩はすごく細身だから、多少太っても大丈夫だと思います、と口から飛び出しかかったけれど、慌てて飲み込んだ。女子に体型のことを言ったら、セクハラになっちゃうよな。
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