12 / 17
Ⅱ
斗真と隆介のこれから
しおりを挟む
斗真の入院生活
気が付いたら、病院だった。僕、生きている。不思議な気持ちだった。循環器科の先生が主治医になっていた。呼吸器科じゃないのかと、驚いた。心房細動とゆう発作を起こしたこと。これは、喘息患者が起こしやすいこと。色々聞いたけれど、なんだか覚える気力が無くて頷いておいた。先輩が一日一回来てくれる。ICUは面会制限があって、決まった時間内に一時間だけ。先輩の優しい声や優しい顔が、いつもより遠くに感じる。コレは、何だろう。小掠先生の声も、水の中で聞くみたい。おかしい。前に鼓膜が破れたときみたい。でも、どうでもいいか。全ての事に頷いておく。ベッドの上で、一日が流れるのをじっと見つめる。
ICUは、二日で出た。循環器科の一般病棟個室。大部屋でいいのに、個室としてくれた。個室代は高いのに。小掠先生にお礼を言わなきゃ。言わなきゃいけないのに、口から言葉が出ない。出ないものは仕方ない。まぁ、いいかと時間の流れを見つめる。
一般病棟になってから、夕方から夕食後まで先輩がいる。色々話しかけてくれる。何て言っているのかよく分からない。全ての事に頷いておく。先輩は優しいな、それだけはしっかり分かった。
特に心機能に問題はなく、今回は突発的な不整脈でしょう、と退院許可が出た。一週間の入院だった。定期的な通院と、念のため抗不整脈薬の内服が追加になった。呼吸器科より早く退院できるんだな、と思った。
先輩が退院手続きや会計をしている。ぼんやり眺めた。「先輩、大学はどうしたんですか?」「ありがとうございます」伝える言葉はあるはずなのに、全部口から言葉にならない。それも全部、まぁ、いいか、と諦めた。
小掠隆介の支配者
斗真が会話をしない。ここにいるのに、心が伴っていない。どうしたのか。
全ては、あの発作を起こした日。あの日に何かがあったんだ。だけど、それが何なのか分からない。
父さん母さんは、精神科を受診させるか考えている。だけど、その前に頼ってみたい人たちがいる。きっと、何かヒントをくれる気がする。人を見抜く力がある人たちだ。今の斗真は、心を固く閉ざしている。見ていて苦しい。きっとそうすることしか自分を守ることが出来ないんだろう。今、斗真は精一杯だ。糸が切れるギリギリにいる。俺は、その糸が切れないように、細心の注意を払って傍にいる。今度は、絶対に斗真を守る。
「おい、何だこりゃ」
怖い顔のオーナーさんが、さらに怖い顔。昨日、斗真の事について相談したいと連絡をした。「明日、来い」と言われて開店前にお邪魔している。斗真を連れて二人。
心房細動と喘息発作を併発したこと、その後から斗真が会話をしないこと。運動誘発喘息発作が原因のようだが、なぜ斗真が走ったのか分からないこと。正直に全て話した。
オーナーさんとこに行くよ、と話すとコクリと頷く斗真。指示を出せば従うけれど、自発的に行動しない。綺麗な瞳が、何を映しているのか。可愛い表情がどこに隠されてしまったのか、斗真を大切に思うからこそ俺は知りたい。
「おい、クロ? おまえ、幽体離脱でもしてんのか?」
オーナーさんの声に、一つ頷く斗真。ここのところ、すべての問いかけに頷いている。声は聞こえている様子。内容は理解していないように思う。
「こりゃ、ダメだ。おい、彼氏。俺は霊感はねーよ。あれだ、偉い坊さんなら、どうにかしてくれるだろ」
「ちょっと、ふざけないでください。真剣に相談しているんです。あなたの人を見る目はスゴイものがあります。斗真も慕っている。今、斗真はギリギリのところに居るんです。俺は斗真を助けたい。あなたなら何か突破口を見出すかと思って」
「買いかぶるなよ。俺はほんの十日しか、こいつを知らねーよ。お前にどうにも出来なきゃお手上げだろう。ここんとこ調子よかったじゃねーか。急に心閉ざしたなら、俺よりお前が思い当たることあんじゃねーか? こいつが影響受ける相手って誰だよ?」
斗真に、影響を与える人物? 真っ先に浮かぶ相手。
「斗真の、家族だ」
その単語に、斗真がビクリと震えたのが見えた。オーナーも、気づいた。そうか。あの時、斗真の帰宅が遅くなった原因。櫻井家の、斗真の生まれた家での事件を思い出す。ゾクリと背中を走る悪寒。まさか。オーナーも険しい視線を俺によこす。
「クロ、お前、家族と喧嘩でもしたか?」
オーナーの一言に、斗真の視線が揺れる。ストレートな質問に、さすがに驚く。何て人だ。
「そうか。クロ、誰と喧嘩してもいいがな、背を向ける相手を間違えるな。お前が経験した苦痛と、お前の彼氏は関係あるか?」
斗真が、目を見開いてオーナーを見ている。
「自分が辛いからと、全てにトゲを向けるな。分別のできる大人になれ。大切なものを、自分の手で包み込めるようになれ。お前が自分から手放したら、お前は本当に独りだぞ? 今のお前が大事なものを考えろ、ガキが」
オーナーをじっと見ていた斗真が、ゆっくり俺を見る。斗真の瞳に、俺が映っている。たまらずに、抱きしめた。
「隆介君、あの、僕……」
小さな声が胸の中でする。久しぶりの斗真の声だ。ギリギリの糸が、切れなかった。良かった。嬉しくて涙が浮かぶ。
「斗真、斗真」
その細い身体を大切に抱きしめる。
「おい! こっちは開店前で忙しいんだ! 乳繰り合いなら外でやれ、バカヤロウ!」
事務室から叩き出されてしまった。あまりの剣幕に、斗真と二人で顔を見合わせる。廊下で、お姉さんたちに笑われながら、手を振られる。心の底からおかしくて、嬉しくて、二人で泣き笑いしながら帰った。しっかりと斗真の手を握りしめて帰った。
あのキャバクラは、とんでもない人の集まりだ。心から、尊敬と感謝をする。
「斗真。ちゃんと、何があったか話してもらえる? 今が無理なら、今度でもいいから」
帰宅して、すぐに俺の部屋に二人でこもった。
コクリと頷く斗真。この真っすぐな綺麗な瞳が愛おしい。
「僕、先輩に言えないことが、ありました。この家に来てから、幸せなのに無性に櫻井の家が気になっていました。時々、家を見に行くのが止められなかった。あの日、母から、産まなければよかったって言われて……気が付いたら、走っていました」
「それは、辛かったね。心がひび割れる言葉だったよね……」
自分の子供に、そんな事を言ったのか。優しく斗真を撫でながら、腹の底が赤くなる。
「僕、その時に気づいたんです。僕の心の奥には、隠していた希望があったんです。最近皆優しくて、もしかして僕の家族も優しいんじゃないかなって思い始めて。どこかでささやかな期待をしちゃっていたんです。小掠先生にも、巻き込まれずに見守るように言われていたのに」
「そうだったんだね」
わずかな期待が、少しずつ膨らんでいたのか。それが、崩れてしまって心が保てなかったのか。
「斗真。決めた気持ちが揺れることもあるよ。感情が理性で押さえきれないこともある。まして、斗真は自分の家族とのことだから。我慢しなくていい。家族が恋しくなったら、次は俺に気持ちを教えてくれる? 時間をかけて一緒に乗り越えていこうよ」
「……はい」
俺を見る斗真を抱きしめる。
斗真は、たくさんの傷を負っている。弟に喘息発作を誘発され続けていた斗真の気管の壁は、肥厚している。喘息が、大人になれば落ち着くよ、という状況ではなくなっている。一生、発作と隣り合わせの生活をしていかなくてはいけない。加えて不整脈の心配も生じた。心も家族に攻撃されて、それでも人を恨まない斗真。せめて、俺が一緒に支えてあげたい。斗真がこれ以上苦しまないように。斗真の笑顔を俺がいつも見ていられるように。
膝の上に斗真を横抱きに乗せて、上を向かせてキス。俺はコレが好き。上を向く斗真の喉奥を味わうことが出来る。懸命に唾液を飲み込む舌の動き。ゾクリとする艶めかしさ。斗真の後頭部を支えて、逃げられないように、斗真を味わう。必死でキスに応える斗真。漏れ出る声の可愛らしさ。俺の舌が蛇のように長ければいいのに。喉の先に入り込んで、斗真の粘膜は全て舐めつくしてみたい。そうしたら、どんな顔をするだろう。想像するだけで身体がブルリと震える。
身体を重ねるたびに、もっと斗真が欲しくなる。ずっと抱き合っていたいと思う。繋がっている時の可愛らしさ。全身を震わせて達する時の顔。壮絶な色気と痴態。その身体の奥底まで潜り込む気持ちよさ。
斗真の心がどこかに隠されていそうで、貪りつくすことを止められない。斗真の運動量が上がらないよう、負担をかけないように注意を払って抱く。狭い斗真の中の締め付け。快感だけを追って、俺に全てを委ねる斗真。愛おしくて、意識をなくした後の身体に激しく入り込んでしまう。奥の奥が俺に絡みついてくる。斗真に負担はかけたくないから必ずスキンは着ける。
終わった後の、斗真のすぐに閉じない場所を触る。ヒクヒクと可愛らしい。粘膜の赤さが愛おしい。指を食ませて、戻ってくる形を楽しむ。こんなことして、目が覚めていたら真っ赤になって怒るかな? いや、「隆介君がしたいなら、いいよ」と恥ずかしそうに可愛く言うかな。想像して、ふふっと笑いが漏れてしまう。
斗真は、セックスは俺に支配されるみたいだと言う。俺は、それは違うと思っている。俺の心を占拠しているのは斗真だ。斗真以外にこんな気持ちになる事はないだろう。俺は、この可愛らしい支配者に、全てを捧げると決めている。
エピローグ
小掠先生から、弟の嘉人の事を聞いた。「噂くらいしか知らないけどね」と話してくれた。サッカーは辞めていた。高校の推薦はもらえず、市内の工業高校を普通受験するようだ。
「きっと、櫻井家も乗り越えるべき壁に当たっているかもね。だからといって斗真君に八つ当たりしても仕方ないだろうに。私たちは第二の家族でいいんだから、恋しくなったら櫻井の両親を遠くから見に行ってきなさい。必ず隆介を連れて行くんだよ」
小掠の家では、僕のもとの家族の話は出してはいけないと思っていた。だけど、あっさり受け入れられた。一人でモヤモヤしていたのが、馬鹿らしくなってしまった。
隆介君も、先生夫婦も、心の器の大きい人たちだと思う。キャバクラのオーナーたちも、深い優しさを備えている。僕の周りには素敵な大人が沢山いる。こんな大人になっていきたいと、心から願う。
気が付いたら、病院だった。僕、生きている。不思議な気持ちだった。循環器科の先生が主治医になっていた。呼吸器科じゃないのかと、驚いた。心房細動とゆう発作を起こしたこと。これは、喘息患者が起こしやすいこと。色々聞いたけれど、なんだか覚える気力が無くて頷いておいた。先輩が一日一回来てくれる。ICUは面会制限があって、決まった時間内に一時間だけ。先輩の優しい声や優しい顔が、いつもより遠くに感じる。コレは、何だろう。小掠先生の声も、水の中で聞くみたい。おかしい。前に鼓膜が破れたときみたい。でも、どうでもいいか。全ての事に頷いておく。ベッドの上で、一日が流れるのをじっと見つめる。
ICUは、二日で出た。循環器科の一般病棟個室。大部屋でいいのに、個室としてくれた。個室代は高いのに。小掠先生にお礼を言わなきゃ。言わなきゃいけないのに、口から言葉が出ない。出ないものは仕方ない。まぁ、いいかと時間の流れを見つめる。
一般病棟になってから、夕方から夕食後まで先輩がいる。色々話しかけてくれる。何て言っているのかよく分からない。全ての事に頷いておく。先輩は優しいな、それだけはしっかり分かった。
特に心機能に問題はなく、今回は突発的な不整脈でしょう、と退院許可が出た。一週間の入院だった。定期的な通院と、念のため抗不整脈薬の内服が追加になった。呼吸器科より早く退院できるんだな、と思った。
先輩が退院手続きや会計をしている。ぼんやり眺めた。「先輩、大学はどうしたんですか?」「ありがとうございます」伝える言葉はあるはずなのに、全部口から言葉にならない。それも全部、まぁ、いいか、と諦めた。
小掠隆介の支配者
斗真が会話をしない。ここにいるのに、心が伴っていない。どうしたのか。
全ては、あの発作を起こした日。あの日に何かがあったんだ。だけど、それが何なのか分からない。
父さん母さんは、精神科を受診させるか考えている。だけど、その前に頼ってみたい人たちがいる。きっと、何かヒントをくれる気がする。人を見抜く力がある人たちだ。今の斗真は、心を固く閉ざしている。見ていて苦しい。きっとそうすることしか自分を守ることが出来ないんだろう。今、斗真は精一杯だ。糸が切れるギリギリにいる。俺は、その糸が切れないように、細心の注意を払って傍にいる。今度は、絶対に斗真を守る。
「おい、何だこりゃ」
怖い顔のオーナーさんが、さらに怖い顔。昨日、斗真の事について相談したいと連絡をした。「明日、来い」と言われて開店前にお邪魔している。斗真を連れて二人。
心房細動と喘息発作を併発したこと、その後から斗真が会話をしないこと。運動誘発喘息発作が原因のようだが、なぜ斗真が走ったのか分からないこと。正直に全て話した。
オーナーさんとこに行くよ、と話すとコクリと頷く斗真。指示を出せば従うけれど、自発的に行動しない。綺麗な瞳が、何を映しているのか。可愛い表情がどこに隠されてしまったのか、斗真を大切に思うからこそ俺は知りたい。
「おい、クロ? おまえ、幽体離脱でもしてんのか?」
オーナーさんの声に、一つ頷く斗真。ここのところ、すべての問いかけに頷いている。声は聞こえている様子。内容は理解していないように思う。
「こりゃ、ダメだ。おい、彼氏。俺は霊感はねーよ。あれだ、偉い坊さんなら、どうにかしてくれるだろ」
「ちょっと、ふざけないでください。真剣に相談しているんです。あなたの人を見る目はスゴイものがあります。斗真も慕っている。今、斗真はギリギリのところに居るんです。俺は斗真を助けたい。あなたなら何か突破口を見出すかと思って」
「買いかぶるなよ。俺はほんの十日しか、こいつを知らねーよ。お前にどうにも出来なきゃお手上げだろう。ここんとこ調子よかったじゃねーか。急に心閉ざしたなら、俺よりお前が思い当たることあんじゃねーか? こいつが影響受ける相手って誰だよ?」
斗真に、影響を与える人物? 真っ先に浮かぶ相手。
「斗真の、家族だ」
その単語に、斗真がビクリと震えたのが見えた。オーナーも、気づいた。そうか。あの時、斗真の帰宅が遅くなった原因。櫻井家の、斗真の生まれた家での事件を思い出す。ゾクリと背中を走る悪寒。まさか。オーナーも険しい視線を俺によこす。
「クロ、お前、家族と喧嘩でもしたか?」
オーナーの一言に、斗真の視線が揺れる。ストレートな質問に、さすがに驚く。何て人だ。
「そうか。クロ、誰と喧嘩してもいいがな、背を向ける相手を間違えるな。お前が経験した苦痛と、お前の彼氏は関係あるか?」
斗真が、目を見開いてオーナーを見ている。
「自分が辛いからと、全てにトゲを向けるな。分別のできる大人になれ。大切なものを、自分の手で包み込めるようになれ。お前が自分から手放したら、お前は本当に独りだぞ? 今のお前が大事なものを考えろ、ガキが」
オーナーをじっと見ていた斗真が、ゆっくり俺を見る。斗真の瞳に、俺が映っている。たまらずに、抱きしめた。
「隆介君、あの、僕……」
小さな声が胸の中でする。久しぶりの斗真の声だ。ギリギリの糸が、切れなかった。良かった。嬉しくて涙が浮かぶ。
「斗真、斗真」
その細い身体を大切に抱きしめる。
「おい! こっちは開店前で忙しいんだ! 乳繰り合いなら外でやれ、バカヤロウ!」
事務室から叩き出されてしまった。あまりの剣幕に、斗真と二人で顔を見合わせる。廊下で、お姉さんたちに笑われながら、手を振られる。心の底からおかしくて、嬉しくて、二人で泣き笑いしながら帰った。しっかりと斗真の手を握りしめて帰った。
あのキャバクラは、とんでもない人の集まりだ。心から、尊敬と感謝をする。
「斗真。ちゃんと、何があったか話してもらえる? 今が無理なら、今度でもいいから」
帰宅して、すぐに俺の部屋に二人でこもった。
コクリと頷く斗真。この真っすぐな綺麗な瞳が愛おしい。
「僕、先輩に言えないことが、ありました。この家に来てから、幸せなのに無性に櫻井の家が気になっていました。時々、家を見に行くのが止められなかった。あの日、母から、産まなければよかったって言われて……気が付いたら、走っていました」
「それは、辛かったね。心がひび割れる言葉だったよね……」
自分の子供に、そんな事を言ったのか。優しく斗真を撫でながら、腹の底が赤くなる。
「僕、その時に気づいたんです。僕の心の奥には、隠していた希望があったんです。最近皆優しくて、もしかして僕の家族も優しいんじゃないかなって思い始めて。どこかでささやかな期待をしちゃっていたんです。小掠先生にも、巻き込まれずに見守るように言われていたのに」
「そうだったんだね」
わずかな期待が、少しずつ膨らんでいたのか。それが、崩れてしまって心が保てなかったのか。
「斗真。決めた気持ちが揺れることもあるよ。感情が理性で押さえきれないこともある。まして、斗真は自分の家族とのことだから。我慢しなくていい。家族が恋しくなったら、次は俺に気持ちを教えてくれる? 時間をかけて一緒に乗り越えていこうよ」
「……はい」
俺を見る斗真を抱きしめる。
斗真は、たくさんの傷を負っている。弟に喘息発作を誘発され続けていた斗真の気管の壁は、肥厚している。喘息が、大人になれば落ち着くよ、という状況ではなくなっている。一生、発作と隣り合わせの生活をしていかなくてはいけない。加えて不整脈の心配も生じた。心も家族に攻撃されて、それでも人を恨まない斗真。せめて、俺が一緒に支えてあげたい。斗真がこれ以上苦しまないように。斗真の笑顔を俺がいつも見ていられるように。
膝の上に斗真を横抱きに乗せて、上を向かせてキス。俺はコレが好き。上を向く斗真の喉奥を味わうことが出来る。懸命に唾液を飲み込む舌の動き。ゾクリとする艶めかしさ。斗真の後頭部を支えて、逃げられないように、斗真を味わう。必死でキスに応える斗真。漏れ出る声の可愛らしさ。俺の舌が蛇のように長ければいいのに。喉の先に入り込んで、斗真の粘膜は全て舐めつくしてみたい。そうしたら、どんな顔をするだろう。想像するだけで身体がブルリと震える。
身体を重ねるたびに、もっと斗真が欲しくなる。ずっと抱き合っていたいと思う。繋がっている時の可愛らしさ。全身を震わせて達する時の顔。壮絶な色気と痴態。その身体の奥底まで潜り込む気持ちよさ。
斗真の心がどこかに隠されていそうで、貪りつくすことを止められない。斗真の運動量が上がらないよう、負担をかけないように注意を払って抱く。狭い斗真の中の締め付け。快感だけを追って、俺に全てを委ねる斗真。愛おしくて、意識をなくした後の身体に激しく入り込んでしまう。奥の奥が俺に絡みついてくる。斗真に負担はかけたくないから必ずスキンは着ける。
終わった後の、斗真のすぐに閉じない場所を触る。ヒクヒクと可愛らしい。粘膜の赤さが愛おしい。指を食ませて、戻ってくる形を楽しむ。こんなことして、目が覚めていたら真っ赤になって怒るかな? いや、「隆介君がしたいなら、いいよ」と恥ずかしそうに可愛く言うかな。想像して、ふふっと笑いが漏れてしまう。
斗真は、セックスは俺に支配されるみたいだと言う。俺は、それは違うと思っている。俺の心を占拠しているのは斗真だ。斗真以外にこんな気持ちになる事はないだろう。俺は、この可愛らしい支配者に、全てを捧げると決めている。
エピローグ
小掠先生から、弟の嘉人の事を聞いた。「噂くらいしか知らないけどね」と話してくれた。サッカーは辞めていた。高校の推薦はもらえず、市内の工業高校を普通受験するようだ。
「きっと、櫻井家も乗り越えるべき壁に当たっているかもね。だからといって斗真君に八つ当たりしても仕方ないだろうに。私たちは第二の家族でいいんだから、恋しくなったら櫻井の両親を遠くから見に行ってきなさい。必ず隆介を連れて行くんだよ」
小掠の家では、僕のもとの家族の話は出してはいけないと思っていた。だけど、あっさり受け入れられた。一人でモヤモヤしていたのが、馬鹿らしくなってしまった。
隆介君も、先生夫婦も、心の器の大きい人たちだと思う。キャバクラのオーナーたちも、深い優しさを備えている。僕の周りには素敵な大人が沢山いる。こんな大人になっていきたいと、心から願う。
36
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
「オレの番は、いちばん近くて、いちばん遠いアルファだった」
星井 悠里
BL
大好きだった幼なじみのアルファは、皆の憧れだった。
ベータのオレは、王都に誘ってくれたその手を取れなかった。
番にはなれない未来が、ただ怖かった。隣に立ち続ける自信がなかった。
あれから二年。幼馴染の婚約の噂を聞いて胸が痛むことはあるけれど、
平凡だけどちゃんと働いて、それなりに楽しく生きていた。
そんなオレの体に、ふとした異変が起きはじめた。
――何でいまさら。オメガだった、なんて。
オメガだったら、これからますます頑張ろうとしていた仕事も出来なくなる。
2年前のあの時だったら。あの手を取れたかもしれないのに。
どうして、いまさら。
すれ違った運命に、急展開で振り回される、Ωのお話。
ハピエン確定です。(全10話)
2025年 07月12日 ~2025年 07月21日 なろうさんで完結してます。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
【完結】王宮勤めの騎士でしたが、オメガになったので退職させていただきます
大河
BL
第三王子直属の近衛騎士団に所属していたセリル・グランツは、とある戦いで毒を受け、その影響で第二性がベータからオメガに変質してしまった。
オメガは騎士団に所属してはならないという法に基づき、騎士団を辞めることを決意するセリル。上司である第三王子・レオンハルトにそのことを告げて騎士団を去るが、特に引き留められるようなことはなかった。
地方貴族である実家に戻ったセリルは、オメガになったことで見合い話を受けざるを得ない立場に。見合いに全く乗り気でないセリルの元に、意外な人物から婚約の申し入れが届く。それはかつての上司、レオンハルトからの婚約の申し入れだった──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる