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Ⅰ ファッティ体形男子
③
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「すごいな。栄養学とか運動とか、ダイエットって専門の本があるんだ」
凛太朗は図書室の日用雑学コーナーに並ぶ本を見つめて呟いた。
隣の酒井は無言で本棚を見つめている。放課後の図書室は利用者がほとんどいない。皆部活動に励む時間だからだ。少しくらい会話をしても迷惑にならなくて助かる。
「うん。すごいなぁ。これ、読まなきゃか。気が滅入るな」
酒井が少し困ったように苦笑いした。酒井のダイエット話は急に上がった話で、本人からやる気を出してのダイエットではない。興味が無ければ本を読む気にもならないのだろう。
「僕と読もうよ。ほら、ダイエットの基本の食事編と運動編を交代でさ」
凛太朗の提案に酒井がこちらを見た。普段前髪に隠れているたれ目が優しく細くなった。
酒井の顔は丸い頬が印象的で目をしっかり見たことは無かったが、涼やかな綺麗な目だと凛太朗は思った。つい、見とれてしまった。
「凛太朗、ありがとう」
凛太朗と目が合ったまま酒井が微笑んだ。ぽっちゃり顔だけど、なぜかカッコいいと思えた。
よく見れば酒井の顔の造りは整っている。酒井は痩せたらイケメンになるのではないか。そんな考えが凛太朗に生まれた。
「うん。そうだな。な、酒井は痩せたらモテるんじゃないか? 身長は高いし、ほら、顔が綺麗だから」
凛太朗は手を伸ばして酒井の重い前髪をすっと分けた。現れた顔の全貌に凛太朗は改めてドキリとした。眉毛と額が出ると顔全体のバランスが分かる。肌がつるりと綺麗で目を引く。
「すご。酒井って、イケメンじゃんか」
凛太朗の素直な感想が漏れた。見る間に酒井の頬が染まっていく。間近でそんな反応を見ると大きな酒井が可愛くて仕方なくなる。
「あ、えっと。離して」
真っ赤になりながら酒井がプルプル震えている。
本当は凛太朗の手を振り払って拒否したいのだろう。だがそうせずに、恥ずかしさに一人耐える酒井は優しい。凛太朗は酒井の豊かな頬を手でムニムニと触って決意を口にした。
「よし! 酒井、僕がカッコよくしてやる!」
気合を入れたため思ったより大きな声になってしまった。しまった、と思い周囲を見渡すと、カウンターの図書委員が凛太朗たちに視線を向けていた。
(騒いですみません)
思いを込めて図書委員にペコリと頭を下げると、隣で酒井も頭を下げていた。
声を出してしまったのは凛太朗なのに一緒に頭を下げてくれて良いヤツだと思った。
酒井は前髪を自分で元に戻して『えへへ』と笑った。それを見て凛太朗も『えへへ』と笑い返した。
その後は読書コーナーで静かに本を交代読みした。凛太朗は食事についての本を読んだ。ダイエットの食事制限は食べない苦しいものだと思っていたのが、バランスよく食べる必要があると分かった。載せてある食事写真は美味しそうに見えた。
「なぁ、酒井。ダイエットの食事って美味しそうだな」
運動の本を読んでいる酒井に声を掛けると、凛太朗の本を覗き込んできた。
「あ、本当だ。こんな食事ならいいな」
「コレを家で作ってもらうとか出来そう?」
料理なら酒井の母に協力してもらう必要がある。そんな気持ちで聞いた。
しかし、酒井は困ったように本から目を逸らした。どうしたのかと凛太朗は不安になった。
「無理かもなぁ。俺んち、父さんだけだし。俺、料理って怖くてできないし」
凛太朗を見ない酒井の様子から触れて欲しくないことだったと分かった。
「俺、小学生の時に火事で母さん亡くしてて」
酒井の言葉に凛太朗は息を飲んだ。思いもしなかった事に驚いて酒井を見つめた。
そう言えば、酒井は毎日購買のパンを買っていて、手作り弁当は見たことが無い。
火事で母親を亡くしているのなら、火が怖くて料理が出来ないのは当然の事だ。もしかして朝昼晩の食事は全て総菜弁当や外食なのかもしれない。想像が凛太朗の頭を駆け巡り、何と声を掛けて良いのか分からなくなる。
「あ、ごめん。こんなん言われても困るな」
大きな酒井の背中が丸くなるのを見て、凛太朗の口からとっさに言葉が出た。
「僕が、作ろうか」
自分の口から出た言葉に凛太朗は驚いた。酒井も驚き顔で凛太朗を見てきた。
「は? 凛太朗が、作ってくるの?」
後には引けない想いに駆られて凛太朗は大きく頷いた。
「そうだ。僕が作るから、それを食べたらいいんだ」
凛太朗は料理をしたことが無いけれど、酒井を喜ばせたい一心だった。酒井が嬉しそうにコクリと頷いた。
それを見て、美味しい料理を作ってあげようと凛太朗は決意を固めた。
凛太朗は図書室の日用雑学コーナーに並ぶ本を見つめて呟いた。
隣の酒井は無言で本棚を見つめている。放課後の図書室は利用者がほとんどいない。皆部活動に励む時間だからだ。少しくらい会話をしても迷惑にならなくて助かる。
「うん。すごいなぁ。これ、読まなきゃか。気が滅入るな」
酒井が少し困ったように苦笑いした。酒井のダイエット話は急に上がった話で、本人からやる気を出してのダイエットではない。興味が無ければ本を読む気にもならないのだろう。
「僕と読もうよ。ほら、ダイエットの基本の食事編と運動編を交代でさ」
凛太朗の提案に酒井がこちらを見た。普段前髪に隠れているたれ目が優しく細くなった。
酒井の顔は丸い頬が印象的で目をしっかり見たことは無かったが、涼やかな綺麗な目だと凛太朗は思った。つい、見とれてしまった。
「凛太朗、ありがとう」
凛太朗と目が合ったまま酒井が微笑んだ。ぽっちゃり顔だけど、なぜかカッコいいと思えた。
よく見れば酒井の顔の造りは整っている。酒井は痩せたらイケメンになるのではないか。そんな考えが凛太朗に生まれた。
「うん。そうだな。な、酒井は痩せたらモテるんじゃないか? 身長は高いし、ほら、顔が綺麗だから」
凛太朗は手を伸ばして酒井の重い前髪をすっと分けた。現れた顔の全貌に凛太朗は改めてドキリとした。眉毛と額が出ると顔全体のバランスが分かる。肌がつるりと綺麗で目を引く。
「すご。酒井って、イケメンじゃんか」
凛太朗の素直な感想が漏れた。見る間に酒井の頬が染まっていく。間近でそんな反応を見ると大きな酒井が可愛くて仕方なくなる。
「あ、えっと。離して」
真っ赤になりながら酒井がプルプル震えている。
本当は凛太朗の手を振り払って拒否したいのだろう。だがそうせずに、恥ずかしさに一人耐える酒井は優しい。凛太朗は酒井の豊かな頬を手でムニムニと触って決意を口にした。
「よし! 酒井、僕がカッコよくしてやる!」
気合を入れたため思ったより大きな声になってしまった。しまった、と思い周囲を見渡すと、カウンターの図書委員が凛太朗たちに視線を向けていた。
(騒いですみません)
思いを込めて図書委員にペコリと頭を下げると、隣で酒井も頭を下げていた。
声を出してしまったのは凛太朗なのに一緒に頭を下げてくれて良いヤツだと思った。
酒井は前髪を自分で元に戻して『えへへ』と笑った。それを見て凛太朗も『えへへ』と笑い返した。
その後は読書コーナーで静かに本を交代読みした。凛太朗は食事についての本を読んだ。ダイエットの食事制限は食べない苦しいものだと思っていたのが、バランスよく食べる必要があると分かった。載せてある食事写真は美味しそうに見えた。
「なぁ、酒井。ダイエットの食事って美味しそうだな」
運動の本を読んでいる酒井に声を掛けると、凛太朗の本を覗き込んできた。
「あ、本当だ。こんな食事ならいいな」
「コレを家で作ってもらうとか出来そう?」
料理なら酒井の母に協力してもらう必要がある。そんな気持ちで聞いた。
しかし、酒井は困ったように本から目を逸らした。どうしたのかと凛太朗は不安になった。
「無理かもなぁ。俺んち、父さんだけだし。俺、料理って怖くてできないし」
凛太朗を見ない酒井の様子から触れて欲しくないことだったと分かった。
「俺、小学生の時に火事で母さん亡くしてて」
酒井の言葉に凛太朗は息を飲んだ。思いもしなかった事に驚いて酒井を見つめた。
そう言えば、酒井は毎日購買のパンを買っていて、手作り弁当は見たことが無い。
火事で母親を亡くしているのなら、火が怖くて料理が出来ないのは当然の事だ。もしかして朝昼晩の食事は全て総菜弁当や外食なのかもしれない。想像が凛太朗の頭を駆け巡り、何と声を掛けて良いのか分からなくなる。
「あ、ごめん。こんなん言われても困るな」
大きな酒井の背中が丸くなるのを見て、凛太朗の口からとっさに言葉が出た。
「僕が、作ろうか」
自分の口から出た言葉に凛太朗は驚いた。酒井も驚き顔で凛太朗を見てきた。
「は? 凛太朗が、作ってくるの?」
後には引けない想いに駆られて凛太朗は大きく頷いた。
「そうだ。僕が作るから、それを食べたらいいんだ」
凛太朗は料理をしたことが無いけれど、酒井を喜ばせたい一心だった。酒井が嬉しそうにコクリと頷いた。
それを見て、美味しい料理を作ってあげようと凛太朗は決意を固めた。
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