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Ⅱ ダイエットは食事から!
④
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「凛太朗、帰ろう」
「おう。酒井はどこか寄る?」
「特にないかな。なんで?」
「シャーペンの芯なくなったから文房具店行こうかと思って。一緒にどう?」
「行く。俺も消しゴム買おっかな。ミマツ文具?」
「うん。そのつもり」
雑談をしながら学校から徒歩八分にあるミマツ文具店に向かった。歩くとさすがに暑い。まだ六月だが夏が来たことを感じる。
ミマツ文具店は青春高校生の御用達店だ。広くない店内だが、万年筆、シャープペン、ボールペンといった流行文具とともに分度器やコンパスなど学校で使う基本の文具をバランス良くそろえてある。この店に来れば必要文房具は大体手に入る。
「お、カヴェコ置いてある。やっぱカッコイイ」
「あ、ドイツ製のシャープペン」
「酒井も知ってるんだ。いつか欲しいカヴェコだよ」
「凛太朗はどれが好み?」
「あぁ、このスペシャル。酒井は?」
「クルトガかな」
「持ってる?」
「いや、持ってはいない」
「僕も。カヴェコは憧れなだけ」
ショーケースに飾られているシャープペンを眺めた。一本五千円以上のシャープペンが整然と並んでいる。美しい。
「試し書きする?」
「やめとく。今は見ているだけでいい」
「ふうん。凛太朗は欲しいものに触れなくていいの?」
酒井の言葉が意味深で凛太朗は首を傾げた。
「俺は最近欲しいものが出来たんだ。絶対に手に入れたくて、そのために何でも出来るって思える。俺の灰色の世界に色が戻ったんだ。大切で、ずっと俺だけが触れていたいんだよね」
低く芯の通った声に聞き入った。酒井の欲の部分に触れた気がした。凛太朗の胸がドキリとした。
「酒井の欲しい物って、なに?」
疑問を口にしてみて、これは聞いて良いのだろうか、と不安になった。酒井がゆっくりと凛太朗を見た。その動きがスローモーションのように脳に焼き付く。
「……まだ、内緒」
静かな言葉が耳に届く。
酒井の瞳は真っすぐに凛太朗を見つめていた。その視線だけで心臓が飛び出そうな錯覚がした。ショーケースの中の高級シャープペンより、ぽっちゃりした酒井の顔が輝いていた。
(やっぱり顎がシャープになった。そのせいで見え方が変わったんだ)
不思議な感覚をどう扱って良いのか分からず、凛太朗は酒井が痩せたからだと考えることにした。よく分からない胸の高鳴りにひたすら首を傾げながら、シャープペンの芯を購入した。酒井は白い消しゴムを二つ購入していた。
「じゃ、また明日」
「おう、じゃな」
酒井と一緒にバスに乗り駅で別れる。これが凛太郎の日常になっていた。
「凛太朗」
呼び止められて振り向いた。
「俺、ご褒美デート決めた」
「お、どこ行きたい?」
「ゲームフェスタランド」
「は? どこの?」
「Y県」
「マジ? 最大級のとこじゃん。行ってみたいと思っていたんだ。けど、ちょっと待てよ。電車代とか、色々考えるわ」
「それは俺が出す。弁当を作ってもらっているお礼がしたいんだ」
「まてまて、金額が高すぎだろ」
「大丈夫だ。昼食代で父さんに渡されているお金がある。ここ一か月、使っていない。これは凛太朗の金だ」
「弁当に使っている食材は母さんが買い物ついでに買ってくれていて、そんなにお金かかっていないって言っていたけど」
「いや、弁当作る労力とか考えると、もっともっと凛太朗に返したい」
酒井は律儀な奴だと凛太朗は思った。もしかしたら酒井は食事代とかいろいろな事を気にしていたのかもしれない。そう思うと酒井の考え通りにしてあげるのも優しさかな、と思った。
「わかった。じゃ、甘えるわ。遠出じゃん。わくわくするな!」
「うん。じゃ、土曜日でいい?」
「おう。日帰りだから早く出ような」
「オッケ」
週末が楽しみだと言い合って酒井と別れた。
ゲーム好きとして、一度は行ってみたかったゲームフェスタランドを思うとテンションが上がった。
ただ、凛太朗がハマっている学園恋愛ゲームコーナーは寄れないな、と思った。そう考えて、酒井はどんなゲームをしているのか疑問が湧いた。
以前にゲームの話をした時には上手くごまかされてしまった。結局スイッチをしていることしか知らない。そんなでゲームフェスタランドを楽しめるのだろうか。
酒井は食べ物に関して執着が無かった。食べられれば何でもいい主義だった。最近は少し変わったが。もしかしたらゲームに関しても、食べ物と同様に、時間さえ潰せれば何でもいいと思っているのかもしれない。
酒井の事を考えるとどこまでも妄想が広がっていく。恋愛ゲームをするより長い時間、考え込んでしまうこともある。そんな自分がおかしいと思う。いや、凛太朗がおかしいのではなく、酒井が不思議な魅力を持っているからだ、と自分を納得させた。
凛太朗の中で酒井の存在が特別なものになっている気がした。
(落ち着いていて、どっしりしていて。そっか。どっしりはデカいからか。で、時々、ハッとするほど、カッコイイ、かな。ぽっちゃり酒井にカッコイイは変な気もするな。でも、時々、すごい目をするんだよな。射貫かれそうな。心臓を掴まれたようにギュンってなるし。あ、酒井の欲しい物って何だろ。あの時の酒井も、すごかった)
考えていると机の上に用意した麦茶の氷がカランと音をたてた。コップを見れば水滴で濡れている。
汗かき麦茶を見て凛太朗は頬を緩めた。
(ゲームフェスタランドの事を考えていたはずなのに、酒井の事ばっかだ。僕はアホか)
薄くなった麦茶を飲んで、そんな自分を少し笑った。
「おう。酒井はどこか寄る?」
「特にないかな。なんで?」
「シャーペンの芯なくなったから文房具店行こうかと思って。一緒にどう?」
「行く。俺も消しゴム買おっかな。ミマツ文具?」
「うん。そのつもり」
雑談をしながら学校から徒歩八分にあるミマツ文具店に向かった。歩くとさすがに暑い。まだ六月だが夏が来たことを感じる。
ミマツ文具店は青春高校生の御用達店だ。広くない店内だが、万年筆、シャープペン、ボールペンといった流行文具とともに分度器やコンパスなど学校で使う基本の文具をバランス良くそろえてある。この店に来れば必要文房具は大体手に入る。
「お、カヴェコ置いてある。やっぱカッコイイ」
「あ、ドイツ製のシャープペン」
「酒井も知ってるんだ。いつか欲しいカヴェコだよ」
「凛太朗はどれが好み?」
「あぁ、このスペシャル。酒井は?」
「クルトガかな」
「持ってる?」
「いや、持ってはいない」
「僕も。カヴェコは憧れなだけ」
ショーケースに飾られているシャープペンを眺めた。一本五千円以上のシャープペンが整然と並んでいる。美しい。
「試し書きする?」
「やめとく。今は見ているだけでいい」
「ふうん。凛太朗は欲しいものに触れなくていいの?」
酒井の言葉が意味深で凛太朗は首を傾げた。
「俺は最近欲しいものが出来たんだ。絶対に手に入れたくて、そのために何でも出来るって思える。俺の灰色の世界に色が戻ったんだ。大切で、ずっと俺だけが触れていたいんだよね」
低く芯の通った声に聞き入った。酒井の欲の部分に触れた気がした。凛太朗の胸がドキリとした。
「酒井の欲しい物って、なに?」
疑問を口にしてみて、これは聞いて良いのだろうか、と不安になった。酒井がゆっくりと凛太朗を見た。その動きがスローモーションのように脳に焼き付く。
「……まだ、内緒」
静かな言葉が耳に届く。
酒井の瞳は真っすぐに凛太朗を見つめていた。その視線だけで心臓が飛び出そうな錯覚がした。ショーケースの中の高級シャープペンより、ぽっちゃりした酒井の顔が輝いていた。
(やっぱり顎がシャープになった。そのせいで見え方が変わったんだ)
不思議な感覚をどう扱って良いのか分からず、凛太朗は酒井が痩せたからだと考えることにした。よく分からない胸の高鳴りにひたすら首を傾げながら、シャープペンの芯を購入した。酒井は白い消しゴムを二つ購入していた。
「じゃ、また明日」
「おう、じゃな」
酒井と一緒にバスに乗り駅で別れる。これが凛太郎の日常になっていた。
「凛太朗」
呼び止められて振り向いた。
「俺、ご褒美デート決めた」
「お、どこ行きたい?」
「ゲームフェスタランド」
「は? どこの?」
「Y県」
「マジ? 最大級のとこじゃん。行ってみたいと思っていたんだ。けど、ちょっと待てよ。電車代とか、色々考えるわ」
「それは俺が出す。弁当を作ってもらっているお礼がしたいんだ」
「まてまて、金額が高すぎだろ」
「大丈夫だ。昼食代で父さんに渡されているお金がある。ここ一か月、使っていない。これは凛太朗の金だ」
「弁当に使っている食材は母さんが買い物ついでに買ってくれていて、そんなにお金かかっていないって言っていたけど」
「いや、弁当作る労力とか考えると、もっともっと凛太朗に返したい」
酒井は律儀な奴だと凛太朗は思った。もしかしたら酒井は食事代とかいろいろな事を気にしていたのかもしれない。そう思うと酒井の考え通りにしてあげるのも優しさかな、と思った。
「わかった。じゃ、甘えるわ。遠出じゃん。わくわくするな!」
「うん。じゃ、土曜日でいい?」
「おう。日帰りだから早く出ような」
「オッケ」
週末が楽しみだと言い合って酒井と別れた。
ゲーム好きとして、一度は行ってみたかったゲームフェスタランドを思うとテンションが上がった。
ただ、凛太朗がハマっている学園恋愛ゲームコーナーは寄れないな、と思った。そう考えて、酒井はどんなゲームをしているのか疑問が湧いた。
以前にゲームの話をした時には上手くごまかされてしまった。結局スイッチをしていることしか知らない。そんなでゲームフェスタランドを楽しめるのだろうか。
酒井は食べ物に関して執着が無かった。食べられれば何でもいい主義だった。最近は少し変わったが。もしかしたらゲームに関しても、食べ物と同様に、時間さえ潰せれば何でもいいと思っているのかもしれない。
酒井の事を考えるとどこまでも妄想が広がっていく。恋愛ゲームをするより長い時間、考え込んでしまうこともある。そんな自分がおかしいと思う。いや、凛太朗がおかしいのではなく、酒井が不思議な魅力を持っているからだ、と自分を納得させた。
凛太朗の中で酒井の存在が特別なものになっている気がした。
(落ち着いていて、どっしりしていて。そっか。どっしりはデカいからか。で、時々、ハッとするほど、カッコイイ、かな。ぽっちゃり酒井にカッコイイは変な気もするな。でも、時々、すごい目をするんだよな。射貫かれそうな。心臓を掴まれたようにギュンってなるし。あ、酒井の欲しい物って何だろ。あの時の酒井も、すごかった)
考えていると机の上に用意した麦茶の氷がカランと音をたてた。コップを見れば水滴で濡れている。
汗かき麦茶を見て凛太朗は頬を緩めた。
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