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Ⅲ ダイエットには運動も!
①
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「酒井、夏休みはどうする?」
七月に入り凛太朗は心配していることを聞いた。
これまで酒井が順調にダイエット出来ていたのは凛太朗と居たからだ。昼食弁当を凛太朗が準備することで酒井の意欲を上げていたのは明らかだ。それが夏休みに入ってリズムが崩れたら、またパン食生活に戻ってリバウンドする可能性がある。
「うん。まぁ……、うん」
酒井が困ったように笑った。
それを見てきっと酒井も悩んでいると察した。だから考えていた夏休みプランを提案した。
「じゃ、夏休みの宿題を毎日一緒にするのはどう? 僕の出来立て昼食付き」
提案すると目を見開いて酒井が飛びついてきた。
「マジ? いいの? 夏休みも毎日凛太朗に会えるのか? 飯、作ってくれるのか?」
酒井が興奮したように矢継ぎ早に話した。いつもはゆったり口調なのに、そんなところが可愛いなぁと凛太朗は微笑んだ。
「もちろん」
「さいっこう! 夏休みバンザイ!」
満面の笑みを浮かべる酒井の頬が、また小さくなった。毎日見ていて凛太朗が分かるのだから、酒井は本当に努力しているのだろう。
後姿の線だって明らかにスマートになっている。それに学校で酒井が思いっきり笑うようになった。クラスの中で薄ぼんやりした存在だった酒井の印象が変わりつつある。
そんな酒井に時々クラスメイトが目線を飛ばしているのも凛太朗は分かっている。「最近、酒井、変わったよな」そんな声が聞こえると、凛太郎の心にモヤモヤしたものが生まれる。
(酒井を見るな!)
イライラしながら(ファッティ酒井と笑ったのは誰だよ!)と毒づきたくなる。
正面にいる酒井の顔を改めて見れば、頬が引き締まり、普通より少しガタイが良い程度の体格になっている。もうデブの分類では無い。
「な、酒井。もしかして、十キロは痩せた?」
何となくそんな気がして凛太朗が聞いた。
「惜しいんだ。今、九キロ。あと一息でご褒美なんだけど」
まさかのマイナス十キロ手前まで来ていることにびっくりした。
「すごいなぁ。じゃ、次のご褒美は僕がおごろうかな」
「いやいや、俺が尽くすから」
酒井の表現に凛太朗はブっと吹き出した。
「尽くすって、ご褒美なのに?」
「いいの!」
奢ると言っているのだから喜べばいいのに、酒井は結構頑固だよなぁと思う。
「ねぇ、酒井君。ちょっとぉ、手伝ってほしくてぇ」
急に声が掛けられて凛太朗は目を見開いて声の方を見た。
そこには軽く化粧をした愛らしい女子二人が居た。彼女たちを見た瞬間に凛太朗にイラつきが生まれた。酒井と二人で過ごしている時に声を掛けるなど、失礼極まりない。ムカついて仕方がない。口を開いたらトゲのある言葉が出そうで、凛太朗は唇を噛んで下を向いた。
「えっと、俺で良いの?」
いつもより緊張した酒井の声音が聞こえる。
(ふざけんな! 何カッコつけた声出してんだよ。何が『俺で良いの?』だよ! 断れよ!)
めちゃくちゃに腹が立って凛太朗は膝の上の拳を握りしめた。
「うん。ポスターの張替えするんだけどぉ、高くて手が届かなくてぇ」
高い声の彼女たちにツッコみを入れたかった。
(お前らはいつもギャアギャアデカい声で騒いでいるだろ⁉ ぶりっ子すんなよ)
凛太朗のイラつきなど気にせず彼女たちが黄色い声を放つ。
「ほらぁ、酒井君は背ぇ高いじゃん。お願いしても良い?」
その瞬間の彼女たちを見てしまった。上目使いの顔を見て凛太朗の怒りが頂点に達した。
「僕が、手伝おうか。学級委員だし」
そう言ってから、少しの間があった。そして彼女たちの大爆笑が起きた。
「うっそでしょ! 話きいてたぁ? ウケるんだけど! 風見君の背じゃ無理、無理ぃ」
「もう、冗談キツイってぇ」
そう笑われて凛太朗は顔面から火が出そうなほど恥ずかしくなった。
彼女たちと凛太朗の背はほとんど変わらない。変な事を言った自分が情けない。何も言えずにワナワナ震える凛太朗の肩に大きな手が乗った。見上げれば、酒井が凛太朗を背後に隠すように立っていた。
「やるよ。どこ?」
静かな酒井の声だった。静かなのに強さがある声で、その場の笑いが収まった。
「あ、えっとぉ。こっちぃ」
凛太朗は彼女たちと歩く酒井を見送った。
教室から酒井たちの姿が見えなくなると、凛太朗は机に突っ伏した。悲しいような情けない気持ちで涙が滲んだ。自分の頬をビンタしたい気持ちだった。
七月に入り凛太朗は心配していることを聞いた。
これまで酒井が順調にダイエット出来ていたのは凛太朗と居たからだ。昼食弁当を凛太朗が準備することで酒井の意欲を上げていたのは明らかだ。それが夏休みに入ってリズムが崩れたら、またパン食生活に戻ってリバウンドする可能性がある。
「うん。まぁ……、うん」
酒井が困ったように笑った。
それを見てきっと酒井も悩んでいると察した。だから考えていた夏休みプランを提案した。
「じゃ、夏休みの宿題を毎日一緒にするのはどう? 僕の出来立て昼食付き」
提案すると目を見開いて酒井が飛びついてきた。
「マジ? いいの? 夏休みも毎日凛太朗に会えるのか? 飯、作ってくれるのか?」
酒井が興奮したように矢継ぎ早に話した。いつもはゆったり口調なのに、そんなところが可愛いなぁと凛太朗は微笑んだ。
「もちろん」
「さいっこう! 夏休みバンザイ!」
満面の笑みを浮かべる酒井の頬が、また小さくなった。毎日見ていて凛太朗が分かるのだから、酒井は本当に努力しているのだろう。
後姿の線だって明らかにスマートになっている。それに学校で酒井が思いっきり笑うようになった。クラスの中で薄ぼんやりした存在だった酒井の印象が変わりつつある。
そんな酒井に時々クラスメイトが目線を飛ばしているのも凛太朗は分かっている。「最近、酒井、変わったよな」そんな声が聞こえると、凛太郎の心にモヤモヤしたものが生まれる。
(酒井を見るな!)
イライラしながら(ファッティ酒井と笑ったのは誰だよ!)と毒づきたくなる。
正面にいる酒井の顔を改めて見れば、頬が引き締まり、普通より少しガタイが良い程度の体格になっている。もうデブの分類では無い。
「な、酒井。もしかして、十キロは痩せた?」
何となくそんな気がして凛太朗が聞いた。
「惜しいんだ。今、九キロ。あと一息でご褒美なんだけど」
まさかのマイナス十キロ手前まで来ていることにびっくりした。
「すごいなぁ。じゃ、次のご褒美は僕がおごろうかな」
「いやいや、俺が尽くすから」
酒井の表現に凛太朗はブっと吹き出した。
「尽くすって、ご褒美なのに?」
「いいの!」
奢ると言っているのだから喜べばいいのに、酒井は結構頑固だよなぁと思う。
「ねぇ、酒井君。ちょっとぉ、手伝ってほしくてぇ」
急に声が掛けられて凛太朗は目を見開いて声の方を見た。
そこには軽く化粧をした愛らしい女子二人が居た。彼女たちを見た瞬間に凛太朗にイラつきが生まれた。酒井と二人で過ごしている時に声を掛けるなど、失礼極まりない。ムカついて仕方がない。口を開いたらトゲのある言葉が出そうで、凛太朗は唇を噛んで下を向いた。
「えっと、俺で良いの?」
いつもより緊張した酒井の声音が聞こえる。
(ふざけんな! 何カッコつけた声出してんだよ。何が『俺で良いの?』だよ! 断れよ!)
めちゃくちゃに腹が立って凛太朗は膝の上の拳を握りしめた。
「うん。ポスターの張替えするんだけどぉ、高くて手が届かなくてぇ」
高い声の彼女たちにツッコみを入れたかった。
(お前らはいつもギャアギャアデカい声で騒いでいるだろ⁉ ぶりっ子すんなよ)
凛太朗のイラつきなど気にせず彼女たちが黄色い声を放つ。
「ほらぁ、酒井君は背ぇ高いじゃん。お願いしても良い?」
その瞬間の彼女たちを見てしまった。上目使いの顔を見て凛太朗の怒りが頂点に達した。
「僕が、手伝おうか。学級委員だし」
そう言ってから、少しの間があった。そして彼女たちの大爆笑が起きた。
「うっそでしょ! 話きいてたぁ? ウケるんだけど! 風見君の背じゃ無理、無理ぃ」
「もう、冗談キツイってぇ」
そう笑われて凛太朗は顔面から火が出そうなほど恥ずかしくなった。
彼女たちと凛太朗の背はほとんど変わらない。変な事を言った自分が情けない。何も言えずにワナワナ震える凛太朗の肩に大きな手が乗った。見上げれば、酒井が凛太朗を背後に隠すように立っていた。
「やるよ。どこ?」
静かな酒井の声だった。静かなのに強さがある声で、その場の笑いが収まった。
「あ、えっとぉ。こっちぃ」
凛太朗は彼女たちと歩く酒井を見送った。
教室から酒井たちの姿が見えなくなると、凛太朗は机に突っ伏した。悲しいような情けない気持ちで涙が滲んだ。自分の頬をビンタしたい気持ちだった。
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