真面目学級委員がファッティ男子を徹底管理した結果⁉

小池 月

文字の大きさ
11 / 53
Ⅲ ダイエットには運動も!

しおりを挟む
「酒井、夏休みはどうする?」

 七月に入り凛太朗は心配していることを聞いた。

 これまで酒井が順調にダイエット出来ていたのは凛太朗と居たからだ。昼食弁当を凛太朗が準備することで酒井の意欲を上げていたのは明らかだ。それが夏休みに入ってリズムが崩れたら、またパン食生活に戻ってリバウンドする可能性がある。

「うん。まぁ……、うん」
  酒井が困ったように笑った。

  それを見てきっと酒井も悩んでいると察した。だから考えていた夏休みプランを提案した。
「じゃ、夏休みの宿題を毎日一緒にするのはどう? 僕の出来立て昼食付き」

 提案すると目を見開いて酒井が飛びついてきた。
「マジ? いいの? 夏休みも毎日凛太朗に会えるのか? 飯、作ってくれるのか?」
 酒井が興奮したように矢継ぎ早に話した。いつもはゆったり口調なのに、そんなところが可愛いなぁと凛太朗は微笑んだ。

「もちろん」
「さいっこう! 夏休みバンザイ!」

 満面の笑みを浮かべる酒井の頬が、また小さくなった。毎日見ていて凛太朗が分かるのだから、酒井は本当に努力しているのだろう。
 後姿の線だって明らかにスマートになっている。それに学校で酒井が思いっきり笑うようになった。クラスの中で薄ぼんやりした存在だった酒井の印象が変わりつつある。

 そんな酒井に時々クラスメイトが目線を飛ばしているのも凛太朗は分かっている。「最近、酒井、変わったよな」そんな声が聞こえると、凛太郎の心にモヤモヤしたものが生まれる。

(酒井を見るな!)
 イライラしながら(ファッティ酒井と笑ったのは誰だよ!)と毒づきたくなる。

 正面にいる酒井の顔を改めて見れば、頬が引き締まり、普通より少しガタイが良い程度の体格になっている。もうデブの分類では無い。

「な、酒井。もしかして、十キロは痩せた?」
 何となくそんな気がして凛太朗が聞いた。

「惜しいんだ。今、九キロ。あと一息でご褒美なんだけど」
 まさかのマイナス十キロ手前まで来ていることにびっくりした。

「すごいなぁ。じゃ、次のご褒美は僕がおごろうかな」
「いやいや、俺が尽くすから」

 酒井の表現に凛太朗はブっと吹き出した。
「尽くすって、ご褒美なのに?」
「いいの!」

 奢ると言っているのだから喜べばいいのに、酒井は結構頑固だよなぁと思う。

「ねぇ、酒井君。ちょっとぉ、手伝ってほしくてぇ」
 急に声が掛けられて凛太朗は目を見開いて声の方を見た。

 そこには軽く化粧をした愛らしい女子二人が居た。彼女たちを見た瞬間に凛太朗にイラつきが生まれた。酒井と二人で過ごしている時に声を掛けるなど、失礼極まりない。ムカついて仕方がない。口を開いたらトゲのある言葉が出そうで、凛太朗は唇を噛んで下を向いた。

「えっと、俺で良いの?」
 いつもより緊張した酒井の声音が聞こえる。

(ふざけんな! 何カッコつけた声出してんだよ。何が『俺で良いの?』だよ! 断れよ!)

 めちゃくちゃに腹が立って凛太朗は膝の上の拳を握りしめた。

「うん。ポスターの張替えするんだけどぉ、高くて手が届かなくてぇ」
 高い声の彼女たちにツッコみを入れたかった。

(お前らはいつもギャアギャアデカい声で騒いでいるだろ⁉ ぶりっ子すんなよ)
 凛太朗のイラつきなど気にせず彼女たちが黄色い声を放つ。

「ほらぁ、酒井君は背ぇ高いじゃん。お願いしても良い?」
 その瞬間の彼女たちを見てしまった。上目使いの顔を見て凛太朗の怒りが頂点に達した。

「僕が、手伝おうか。学級委員だし」
 そう言ってから、少しの間があった。そして彼女たちの大爆笑が起きた。

「うっそでしょ! 話きいてたぁ? ウケるんだけど! 風見君の背じゃ無理、無理ぃ」
「もう、冗談キツイってぇ」

 そう笑われて凛太朗は顔面から火が出そうなほど恥ずかしくなった。

 彼女たちと凛太朗の背はほとんど変わらない。変な事を言った自分が情けない。何も言えずにワナワナ震える凛太朗の肩に大きな手が乗った。見上げれば、酒井が凛太朗を背後に隠すように立っていた。

「やるよ。どこ?」
 静かな酒井の声だった。静かなのに強さがある声で、その場の笑いが収まった。

「あ、えっとぉ。こっちぃ」
 凛太朗は彼女たちと歩く酒井を見送った。

 教室から酒井たちの姿が見えなくなると、凛太朗は机に突っ伏した。悲しいような情けない気持ちで涙が滲んだ。自分の頬をビンタしたい気持ちだった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~

水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。 アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。 氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。 「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」 辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。 これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!

相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~

柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】 人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。 その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。 完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。 ところがある日。 篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。 「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」 一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。 いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。 合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

処理中です...