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Ⅲ ダイエットには運動も!
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「凛太朗、先に帰るなよ」
放課後、靴箱に追いついてきた酒井に声を掛けられた。今日は気持ちが落ち込んでしまって、凛太朗は酒井と一緒に帰る気分ではなかった。
「あぁ、うん……ちょっと用事が、あるから」
適当に胡麻化して一人になりたいと思った。
「昼休みの、その、ごめん」
突然の謝罪にチラリと酒井を見れば困った顔をしていた。
酒井が困る事でも、謝る事でもないだろう。凛太朗は大きく呼吸をして靴を履き替えた。慌てたように酒井が靴を履き替えるのを横目に見た。
「酒井が、気にする事でもないだろ」
「それでも、ごめん。こっちを、向いてよ……」
今にも泣きそうな声にハッとして酒井を見た。酒井は大きな肩を丸めて絶望と言うのが相応しい顔をしていた。
「な、なに? 調子悪い?」
驚いてしまい凛太朗の口から体調を案ずる言葉が出ていた。すると重い前髪に隠れた目から涙がポロリとこぼれ落ちた。びっくりして凛太朗は静止した。
「凛太朗に、嫌われたくない」
小さな声がした。その酒井の言葉に凛太朗の身体の奥がキュンとした。
酒井を悩ませているのが自分だと知った途端、凛太朗のモヤモヤした気持ちが晴れた。よく分からない幸福感が凛太朗に満ちた。
「バッカだな。僕が酒井を嫌うワケないだろ?」
酒井の顔を覗き込んでニカっと笑えば、酒井は不安そうな瞳を凛太朗に向けた。この表情だけで、凛太朗は全てがどうでも良くなってしまった。
「マジで、酒井が気にする事じゃねーよ」
「……ほんとに?」
「うん。ほら、一緒に帰るぞ!」
酒井の背中をグイっと押した。酒井は袖で顔を拭ってニカッと笑った。その顔を見て凛太朗の心がズキリと痛んだ。
きっと自分は酒井に嫉妬してしまったのだろう。女子に声を掛けられて羨ましく思ったのだ。そう考えて、果たして本当にそうなのだろうか、と疑問が生じる。しかし、そんな凛太朗自身の問題で酒井を苦しめてしまった後悔が押し寄せた。
「帰りに駅前のコーヒー奢る。ソイラテでどう?」
凛太朗の提案に酒井が嬉しそうに頷いた。頬が薄く染まっている。こんな酒井を知っているのは自分だけだ。クラスの女子は知らないだろう。そう考えると凛太朗は溜飲が下る思いがした。
一緒に駅までのバスに揺られながら、凛太朗は酒井に聞いた。
「酒井、もしかして涙もろい?」
酒井は恥ずかしそうに頭をかいた。
「いや、そんなことは……。まさか涙が零れるとは」
「ふうん。酒井は感情が豊かなんだな」
「は? えぇ? 俺って、そうなの?」
「あ、でも怒るところは見てないか」
凛太朗が笑うと酒井は首をかしげていた。
「俺、母さん死んでから泣いたこと無い、かも。そういえば、口を開けて笑うことも。凛太朗と仲良くなって、自分でも驚くことばっかだ」
「へぇ。そっか」
酒井が自分の変化に気付いているのが嬉しくて凛太朗は返事をしながら頬が緩んだ。この変化を知っているのは凛太朗と酒井自身だけだ。なんだか心がホワッとして隣の酒井に少し寄りかかってみた。逞しい身体にふふっと笑いがもれる。
「り、凛太朗? いやいや、バスの中、だからね」
酒井の緊張が身体越しに伝わってくる。しかし、何のことだかわからない。首をかしげて酒井を見上げた。
「新幹線の時みたく、大胆行動は、マズいよ?」
落ち着け、とでも言いたげに手を動かす酒井にポカンとしてしまった。凛太朗はご褒美旅行の新幹線を思い出した。胸筋が固い、と揉みもみした件だ。
「ブハ! あの事件か! それはさすがに、ここでは、なぁ」
言いながら思い出し笑いが止まらなくなった。凛太朗が笑うと酒井も笑い出した。二人で堪えながら笑う姿は目立って居たかも知れない。
笑いながら凛太朗は、自分もこれほど感情を出すことは、これまで無かったなぁと思った。 気まずかったはずが、少しの時間でまた笑い合えて凛太朗はホッとした。酒井と居ることで淡々とした日常が大きく波打つようになっているなぁと思った。
それからは大きな波は無く、夏休みに突入した。
凛太朗は夏休みでやりたいことができた。顔が締まって頬がスッキリした酒井の髪型を変えることだ。凛太朗がいつも散髪している安い床屋でいいから連れて行こうと思っている。
髪型を変えたら、キリッとした眉毛が目立つだろう。ドキリとするほど垂れ目の優しい目が見えたら、みんな振り返るだろう。そんな酒井とお出かけするのを考えるとワクワクする。
(はやく二回目のご褒美にならないかなぁ)
いつのまにか凛太朗にとってご褒美お出かけが楽しみになっていた。
(酒井より僕の方が楽しみにしていたりして)
そんなことを考えるとくすぐったくて温かい気持ちになった。
放課後、靴箱に追いついてきた酒井に声を掛けられた。今日は気持ちが落ち込んでしまって、凛太朗は酒井と一緒に帰る気分ではなかった。
「あぁ、うん……ちょっと用事が、あるから」
適当に胡麻化して一人になりたいと思った。
「昼休みの、その、ごめん」
突然の謝罪にチラリと酒井を見れば困った顔をしていた。
酒井が困る事でも、謝る事でもないだろう。凛太朗は大きく呼吸をして靴を履き替えた。慌てたように酒井が靴を履き替えるのを横目に見た。
「酒井が、気にする事でもないだろ」
「それでも、ごめん。こっちを、向いてよ……」
今にも泣きそうな声にハッとして酒井を見た。酒井は大きな肩を丸めて絶望と言うのが相応しい顔をしていた。
「な、なに? 調子悪い?」
驚いてしまい凛太朗の口から体調を案ずる言葉が出ていた。すると重い前髪に隠れた目から涙がポロリとこぼれ落ちた。びっくりして凛太朗は静止した。
「凛太朗に、嫌われたくない」
小さな声がした。その酒井の言葉に凛太朗の身体の奥がキュンとした。
酒井を悩ませているのが自分だと知った途端、凛太朗のモヤモヤした気持ちが晴れた。よく分からない幸福感が凛太朗に満ちた。
「バッカだな。僕が酒井を嫌うワケないだろ?」
酒井の顔を覗き込んでニカっと笑えば、酒井は不安そうな瞳を凛太朗に向けた。この表情だけで、凛太朗は全てがどうでも良くなってしまった。
「マジで、酒井が気にする事じゃねーよ」
「……ほんとに?」
「うん。ほら、一緒に帰るぞ!」
酒井の背中をグイっと押した。酒井は袖で顔を拭ってニカッと笑った。その顔を見て凛太朗の心がズキリと痛んだ。
きっと自分は酒井に嫉妬してしまったのだろう。女子に声を掛けられて羨ましく思ったのだ。そう考えて、果たして本当にそうなのだろうか、と疑問が生じる。しかし、そんな凛太朗自身の問題で酒井を苦しめてしまった後悔が押し寄せた。
「帰りに駅前のコーヒー奢る。ソイラテでどう?」
凛太朗の提案に酒井が嬉しそうに頷いた。頬が薄く染まっている。こんな酒井を知っているのは自分だけだ。クラスの女子は知らないだろう。そう考えると凛太朗は溜飲が下る思いがした。
一緒に駅までのバスに揺られながら、凛太朗は酒井に聞いた。
「酒井、もしかして涙もろい?」
酒井は恥ずかしそうに頭をかいた。
「いや、そんなことは……。まさか涙が零れるとは」
「ふうん。酒井は感情が豊かなんだな」
「は? えぇ? 俺って、そうなの?」
「あ、でも怒るところは見てないか」
凛太朗が笑うと酒井は首をかしげていた。
「俺、母さん死んでから泣いたこと無い、かも。そういえば、口を開けて笑うことも。凛太朗と仲良くなって、自分でも驚くことばっかだ」
「へぇ。そっか」
酒井が自分の変化に気付いているのが嬉しくて凛太朗は返事をしながら頬が緩んだ。この変化を知っているのは凛太朗と酒井自身だけだ。なんだか心がホワッとして隣の酒井に少し寄りかかってみた。逞しい身体にふふっと笑いがもれる。
「り、凛太朗? いやいや、バスの中、だからね」
酒井の緊張が身体越しに伝わってくる。しかし、何のことだかわからない。首をかしげて酒井を見上げた。
「新幹線の時みたく、大胆行動は、マズいよ?」
落ち着け、とでも言いたげに手を動かす酒井にポカンとしてしまった。凛太朗はご褒美旅行の新幹線を思い出した。胸筋が固い、と揉みもみした件だ。
「ブハ! あの事件か! それはさすがに、ここでは、なぁ」
言いながら思い出し笑いが止まらなくなった。凛太朗が笑うと酒井も笑い出した。二人で堪えながら笑う姿は目立って居たかも知れない。
笑いながら凛太朗は、自分もこれほど感情を出すことは、これまで無かったなぁと思った。 気まずかったはずが、少しの時間でまた笑い合えて凛太朗はホッとした。酒井と居ることで淡々とした日常が大きく波打つようになっているなぁと思った。
それからは大きな波は無く、夏休みに突入した。
凛太朗は夏休みでやりたいことができた。顔が締まって頬がスッキリした酒井の髪型を変えることだ。凛太朗がいつも散髪している安い床屋でいいから連れて行こうと思っている。
髪型を変えたら、キリッとした眉毛が目立つだろう。ドキリとするほど垂れ目の優しい目が見えたら、みんな振り返るだろう。そんな酒井とお出かけするのを考えるとワクワクする。
(はやく二回目のご褒美にならないかなぁ)
いつのまにか凛太朗にとってご褒美お出かけが楽しみになっていた。
(酒井より僕の方が楽しみにしていたりして)
そんなことを考えるとくすぐったくて温かい気持ちになった。
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