真面目学級委員がファッティ男子を徹底管理した結果⁉

小池 月

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Ⅲ ダイエットには運動も!

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「いただきます!」
「どうぞ、召し上がれ」

 家族ごっこのように食事の挨拶をして笑い合った。餃子が冷めないうちに、と大急ぎで食事の準備をして席に着いた。挨拶をして直ぐに餃子を食べる酒井が可愛いなぁと思う。

「今日の餃子は豆腐でカロリーダウンしてるから少しくらい食べ過ぎてもいいよ」
「凛太朗、良い嫁だ・・・・・・」

「ははは。夫の栄養管理ができる良い嫁だろ? ってか生野菜も食えよ」
「もちろん食べるって。だけどさ、出来たての美味さを味わいたいじゃん」

「ま、そっっか。じゃ、明日から野菜を先に出す」
「なんで?」

「本に書いてあっただろ? 食事始める少し前に野菜を食べろって」
「あぁ、ベジファースト」

「そうそれ」
「夏休みは生野菜を付けるつもり。食えよ?」

「もちろん。ありがとな」
 感謝の言葉に凛太郎は「ん」と頷いた。我ながら餃子が美味く焼けたと思いながら口に運んだ。

「酒井がダイエット初めて二ヶ月か」
「そう。ん? 意外と日が浅い」

「だよな。この期間に九キロも落として体調は大丈夫なのか?」
 凛太朗は気になっていたことを聞いた。ダイエットの本には急激に痩せないように書かれているが、どう見ても酒井はハイペースに体重を落としている。

「良いんじゃない? 俺、食べないダイエットはしていないし」
「無理だけはして欲しくなくて。酒井が苦しいのは、嫌だから」

 心から思っていることを伝えた。

 もともと酒井は自分の体型が不満でダイエットに取り組んでいるわけではない。凛太朗の勝手な思いで強制させていたら、と不安だった。だからこそ酒井に苦しいダイエットをして欲しくない。

「凛太朗、俺は次の十キロご褒美に向けて猛進中」
 酒井は良く噛んで食べている。ダイエットの本に咀嚼を多くして満腹感を高めるようにかかれていたのを毎日実行している。
(やる気になったら、酒井は凄いやつなんだな)

「えっと、凛太朗は、その、嫌になってない?」
 食事をしながら不安そうに酒井が聞いてきた。

 凛太朗には一体何の話なのか分からず首を傾げた。以前に話した料理の時間のことだろうか。それはちゃんと説明したはずだ。他には、金銭面の事はゲームフェスタランドを全おごりしてもらいチャラにしたはず。
 酒井の意図が読めずに反対側に首を傾げた。

「だから、昼飯準備してもらうとか、どう考えても俺が甘えすぎているから、嫌々になっているなら、無理しなくても……」
「嫌じゃないよ」

 酒井の言葉を遮るように言っていた。そんな自分に驚きながらも、凛太朗は続けた。

「あのさ、僕は楽しいんだ。これまで一緒に過ごす友達は居なかったし。それが、笑ったり冗談言えて、結構嬉しくなってる」
「凛太朗……」
 下を向いていた酒井が顔を上げた。

「そうだ、酒井。僕の事は野球部のマネージャーとでも思えば良いんだ」
「マネージャー?」

「そう。野球部のマネージャーが選手のために頑張るのって嫌々じゃないだろ。僕にはその気持ちが分かる。頑張っている選手の夢を叶える手伝いがしたいんだ。その頑張りを支えたいんだ。僕も、そういう事」
 酒井が少し考える様子を見せてニコリとする。凛太朗の思いが伝わったと思うとホッとした。

「すごく、いい。凛太朗がマネージャーの恰好して、頑張って、とか言ってくれるのか。それは、イイ」
「はぁ⁉」

 何を想像したのか照れている酒井を見て驚きの声が出てしまった。酒井がハッとして「何でもない!」と焦るから余計に怪しくなる。

「待て、お前、何を考えてんだ」
 凛太朗は半目にして酒井を睨んだ。

「違うって! あ、凛太朗は家だと眼鏡かけない?」
 急な話題の変化に『逃げたな』と思いながらも、慌てている酒井に合わせることにした。

「うん。目は悪くないから」
「じゃ、なんで眼鏡?」

「だから、僕は顔が幼いんだ。中学生に間違われることだってあるし。大人っぽく、だよ」
 酒井が顔を覗くように見てくる。その視線を受け止めきれずに凛太朗はフイっと横を向いた。

「眼鏡、無い方が、いい」
「はぁ?」

 酒井の意味不明な言葉に再び驚きの声が出てしまった。どんな感性をしているんだよ、とツッコミを入れたくなった。

「高校生になって『中学生料金は』とか案内されると凹むんだって」
「それはお得だな」
「アホか」
 少し笑った。

「夏休みは俺が一緒だし、眼鏡なくてもイんじゃね?」
「そっか。って、おい。さり気に僕をディスるな」

「ははは。ディスりじゃなくてさ、凛太朗の目が直接見れるから、さ」
 ニコっとする酒井を見て、凛太朗はチャンスだと思えた。

「じゃ、僕だって酒井の目をしっかり見たい。いつもさ、酒井の頬しか見えないじゃん。僕が眼鏡外すなら、酒井は髪切ろうぜ」

「切るよ。凛太朗がそう言うなら、すぐに切る。ボウズならスッキリするかな?」
 酒井の即答に凛太朗はブハっと吹きだした。

「いやいや、ボウズはないだろ。酒井は床屋で切ってる?」
「うん。床屋でも前髪言われるけどさ、顔が隠れるほうが安心するから。ほら、すぐさぁ、『泣くのを我慢して、偉いわね』とか、目ぇ出てると、うるさいからさ」

 酒井が髪の毛で顔を隠している理由が分かり、凛太朗は息を飲んだ。

 髪の毛が重いのはズボラなのだろうと思っていた。酒井は髪を気にしないタイプなのだと思っていた。髪を切ればカッコイイと簡単に考えていたことが申し訳なくなる。凛太朗の眼鏡とは全然違うレベルの理由があったのだ。

「あ、えっと。髪の毛は、そのままで良いと思う。酒井には酒井の考えがあったんだよな。僕が勝手に、ごめん」
「いや。痩せるのも、髪型も、凛太朗に会わなければ変えようと思えなかった。俺はもう小学生じゃないし」

「酒井……」
「母さんが、まぁ、亡くなってから、自分の事ってどうでも良くなってたんだ。今は、凛太朗が笑ってくれるから、前を向こうって思える」

 凛太朗の胸が嬉しくてトクンとなる。温かいものが湧き上がって心臓を包み込む。酒井の言葉は時々、こんな風に凛太朗の中心を鷲掴みにする。この温かさを表現するのなら『幸せ』がピッタリだろう。

「オッケ。今度、一緒に床屋行こ。髪切った酒井と一緒に出掛けたい。ちょっと楽しみ」
 凛太朗が笑いかければ、スッキリした頬がニコっと上がる。痩せても一番に頬に目が行っちゃうんだよな、と凛太朗は思った。

 食器洗いは酒井がしてくれた。火がついていなければ、水場は大丈夫だと言っていたから任せた。洗い物をするなど面倒だろうが、酒井は頬をニコニコさせていた。
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