真面目学級委員がファッティ男子を徹底管理した結果⁉

小池 月

文字の大きさ
29 / 53
Ⅳ 停滞期

しおりを挟む
 あの日から凛太朗は酒井と一緒にいるのを止めた。朝の学級委員として自主的に行っていたことも止めた。目立たないように一日を静かに過ごしている。
 別にこれでいい。凛太朗には一人が合っている。これが凛太朗らしい学校生活だと感じている。

 凛太朗は酒井を気にしないように心がけている。だけど、自然と頭に酒井のことが浮かぶ。食事は大丈夫かな、とか、ダイエット続いているかな、と心配ばかりしてしまう。

 凛太朗といなくなり、酒井は新たな友人たちと過ごすのだろうと思った。彼女を作って陽キャの一員になるのだろうと想像していた。けれど、酒井は独りになった。

 以前のように女子は話しかけていないし、リレーの練習で笑い合っていた男子たちとも距離を置いている。色々気になるけれど、凛太朗は酒井に関して深く考えるのをやめている。

(もう、僕には関係ない)

 そう考えても、酒井の優しい手の感触や包みこむような抱擁がふとした時に蘇る。そのたびに胸が痛いような苦しいような感覚がして辛かった。

 この体育祭が終われば凛太朗は学級委員から解放される。そうすれば全て楽になるはずだ。

 もともと酒井と仲良くしたのも学級委員としての責任感からだ。凛太朗には、どう頑張っても大役過ぎただけだ。気負うべきではなかったのだ。でも、それでも、楽しかった。

 考えると悲しみに涙が零れそうになる。



 体育祭の日が来た。晴青高校の体育祭は白組・赤組に分かれて勝敗を点数にして競う。

「晴れて良かったな」
「曇りくらいが良かったけどなぁ」
 クラスメイトのそんな会話をぼんやり聞いた。

 体育祭は学校近くの市営競技場を借りて行う。熱中症リスク回避のため体育祭は午前で終了だ。半日で帰れるのは嬉しい。

(酒井はリレー、大丈夫かなぁ)

 酒井は凛太朗といなくなり、途端に笑わなくなった。少し怒りを滲ませて独りでいる。独りでいるのなら凛太朗が傍にいてもいい気がするが、凛太朗は自分の存在価値の低さに気が付いたから傍に行かない。

 どんなに頑張ってもクラスの不要物である自分が酒井の傍にいたらいけない。酒井は凛太朗と違って輝く存在だから。

『各クラス学級委員は状況報告を本部までお願いします』
 競技場に放送が流れた。凛太朗は学級委員として体育祭までは頑張ろうと思い席を立った。

 ふと気になって振り返れば、一番後ろの応援席に酒井がいた。酒井は寂しそうな顔をしていた。数秒間、凛太朗と目が合った。ここ数日、酒井を避けていてしっかり顔を見ていなかった。酒井の顔色が良くないかも、と思った。酒井は凛太朗から目をそらさなかった。

 その訴えるような視線が苦しくて凛太朗はフイっと顔を背けた。そんな小さな動作で、酒井に申し訳ないような罪悪感が芽生える。

(気にするな! 僕は体育祭の仕事に集中するんだ!)
 最近毎日感じているチクリとした痛みに言い訳をした。

 酒井を振り返りたいのに、その勇気が無くて気持ちが落ち込む。どんなに言い訳をしても、悲しさとやるせなさが凛太朗の心にくすぶった。

(酒井は、僕のことをどう思っているんだろう)

 酒井と距離を置いたのは自分なのに、そんなことを考えるなどおかしい。

『凛太朗に、嫌われたくない』
急に酒井が泣いた時の言葉が浮かんだ。苦しいような胸の痛みが生じた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~

水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。 アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。 氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。 「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」 辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。 これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!

相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~

柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】 人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。 その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。 完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。 ところがある日。 篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。 「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」 一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。 いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。 合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

処理中です...