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Ⅳ 停滞期
⑫
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大歓声の声援の中で凛太朗はグラウンドの酒井を見ていた。
第一走者がスタートして第三走者がラインに一列に並ぶ。接戦で第二走者にバトンが渡った。
凛太朗の五組は三位につけている。運動部ではない酒井で大丈夫なのだろうか。希望者が居なくて酒井が入ってくれたが、他のクラスのメンバーを見れば運動部員ばかりだ。
だが、その中で見劣りしない酒井の体格が凛太朗は誇らしかった。筋肉質の大きな身体が目立つ。色は白いが、それが浅黒い運動部員の中で際立っている。
(酒井、いいじゃん)
同じクラスになった四月の頃を思い浮かべて、この努力の成果に嬉しくなった。
「うわ、接戦じゃん」
「ねぇ、次、酒井君じゃん? 運動部ばっかの中で大丈夫かな」
「う――、厳しいかぁ」
応援席で聞こえる会話に凛太朗も同意したかった。だが酒井は小学生でバレーボールやっていたから足は速いはずだと自分に言い聞かせた。凛太朗は祈るように手を組んで酒井を見守った。
一番手が第三走者にバトンを渡す。すごいスピードで走者が走り出す。流れ込むように二番手と三番手が到着する。各クラスのエールが激しくなった。
三番手でバトンを受けた酒井が走り出した。長い足が力強く地面を蹴る。そのままグングンスピードに乗る酒井に見惚れた。
「ちょっと、酒井君、すっご! 抜いちゃうんじゃない?」
「はっや!」
酒井は二番手の真横についた。
「酒井~~! 頑張れ! 抜けぇ~~!」
凛太朗の口から自分の声とは思えないほどの大声が出た。周囲が驚いて凛太朗を振り返ったほどだ。こんな声が自分から出ると思わなかった。
「さかい~~! いけぇ!」
凛太朗は必死で酒井に声援を送った。
酒井は二番手と同着で第四走者にバトンを渡した。走り切った酒井が応援席の凛太朗に視線を向けた。息を切らして汗を拭く姿がかっこいい。
「やば。酒井君こっち見てるじゃん。てか、めちゃカッコ良くない?」
「分かる。これは、惚れるぅ」
応援席の女子たちがザワザワするが、すぐに次の走者の応援に話題が切り替わった。女子が酒井を褒めることに凛太朗は心がモゾっとした。
アンカーがゴールして二年生対抗リレーが終了した。二年五組は四位だった。大健闘な戦いに応援席に戻った酒井たちに拍手が送られた。
凛太朗も駆け寄りたかったが、座についた酒井にクラスメイトが群がって近寄れなかった。
一言、声を掛けたくてタイミングを見ていた時。
「え? あ、ちょっと、酒井君?」
「おい、酒井⁉」
突然の緊迫した声が上がり凛太朗の心臓がドキリとした。
「ちょっと、ごめん」
人をかき分けて酒井を覗くと、座ったままで酒井が突っ伏していた。
第一走者がスタートして第三走者がラインに一列に並ぶ。接戦で第二走者にバトンが渡った。
凛太朗の五組は三位につけている。運動部ではない酒井で大丈夫なのだろうか。希望者が居なくて酒井が入ってくれたが、他のクラスのメンバーを見れば運動部員ばかりだ。
だが、その中で見劣りしない酒井の体格が凛太朗は誇らしかった。筋肉質の大きな身体が目立つ。色は白いが、それが浅黒い運動部員の中で際立っている。
(酒井、いいじゃん)
同じクラスになった四月の頃を思い浮かべて、この努力の成果に嬉しくなった。
「うわ、接戦じゃん」
「ねぇ、次、酒井君じゃん? 運動部ばっかの中で大丈夫かな」
「う――、厳しいかぁ」
応援席で聞こえる会話に凛太朗も同意したかった。だが酒井は小学生でバレーボールやっていたから足は速いはずだと自分に言い聞かせた。凛太朗は祈るように手を組んで酒井を見守った。
一番手が第三走者にバトンを渡す。すごいスピードで走者が走り出す。流れ込むように二番手と三番手が到着する。各クラスのエールが激しくなった。
三番手でバトンを受けた酒井が走り出した。長い足が力強く地面を蹴る。そのままグングンスピードに乗る酒井に見惚れた。
「ちょっと、酒井君、すっご! 抜いちゃうんじゃない?」
「はっや!」
酒井は二番手の真横についた。
「酒井~~! 頑張れ! 抜けぇ~~!」
凛太朗の口から自分の声とは思えないほどの大声が出た。周囲が驚いて凛太朗を振り返ったほどだ。こんな声が自分から出ると思わなかった。
「さかい~~! いけぇ!」
凛太朗は必死で酒井に声援を送った。
酒井は二番手と同着で第四走者にバトンを渡した。走り切った酒井が応援席の凛太朗に視線を向けた。息を切らして汗を拭く姿がかっこいい。
「やば。酒井君こっち見てるじゃん。てか、めちゃカッコ良くない?」
「分かる。これは、惚れるぅ」
応援席の女子たちがザワザワするが、すぐに次の走者の応援に話題が切り替わった。女子が酒井を褒めることに凛太朗は心がモゾっとした。
アンカーがゴールして二年生対抗リレーが終了した。二年五組は四位だった。大健闘な戦いに応援席に戻った酒井たちに拍手が送られた。
凛太朗も駆け寄りたかったが、座についた酒井にクラスメイトが群がって近寄れなかった。
一言、声を掛けたくてタイミングを見ていた時。
「え? あ、ちょっと、酒井君?」
「おい、酒井⁉」
突然の緊迫した声が上がり凛太朗の心臓がドキリとした。
「ちょっと、ごめん」
人をかき分けて酒井を覗くと、座ったままで酒井が突っ伏していた。
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