真面目学級委員がファッティ男子を徹底管理した結果⁉

小池 月

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Ⅳ 停滞期

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 応援席に戻る途中に、凛太朗の前で大繩を飛んでいた女子に声を掛けられた。この女子は文芸部に属している静かなタイプだ。

「風見君、あの……」
 困った様子の女子に凛太朗は弱い微笑みを向けた。
「大繩、お疲れさま」

「うん。さっき、ありがとう」
 女子から聞こえたお礼の言葉が意外だった。

 学級委員として何をしてもクラスメイトから感謝などされないのに。目の前の女子が『ありがとう』と言ってくれたことが嬉しくて心がジワリと温まる。

 凛太朗は急に酒井を思い出した。酒井は『凛太朗のありがとうは、あったかい』と喜んでいた。酒井の気持ちはこんな風だったのかな、と思うと顔が綻んだ。

「うん。足に縄が当たったよね。痛ければ湿布貰おうか?」
「ううん。いいよ。これくらい平気」
 女子がニコリと笑い返してくれた。この子が嫌な思いをしなくて良かったと凛太朗は思った。

「そっか。このあと無理しないで」
「うん。風見君も。学級委員、大変だけど頑張ってね」
 ヒラヒラと手を振って応援席に戻る女子を見送った。足は大丈夫そうだ。

 温かい気持ちになり凛太朗は前を向いた。
 顔を上げてみると、壁に寄りかかっている酒井が目に入った。ドキリとした。いつから居たのだろう。

 下を向く酒井の雰囲気が怖くて凛太朗は足が前に進まなかった。目が離せずにいると、大きくため息をついた酒井が凛太朗を見た。

 怒りを含んでいる瞳が凛太朗の心を突き刺した。見たことも無い酒井の表情にバクバクと鼓動が速くなる。
 酒井がゆっくりと壁から身体を離した。

 凛太朗は緊張でゴクリと唾を飲んだ。酒井と視線が合ったまま、身動きが取れない。

 怖い顔をした酒井は凛太朗に声を掛けることは無く、踵を返して応援席に戻っていった。睨むような酒井の目線が凛太朗の脳に焼き付いた。

(なんだよ。一体、何なんだよ……)
 意味ありげな酒井の行動が心に引っかかった。けれど、どうして酒井があんな顔をしていたのか凛太朗には理解できなかった。



 順調に体育祭は進行して、最後の対抗リレーになった。一年生が終了し、次は二年生だ。やはりリレーは盛り上がりがスゴイ。クラスの皆が立ち上がって応援を送っている。一年の白熱したレースを見たことも応援を高ぶらせた。

「二年五組! がんばれ~~」
「五組ぃ!」
「頑張ってぇ!」

 グラウンドに向ける声が飛び交う。

 酒井は第三走者だ。本当は競技前に「酒井、頑張れよ」と声を掛けたかった。
 しかし、酒井はいつの間にかグラウンドに向かっていて凛太朗が声を掛けることが出来なかった。応援の一言を届けたかったのに。

 考えるとモヤモヤした。先ほどの酒井の様子が気になって仕方がない。冷たい態度をとったのは凛太朗なのに、酒井の態度が少しおかしいだけで不安が大きくなる。

(酒井は、僕の事を嫌いになった――?)
 ゾクリとする恐怖が凛太朗に湧いた。
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