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Ⅴ リバウンド対策☆
⑪
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「凛太朗‼」
急に教材室の扉が開いて酒井が飛び込んできた。
その勢いに驚いて凛太朗の身体がビクっと大きく震えた。ぽかんと酒井を見上げていると、怖い顔をしていた酒井が眉毛をハの字に下げて、今にも泣きそうな顔をした。
「凛太朗……」
吐息のような声だった。
酒井の息が上がっている。額から汗が垂れている。凛太朗はゆっくりと近づく酒井を見上げていた。
「もう、文化祭、終わるよ?」
優しい声だ。凛太朗の間近に来た酒井が、大きな体の中に凛太朗を閉じ込めた。
酒井の鼓動が耳に響く。荒い呼吸が伝わる。凛太朗を閉じ込める力が強くなる。
「心配した。調子が悪そうだったって聞いて、不安で泣きそうだった。無事で、良かった……」
酒井の震える声から本気で心配していたのが分かり、一気に心が満たされる。酒井が凛太朗の傍に居ることが嬉しくて、止まっていた涙が滲む。
「……酒井、理香子さん、は?」
「断った」
酒井の一言に我慢していた嗚咽が漏れた。
「……っふうっ」
凛太朗を閉じ込めている力が緩んだ。
「泣かないで」
そっと涙を拭われた。凛太朗はその優しさに心を委ねた。
凛太朗の頬に触れた手が顎に移り、顔が上に向けられる。
(あ、コレは……)
期待通りの熱が凛太朗に与えられた。唇から酒井の熱が入り込む。心まで到達しそうな熱さだ。
「好きだ」
まるで心臓に注ぎ込まれるような声に凛太朗の身体がビクリと大きく痙攣した。
「凛太朗が、好きだ」
酒井がホロリと涙を落とす。その顔が綺麗だと思った。
「僕も、好き」
口にすると凛太朗の心拍が一気に上がった。呼吸が苦しい。酒井が大きく息を吐いた。
「あぁ、信じられない。夢みたいだ。凛太朗、もう一回言って?」
感極まったかのように酒井が泣いた。
「酒井が、好き、だと思う……」
もう一回言ってと言われると、首を傾げたくなる気持ちになり凛太朗は困った。
「だと、おもう?」
酒井が理解に苦しむ、と言わんばかりの顔をして凛太朗を見た。互いに首を傾げ合った。
「いや、そこは、大好きとかじゃないのか?」
「まぁ、うん。そう思ったんだけど、精一杯の気持ちを込めた一言だったのに、もう一回とか言われると、ちょっと……」
酒井が困惑した顔をしている。
「え?」
「え?」
凛太朗もどうしていいのか分からなかった。
(え? 幸せな両想い、じゃないのか?)
疑問が浮かんで『え?』で頭が埋め尽くされた。
「あ、えーーと。とりあえず、教室帰ろうか」
酒井の言葉に凛太朗はクスッと笑った。
「そうだな。途中抜けちゃった。僕がサボりか」
凛太朗はスッと立ち上がったが、長く座っていたせいで少しよろけた。
「おっと」
直ぐに酒井が支えてくれる。タイミングの良さに凛太朗はフフっと笑った。酒井もつられてフハハと笑った。さっきまで泣いていたくせに、と思い、二人で笑った。
「ん」
教材室から出る時に、酒井が前を向いたまま手を差し伸べて来た。
(これは、きっと、アレだよな)
ピンときた凛太朗は酒井を見上げた。後姿の耳後ろが真っ赤だ。そんな姿に凛太朗の胸がホワッとする。満たされる喜びに凛太朗は頬が緩んだ。
「ん」
大きな手に凛太朗の手を滑り込ませた。熱い手が凛太朗を優しく包み込む。
(汗かいてる)
手のひらに感じる感覚に凛太朗はプハッと吹き出してしまった。
「は、はぁ? 凛太朗、笑うな!」
酒井の焦りっぷりに、いつもと逆だと思った。
「あ~~、幸せ」
「俺も」
手を繋いだまま酒井の腕に寄り添った。
「凛太朗、一生大事にする」
酒井の真剣な言葉なのに、何故か凛太朗は笑ってしまった。
「あはは、一生か! さすが酒井。でも、とりあえずさ、リバウンドしないように、卒業まで僕が酒井を管理しよう」
「あ、それは是非お願いします」
真顔になって凛太朗に頭を下げる酒井に二人で笑った。
繋いだ手が離れないように、凛太朗はギュッと力を込めた。すぐに優しく温かい熱が返って来た。
それは泣きたくなるくらい幸せな感覚だった。
酒井と凛太朗の高校生活は、まだまだこれからだ。
〈完〉
急に教材室の扉が開いて酒井が飛び込んできた。
その勢いに驚いて凛太朗の身体がビクっと大きく震えた。ぽかんと酒井を見上げていると、怖い顔をしていた酒井が眉毛をハの字に下げて、今にも泣きそうな顔をした。
「凛太朗……」
吐息のような声だった。
酒井の息が上がっている。額から汗が垂れている。凛太朗はゆっくりと近づく酒井を見上げていた。
「もう、文化祭、終わるよ?」
優しい声だ。凛太朗の間近に来た酒井が、大きな体の中に凛太朗を閉じ込めた。
酒井の鼓動が耳に響く。荒い呼吸が伝わる。凛太朗を閉じ込める力が強くなる。
「心配した。調子が悪そうだったって聞いて、不安で泣きそうだった。無事で、良かった……」
酒井の震える声から本気で心配していたのが分かり、一気に心が満たされる。酒井が凛太朗の傍に居ることが嬉しくて、止まっていた涙が滲む。
「……酒井、理香子さん、は?」
「断った」
酒井の一言に我慢していた嗚咽が漏れた。
「……っふうっ」
凛太朗を閉じ込めている力が緩んだ。
「泣かないで」
そっと涙を拭われた。凛太朗はその優しさに心を委ねた。
凛太朗の頬に触れた手が顎に移り、顔が上に向けられる。
(あ、コレは……)
期待通りの熱が凛太朗に与えられた。唇から酒井の熱が入り込む。心まで到達しそうな熱さだ。
「好きだ」
まるで心臓に注ぎ込まれるような声に凛太朗の身体がビクリと大きく痙攣した。
「凛太朗が、好きだ」
酒井がホロリと涙を落とす。その顔が綺麗だと思った。
「僕も、好き」
口にすると凛太朗の心拍が一気に上がった。呼吸が苦しい。酒井が大きく息を吐いた。
「あぁ、信じられない。夢みたいだ。凛太朗、もう一回言って?」
感極まったかのように酒井が泣いた。
「酒井が、好き、だと思う……」
もう一回言ってと言われると、首を傾げたくなる気持ちになり凛太朗は困った。
「だと、おもう?」
酒井が理解に苦しむ、と言わんばかりの顔をして凛太朗を見た。互いに首を傾げ合った。
「いや、そこは、大好きとかじゃないのか?」
「まぁ、うん。そう思ったんだけど、精一杯の気持ちを込めた一言だったのに、もう一回とか言われると、ちょっと……」
酒井が困惑した顔をしている。
「え?」
「え?」
凛太朗もどうしていいのか分からなかった。
(え? 幸せな両想い、じゃないのか?)
疑問が浮かんで『え?』で頭が埋め尽くされた。
「あ、えーーと。とりあえず、教室帰ろうか」
酒井の言葉に凛太朗はクスッと笑った。
「そうだな。途中抜けちゃった。僕がサボりか」
凛太朗はスッと立ち上がったが、長く座っていたせいで少しよろけた。
「おっと」
直ぐに酒井が支えてくれる。タイミングの良さに凛太朗はフフっと笑った。酒井もつられてフハハと笑った。さっきまで泣いていたくせに、と思い、二人で笑った。
「ん」
教材室から出る時に、酒井が前を向いたまま手を差し伸べて来た。
(これは、きっと、アレだよな)
ピンときた凛太朗は酒井を見上げた。後姿の耳後ろが真っ赤だ。そんな姿に凛太朗の胸がホワッとする。満たされる喜びに凛太朗は頬が緩んだ。
「ん」
大きな手に凛太朗の手を滑り込ませた。熱い手が凛太朗を優しく包み込む。
(汗かいてる)
手のひらに感じる感覚に凛太朗はプハッと吹き出してしまった。
「は、はぁ? 凛太朗、笑うな!」
酒井の焦りっぷりに、いつもと逆だと思った。
「あ~~、幸せ」
「俺も」
手を繋いだまま酒井の腕に寄り添った。
「凛太朗、一生大事にする」
酒井の真剣な言葉なのに、何故か凛太朗は笑ってしまった。
「あはは、一生か! さすが酒井。でも、とりあえずさ、リバウンドしないように、卒業まで僕が酒井を管理しよう」
「あ、それは是非お願いします」
真顔になって凛太朗に頭を下げる酒井に二人で笑った。
繋いだ手が離れないように、凛太朗はギュッと力を込めた。すぐに優しく温かい熱が返って来た。
それは泣きたくなるくらい幸せな感覚だった。
酒井と凛太朗の高校生活は、まだまだこれからだ。
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