真面目学級委員がファッティ男子を徹底管理した結果⁉

小池 月

文字の大きさ
46 / 53
Ⅴ リバウンド対策☆

しおりを挟む
「風見君、ね、浴衣どぉ?」
 店番をしている途中で理香子から声を掛けられた。今日は話をしたくないと思っていたのに。

「あ、うん。かわいい、と思うけど……」
 理香子が嬉しそうに微笑んだ。

「でしょぉ? 今日は気合い入れたんだぁ。あたし、今日、告白する」
 凛太朗の心臓がドクンと震えた。

「決めてたの。だからぁ、浴衣も化粧も最高に可愛くしたの」
 理香子を見ると、泣きそうな顔で微笑んでいた。

「振られると、思う。けどぉ、いいの」
 凛太朗は何とも言えずに手元を見た。応援すべきだろうか。でも、とてもそんな気持ちになれない。

「風見君も、頑張って、ね」

 凛太朗はハッとして理香子を見た。理香子はニコリと笑って自分の持ち場であるヨーヨー釣りに戻っていった。

 凛太朗は輪投げの前で立ち尽くした。
 教室内には射的コーナー、ヨーヨー釣り、スーパーボールすくい、輪投げを準備している。お客はこれらの中から三つを選んで遊べる。射的やヨーヨー釣りは人気だが、輪投げコーナーは不人気だ。他の賑やかさに比べて寂しさを感じる。
 まるで凛太朗そのものだ。

 酒井は射的コーナーでイケメン男子メンバーとして接客をしている。
(酒井は、忙しそうだな)
 凛太朗は客の来ない輪投げコーナーを見つめた。



「じゃ、交代で看板持って歩いてきてね」
 宣伝のために校舎内を歩いていたクラスメイトとチェンジの時間だ。これから凛太朗は十五分ほど看板を持って歩く。

 凛太朗の他に数名が一緒に歩く。女子でも軽く持てるように段ボールで作られた看板を持って教室を後にした。
 浴衣でまとまって歩くと目立つし、陽キャの人が「昭和のお祭りショップをやってるよ! 二年五組に是非来てね」と大声を出すから余計注目された。

 恥ずかしい思いをして教室に戻ると、射的コーナーに酒井は居なかった。もしかして、とヨーヨー釣りを見れば、理香子もいない。凛太朗の心臓がドクドクと鳴った。きっと二人で文化祭を回りに行ったのだ。

 ――理香子が、告白する。酒井は何と答えるのだろう?

 凛太朗に変な緊張が走った。白の甚平と水色の浴衣はお似合いだった。理香子は思ったほど嫌な子ではない。少し積極的だが、そこを含めて自分の感情に素直すぎるだけだ。きっと酒井もそれを分かっている。

 ――もし、二人が恋人になったら。もし、酒井の隣が理香子の場所になったら……。

 考えると張り裂けそうな胸を自分でギュッと押さえた。パニックに陥りそうになり、凛太朗は教室を後にした。


 使用されていない教材室に入り、床に座り込んだ。
 学級委員の頃に先生から用事を頼まれることが多かった凛太朗は、この教材室の鍵が掛からないことを知っていた。

 凛太朗は胸が痛くて苦しかった。誰もいないと思うと堪えていた涙が溢れた。

(僕は、酒井が好きだ。誰にも譲りたくないくらい、好きなんだ)

 切なさに零れる涙を袖で拭って蹲った。そうしていないと嗚咽が漏れてしまいそうだった。

 三十分以上、教材室に籠っていた。そろそろ教室に戻らなくてはいけないなぁと考えていた。涙は止まったけれど、すっかり気力が落ちてしまって、賑やかな文化祭の場に戻りたくなかった。

(酒井は、もう戻ったかな。今日は理香子さんと帰るのかな。そんなの、見たくない)
 心がズキリと痛んだ。

 心が痛いのに、思い出すのは酒井の笑顔だ。

『凛太朗の弁当は最高だ!』
 そう言いながら満面の笑みを浮かべる顔が浮かぶ。

『出来立て、うっま!』
 大きな口を開けて食べる顔が頭をよぎる。

『凛太朗、可愛い』
 射貫くような瞳で微笑む顔に、胸がギュウっと締め付けられる。
 耳まで真っ赤になる照れた顔を想うと愛おしさが込み上げる。

(好きになるって、苦しいなぁ)
 酒井を想うと心から何かが溢れる気がする。

 その溢れたモノが凛太朗の芯に熱さを生む。身体の奥に火がついたようだ。どうにもならない悶えるような感情を凛太朗は自分自身で抱き締めた。

 酒井の熱いキスが脳裏に蘇り、凛太朗は瞳を閉じてそっと唇に触れてみた。自分の指は、記憶にある酒井の唇より冷たかった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~

水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。 アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。 氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。 「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」 辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。 これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~

柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】 人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。 その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。 完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。 ところがある日。 篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。 「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」 一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。 いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。 合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)

ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?

灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。 オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。 ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー 獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。 そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。 だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。 話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。 そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。 みたいな、大学篇と、その後の社会人編。 BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!! ※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました! ※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました! 旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」

処理中です...