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番外編「二人のクリスマス」
①
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「こんな風にして欲しいわけじゃない!」
凛太朗は頭に来すぎて涙が滲んだ。
怒りでプルプル震える自分の腕と、青ざめた酒井の顔が印象的だった。
「ごめん。凛太朗が喜ぶかと思って……」
酒井の弱々しい言葉に凛太朗は唇を噛み締めた。
事の発端は、クリスマスプレゼントだ。酒井と付き合って初めてのクリスマスに、二人してテンションが上がっていた。
冬休み前に、何か特別なプレゼントを贈りあおうと約束した。何が欲しいか互いに聞かないように決めた。プレゼントに何を考えているかも秘密にした。クリスマスまで毎日ワクワクした。ソワソワする酒井を見るのが楽しみだった。
凛太朗はプレゼントを言いたくて、でも言えないもどかしさが嬉しくて、妙な高揚感が続いていた。酒井を見ると、全身にモゾモゾ感が生じて、喜びの叫び声をあげたい日々だった。
冬休みになった。凛太朗の高校は十二月半ばから冬休みだ。夏休みと同じように凛太朗は毎日酒井と過ごした。
夏休みと違うのは、酒井の家と凛太朗の家に交代で居座っていること。
思い返せば夏休みは凛太朗の家ばかりだった。だが、体育祭の後に酒井の家にお邪魔してから、酒井が凛太朗を自宅に招くようになった。キッチンで凛太朗が料理をするときには火が見えないように酒井は遠くにいる。
そして、日曜日と金曜日は互いに一人の時間と決めた。この曜日を使って互いへの贈り物を準備することとした。
凛太朗は酒井に何をあげたら良いか毎日悩んだ。
昼間はゲームや雑貨を見て回り、アクセサリー類は店に入るのにハードルが高くて見ることができず、酒井は洋服に興味が無いからそもそも候補から却下して、というように街中をウロウロした。
夜はベッドの上でゴロゴロしながらプレゼントのことばかり考えた。
「酒井は何が欲しいのかなぁ。酒井は多分、何あげても喜びそうだけど。できたらとびっきりの笑顔になる物がいいよな、うん。酒井が泣いて喜ぶのがいいな!」
凛太朗は酒井の笑顔を思った。
いつも酒井は弁当を「美味しい」「最高だ」と褒めてくれて笑顔になる。大きな口でがぶりと食べる顔に凛太朗はキュンとしている。その様子を思い浮かべるとクスッと笑いがこみ上げる。
「結局、酒井は食べるのが好きなんだよな。ま、僕の弁当を、だけど」
酒井が美味しそうに食べているものは大体が凛太朗の作った弁当を食べている時だ。それを声に出すと、こそばゆいような気持ちが生まれて枕に顔を埋めた。
自分の独り言に照れてしまい、凛太朗は枕を抱きしめてベッドの上をゴロゴロ転がった。
(恥ずかし。僕って自意識過剰だったんだ……。なんか残念な奴じゃん)
酒井へのプレゼントを考えたはずが普段の日常ばかり考えていたことに気がついて凛太朗はハッとした。
「ダメダメ。僕は何でこうなんだ。集中してプレゼント考えなきゃなんだって。脳内が脱線ばっかしだ」
そんな自分にため息をついてベッドから起き上がった。
「あれ? そっか。酒井が笑顔になるのって、僕の弁当食べてる時、か」
大きなヒントが得られた気がしてベッドに腰掛けたまま凛太朗は静止した。
「僕が作ったものが嬉しいなら、特別なのを作ろうかな」
首をかしげて凛太朗は思ったことを口にしてみた。
「お菓子? とか、クリスマス料理、か。ケーキも、作れるかな」
凛太朗はこれまで惣菜は作ってきたが、菓子系を作ったことが無かった。
酒井はシャーベットを食べていたし、甘い物が苦手ではなさそうだ。だが、お菓子を手作りするのは凛太朗には抵抗があった。
何となく、料理は男がしても良い気がするが、お菓子作りは女子っぽいと思っている自分がいるから。でも、きっと手作りしたら酒井は頬を染めて喜ぶだろう。
(作って、あげたいな。甘さ控えめのケーキとか。とにかく菓子作りの練習しなきゃ!)
凛太朗はカレンダーを確認した。
ケーキが焼けるようになるのだろうか。何からしたら良いのだろう。
凛太朗はすぐにネットでお菓子作りについて調べ始めた。簡単なクッキーから凝ったケーキと、クリスマスディナーを調べたけれど、両方を準備するのは難しいと思った。
酒井の驚く顔を見るのなら、食事はいつもより少し豪華なものを作って、出したことのないケーキがいいかもしれない。クリスマスだし。
酒井の反応を想像すると、凛太朗は楽しみで気分が上がった。
「あはは。よし! やるぞ!」
凛太朗は部屋の中でヤル気のガッツポーズを決めた。
凛太朗は頭に来すぎて涙が滲んだ。
怒りでプルプル震える自分の腕と、青ざめた酒井の顔が印象的だった。
「ごめん。凛太朗が喜ぶかと思って……」
酒井の弱々しい言葉に凛太朗は唇を噛み締めた。
事の発端は、クリスマスプレゼントだ。酒井と付き合って初めてのクリスマスに、二人してテンションが上がっていた。
冬休み前に、何か特別なプレゼントを贈りあおうと約束した。何が欲しいか互いに聞かないように決めた。プレゼントに何を考えているかも秘密にした。クリスマスまで毎日ワクワクした。ソワソワする酒井を見るのが楽しみだった。
凛太朗はプレゼントを言いたくて、でも言えないもどかしさが嬉しくて、妙な高揚感が続いていた。酒井を見ると、全身にモゾモゾ感が生じて、喜びの叫び声をあげたい日々だった。
冬休みになった。凛太朗の高校は十二月半ばから冬休みだ。夏休みと同じように凛太朗は毎日酒井と過ごした。
夏休みと違うのは、酒井の家と凛太朗の家に交代で居座っていること。
思い返せば夏休みは凛太朗の家ばかりだった。だが、体育祭の後に酒井の家にお邪魔してから、酒井が凛太朗を自宅に招くようになった。キッチンで凛太朗が料理をするときには火が見えないように酒井は遠くにいる。
そして、日曜日と金曜日は互いに一人の時間と決めた。この曜日を使って互いへの贈り物を準備することとした。
凛太朗は酒井に何をあげたら良いか毎日悩んだ。
昼間はゲームや雑貨を見て回り、アクセサリー類は店に入るのにハードルが高くて見ることができず、酒井は洋服に興味が無いからそもそも候補から却下して、というように街中をウロウロした。
夜はベッドの上でゴロゴロしながらプレゼントのことばかり考えた。
「酒井は何が欲しいのかなぁ。酒井は多分、何あげても喜びそうだけど。できたらとびっきりの笑顔になる物がいいよな、うん。酒井が泣いて喜ぶのがいいな!」
凛太朗は酒井の笑顔を思った。
いつも酒井は弁当を「美味しい」「最高だ」と褒めてくれて笑顔になる。大きな口でがぶりと食べる顔に凛太朗はキュンとしている。その様子を思い浮かべるとクスッと笑いがこみ上げる。
「結局、酒井は食べるのが好きなんだよな。ま、僕の弁当を、だけど」
酒井が美味しそうに食べているものは大体が凛太朗の作った弁当を食べている時だ。それを声に出すと、こそばゆいような気持ちが生まれて枕に顔を埋めた。
自分の独り言に照れてしまい、凛太朗は枕を抱きしめてベッドの上をゴロゴロ転がった。
(恥ずかし。僕って自意識過剰だったんだ……。なんか残念な奴じゃん)
酒井へのプレゼントを考えたはずが普段の日常ばかり考えていたことに気がついて凛太朗はハッとした。
「ダメダメ。僕は何でこうなんだ。集中してプレゼント考えなきゃなんだって。脳内が脱線ばっかしだ」
そんな自分にため息をついてベッドから起き上がった。
「あれ? そっか。酒井が笑顔になるのって、僕の弁当食べてる時、か」
大きなヒントが得られた気がしてベッドに腰掛けたまま凛太朗は静止した。
「僕が作ったものが嬉しいなら、特別なのを作ろうかな」
首をかしげて凛太朗は思ったことを口にしてみた。
「お菓子? とか、クリスマス料理、か。ケーキも、作れるかな」
凛太朗はこれまで惣菜は作ってきたが、菓子系を作ったことが無かった。
酒井はシャーベットを食べていたし、甘い物が苦手ではなさそうだ。だが、お菓子を手作りするのは凛太朗には抵抗があった。
何となく、料理は男がしても良い気がするが、お菓子作りは女子っぽいと思っている自分がいるから。でも、きっと手作りしたら酒井は頬を染めて喜ぶだろう。
(作って、あげたいな。甘さ控えめのケーキとか。とにかく菓子作りの練習しなきゃ!)
凛太朗はカレンダーを確認した。
ケーキが焼けるようになるのだろうか。何からしたら良いのだろう。
凛太朗はすぐにネットでお菓子作りについて調べ始めた。簡単なクッキーから凝ったケーキと、クリスマスディナーを調べたけれど、両方を準備するのは難しいと思った。
酒井の驚く顔を見るのなら、食事はいつもより少し豪華なものを作って、出したことのないケーキがいいかもしれない。クリスマスだし。
酒井の反応を想像すると、凛太朗は楽しみで気分が上がった。
「あはは。よし! やるぞ!」
凛太朗は部屋の中でヤル気のガッツポーズを決めた。
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