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番外編「二人のクリスマス」
⑥
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「酒井、ごめん」
すっかり気持ちが落ち込んでしまい、凛太朗は肩を落として真剣に謝罪した。
頭を下げながら凛太朗はテーブル上のプレゼントを見た。キラキラと金属製のシャープペンが光っている。
酒井だって金の価値が分からないバカではない。それは隣にいて知っている。
そんな酒井が、それでもプレゼントにこれを選んだのは、酒井なりに真剣に悩んだ結果だろう。それを、高いからと怒って良かったのだろうか。
プレゼントの高いか安いかではなく、これを選んでくれたことに感謝と喜びを伝えるべきではなかったのか。
酒井は凛太朗のケーキを大感激して食べてくれた。受け取ってくれた。それが、もし、『睡眠時間を削ってまで、こんなことをすべきじゃない』と酒井が怒ったら、どうだろう。
想像しただけで悲しくなり、凛太朗の目に涙が滲んだ。
プレゼントの価値は、値段じゃない。それは、高いとか関係ないのかもしれない。相手をどれだけ想ったかが大切なのだろう。
酒井は下を向いて泣いたままだ。
「酒井、座って」
凛太朗は優しい声で促した。酒井は凛太朗を見ないままで、ダイニングチェアに座った。
「ちょっと待っていて」
「……俺、帰るよ」
暗い声が聞こえて、酒井の傷ついた心が分かり、凛太朗は唇を噛みしめた。
「や、ちょっとだけ、待って。すぐだから」
凛太朗の言葉に酒井が動きを止めた。
すぐに凛太朗はリビングテーブルに広げたままだったノートを手にした。
ダイニングチェアに戻って、凛太朗は一呼吸して、高級シャープペンを手に握った。
ヒヤリとした金属の冷たさと重さが手に伝わる。カチカチと芯を出す。滑らかな動きだ。凛太朗が酒井のプレゼントを手に取る様子を、酒井がじっと見つめているのが分かった。
凛太朗はそのまま、ノートに想いを書いた。
『酒井へ
さっきは、ごめん。つい、高いだろうとか、大切な金を、とかが頭に浮かんじゃった。でも、そんなの酒井だって十分悩んで選んでくれたんだよな。僕は酒井の想いを踏みにじったと思う。ごめん。つか、これ、すげー書きやすい。やっぱ、カヴェコすげぇ。
酒井、最高なクリスマスプレゼントを、ありがとう!
僕はときどき、感情がわっと出てしまって酒井を傷つけてしまうかもしれない。時々、あとから自分で反省することが多いんだ。今回も、僕のダメなところが出たなって思う。
気を付けてはいるんだけど、でも、これからも、そんなとこが出ちゃうかもなんだけど、僕は大好きな酒井とこれからもずっと一緒にいたいって思っている。
酒井、カヴェコシャーペンありがとな! 一生大切にするよ。凛太朗』
書いている最中に、凛太朗の文字を酒井が目で追っているのに気が付いていた。緊張したけれど、嘘のない今の気持を書きたかった。書き終えたページをビリッと破いて酒井に渡した。
酒井は涙が止まっていた。凛太朗が書いた文を指でなぞっている。
何度も、『大好きな酒井』の部分をなぞるから、凛太朗の心がホワリと温かくなった。
もう一度、ノートに大きく『酒井が大好きだ! 酒井は、僕のだ!』と書いた。それを破いて渡せば、さっきまで泣いていた酒井がフハッと笑った。
「そっか。俺は、凛太朗の、か」
「そう。もう僕のだ」
酒井が顔を上げて凛太朗を見た。
凛太朗は行儀が悪いのはわかっていたが、ダイニングテーブルに乗り上げた。酒井はすぐに身を乗り出して凛太朗を支えてくれた。
近づいた酒井の唇に、凛太朗から優しく触れた。そのまま酒井の膝の上に降ろされた。凛太朗は酒井の胸に寄りかかり、その心に届くように小さな声で「ごめん」と呟いた。
「もう、いいよ」
優しい声が凛太朗の耳に届いた。
「プレゼント、気に入らなかった?」
ついでに、と言うように小さな声が聞こえて、凛太朗は微笑んだ。
酒井の上半身をよじ登るように耳元に到着して、想いを告げた。酒井は満面の笑みを浮かべて、幸せそうに頬を染めた。
もう一度、そっと唇を重ねた。
「メリークリスマス、酒井」
「メリークリスマス、凛太朗」
「つか、何度目だ」
「それな」
凛太朗が笑えば、酒井が笑い返してくれる。そんなことを凛太朗は幸せだと思った。
酒井を大切にできるように、もっと大人になろう、と凛太朗は心に誓った。
〈完〉
すっかり気持ちが落ち込んでしまい、凛太朗は肩を落として真剣に謝罪した。
頭を下げながら凛太朗はテーブル上のプレゼントを見た。キラキラと金属製のシャープペンが光っている。
酒井だって金の価値が分からないバカではない。それは隣にいて知っている。
そんな酒井が、それでもプレゼントにこれを選んだのは、酒井なりに真剣に悩んだ結果だろう。それを、高いからと怒って良かったのだろうか。
プレゼントの高いか安いかではなく、これを選んでくれたことに感謝と喜びを伝えるべきではなかったのか。
酒井は凛太朗のケーキを大感激して食べてくれた。受け取ってくれた。それが、もし、『睡眠時間を削ってまで、こんなことをすべきじゃない』と酒井が怒ったら、どうだろう。
想像しただけで悲しくなり、凛太朗の目に涙が滲んだ。
プレゼントの価値は、値段じゃない。それは、高いとか関係ないのかもしれない。相手をどれだけ想ったかが大切なのだろう。
酒井は下を向いて泣いたままだ。
「酒井、座って」
凛太朗は優しい声で促した。酒井は凛太朗を見ないままで、ダイニングチェアに座った。
「ちょっと待っていて」
「……俺、帰るよ」
暗い声が聞こえて、酒井の傷ついた心が分かり、凛太朗は唇を噛みしめた。
「や、ちょっとだけ、待って。すぐだから」
凛太朗の言葉に酒井が動きを止めた。
すぐに凛太朗はリビングテーブルに広げたままだったノートを手にした。
ダイニングチェアに戻って、凛太朗は一呼吸して、高級シャープペンを手に握った。
ヒヤリとした金属の冷たさと重さが手に伝わる。カチカチと芯を出す。滑らかな動きだ。凛太朗が酒井のプレゼントを手に取る様子を、酒井がじっと見つめているのが分かった。
凛太朗はそのまま、ノートに想いを書いた。
『酒井へ
さっきは、ごめん。つい、高いだろうとか、大切な金を、とかが頭に浮かんじゃった。でも、そんなの酒井だって十分悩んで選んでくれたんだよな。僕は酒井の想いを踏みにじったと思う。ごめん。つか、これ、すげー書きやすい。やっぱ、カヴェコすげぇ。
酒井、最高なクリスマスプレゼントを、ありがとう!
僕はときどき、感情がわっと出てしまって酒井を傷つけてしまうかもしれない。時々、あとから自分で反省することが多いんだ。今回も、僕のダメなところが出たなって思う。
気を付けてはいるんだけど、でも、これからも、そんなとこが出ちゃうかもなんだけど、僕は大好きな酒井とこれからもずっと一緒にいたいって思っている。
酒井、カヴェコシャーペンありがとな! 一生大切にするよ。凛太朗』
書いている最中に、凛太朗の文字を酒井が目で追っているのに気が付いていた。緊張したけれど、嘘のない今の気持を書きたかった。書き終えたページをビリッと破いて酒井に渡した。
酒井は涙が止まっていた。凛太朗が書いた文を指でなぞっている。
何度も、『大好きな酒井』の部分をなぞるから、凛太朗の心がホワリと温かくなった。
もう一度、ノートに大きく『酒井が大好きだ! 酒井は、僕のだ!』と書いた。それを破いて渡せば、さっきまで泣いていた酒井がフハッと笑った。
「そっか。俺は、凛太朗の、か」
「そう。もう僕のだ」
酒井が顔を上げて凛太朗を見た。
凛太朗は行儀が悪いのはわかっていたが、ダイニングテーブルに乗り上げた。酒井はすぐに身を乗り出して凛太朗を支えてくれた。
近づいた酒井の唇に、凛太朗から優しく触れた。そのまま酒井の膝の上に降ろされた。凛太朗は酒井の胸に寄りかかり、その心に届くように小さな声で「ごめん」と呟いた。
「もう、いいよ」
優しい声が凛太朗の耳に届いた。
「プレゼント、気に入らなかった?」
ついでに、と言うように小さな声が聞こえて、凛太朗は微笑んだ。
酒井の上半身をよじ登るように耳元に到着して、想いを告げた。酒井は満面の笑みを浮かべて、幸せそうに頬を染めた。
もう一度、そっと唇を重ねた。
「メリークリスマス、酒井」
「メリークリスマス、凛太朗」
「つか、何度目だ」
「それな」
凛太朗が笑えば、酒井が笑い返してくれる。そんなことを凛太朗は幸せだと思った。
酒井を大切にできるように、もっと大人になろう、と凛太朗は心に誓った。
〈完〉
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iku様✨
お読みくださりありがとうございます!!そしてご感想も、いつも温かいお言葉に救われます!
凛太朗は一生懸命で真面目な分、傷つくことも多いキャラで書いていました。そんな部分を感じ取ってくださってとても嬉しく思います☆
著名な先生方の作品に触れていらっしゃるiku様に心理描写を褒めていただけて、泣くほど嬉しいです✨
理香子さん、もう、ほんと、、、スミマセン( ;∀;)
クリスマスの番外は、高校生らしく、なかった??なプレゼントになってしまいました💦
きっとこれから二人が寄り添う中で、互いへの想いのバランスが取れてくると、信じています。
いつもiku様の鋭さに驚きますが、実は番外編の案が「名前呼び」のバージョンも候補でした!もうひたすら、すご~い、が出ています。
今回も温かいご感想をありがとうございました!
大変お忙しい中でお読みくださいましたこと、感謝申し上げます(^^♪
灰鷹さま✨
わぁ♡灰鷹先生~(*^^*)と、すぐ先生呼びしてスミマセン💦
お読みくださり、ご感想をありがとうございます!!
「イケメン酒井は凛太朗が育成したんだからね!キー!」に爆笑してしまいました☆
理香子さんに関しては私の力不足で、しっかりしたザマアに持って行けずでした(´;ω;`)
好きになる理由に共感いただけて、温かいご感想をいただけて大変嬉しく思います!
お忙しい中でお読みくださり、ありがとうございました(*^^*)
『Ⅱ ④』です…
酒井くんが欲しいもの、手に入れたいのは…
もちろん🤭この彼ですかね💕
凛太朗くんは、痩せてイケメンになっていく酒井くんを側で見ていて嬉しい反面、複雑な思いをされるのですかね?
続きも楽しませていただきますね🙂↕️
iku様✨
お読みくださり、ご感想ありがとございます(*^^*)
いつも応援くださり、心から感謝です!!
お忙しい中でご感想下さいます事、ほんとに嬉しいです♡
iku様のお察しの通り、凛太朗のモヤモヤがここから始まりますので、ぜひぜひそのあたりを「私らしいな」と思ってくださると嬉しく思います☆
ぜひぜひ引き続き、よろしくお願いいたします!