その令嬢は祈りを捧げる

ユウキ

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うっかり神様

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 天使が他の仕事にと去った後、書類仕事が終わった神様は、肩をコキコキと鳴らしてふと宙を見ると新しい願い玉が手元に降りて来た。


「おや?これはあの娘の最新号か!」


 面白いゴシップ雑誌か何かの扱いになりつつある、件のご令嬢の願いは、神様の手に降りるとキラリと光ってその祈りを懇々と流し出す。


「ふっふひゃひゃひゃっっ!これはまた!エイダちゃん面白いのーぅ!ご、御令嬢がもっもげろとか!分かっとるんかいのーぉ?!ひゃははっ」


 立ち上がって玉を親指と人差し指で挟んでかざしながらバンバンと机を叩いて笑いっていると、その騒がしさを聞きつけた天使が舞い戻って来た。


「どうかなさいましたっっ!」
「おわぁっっっ!!」


 その瞬間、机の端に置かれていた籠に神様の振り下ろされた手の端が当たってしまい、籠はグルンと回転してしまった。その弾みで中の玉が宙へと、弧を描くように舞踊った。

 あんぐりと口を開けている間に玉は止まることなく弧を描き、少し離れた場所にあった「叶える」箱に吸い込まれるように入って行った。



「あーーーーーーー!!!!」



 神様は慌てて「叶える」箱に駆け寄って覗き込むと、シュワっという音と共に願い玉が消化されたところだった。


「あーーーーーーーー……」


 その残念さと切なさ、後悔が混じった声音に天使は背の羽をはためかせながら近寄り、一緒に覗き込む。


「……なんか、すみません。あれ、叶っちゃダメなやつでしたっけ?」
「いや、実害はほぼないから叶ったところで……じゃが。ワシの息抜きがぁ」


 悲しみに暮れた神様が、しょぼんと肩を落とした時、天使がすまなそうに神様を見ると指に見知らぬ願い玉が挟まっているのが見えた。


「神様それは?」
「……あ?なんじゃ?」


 と、意識を向けると脱力ついでに指の力も抜けたのか、ポロッと指から願い玉が落ちて行った。


「……あっ」
「…………!!!!」



 シュワっっ!パァァ



 どうやら願い玉は最新号も叶えられるようだ。
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