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優しげな微笑みを湛えているが、王妃様は笑顔の下でブチギレのようだ。証拠に、貶し方が滑らかで止めどない。
今、後方に立っていたことに、心の底から安堵している。兄上達は顔を青くして震えているが、まだ折れてはいなさそうだ。図太いな。
「しかし母上っ」「母上っでもっ」
「あら、発言の許可の取り方も忘れてしまったのかしら?これではダメね。両足で立つところから教えなきゃいけないのかしら?困ったわねぇ」
王妃様の貶しに、唇を噛んだ俺の兄弟は、小さく手を上げて発言の許可を求めた。
しかし、王妃様はまるっと無視して五人の中の令嬢へ声をかけた。
「娘、名を名乗りなさい」
急に指名されたマーガレットは、肩を震わせ、握った手で口元を隠してキョドキョドしている。
両脇にいた兄弟や、騎士団子息、宰相子息が小声で「大丈夫だ」「習った通りで良い」とか言っているのが丸聞こえだが……
気丈に頷いて見せたマーガレットは、半歩進み出て、声を発した。
「マルベリー子爵のマーガレットでっす。ご挨拶できて嬉しいですっ」
無駄に大きな声でそう言ったマーガレットは、軽くちょこんと裾を摘んでにっこりと周りへと満面の笑顔を振りまく。
…………おい、あり得ないだろ。あれを習っただと?!
なんで、王族に向かって最敬礼もできない女を「可愛いからヨシ」「よくやったね!」みたいな目でお前ら見てんだよと、益々不気味な面持ちで兄含む四人を見つめた。もうそこにはかつて知った敬うべき人は居ないのだなと、心に諦めの色が浮かぶ。
不快そうに扇を広げて顔を半分隠した王妃は、思いっきり眉間に皺を寄せて、それでも尋ね続けた。
「それで?貴女は王家の約束を破らせてまで何が言いたかったのかしら?」
「はいっ!私、行儀見習いで王宮に来た後、スヴェルト様と出会いましたっ。それで恋に落ちて、真実の愛を見つけたんです。けれどユリアンナ様に意地悪をされるようになって……後宮では除け者にされるし、水をかけられたり、お仕着せを切られたり……大勢で囲まれて嫌味をいわれたりしたんですっ!しかも熱湯をかけられたり、階段から突き落とされたこともっ!私っっっ!」
シクシクとでも言いそうに、目元を指で拭うマーガレットに、後ろの男どもは「マーガレットっ」「もう大丈夫だっ」と騒いでいる。
おいよく見ろ、拭った指は濡れてねぇぞ。
「それだけですか?」
「え?」
「それだけですかと、聞いているのです」
「え、あ、はい。私、謝ってもらえたらそれでっ」
「もう良いです。貴女の妄想は充分です」
「妄想だなんて、私本当にっ!」
「黙りなさい。
良いですか?まず貴族令嬢の行儀見習い、並びに後宮の人員管理・監督の権限と責任は、全て私にあります。貴女が被害に遭ったと証言するものに合致する報告は一切ありません。
水に濡れた行儀見習いの報告も、破れたお仕着せの交換申請も、何一つありません。それで?貴女はまさか、誰にも見咎められずにボロボロのお仕着せに袖を通して着続けていたとでも言うのかしら?」
「え、でもあのっ」
「それにゴーダイル侯爵令嬢には登城の際に、専属の侍女二名、護衛騎士数名をこちらから貸与しています。その者達を抑えて貴女を囲う?お湯をかける?階段から突き落とす?これを妄想と言わずに何と言うのかしら?」
「あ、えっとその侍女さんがっ」
「そう、私が選んで貸与した侍女が粗相をしたと言いたいのね?貴女、私に謝れと、そう仰っているのね?」
「なんでっ違います!私、そんなっ」
「全て私の権限の中で起こったことよ?全ての報告書はもちろん保管しているわ。厳正に調べ上げて調査して差し上げてよ?それで事実であれば、謝罪をして差し上げるけれど、偽りだった場合はどうなるか分かっていて?」
「え……」
「王族に対する偽証と、私に対する侮辱罪よ?お分かり?貴族裁判にかけて貴女を厳正に裁くわ。不当な扱いはしないから、安心して?」
「そんなっ」
顔色をなくしたマーガレットは、そのまま小刻みに震え出した。これは演技ではなさそうだ。
今、後方に立っていたことに、心の底から安堵している。兄上達は顔を青くして震えているが、まだ折れてはいなさそうだ。図太いな。
「しかし母上っ」「母上っでもっ」
「あら、発言の許可の取り方も忘れてしまったのかしら?これではダメね。両足で立つところから教えなきゃいけないのかしら?困ったわねぇ」
王妃様の貶しに、唇を噛んだ俺の兄弟は、小さく手を上げて発言の許可を求めた。
しかし、王妃様はまるっと無視して五人の中の令嬢へ声をかけた。
「娘、名を名乗りなさい」
急に指名されたマーガレットは、肩を震わせ、握った手で口元を隠してキョドキョドしている。
両脇にいた兄弟や、騎士団子息、宰相子息が小声で「大丈夫だ」「習った通りで良い」とか言っているのが丸聞こえだが……
気丈に頷いて見せたマーガレットは、半歩進み出て、声を発した。
「マルベリー子爵のマーガレットでっす。ご挨拶できて嬉しいですっ」
無駄に大きな声でそう言ったマーガレットは、軽くちょこんと裾を摘んでにっこりと周りへと満面の笑顔を振りまく。
…………おい、あり得ないだろ。あれを習っただと?!
なんで、王族に向かって最敬礼もできない女を「可愛いからヨシ」「よくやったね!」みたいな目でお前ら見てんだよと、益々不気味な面持ちで兄含む四人を見つめた。もうそこにはかつて知った敬うべき人は居ないのだなと、心に諦めの色が浮かぶ。
不快そうに扇を広げて顔を半分隠した王妃は、思いっきり眉間に皺を寄せて、それでも尋ね続けた。
「それで?貴女は王家の約束を破らせてまで何が言いたかったのかしら?」
「はいっ!私、行儀見習いで王宮に来た後、スヴェルト様と出会いましたっ。それで恋に落ちて、真実の愛を見つけたんです。けれどユリアンナ様に意地悪をされるようになって……後宮では除け者にされるし、水をかけられたり、お仕着せを切られたり……大勢で囲まれて嫌味をいわれたりしたんですっ!しかも熱湯をかけられたり、階段から突き落とされたこともっ!私っっっ!」
シクシクとでも言いそうに、目元を指で拭うマーガレットに、後ろの男どもは「マーガレットっ」「もう大丈夫だっ」と騒いでいる。
おいよく見ろ、拭った指は濡れてねぇぞ。
「それだけですか?」
「え?」
「それだけですかと、聞いているのです」
「え、あ、はい。私、謝ってもらえたらそれでっ」
「もう良いです。貴女の妄想は充分です」
「妄想だなんて、私本当にっ!」
「黙りなさい。
良いですか?まず貴族令嬢の行儀見習い、並びに後宮の人員管理・監督の権限と責任は、全て私にあります。貴女が被害に遭ったと証言するものに合致する報告は一切ありません。
水に濡れた行儀見習いの報告も、破れたお仕着せの交換申請も、何一つありません。それで?貴女はまさか、誰にも見咎められずにボロボロのお仕着せに袖を通して着続けていたとでも言うのかしら?」
「え、でもあのっ」
「それにゴーダイル侯爵令嬢には登城の際に、専属の侍女二名、護衛騎士数名をこちらから貸与しています。その者達を抑えて貴女を囲う?お湯をかける?階段から突き落とす?これを妄想と言わずに何と言うのかしら?」
「あ、えっとその侍女さんがっ」
「そう、私が選んで貸与した侍女が粗相をしたと言いたいのね?貴女、私に謝れと、そう仰っているのね?」
「なんでっ違います!私、そんなっ」
「全て私の権限の中で起こったことよ?全ての報告書はもちろん保管しているわ。厳正に調べ上げて調査して差し上げてよ?それで事実であれば、謝罪をして差し上げるけれど、偽りだった場合はどうなるか分かっていて?」
「え……」
「王族に対する偽証と、私に対する侮辱罪よ?お分かり?貴族裁判にかけて貴女を厳正に裁くわ。不当な扱いはしないから、安心して?」
「そんなっ」
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