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一章 信頼できるパートナー
信頼できるパートナー 5
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……って、勇者を怒らせてどうする。
いきなり剣で斬りつけられたから、魔王の好戦的な血が騒いでしまったようだ。
「夢見を邪魔した詫びに、部屋を明るくしてやろう」
ぼくは魔力を使って部屋を明るくした。
人は魔力を使える者が限られているので明かりにはロウソクを使っているけれど、魔王城では魔力で明かりを灯す“魔灯”が当たり前だった。
部屋が明るくなると、ヴィンセントはぼくを見て驚いたように息をのんだ。
不審者に部屋に侵入されて、しかも魔法で部屋を明るくされたら驚くだろうけど。そういうのとはちょっと違う表情な気がする。まあ、いいや。
「相談があって来たのだ、ヴィンセント」
「オレを知っているのか」
ヴィンセントは我に返ったかのようにまばたきをしてから尋ねた。まだ剣をぼくに向けたままだ。
「わたしには少々、先読みの力があってな」
前世の記憶というね。
「我が名はアーシェン。人はわたしを、魔王と呼ぶ」
「魔王、だと……!?」
ヴィンセントの顔が青ざめる。それはそうだろう。世界最強で最恐の魔王が、突如目の前に現れたのだから。
一方ヴィンセントは、勇者とは言ってもまだ駆け出しの騎士だ。実力差がありすぎる。
今の段階では。
「そう身構えるな。危害を加えるつもりはない。わたしがその気であれば、そうして立つことは永遠になかったと思わないか」
ヴィンセントは戸惑った表情を浮かべながら、やがて剣を下ろした。
「本当に、魔王なのか?」
「証明するのは難しいな」
こうして魔王が人前に現れることは滅多にない。おそらく、人は誰も魔王の顔を知らないだろう。
ぼくは窓に厚手のカーテンがかかっていることを確認してから、変身を解いた。角や尻尾が生える。これで少なくても、人間ではないことがわかるだろう。
ヴィンセントは表情を硬くしたまま、ぼくの姿を眺めた。
「魔族がオレに、なんの用があるというんだ」
「勇者の末裔であるヴィンセントに、協力してもらいたいことがある」
「なぜ、それを……」
またヴィンセントが目を見開く。
この段階では、ヴィンセントが勇者の血筋であることは、ごく一部にしか知られていない機密情報だ。
勇者の血筋の人間は、魔王の天敵だ。
もし、記憶を取り戻す前の魔王が天敵である勇者の存在を知っていれば、すぐにでも手を打っただろう。しかし、魔王は勇者がいることを知らなかった。
だけど、今のぼくは知っている。
ぼくが長生きするために、さっき勇者の寝首をかくという手段もあった。選択肢としては思いついたけれど、却下した。
それは、ゲームの強制力のようなものが発動して、想定外の別の勇者が誕生したら厄介だと考えたこともある。
けれど、それ以上に、こう思ったんだ。
自分が生きるために、人の命を奪っていいはずがない。
いきなり剣で斬りつけられたから、魔王の好戦的な血が騒いでしまったようだ。
「夢見を邪魔した詫びに、部屋を明るくしてやろう」
ぼくは魔力を使って部屋を明るくした。
人は魔力を使える者が限られているので明かりにはロウソクを使っているけれど、魔王城では魔力で明かりを灯す“魔灯”が当たり前だった。
部屋が明るくなると、ヴィンセントはぼくを見て驚いたように息をのんだ。
不審者に部屋に侵入されて、しかも魔法で部屋を明るくされたら驚くだろうけど。そういうのとはちょっと違う表情な気がする。まあ、いいや。
「相談があって来たのだ、ヴィンセント」
「オレを知っているのか」
ヴィンセントは我に返ったかのようにまばたきをしてから尋ねた。まだ剣をぼくに向けたままだ。
「わたしには少々、先読みの力があってな」
前世の記憶というね。
「我が名はアーシェン。人はわたしを、魔王と呼ぶ」
「魔王、だと……!?」
ヴィンセントの顔が青ざめる。それはそうだろう。世界最強で最恐の魔王が、突如目の前に現れたのだから。
一方ヴィンセントは、勇者とは言ってもまだ駆け出しの騎士だ。実力差がありすぎる。
今の段階では。
「そう身構えるな。危害を加えるつもりはない。わたしがその気であれば、そうして立つことは永遠になかったと思わないか」
ヴィンセントは戸惑った表情を浮かべながら、やがて剣を下ろした。
「本当に、魔王なのか?」
「証明するのは難しいな」
こうして魔王が人前に現れることは滅多にない。おそらく、人は誰も魔王の顔を知らないだろう。
ぼくは窓に厚手のカーテンがかかっていることを確認してから、変身を解いた。角や尻尾が生える。これで少なくても、人間ではないことがわかるだろう。
ヴィンセントは表情を硬くしたまま、ぼくの姿を眺めた。
「魔族がオレに、なんの用があるというんだ」
「勇者の末裔であるヴィンセントに、協力してもらいたいことがある」
「なぜ、それを……」
またヴィンセントが目を見開く。
この段階では、ヴィンセントが勇者の血筋であることは、ごく一部にしか知られていない機密情報だ。
勇者の血筋の人間は、魔王の天敵だ。
もし、記憶を取り戻す前の魔王が天敵である勇者の存在を知っていれば、すぐにでも手を打っただろう。しかし、魔王は勇者がいることを知らなかった。
だけど、今のぼくは知っている。
ぼくが長生きするために、さっき勇者の寝首をかくという手段もあった。選択肢としては思いついたけれど、却下した。
それは、ゲームの強制力のようなものが発動して、想定外の別の勇者が誕生したら厄介だと考えたこともある。
けれど、それ以上に、こう思ったんだ。
自分が生きるために、人の命を奪っていいはずがない。
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