【完結】討伐される魔王に転生したので世界平和を目指したら、勇者に溺愛されました

じゅん

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一章 信頼できるパートナー

信頼できるパートナー 12

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 えっ、なんで助けられたくせに笑ってるんだ。
 それからヴィンセントの手が剣のグリップにかかっているのが目に入り、ぼくはヴィンセントの意図を察してムッとした。
「わたしを試したな」
「誠意を試すと、はじめから言っていただろう」
 ぼくの行動を見定めるために、ヴィンセントはわざとトラップを発動させたんだ。
 壁際でそれをしたのは、ぼくが助けなかったとき、剣を壁に突き刺して自力で落下を防ぐためだろう。
 ふん、気が済むまで試せばいいさ。ぼくにはヴィンセントの協力が必要だ。
 少々ふてくされぎみに、ぼくは祭壇の前でヴィンセントをおろした。
「協力する」
「えっ」
 ヴィンセントは満面の笑みを浮かべていた。
「オレはアーシェンを信じる」
 そう言ったヴィンセントに、ぼくは強く抱きしめられた。
「試して悪かったな。あんな顔をさせるつもりはなかったんだ」
 ぼくはどんな顔をしていたのだろう。ヴィンセントを失うかもしれないと思って怖かったけれども。
 ともかく、ヴィンセントの信頼を得ることができたようで、よかった。
 それはそれとして。
 なぜぼくはヴィンセントに抱きしめられているのだろうか。案外ヴィンセントも、落ちるのが怖かったのか。
「ヴィンセント、最後の大仕事が残っているぞ」
 広い背中をポンとたたくと、ヴィンセントは名残惜しそうな表情で、そっとぼくを解放した。
「そうだな」
 ヴィンセントは祭壇の階段をのぼり、台座の大剣の前に立つ。
 勇者にしか抜けないと言われている伝説の聖剣、カレトヴルッフ。
 とはいえ、それはただ岩を削り取ったような、剣と台座が一体となった岩石のオブジェのようにも見える。
 しかし、その大剣の柄頭にヴィンセントの指先が触れた途端、剣が輝き出した。
「これが……」
 ヴィンセントが目を見張る。剣の変化もさることながら、歴代の勇者たちの力を感じているのかもしれない。
 ヴィンセントが剣を台座から引き抜くと、何百年もそこにあったはずの剣の刃は、研磨したばかりのように虹色に光を反射する。剣を一振りすると、クリスタルが真っ二つに切れた。その断面は滑らかだ。
「こんなに斬れ味のいい剣は初めてだ。よく手にも馴染む」
 ヴィンセントは聖剣をうっとりと眺めている。
 一方、ヴィンセントが台座から剣を引き抜いてから、ぼくは寒気が増した。聖剣カレトヴルッフが魔封じの剣であり、ぼくの大敵なのだと実感する。
「それを持ち歩くのなら、せめてこの鞘に入れてほしい」
 ぼくは急いで、聖なる力が漏れないような鞘を魔法で生成した。
 正確には、魔王城にある大剣用の鞘をこちらに転移して、聖属性を封じる呪いをかけたのだけど。魔法といっても、無から有を生み出すのは難しい。
 呪いといっても、剣が鞘から抜けなくなることもないし、聖剣の性能が落ちることもないので、無問題だろう。
「魔法って便利だな」
 ヴィンセントは素直に聖剣を鞘におさめた。するとぼくの身体はずいぶんと楽になったので、強張っていた肩を脱力させた。
「さあ、なにから始める? オレは全面的に協力するぞ」
「そうだな……」
 ぼくは指の背であごをなでながら、しばし考える。
 小競り合いは国境付近で起きているのだから、その場を視察してもいいかもしれない。
 人間側と交渉できるなら、国境を明確にするのも手だろう。そこまで行けば、不可侵のような条約を結んだり――。
「アーシェンの話を聞いた時に、違和感があったんだよな」
 ヴィンセントが話しかけてきたので、思考を中断して視線を向ける。
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