【完結】討伐される魔王に転生したので世界平和を目指したら、勇者に溺愛されました

じゅん

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一章 信頼できるパートナー

信頼できるパートナー 13

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「アーシェンの話を聞いた時に、違和感があったんだよな」
 ヴィンセントが話しかけてきたので、思考を中断して視線を向ける。
「アーシェンは仲間たちに、人を襲わないように命じていると言っていた。だけど実際、村は襲われているんだぜ」
「まさか」
「侵略、みたいな大事じゃないけどさ。畑を荒らしたり、家に侵入して窃盗したり。もちろん、魔族を追い出そうとした人が負傷することもある」
「そうなのか」
 幹部経由で伝達しているので、末端まで話が届いていないのだろうか。もしくは、話を聞いていても守っていないのかもしれない。
 もしかしたら、今日の会議で話が出ていたのかもしれないけど、ぼくは頭が痛くてそれどころではなかった。
「まずは魔族と人との関係を、正確に把握したほうがいいかもしれないな」
 ぼくは呟く。
 今までのぼくは争いごとに、というよりも、何事にも無関心だった。
 唯一の関心ごと、愛情を持っていたのは、弟のピッピだけだ。
「状況を理解していて、冷静に説明してくれそうな人物に心当たりがある。話を聞いてくるから、いったん解散しよう。ヴィンセントには今日の夜にでも報告に行く」
 その彼には、個人的に特別な思い入れもあるんだよね。
 このダンジョンにはそれなりに時間がかかったので、きっと日が昇っている時刻だろう。
「報告なんて二度手間だろ。今から話を聞きに行くなら、オレもついていく」
 また予想外な発言がヴィンセントから飛び出した。
「わたしが話を聞こうとしている者は、こちらの城にいる魔族の幹部なのだが」
「オレは行っちゃいけねえの? オレたちパートナーだろ」
「パートナー……?」
 ぼくは目を丸くした。
 世界平和なんて壮大なプロジェクトを始めた、ぼくとヴィンセント。
 確かに、パートナーという関係性はピッタリかもしれない。
 そうか。ぼくたちはパートナーになったのか。
「パートナー」
 その言葉をしみじみ噛みしめる。
 ずっと病室で独りぼっちだった。
 今まで親友どころか、一人も友達がいなかったぼくの胸は、じんわりと温かくなった。
「嬉しそうだな」
「別にっ」
 ヴィンセントがニヤニヤ笑うので、ぼくは顔をそむけた。それから、チラリと彼に目を向ける。
「恐ろしくはないのか。魔族の中枢だぞ」
「どうして? アーシェンが一緒なのに」
 その言葉に、頬が熱くなるのを自覚した。
 ぼくを信用しすぎだろ。そりゃいろいろ試されたけど、昨日今日会ったばかりなのに。
 でも、嬉しい。
「わかった。ヴィンセントの身はわたしが守ろう」
「なに言ってんだ。オレは騎士だぜ。守るのはオレの仕事だ」
 ニッとヴィンセントは口角を上げた。
「騎士ならば、昼間は勤めがあるのではないか?」
「ある。だから、先にオレの部屋に寄ってくれないか?」
 ヴィンセントの部屋に行って、魔王城に戻る。瞬間移動はかなり魔力を消費するけど、なんとかなりそうだ。
 自分の魔力残量を感覚で確認すると、言われたとおりにヴィンセントの部屋に瞬間移動した。厚手のカーテンの隙間から光がさしていて、カーテンを開けると眩しい光が目を刺激した。
 予想していたとおり、外は明るくなっていた。太陽の高さからして、まだ早朝のようだ。
「これでよし」
 ヴィンセントは机に向かっている。置き手紙を書いていたようだ。
「なんと書いたんだ」
「修行に出るから心配するな、ってことだよ」
 それからヴィンセントは、ナップザックのような皮の袋に、いくつかの荷物を入れ始めた。
「それは?」
「大したものじゃない。アーシェンの部屋に置かせてくれ」
「それは構わないが……」
 なにを持って行くのか気になったけど、ヴィンセントなら悪だくみをしているはずもないので、「まあ、いいや」と思う。
「では行きますか、相棒」
 ヴィンセントがぼくの肩に腕を回してくる。それはまったく不快ではなく、むしろ嬉しく思った。
「ああ、行こう」
 ぼくはヴィンセントと一緒に、魔王城に瞬間移動した。
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