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三章 愛しい人との別れ
愛しい人との別れ 13
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「うん、淋しかった」
ぼくが素直に頷くと、ヴィンセントは内側から湧き上がるような笑みを浮かべた。
「そうか。じゃあ、もっと近くにいてやる」
ヴィンセントがすぐ傍に来てぼくの腰に手を回し、抱きしめてきた。
「ここまで近くなくていいんだけど……」
離れようと胸のところで手を突っぱねても、逞しいヴィンセントの身体はびくともしなかった。
「オレも、アーシェンに会いたくてたまらなかった」
息混じりの声が耳朶をくすぐり、ぼくは抵抗をやめた。
そっか。ヴィンセントもぼくに会いたいと思ってくれていたんだ。
胸の内側が温かくなった気がした。そして体温の高いヴィンセントに包まれていると、物理的にも温かくなる。
でもこれでは熱すぎて、逆に寝苦しいかも。
「アーシェン」
顔をあげるとさっきよりも熱っぽいブルーの瞳があった。
「ヴィンセント」
この目、知ってる。
あの夜の……。
「あれから、一人でした?」
丁度その夜のことを思い出していたので、ぼくの心臓は大きく跳ねた。
「ぼくには……、龍神族には発情期はないと言ったじゃないか」
こんなにくっついている時に、その話を蒸し返さないでほしい。
いろいろされてしまったあれやこれ、それに自分の痴態を思い出し、ぼくは湯気が出そうなほど全身が熱くなった。
「恥ずかしがることじゃないだろ。人なんて、しょっちゅう発情するじゃないか」
「以前のぼくも、そういうことはなかったから、わからないよ」
「そうか? オレはしたくなる。好きな人といると」
「……好きな人」
ヴィンセントの好きな人って、誰だろう。
浮かんできたのは、猫型の獣人であるクロムだ。それから、最近はレザードともヴィンセントは仲がよかった。
「やだ」
そんな話、聞きたくない。ぼくは悲しくなってうつむいた。
ついさっきまで胸がホカホカしていたのに。どうしてしまったんだろう、ぼくは。
「悪い、アーシェンになにかするつもりはない。浮かれて先走りすぎた」
なだめるようにヴィンセントはぼくの黒髪をなでて、元の位置まで戻った。
さっきは近すぎると思ったのに、今度はそれも悲しく感じる。
ぼくは本当にどうしたんだろう。情緒不安定だ。アルコールのせいかな。
「アーシェン、手をつないでいてもいいか?」
ぼくは頷いて、ヴィンセントに手を伸ばした。その手がヴィンセントの大きな手に握られる。
ヴィンセントがこの部屋に初めて来た日も、こうして手を握って眠った。あの日、ヴィンセントは生い立ちとか、いろんな話をしてくれて、すごく距離が縮まったんだ。
もっと、ヴィンセントと仲良くなりたい。
……やっぱり、さっきみたいにギュッとされたいな。
そう思ったけど、口にするのは恥ずかしかった。
だからもう一方の手でもヴィンセントの手を握った。
温かくて、大きくて、筋張っていて、剣ダコのある、逞しい手。
この手、好きだな……。
そう思いながら、ぼくは眠りに落ちた。
ぼくが素直に頷くと、ヴィンセントは内側から湧き上がるような笑みを浮かべた。
「そうか。じゃあ、もっと近くにいてやる」
ヴィンセントがすぐ傍に来てぼくの腰に手を回し、抱きしめてきた。
「ここまで近くなくていいんだけど……」
離れようと胸のところで手を突っぱねても、逞しいヴィンセントの身体はびくともしなかった。
「オレも、アーシェンに会いたくてたまらなかった」
息混じりの声が耳朶をくすぐり、ぼくは抵抗をやめた。
そっか。ヴィンセントもぼくに会いたいと思ってくれていたんだ。
胸の内側が温かくなった気がした。そして体温の高いヴィンセントに包まれていると、物理的にも温かくなる。
でもこれでは熱すぎて、逆に寝苦しいかも。
「アーシェン」
顔をあげるとさっきよりも熱っぽいブルーの瞳があった。
「ヴィンセント」
この目、知ってる。
あの夜の……。
「あれから、一人でした?」
丁度その夜のことを思い出していたので、ぼくの心臓は大きく跳ねた。
「ぼくには……、龍神族には発情期はないと言ったじゃないか」
こんなにくっついている時に、その話を蒸し返さないでほしい。
いろいろされてしまったあれやこれ、それに自分の痴態を思い出し、ぼくは湯気が出そうなほど全身が熱くなった。
「恥ずかしがることじゃないだろ。人なんて、しょっちゅう発情するじゃないか」
「以前のぼくも、そういうことはなかったから、わからないよ」
「そうか? オレはしたくなる。好きな人といると」
「……好きな人」
ヴィンセントの好きな人って、誰だろう。
浮かんできたのは、猫型の獣人であるクロムだ。それから、最近はレザードともヴィンセントは仲がよかった。
「やだ」
そんな話、聞きたくない。ぼくは悲しくなってうつむいた。
ついさっきまで胸がホカホカしていたのに。どうしてしまったんだろう、ぼくは。
「悪い、アーシェンになにかするつもりはない。浮かれて先走りすぎた」
なだめるようにヴィンセントはぼくの黒髪をなでて、元の位置まで戻った。
さっきは近すぎると思ったのに、今度はそれも悲しく感じる。
ぼくは本当にどうしたんだろう。情緒不安定だ。アルコールのせいかな。
「アーシェン、手をつないでいてもいいか?」
ぼくは頷いて、ヴィンセントに手を伸ばした。その手がヴィンセントの大きな手に握られる。
ヴィンセントがこの部屋に初めて来た日も、こうして手を握って眠った。あの日、ヴィンセントは生い立ちとか、いろんな話をしてくれて、すごく距離が縮まったんだ。
もっと、ヴィンセントと仲良くなりたい。
……やっぱり、さっきみたいにギュッとされたいな。
そう思ったけど、口にするのは恥ずかしかった。
だからもう一方の手でもヴィンセントの手を握った。
温かくて、大きくて、筋張っていて、剣ダコのある、逞しい手。
この手、好きだな……。
そう思いながら、ぼくは眠りに落ちた。
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