【完結】討伐される魔王に転生したので世界平和を目指したら、勇者に溺愛されました

じゅん

文字の大きさ
41 / 57
三章 愛しい人との別れ

愛しい人との別れ 12

しおりを挟む
 だから、仲がいいのはわかったって。
 疎外感からか胸がチクリと痛くなって、ぼくは拗ねたくなった。
 それから、ヴィンセント一人でぼくに向かって歩いてくる。
「オレも行く」
 ぼくは不思議に思って、「なぜ?」と首をかしげた。
「アーシェンといたいからだ。迷惑か?」
 ヴィンセントは、ぼくが孤児院に来た時と同じセリフを言って、二ッと笑った。ぼくはふるふると首を横に振る。もちろん、嬉しい。
「だけど、クロムや子供たちは?」
「もうだいじょうぶだ。クロムはオレの立場を理解してくれた」
 ヴィンセントが軽く手を振ると、クロムはぼくたちに向かって両手を大きく振った。
「また来いよ! みんな、ヴィンセントたちにバイバイして」
「バイバーイ!」
「また遊んで!」
「ピョンピョンさせて!」
 ぼくたちは孤児院のメンバーに見送られて、瞬間移動でぼくの部屋に戻った。
「この部屋に来るのは、久しぶりな気がするな」
 ヴィンセントがぼくのモノトーンの部屋を見回した。
「ところで、その袋の中身はなんだったんだ?」
「ブルーチーズ」
 ヴィンセントも知らないようだったので、塩気があってワインにも合うはずだと教えると、夕食よりだいぶ早い酒盛りが始まった。こっちに来てから、ぼくは何度もお酒をたしなんでいる。
 ぼくたちは会っていなかった数日のことを報告し合った。
 ヴィンセントといると、どうしてこんなに楽しいのだろう。
 それに、全身の魔力がみなぎっていることも自覚している。魔力は精神面にも大きく影響するようだ。
「酔っちゃった」
 ふふっと笑って、ぼくは膝を抱えるようにしてかかとをソファーにのせた。ヴィンセントと二人きりの時は、素の自分を出せる。
「今日からまた、この部屋で寝ていいだろ? 特に明日は付き合ってもらいたい場所があるから、朝から共に行動できた方が都合がいい」
 その件については大歓迎だ。一人寝をするには、このベッドは広すぎる。
「どこに行くの?」
「明日説明する。楽しい話じゃないから今は考えたくない。せっかく、久々の二人きりの夜なのに」
 ヴィンセントが熱っぽい瞳で見つめてくるので、ドキリとして視線をそらした。
 ぼくはヴィンセントといると、すぐにドキドキしてしまう。
「そうだね、一人だと、なかなか寝付けなかったんだ。もう寝ようよ」
 ぼくはソファから立ち上がり、ベッドにもぐりこむ。既に寝衣に着替え済みだ。
 尻尾があるので、ぼくはいつもヴィンセント側を向いて寝ている。どうせ部屋を暗くするので、お互いの顔は見えない。
 ヴィンセントも続いてベッドに入ってくる。ぼくは魔灯を暗めにした。もう少しおしゃべりをしそうなので、まだ真っ暗にはしない。
「なあ、アーシェン」
「なに?」
「オレがいなくて、淋しかったか?」
 ぼくは閉じていた目を開ける。一人分ほど距離をあけたところに仰向けになっているヴィンセントが、顔だけこちらに向けていた。
「うん、淋しかった」
 ぼくが素直に頷くと、ヴィンセントは内側から湧き上がるような笑みを浮かべた。
「そうか。じゃあ、もっと近くにいてやる」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

勇者は魔王!?〜愛を知らない勇者は、魔王に溺愛されて幸せになります〜

天宮叶
BL
十歳の誕生日の日に森に捨てられたソルは、ある日、森の中で見つけた遺跡で言葉を話す剣を手に入れた。新しい友達ができたことを喜んでいると、突然、目の前に魔王が現れる。 魔王は幼いソルを気にかけ、魔王城へと連れていくと部屋を与え、優しく接してくれる。 初めは戸惑っていたソルだったが、魔王や魔王城に暮らす人々の優しさに触れ、少しずつ心を開いていく。 いつの間にか魔王のことを好きになっていたソル。2人は少しずつ想いを交わしていくが、魔王城で暮らすようになって十年目のある日、ソルは自身が勇者であり、魔王の敵だと知ってしまい_____。 溺愛しすぎな無口隠れ執着魔王 × 純粋で努力家な勇者 【受け】 ソル(勇者) 10歳→20歳 金髪・青眼 ・10歳のとき両親に森へ捨てられ、魔王に拾われた。自身が勇者だとは気づいていない。努力家で純粋。闇魔法以外の全属性を使える。 ノクス(魔王) 黒髪・赤目 年齢不明 ・ソルを拾い育てる。段々とソルに惹かれていく。闇魔法の使い手であり、歴代最強と言われる魔王。無口だが、ソルを溺愛している。 今作は、受けの幼少期からスタートします。それに伴い、攻めとのガッツリイチャイチャは、成人編が始まってからとなりますのでご了承ください。 BL大賞参加作品です‼️ 本編完結済み

異世界で王子様な先輩に溺愛されちゃってます

野良猫のらん
BL
手違いで異世界に召喚されてしまったマコトは、元の世界に戻ることもできず異世界で就職した。 得た職は冒険者ギルドの職員だった。 金髪翠眼でチャラい先輩フェリックスに苦手意識を抱くが、元の世界でマコトを散々に扱ったブラック企業の上司とは違い、彼は優しく接してくれた。 マコトはフェリックスを先輩と呼び慕うようになり、お昼を食べるにも何をするにも一緒に行動するようになった。 夜はオススメの飲食店を紹介してもらって一緒に食べにいき、お祭りにも一緒にいき、秋になったらハイキングを……ってあれ、これデートじゃない!? しかもしかも先輩は、実は王子様で……。 以前投稿した『冒険者ギルドで働いてたら親切な先輩に恋しちゃいました』の長編バージョンです。

大魔法使いに生まれ変わったので森に引きこもります

かとらり。
BL
 前世でやっていたRPGの中ボスの大魔法使いに生まれ変わった僕。  勇者に倒されるのは嫌なので、大人しくアイテムを渡して帰ってもらい、塔に引きこもってセカンドライフを楽しむことにした。  風の噂で勇者が魔王を倒したことを聞いて安心していたら、森の中に小さな男の子が転がり込んでくる。  どうやらその子どもは勇者の子供らしく…

限界オタクだった俺が異世界に転生して王様になったら、何故か聖剣を抜いて勇者にクラスチェンジした元近衛騎士に娶られました。

篠崎笙
BL
限界ヲタクだった来栖翔太はトラックに撥ねられ、肌色の本を撒き散らして無惨に死んだ。だが、異世界で美少年のクリスティアン王子として転生する。ヲタクな自分を捨て、立派な王様になるべく努力した王子だったが。近衛騎士のアルベルトが勇者にクラスチェンジし、竜を退治した褒美として結婚するように脅され……。 

天涯孤独な天才科学者、憧れの異世界ゲートを開発して騎士団長に溺愛される。

竜鳴躍
BL
年下イケメン騎士団長×自力で異世界に行く系天然不遇美人天才科学者のはわはわラブ。 天涯孤独な天才科学者・須藤嵐は子どもの頃から憧れた異世界に行くため、別次元を開くゲートを開発した。 チートなし、チート級の頭脳はあり!?実は美人らしい主人公は保護した騎士団長に溺愛される。

俺の妹は転生者〜勇者になりたくない俺が世界最強勇者になっていた。逆ハーレム(男×男)も出来ていた〜

陽七 葵
BL
 主人公オリヴァーの妹ノエルは五歳の時に前世の記憶を思い出す。  この世界はノエルの知り得る世界ではなかったが、ピンク髪で光魔法が使えるオリヴァーのことを、きっとこの世界の『主人公』だ。『勇者』になるべきだと主張した。  そして一番の問題はノエルがBL好きだということ。ノエルはオリヴァーと幼馴染(男)の関係を恋愛関係だと勘違い。勘違いは勘違いを生みノエルの頭の中はどんどんバラの世界に……。ノエルの餌食になった幼馴染や訳あり王子達をも巻き込みながらいざ、冒険の旅へと出発!     ノエルの絵は周囲に誤解を生むし、転生者ならではの知識……はあまり活かされないが、何故かノエルの言うことは全て現実に……。  友情から始まった恋。終始BLの危機が待ち受けているオリヴァー。はたしてその貞操は守られるのか!?  オリヴァーの冒険、そして逆ハーレムの行く末はいかに……異世界転生に巻き込まれた、コメディ&BL満載成り上がりファンタジーどうぞ宜しくお願いします。 ※初めの方は冒険メインなところが多いですが、第5章辺りからBL一気にきます。最後はBLてんこ盛りです※

【完結】異世界に召喚された賢者は、勇者に捕まった!

華抹茶
BL
日本の一般的なサラリーマンである竹内颯太は、会社へ出勤する途中で異世界に召喚されてしまう。 「勇者様! どうかこの世界をお救いください!」 なんと颯太は『勇者』として、この世界に誕生してしまった魔王を倒してほしいと言われたのだ。 始めは勝手に召喚されたことに腹を立て、お前たちで解決しろと突っぱねるも、王太子であるフェリクスに平伏までされ助力を請われる。渋々ではあったが、結局魔王討伐を了承することに。 魔王討伐も無事に成功し、颯太は元の世界へと戻ることになった。 「ソウタ、私の気持ちを受け取ってくれないか? 私はあなたがいてくれるなら、どんなことだってやれる。あなたを幸せにすると誓う。だからどうか、どうか私の気持ちを受け取ってください」 「ごめん。俺はお前の気持ちを受け取れない」 元の世界へ帰る前日、フェリクスに告白される颯太。だが颯太はそれを断り、ひとり元の世界へと戻った。のだが―― 「なんでまた召喚されてんだよぉぉぉぉぉ!!」 『勇者』となった王太子×『勇者』として異世界召喚されたが『賢者』となったサラリーマン ●最終話まで執筆済み。全30話。 ●10話まで1日2話更新(12時と19時)。その後は1日1話更新(19時) ●Rシーンには※印が付いています。

処理中です...