30 / 32
5 神の怒り【恐怖指数 ★★★★★】
神の怒り【恐怖指数 ★★★★★】 4
しおりを挟む
(あれ、痛くない)
目を開くと翔陽にかばわれていて、キツネは翔陽の腕をかんでいた。
「翔ちゃん!」
「冴子」
翔陽は歯を食いしばりながらも、冴子の名を呼んだ。
冴子は翔陽の意図を理解してキツネにかけよると、黒く大きな体に札を貼った。
さっきのキツネと同じように悲鳴をあげると、二匹目のキツネも消滅した。
「翔ちゃん、血がっ」
鋭い牙が食い込んだ跡がいくつもあり、血が流れだしている。足のケガより深そうだ。
「ごめんなさい、わたしのせいで」
「女の子に傷が残ったら大変だからな」
「男の子だって大変だよ」
アカリはどうすればいいかわからずに泣いてしまう。
「止血しましょ」
冴子はポケットからハンカチを出して、翔陽の腕に巻き付けた。
「翔陽は抜けたほうがいいわよ。病院に行って」
「痛ぇけど、腕も指も動くし、だいじょうぶだろ。だいたい、本番はこれからだ」
(そうだ、まだ終わりじゃないんだ)
拝殿の方を見ると、邪神が近づいてきていた。
――光の中だとはいえ、ここまでやるとは思わなかった。驚いたよ。
邪神から、ほほ笑みが消えた。
――我を怒らせるとはな。命までは取らないつもりだったが、やめた。
邪神の目が光った。
「……なっ、体が、動かねえっ」
翔陽の動きがとまった。
「……冴子ちゃんも?」
アカリは動きをとめて、視線だけ動かして冴子を見た。
「アカリに書いてもらったのに、どうして」
冴子も戸惑いの声をあげる。
――力の差は歴然だと言っただろう。おまえたちはおかしな道具を使うからな。動きをとめさせてもらおう。
「京四郎……っ!」
振り絞るように翔陽が叫ぶと、ヘリコプターの動きが変わった。
《了解だ》
ヘリコプターから、なにかが放射される。
それは、聖水だった。
聖水を浴びると、金縛りが解けて、また動けるようになった。三人はずぶぬれになった。
「ヘリ無双だな。これなら邪神も聖水を浴び……てねえか」
邪神はなにか呪を唱えて、聖水を弾いていた。
――あれも邪魔だな。そろそろ退場させるとするか。
邪神が再び大量の管ギツネを作ると、管ギツネたちはヘリコプターに向かった。主にプロペラ付近に集まる。
《計器がおかしくなった。すまない、いったん引き上げる》
京四郎を乗せたヘリコプターは、ふらつきながら離れてしまった。
おかげで、神社全体を照らしていたライトがなくなり、暗くなってしまう。月明かりがあるので真っ暗ではないが、光といっしょにパワーまで奪われた気になった。濡れた体が風で冷えていく。
――さて、今度こそ動きをとめさせてもらおう。
「みんな、こいつの目を見るなよ。さっき、目が光った時に動けなくなったんだ」
翔陽がするどく言う。
――ほう、よく覚えているじゃないか。では、これはどう防ぐ?
邪神が呪を唱えだした。
「なんだ、これは」
お経のように途切れることのない声が聞こえてくると、耳の奥を引っ掻かれるような不快感が襲った。耳を塞いでも聞こえてくる。
アカリたちはたまらず、耳を塞ぎながらしゃがみ込んだ。
「くそ、またか……」
翔陽はしゃがんだまま動けなくなった。
――さて、我は一人だけ殺そうと思う。誰がいいと思う? 意見を聞こう。
邪神は腕を組み、笑みを浮かべながら三人を見回した。三人とも、口を開かない。
――どうやって殺そうか。一思いには殺さない。その死にざまを見届けるのが、二人が生き残る条件だ。一生、記憶に残る死に方にしてやろう。
「あんた、それでも元土地神か。最低だな」
翔陽が邪神をにらむ。
――我を変えたのは人間よ。宮司家族は、心の美しい者たちだった。最低限の暮らしをし、人のために尽くす生き方をしていた。まだ小学生だった娘も親をよく手伝っていた。あの家系はずっとそうだった。我は人に失望した。
「だからって、関係ない奴に仕返ししたって、仕方がないだろ」
――強盗には手を下した。それでも乾きは収まらない。神体が血に染まった時、我は荒振神に変化した。人の幸福を願うものから、不幸を願うものになった。それだけだ。
邪神は翔陽の前でしゃがみ、翔陽の顎を指ですくった。
――さて、おまえ。死にたいようだな。
歯を食いしばった翔陽は勝気に、邪神から視線をそらさない。
「二人には手を出すなよ」
――約束しよう。
「やめて! わたしにして!」
アカリが叫んだ。
目を開くと翔陽にかばわれていて、キツネは翔陽の腕をかんでいた。
「翔ちゃん!」
「冴子」
翔陽は歯を食いしばりながらも、冴子の名を呼んだ。
冴子は翔陽の意図を理解してキツネにかけよると、黒く大きな体に札を貼った。
さっきのキツネと同じように悲鳴をあげると、二匹目のキツネも消滅した。
「翔ちゃん、血がっ」
鋭い牙が食い込んだ跡がいくつもあり、血が流れだしている。足のケガより深そうだ。
「ごめんなさい、わたしのせいで」
「女の子に傷が残ったら大変だからな」
「男の子だって大変だよ」
アカリはどうすればいいかわからずに泣いてしまう。
「止血しましょ」
冴子はポケットからハンカチを出して、翔陽の腕に巻き付けた。
「翔陽は抜けたほうがいいわよ。病院に行って」
「痛ぇけど、腕も指も動くし、だいじょうぶだろ。だいたい、本番はこれからだ」
(そうだ、まだ終わりじゃないんだ)
拝殿の方を見ると、邪神が近づいてきていた。
――光の中だとはいえ、ここまでやるとは思わなかった。驚いたよ。
邪神から、ほほ笑みが消えた。
――我を怒らせるとはな。命までは取らないつもりだったが、やめた。
邪神の目が光った。
「……なっ、体が、動かねえっ」
翔陽の動きがとまった。
「……冴子ちゃんも?」
アカリは動きをとめて、視線だけ動かして冴子を見た。
「アカリに書いてもらったのに、どうして」
冴子も戸惑いの声をあげる。
――力の差は歴然だと言っただろう。おまえたちはおかしな道具を使うからな。動きをとめさせてもらおう。
「京四郎……っ!」
振り絞るように翔陽が叫ぶと、ヘリコプターの動きが変わった。
《了解だ》
ヘリコプターから、なにかが放射される。
それは、聖水だった。
聖水を浴びると、金縛りが解けて、また動けるようになった。三人はずぶぬれになった。
「ヘリ無双だな。これなら邪神も聖水を浴び……てねえか」
邪神はなにか呪を唱えて、聖水を弾いていた。
――あれも邪魔だな。そろそろ退場させるとするか。
邪神が再び大量の管ギツネを作ると、管ギツネたちはヘリコプターに向かった。主にプロペラ付近に集まる。
《計器がおかしくなった。すまない、いったん引き上げる》
京四郎を乗せたヘリコプターは、ふらつきながら離れてしまった。
おかげで、神社全体を照らしていたライトがなくなり、暗くなってしまう。月明かりがあるので真っ暗ではないが、光といっしょにパワーまで奪われた気になった。濡れた体が風で冷えていく。
――さて、今度こそ動きをとめさせてもらおう。
「みんな、こいつの目を見るなよ。さっき、目が光った時に動けなくなったんだ」
翔陽がするどく言う。
――ほう、よく覚えているじゃないか。では、これはどう防ぐ?
邪神が呪を唱えだした。
「なんだ、これは」
お経のように途切れることのない声が聞こえてくると、耳の奥を引っ掻かれるような不快感が襲った。耳を塞いでも聞こえてくる。
アカリたちはたまらず、耳を塞ぎながらしゃがみ込んだ。
「くそ、またか……」
翔陽はしゃがんだまま動けなくなった。
――さて、我は一人だけ殺そうと思う。誰がいいと思う? 意見を聞こう。
邪神は腕を組み、笑みを浮かべながら三人を見回した。三人とも、口を開かない。
――どうやって殺そうか。一思いには殺さない。その死にざまを見届けるのが、二人が生き残る条件だ。一生、記憶に残る死に方にしてやろう。
「あんた、それでも元土地神か。最低だな」
翔陽が邪神をにらむ。
――我を変えたのは人間よ。宮司家族は、心の美しい者たちだった。最低限の暮らしをし、人のために尽くす生き方をしていた。まだ小学生だった娘も親をよく手伝っていた。あの家系はずっとそうだった。我は人に失望した。
「だからって、関係ない奴に仕返ししたって、仕方がないだろ」
――強盗には手を下した。それでも乾きは収まらない。神体が血に染まった時、我は荒振神に変化した。人の幸福を願うものから、不幸を願うものになった。それだけだ。
邪神は翔陽の前でしゃがみ、翔陽の顎を指ですくった。
――さて、おまえ。死にたいようだな。
歯を食いしばった翔陽は勝気に、邪神から視線をそらさない。
「二人には手を出すなよ」
――約束しよう。
「やめて! わたしにして!」
アカリが叫んだ。
14
あなたにおすすめの小説
見える私と聞こえる転校生
柚木ゆず
児童書・童話
「この中に、幽霊が見える人はいませんか?」
幽霊が見える中学1年生の少女・市川真鈴のクラスに転校生としてやって来た、水前寺良平。彼のそんな一言が切っ掛けとなり、真鈴は良平と共に人助けならぬ幽霊助けをすることになるのでした――。
運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
星降る夜に落ちた子
千東風子
児童書・童話
あたしは、いらなかった?
ねえ、お父さん、お母さん。
ずっと心で泣いている女の子がいました。
名前は世羅。
いつもいつも弟ばかり。
何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。
ハイキングなんて、来たくなかった!
世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。
世羅は滑るように落ち、気を失いました。
そして、目が覚めたらそこは。
住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。
気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。
二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。
全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。
苦手な方は回れ右をお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。
石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!
こちらは他サイトにも掲載しています。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
児童書・童話
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
ローズお姉さまのドレス
有沢真尋
児童書・童話
*「第3回きずな児童書大賞」エントリー中です*
最近のルイーゼは少しおかしい。
いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。
話し方もお姉さまそっくり。
わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。
表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる