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番外編 瑠可/楓
番外編 Luka-5
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恋人になってからの初めてのデートは海に行った。
篠崎さんが車を出してくれた。
渋滞に嵌まったせいで海に着いた時はお昼過ぎだった。
目的地の海水浴場は人が多く、渋滞の疲れもあって泳ぐ気にならないボクの足は海の家に向かった。
そんなボクに篠崎さんは怒ることもなく合わせてくれた。
「瑠可、そろそろ僕のこと名前で呼んで欲しいな」
「ええっ……は、恥ずかしい」
篠崎さんはいつの間にか、ボクのことを呼び捨てにしていた。
篠崎さんは年上なのに、お付き合いするまで呼び捨てにされなかったほうが不思議だ。
人の多くてなんか疲れちゃったねと篠崎さんは言い、海の家でかき氷を食べたら帰ることにした。
また渋滞に嵌りたくなかったからボクもそれで構わなかった。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
「瑠可、キスしていい?」
サービスエリアで休憩して車に戻った時、篠崎さんが聞いてきたからボクはビックリした。
けど、恋人なんだからするよね。
「ボクたち、今恋人同士ですよ。そんなの聞かないで。そっちの方が恥ずかしい…」
「ははっ、そうだね」
恥ずかしがるボクを見て笑った篠崎さんは、助手席のシートに手を掛けてキスをしてきた。
啄むようなキスから、少しずつ深いキスに。
車内に響くリップ音が厭らしくて心臓が高鳴る。
キスは初めてじゃないのに余裕がなくなって、縋るように篠崎さんの服にしがみ付いた。
「んっ…ぁん…そこ…」
篠崎さんの手が服の上から胸の尖を触れた。
「瑠可……触りたい」
唇を少しだけ離して言われてドキドキした。
篠崎さんの匂いに身体が熱くなる。
「しの…春樹さん……触って…」
身体の疼きに耐えきれず篠崎さんの右手をシャツの中に招き入れると、ススっとボクの肌を滑るように上に向かって撫でてきた。
「瑠可の肌はすべすべだね。気持ちいいよ…」
「あ…ぅん…はる…き、さん、ちゃんと触ってぇ…」
胸の尖を避け触る手がもどかしくて、その手を掴んで触れてもらう。
「瑠可は積極的なんだね。でも可愛いよ」
「はぁっ…るき、さんっ…んあっ」
舌を絡ませるキスをしながら、篠崎さんは左手も服の中に潜り込ませて、両手でボクの尖を撫でたり摘んだりする。
ボクは篠崎さんの首に腕を回して、必死に快感に堪える。
気持ちいい。
もっともっと触って欲しい。
身体が求めるまま、声を上げる。
でも、頭の芯は凪いでいた。
篠崎さんとの行為を傍観している気持ちがどこかにあった。
「瑠可、君を抱きたい。いい?」
ハッとして一気に身体の熱が引いた。
見上げると欲情を孕んだ目がボクを見ていた。
「あ、あのっ……此処じゃあ……ダメです…」
こんないつ人が通るかわからないところでするなんて…。
「ふっ、そうだね。僕だけが瑠可のすべてをみたいから、ここでは止めようね。……でも、戻ったらしたい」
耳元で囁かれて、真っ赤になったボクはコクと頷くだけでやっとだった。
でも、結局、この日は何もしなかった。
帰りの渋滞に巻き込まれからだ。
「年甲斐もなく興奮しちゃって、ごめんね」
篠崎さんは苦笑しながら謝ってくれた。
そんな顔を見て、どこかホッとしているボクがいた。
これがあの人だったら……なんて一瞬思ってしまって、フルフルと頭を振る。
「そ、そんなことないです」
「次はリベンジさせて」
「……はい」
篠崎さんは優しい。
ボクを大事にしてくれてるって何度も実感してるのに、なんでボクの胸の奥は冷たいままなの。
胸の位置のシャツを握りしめる。
「瑠可、次のデートどうしようか?」
「宿題少しやらないと。……あ、でも来月、発情期が来るから、その後でいいですか?」
宿題がたくさん出てるから、発情期が来る前には片付けておきたい。
そんなことを考えながら次はいつがいいかなって考えていたら、一瞬、篠崎さんから鋭い視線を感じた。
チラッと見たけど、ニコニコ笑顔だった。
「来月の瑠可の発情期いつ?」
「えっと、たぶん中旬です」
「そう……」
「篠崎さん?」
考え込むような顔の篠崎さんに不思議になって声を掛けるとふふっと笑われた。
「また苗字に戻っちゃったね」
「ご、ごめんなさい」
「いいよ。それより、来月の発情期の時、会えないかな?」
「え…それって……」
まさか…。
「まだ早いってわかってるけど……瑠可が良ければ、その時、君の番になりたい」
突然の申し出にボクの頭の中はグルグル混乱した。
上手く息ができなくて口をパクパクする。
「ふっ、番は瑠可が決心するまで待つよ。大事にするって約束したからね。でも、その前に発情期の瑠可を抱きたい。………ダメ?」
そんな言い方、ズルい。
ボクたちは恋人同士だ。
それはセックス込みだ。
選択肢なんて一つしかない……。
そう言葉を発したいのに、喉が詰まって声が出ない。
それでもボクが小さく頷いたら、篠崎さんは嬉しそうにボクを抱きしめた。
目を閉じ、ボクを包み込む匂いを嗅ぐ。
フルーツが混じるフローラルの匂いに心を落ち着かせようとするけど落ち着かない。
あの匂いじゃない…。
それだけで、心が揺さぶられるのは何故?
ボクは自分の目尻が少し潤んでいたけど気付かないふりをした。
篠崎さんが車を出してくれた。
渋滞に嵌まったせいで海に着いた時はお昼過ぎだった。
目的地の海水浴場は人が多く、渋滞の疲れもあって泳ぐ気にならないボクの足は海の家に向かった。
そんなボクに篠崎さんは怒ることもなく合わせてくれた。
「瑠可、そろそろ僕のこと名前で呼んで欲しいな」
「ええっ……は、恥ずかしい」
篠崎さんはいつの間にか、ボクのことを呼び捨てにしていた。
篠崎さんは年上なのに、お付き合いするまで呼び捨てにされなかったほうが不思議だ。
人の多くてなんか疲れちゃったねと篠崎さんは言い、海の家でかき氷を食べたら帰ることにした。
また渋滞に嵌りたくなかったからボクもそれで構わなかった。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
「瑠可、キスしていい?」
サービスエリアで休憩して車に戻った時、篠崎さんが聞いてきたからボクはビックリした。
けど、恋人なんだからするよね。
「ボクたち、今恋人同士ですよ。そんなの聞かないで。そっちの方が恥ずかしい…」
「ははっ、そうだね」
恥ずかしがるボクを見て笑った篠崎さんは、助手席のシートに手を掛けてキスをしてきた。
啄むようなキスから、少しずつ深いキスに。
車内に響くリップ音が厭らしくて心臓が高鳴る。
キスは初めてじゃないのに余裕がなくなって、縋るように篠崎さんの服にしがみ付いた。
「んっ…ぁん…そこ…」
篠崎さんの手が服の上から胸の尖を触れた。
「瑠可……触りたい」
唇を少しだけ離して言われてドキドキした。
篠崎さんの匂いに身体が熱くなる。
「しの…春樹さん……触って…」
身体の疼きに耐えきれず篠崎さんの右手をシャツの中に招き入れると、ススっとボクの肌を滑るように上に向かって撫でてきた。
「瑠可の肌はすべすべだね。気持ちいいよ…」
「あ…ぅん…はる…き、さん、ちゃんと触ってぇ…」
胸の尖を避け触る手がもどかしくて、その手を掴んで触れてもらう。
「瑠可は積極的なんだね。でも可愛いよ」
「はぁっ…るき、さんっ…んあっ」
舌を絡ませるキスをしながら、篠崎さんは左手も服の中に潜り込ませて、両手でボクの尖を撫でたり摘んだりする。
ボクは篠崎さんの首に腕を回して、必死に快感に堪える。
気持ちいい。
もっともっと触って欲しい。
身体が求めるまま、声を上げる。
でも、頭の芯は凪いでいた。
篠崎さんとの行為を傍観している気持ちがどこかにあった。
「瑠可、君を抱きたい。いい?」
ハッとして一気に身体の熱が引いた。
見上げると欲情を孕んだ目がボクを見ていた。
「あ、あのっ……此処じゃあ……ダメです…」
こんないつ人が通るかわからないところでするなんて…。
「ふっ、そうだね。僕だけが瑠可のすべてをみたいから、ここでは止めようね。……でも、戻ったらしたい」
耳元で囁かれて、真っ赤になったボクはコクと頷くだけでやっとだった。
でも、結局、この日は何もしなかった。
帰りの渋滞に巻き込まれからだ。
「年甲斐もなく興奮しちゃって、ごめんね」
篠崎さんは苦笑しながら謝ってくれた。
そんな顔を見て、どこかホッとしているボクがいた。
これがあの人だったら……なんて一瞬思ってしまって、フルフルと頭を振る。
「そ、そんなことないです」
「次はリベンジさせて」
「……はい」
篠崎さんは優しい。
ボクを大事にしてくれてるって何度も実感してるのに、なんでボクの胸の奥は冷たいままなの。
胸の位置のシャツを握りしめる。
「瑠可、次のデートどうしようか?」
「宿題少しやらないと。……あ、でも来月、発情期が来るから、その後でいいですか?」
宿題がたくさん出てるから、発情期が来る前には片付けておきたい。
そんなことを考えながら次はいつがいいかなって考えていたら、一瞬、篠崎さんから鋭い視線を感じた。
チラッと見たけど、ニコニコ笑顔だった。
「来月の瑠可の発情期いつ?」
「えっと、たぶん中旬です」
「そう……」
「篠崎さん?」
考え込むような顔の篠崎さんに不思議になって声を掛けるとふふっと笑われた。
「また苗字に戻っちゃったね」
「ご、ごめんなさい」
「いいよ。それより、来月の発情期の時、会えないかな?」
「え…それって……」
まさか…。
「まだ早いってわかってるけど……瑠可が良ければ、その時、君の番になりたい」
突然の申し出にボクの頭の中はグルグル混乱した。
上手く息ができなくて口をパクパクする。
「ふっ、番は瑠可が決心するまで待つよ。大事にするって約束したからね。でも、その前に発情期の瑠可を抱きたい。………ダメ?」
そんな言い方、ズルい。
ボクたちは恋人同士だ。
それはセックス込みだ。
選択肢なんて一つしかない……。
そう言葉を発したいのに、喉が詰まって声が出ない。
それでもボクが小さく頷いたら、篠崎さんは嬉しそうにボクを抱きしめた。
目を閉じ、ボクを包み込む匂いを嗅ぐ。
フルーツが混じるフローラルの匂いに心を落ち着かせようとするけど落ち着かない。
あの匂いじゃない…。
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