至高のオメガとガラスの靴

むー

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登校日

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夏休みの一大イベントといえば……。

8月5日のアカリちゃんの誕生日!

夏休み期間中にある登校日には、アカリちゃんに想いを寄せる猛者たちだけでなく、淡い想いを持つ人たちがプレゼントを渡しにくるイベントが中学に上がってから始まった。
アカリちゃんは毎年、一人一人に丁寧に断っていたけど、去年からは一切受けらとないと宣言した。
それでもこっそり机に置いていく生徒が後を絶たず、誰からかもわからないプレゼントを無碍に捨てるのも後味が悪いので、落とし物として担任に届けるようになった。


そんな今年の夏休みの登校日。

今年もまた机に置かれたプレゼントの山に「はああぁぁぁぁー」と盛大なため息を吐くアカリちゃんと、テキパキと段ボールを組み立てポイポイとプレゼントを投げ込むマサキとトーマ。
一応、割れ物でないことを確認しながらやっているらしい。
僕も手伝うけど、マサキやトーマほどのスピードではできないので、机の中のプレゼントを出したりマサキやトーマに手渡しする手伝いをしている。
アカリちゃんは離れたところで見学。
というのも、去年、贈られたプレゼントの中に精液が付いたものがあって、他のオメガよりも鼻が利くアカリちゃんは、手に取っただけで具合が悪くなってしまった。
そのため、プレゼントは僕たちで回収して、アカリちゃんには一切触れさせないことにした。
だから、僕たちも一応軍手を装着して作業している。

「今年も多いな」
「毎年毎年懲りずによくやるよな。金の無駄遣い。もったいねー」

マサキとトーマは文句を言いつつ作業をしてくれる。

「そういえば」

何かを思い出したのかマサキが手を止めアカリちゃんを見る。

「何?」
「昇降口で一城先輩からプレゼント渡されていたな」
「あーあれねー」

アカリちゃんはボリボリ頭をかいて、また盛大なため息を吐く。

「『指輪なんだ』とか言って渡そうとしたから『キモい』って蹴り返した」
「うん、アレ面白かった」
「マサキ見てたのかよ。俺も見たかったー」

思い出したのかニヤニヤと笑うマサキと現場を目撃できなかったことを本気で悔しがるトーマにアカリちゃんはすっごく嫌な顔をした。

僕は目の前で見た。

一城先輩はいつも通り、アカリちゃんに近寄ろうとして避けられ、僕を汚物を見るような目で一瞥した。
「本当は当日に渡したかったんだけど」とポケットから取り出したのは小さな箱。
「アカリくんに似合う宝石で作った指輪なんだ。アカリくん、誕ーー」
「キモっ、キモい!キモキモ星に帰れー!」

一城先輩の言葉を遮りアカリちゃんは「キモい」を連発してプレゼントを蹴りで顔面に突っ返すと、僕を引っ張って教室に向かった。

「『キモい』以外のボキャブラリーのない棗に珍しくて涙が出たよ」
「泣くほど笑ったのかよ」

ははははと一頻り笑うと、マサキは真顔になった。

「でもさ、真面目な話、アレちょっとヤバいよな」
「ストーカー予備軍か?」
「それとは違う。説明できないんだけど」

マサキは珍しく口籠もった。
その様子に何かを思い出したのかトーマは口を開いた。

「そういえば、俺、校門のとこであの人見たけど、車で登校しての見たら、おぼっちゃまだったの思い出したわ」
「思い出さなくても、おぼっちゃまだろ」
「ん、まあ、そうなんだけど……あとさ…運転手がさ……」
「運転手が何?」
「…不気味だった」

トーマの言葉に僕は漠然とした不安に襲われたけど、アカリちゃんは特に感じてはいないようだ。

「なぁ、棗、お前鼻いいだろ。なんかわかんない?」
「えー知らない。というか、そんな奴いたんだ?見たことないから全然わかんなかった。あ、一城先輩が臭すぎるからかな、あははっ」

カラカラと笑うアカリちゃんに、マサキとトーマは笑い返さなかった。

「まあ、棗はもちろんだけど、ヒロも気を付けろよ」

普段あまり見せない真剣なマサキの目に一瞬怯んでしまった。

「うん、わかった」

話が終わると作業を再開して、プレゼントを入れた段ボールを職員室に届けた。

❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎

その帰り。

みんなで一緒に帰ろうと、昇降口を出て校門を目指すと、そこには一城先輩がいた。

アカリちゃんは鼻を摘んで僕の腕を掴むと、マサキとトーマの後ろに隠れた。

「おや、アカリくん、どうしたんだい?」
「見りゃ分かるでしょ。つか、先輩のメンタル鋼ですか?」

アカリちゃんの代わりにトーマが応えた。
それに対して一城先輩は鼻で笑うと、マサキとトーマの肩がピクッと動いた。

「アカリくんもいい加減、付き合う人間を見極めた方がいいよ。ちょっと頭のいいベータと運動神経だけのベータじゃ、いざと言う時に君を守ってくれないよ。……ああ、あと、能無しのアルファもいたね」
「はぁ?マサキもトーマも口は悪いけど、ボクの最高の友達だよ。それに、ヒロは能無しじゃない。ヒロのことを理解できないあんたの方がよっぽど能無しだよ」

マサキとトーマの後ろから飛び出したアカリちゃんは、低い声で冷たく言った。

「あとさ、先輩、自分行動にもっと気をつけた方がいいですよ。たっくさん、匂い付いてますよ」
「な、何を言ってるのかな?」

一城先輩は口角をヒクヒク引き攣らせた。

「言って欲しいのならーー」
「可那斗様」

いつの間にか一城先輩の後ろに男の人がいた。
朝、トーマが話していた運転手らしい。

「相模…、ああ分かった。アカリくん、誕生日おめでとう」

相模と呼ばれた人に耳打ちされた一城先輩は、アッサリ帰って行った。
一瞬、相模さんと目が合った気がした。
その一瞬で僕の背筋に寒気が走った。

「なんだよ、あれ?」

腹を立ててるトーマの肩をマサキが宥めるようにポンと叩く。

「わかんない……けど…」
「けど?」

顎に手をかけて考え込むアカリちゃんに言いかけた言葉の続きを待つ。

「あの人、何も匂いがしなかった」

そう言い僕の手を握るアカリちゃんの手が僕と同じくらい冷たかった。

__________________

何話か追加したため、この話を含む前後を修正予定です。
※内容の変更はありません。

次回は0時更新予定です。

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