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アカリちゃんと発情期② 前編
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8月の後半。
夏休みも終盤。
僕が悶々としているうちに、アカリちゃんの発情期が始まった。
朝、アカリちゃんのお母さんが僕の家に報告に来てくれた。
紅茶を出してお母さんと一緒に話を聞く。
「今回もちょっと酷くてね、3、4日は逢えないと思うの、ヒロくん、ごめんね」
「ううん、百合ちゃん気にしないで」
百合ちゃんはアカリちゃんのお母さんの名前だ。
僕は子供の頃から「百合ちゃん」、アカリちゃんは僕のお母さんのことを「貴美ちゃん」と呼んでいる。
百合ちゃんは僕のことを実の子供のように可愛がってくれる。
だから、アカリちゃんの発情期が始まるとこうして状況を教えてくれる。
百合ちゃんは紅茶を一口飲むと僕に言った。
「ヒロくん、そろそろアカリと番にならない?」
「えっ」
僕はビックリして持っていたティーカップを落としそうになった。
「あなた達はまだ学生だから、もう少し先でもって思ってるんだけど……アカリがね……」
ゴクリ。
僕の唾を飲み込み音が2人に聞こえたんじゃないかと思うくらい僕の耳に大きく響いた。
「ヒロくんも気付いているんじゃない?アカリの発情期、だんだん酷くなっているの」
そうだ、中学2年ではじめて発情期を迎えた頃は、お母さんに言われないと分からないくらい軽かった。
少しずつ酷くなっていって、中学3年の頃には1、2日部屋に閉じ籠るようになった。
その症状は高校1年、去年には3日まで長引いて、前回の5月は4日間会うことが出来なかった。
同じオメガである百合ちゃんも発情期はあるけど、番であるアカリちゃんのお父さんがいるから軽いと聞いている。
まだ番のいないアカリちゃんは抑制剤で抑えるしかない。
発情期を迎える度に酷くなるアカリちゃんの様子は、百合ちゃんから見てもう限界に近いようだった。
酷い発情期はフェロモン異常を起こしてしまうことがあるらしい。
フェロモン異常を起こしてしまったら、周期関係なく突発的に発情期になってしまい外出もままならなくなってしまう。
それは番を得ても続く。
それだけじゃない。
酷い発情期は少しずつ精神を蝕む。
それほど酷い発情期を、アカリちゃんはひとりで耐えているんだ。
そんなアカリちゃんの番に僕が…。
「番……僕がアカリちゃんの…」
「強要するつもりはないけど、私も蒼くんもヒロくんがアカリの番になってくれたらいいなって思っているの」
「お母さんもお父さんも大賛成よ」
「お母さん……」
僕がアカリちゃんの番に。
"欠陥品アルファ"って呼ばれている僕が…。
「これだけはあなた達の気持ちが大事だから、アカリとちゃんと話し合ってもらえないかしら?」
「……はい」
即答できず俯く僕の頭をお母さんが何も言わずに優しく撫でてくれた。
「アカリが落ち着いたらすぐ連絡するから顔見せに来てね」
そう言うと、百合ちゃんは帰って行った。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
それから毎日、考えて考えて、気付くとアカリちゃんの家の玄関のドアの前に来てしまっていた。
ドアを見つめていても答えが書いているわけでもないのに、何も浮かばない頭でただドアを見つめていた。
アカリちゃんの発情期が始まって5日目。
気付けば今日もアカリちゃんの家の玄関のドアを見つめていた。
百合ちゃんからの連絡はまだなかった。
ふぅと小さく息を吐いて自宅に戻ろうとした。
ガシャーン!
何かが割れる大きな音が家の中から聞こえた。
「え……」
耳を澄ますと少しして「ドサッ」と何かが落ちたような音が微かに聞こえた。
だけどその後は静まり返って何も聞こえなかった。
気になってドアノブを掴むと鍵はかかってなくドアが開いた。
「ごめんくださーい」
僕はひょこっと頭だけ中に入って恐る恐る声を掛けたけど、誰も現れない。
どうしようかと考えていたら、二階から「ううっ」と呻き声が聞こえた。
僕は中に入り用心ため玄関の鍵をかけて、静かに二階に上がる。
二階に上がるとまた「お母さん」と小さな声が聞こえて、慌てて声のする部屋に駆け込んだ。
「アカリちゃん!」
「え…ヒロ?」
ドアを開けて名前を呼ぶと、アカリちゃんはベッドの下に蹲っていた。
「アカリちゃん!」
「だ、ダメ!」
アカリちゃんの声に駆け寄ろうとした足が止まる。
「ヒロ…来ちゃ、ダメ…ケガする」
よく見るとアカリちゃんは割れたガラス片の中にいた。
「待ってて」
僕は急いで部屋を出ると、階段を駆け降りた。
リビングに入り、棚の上にある救急箱を取り、玄関に寄ってスリッパを履いて再びアカリちゃんの部屋に戻った。
スリッパを履いたままアカリちゃんの側に行く。
「アカリちゃん、とりあえずお風呂場に行こう」
アカリちゃんの両手を僕の首に回させて抱き上げると、羽根のようにとはいかなかったけど、前より軽く感じた。
アカリちゃんの部屋に備え付けられているお風呂場に行き、浴槽の縁に座らせケガの状態を確認した。
膝と掌が切れてて、そこから絶えず血が出ていた。
「痛いと思うけど我慢してね」
強すぎない水量の温めのシャワーを血が出ているところに掛ける。
痛そうに唸りながら我慢しているアカリちゃんに「もう少しだから」と言って、傷口に付いたガラス片を丁寧に流す。
清潔なバスタオルでアカリちゃんを包み、さっきと同じように抱き上げてベットに戻った。
__________________
次回の0時更新予定です。
夏休みも終盤。
僕が悶々としているうちに、アカリちゃんの発情期が始まった。
朝、アカリちゃんのお母さんが僕の家に報告に来てくれた。
紅茶を出してお母さんと一緒に話を聞く。
「今回もちょっと酷くてね、3、4日は逢えないと思うの、ヒロくん、ごめんね」
「ううん、百合ちゃん気にしないで」
百合ちゃんはアカリちゃんのお母さんの名前だ。
僕は子供の頃から「百合ちゃん」、アカリちゃんは僕のお母さんのことを「貴美ちゃん」と呼んでいる。
百合ちゃんは僕のことを実の子供のように可愛がってくれる。
だから、アカリちゃんの発情期が始まるとこうして状況を教えてくれる。
百合ちゃんは紅茶を一口飲むと僕に言った。
「ヒロくん、そろそろアカリと番にならない?」
「えっ」
僕はビックリして持っていたティーカップを落としそうになった。
「あなた達はまだ学生だから、もう少し先でもって思ってるんだけど……アカリがね……」
ゴクリ。
僕の唾を飲み込み音が2人に聞こえたんじゃないかと思うくらい僕の耳に大きく響いた。
「ヒロくんも気付いているんじゃない?アカリの発情期、だんだん酷くなっているの」
そうだ、中学2年ではじめて発情期を迎えた頃は、お母さんに言われないと分からないくらい軽かった。
少しずつ酷くなっていって、中学3年の頃には1、2日部屋に閉じ籠るようになった。
その症状は高校1年、去年には3日まで長引いて、前回の5月は4日間会うことが出来なかった。
同じオメガである百合ちゃんも発情期はあるけど、番であるアカリちゃんのお父さんがいるから軽いと聞いている。
まだ番のいないアカリちゃんは抑制剤で抑えるしかない。
発情期を迎える度に酷くなるアカリちゃんの様子は、百合ちゃんから見てもう限界に近いようだった。
酷い発情期はフェロモン異常を起こしてしまうことがあるらしい。
フェロモン異常を起こしてしまったら、周期関係なく突発的に発情期になってしまい外出もままならなくなってしまう。
それは番を得ても続く。
それだけじゃない。
酷い発情期は少しずつ精神を蝕む。
それほど酷い発情期を、アカリちゃんはひとりで耐えているんだ。
そんなアカリちゃんの番に僕が…。
「番……僕がアカリちゃんの…」
「強要するつもりはないけど、私も蒼くんもヒロくんがアカリの番になってくれたらいいなって思っているの」
「お母さんもお父さんも大賛成よ」
「お母さん……」
僕がアカリちゃんの番に。
"欠陥品アルファ"って呼ばれている僕が…。
「これだけはあなた達の気持ちが大事だから、アカリとちゃんと話し合ってもらえないかしら?」
「……はい」
即答できず俯く僕の頭をお母さんが何も言わずに優しく撫でてくれた。
「アカリが落ち着いたらすぐ連絡するから顔見せに来てね」
そう言うと、百合ちゃんは帰って行った。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
それから毎日、考えて考えて、気付くとアカリちゃんの家の玄関のドアの前に来てしまっていた。
ドアを見つめていても答えが書いているわけでもないのに、何も浮かばない頭でただドアを見つめていた。
アカリちゃんの発情期が始まって5日目。
気付けば今日もアカリちゃんの家の玄関のドアを見つめていた。
百合ちゃんからの連絡はまだなかった。
ふぅと小さく息を吐いて自宅に戻ろうとした。
ガシャーン!
何かが割れる大きな音が家の中から聞こえた。
「え……」
耳を澄ますと少しして「ドサッ」と何かが落ちたような音が微かに聞こえた。
だけどその後は静まり返って何も聞こえなかった。
気になってドアノブを掴むと鍵はかかってなくドアが開いた。
「ごめんくださーい」
僕はひょこっと頭だけ中に入って恐る恐る声を掛けたけど、誰も現れない。
どうしようかと考えていたら、二階から「ううっ」と呻き声が聞こえた。
僕は中に入り用心ため玄関の鍵をかけて、静かに二階に上がる。
二階に上がるとまた「お母さん」と小さな声が聞こえて、慌てて声のする部屋に駆け込んだ。
「アカリちゃん!」
「え…ヒロ?」
ドアを開けて名前を呼ぶと、アカリちゃんはベッドの下に蹲っていた。
「アカリちゃん!」
「だ、ダメ!」
アカリちゃんの声に駆け寄ろうとした足が止まる。
「ヒロ…来ちゃ、ダメ…ケガする」
よく見るとアカリちゃんは割れたガラス片の中にいた。
「待ってて」
僕は急いで部屋を出ると、階段を駆け降りた。
リビングに入り、棚の上にある救急箱を取り、玄関に寄ってスリッパを履いて再びアカリちゃんの部屋に戻った。
スリッパを履いたままアカリちゃんの側に行く。
「アカリちゃん、とりあえずお風呂場に行こう」
アカリちゃんの両手を僕の首に回させて抱き上げると、羽根のようにとはいかなかったけど、前より軽く感じた。
アカリちゃんの部屋に備え付けられているお風呂場に行き、浴槽の縁に座らせケガの状態を確認した。
膝と掌が切れてて、そこから絶えず血が出ていた。
「痛いと思うけど我慢してね」
強すぎない水量の温めのシャワーを血が出ているところに掛ける。
痛そうに唸りながら我慢しているアカリちゃんに「もう少しだから」と言って、傷口に付いたガラス片を丁寧に流す。
清潔なバスタオルでアカリちゃんを包み、さっきと同じように抱き上げてベットに戻った。
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次回の0時更新予定です。
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