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第十一話 囚われた少女
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少し経つと、地下迷宮のあちこちから衝撃音が鳴り響き、時折、ズズゥゥン……と迷宮全体が地震のように揺れ始めた。
「始まったようね」
カリーナは、揺れる天井から落ちてくる砂を払いもしないで、薄暗い地下通路を真っ直ぐ進んでいた。
(もしかして、ここが盗賊団のアジトなのかしら?)
道脇には、粗末な武器や食料が散らばっていて、ただの運搬用通路とは思えなかった。
道なりに進んでいくと、奥の方から、か細く啜り泣く少女の声が聞こえてきた。
「……!」
カリーナは足を速める。
声を追いかけて走ると、道の先は行き止まりになっていて、そこに鉄の檻で囲まれた小部屋があった。
その冷たい檻の中に、髪が黒く汚れ、砂埃まみれのボロボロの服を身に纏った、齢十歳程の少女が、膝を抱えて囚われていた。
少女の頬は、乾いた涙でカピカピになっていた。
カリーナが一歩近づくと、少女の体がビクッと怯えて跳ねる。
「大丈夫。助けてあげる」
カリーナは少女に優しく伝えると、鉄格子を両手で掴み、グニャリと左右に広げた。
(鍵を探すよりも、こっちの方が早い)
「おいで。お姉さんと逃げよう」
屈んで少女に手を伸ばすと、少女は恐る恐る、震える小さな手を伸ばした。
カリーナはその手をしっかり握り返すと、啜り泣く少女を引き寄せて抱きしめ、背中を優しくさすった。
「もう大丈夫だから……」
しばらく、揺籠のようにさすっていると、少女は落ち着いたのか、小さな声で「降ろしてほしいです」と言った。
カリーナは少女を降ろすと、屈んで目線を合わせた。
「名前は言える?」
少女は深呼吸をすると、ぽつりぽつりと話してくれた。
「わたくしの名前は……アリス」
「アリスね。アリスは誰に連れられてここに来たの?」
「ここには、黒ずくめの人たちに捕まって連れてこられたました……お姉さんの名前は?」
「私の名前はカリーナ・マネニッタ。カリーナって呼んで」
カリーナは精一杯の笑顔でアリスにそう伝えた。
「よし、じゃあここから出るわよ」
カリーナはアリスの手を握り、立ち上がった。
出口に向かおうとしたその時、目の前に銀髪の男が現れた。
「ジルの野郎に呼ばれて来てみれば、一体、何がどうなってやがる」
男は、通路の奥から響く爆発音に、苦悶の表情を浮かべていた。
「そこ、どいてくれるかしら」
カリーナはアリスを背中に隠す。
「ここのアジトで暴れてる、豚や龍人はお前の仲間か?」
「そうだけど」
「チッ……面倒ごとを増やしやがって! どうボスに伝えればいいんだ!」
男は苛立ちを露わにすると、壁をドン!と殴りつけた。
カリーナはそれを見て、アリスを安全な場所へ避難させることにした。
「ねぇアリス。この中は嫌だと思うけど、少しだけ我慢してて」
カリーナは広げた鉄格子の隙間から、再びアリスを檻の中に戻し、隠れさせた。
そして、男に向き直った。
「そいつを連れてくのだけは、この『赤蛇』の幹部、ダン様が許さねぇ」
ダンは不敵に口角を上げると、背中から二本の剣を抜き放った。
カリーナが懐から布を取り出し、拳に巻き付けているのを見て、ダンが嘲笑した。
「クハハハ! これは面白い。まさか丸腰でここに侵入したとはな」
「泣くことになるわよ」
カリーナはキュッと布を結び終えると、手を開閉して感覚を確かめた。
(よし、完璧ね)
「死ねーい!」
ダンは、ブン! ブン!と剣を振り回しながら突っ込んでくる。
「どうした! どうした! その程度か!」
カリーナはその大振りでゆったりとした剣筋を、ひらりひらりと躱すと、隙だらけのダンの右腕を思い切り殴った。
ミシっとダンの骨が軋んだ気がした。
ゴッ!
「グオオ……ッ!?」
ダンの右手から剣がこぼれ落ちる。
「や、やるじゃねぇか……」
ダンは、痺れる腕で地面に落ちた剣を握り直す。
(コイツ、無駄に頑丈ね……疲れるわ)
「次はないわ」
カリーナは構え直し、拳を勢いよく突き出した。拳そのものを当てるのではない。
その衝撃を――飛ばす!!
ブォン!
風切り音と共に、圧縮された空気の塊がダンの腹に直撃した。
「ぶべっ!?」
ダンは血反吐を吐き、後方へ吹き飛んだ。
ドゴーーーン!
隣の通路からは、絶えず爆発音が聞こえてくる。多分、ブレイブがまた何か爆破しているのだろう。
吹き飛んで壁に激突したダンとの距離を、ゆっくりと詰めるカリーナ。
ダンはよろよろと立ちあがっているところだった。
「ま、待て……降参だ、やめ――」
ダンは両手を上げて媚び笑いを浮かべるが、そんな言葉を聞く気は毛頭なかった。
「お断りよ」
カリーナは怒りに任せて、思い切りダンの顔面を殴り飛ばした。
ズドオオオオン!
ダンの巨体は、まるで紙切れのように通路の奥へと飛んでいき、暗闇の彼方へ消えた。
アリスを呼びに行こうと振り返ると、震える足でアリスが檻から出て、後ろをついてきていた。
「危ないから、中に入っててって言ったのに……」
カリーナが言い終わる前に、アリスは私の腰にぎゅっと抱きついた。
「だって……怖かったのです……」
「……もう、大丈夫だから」
カリーナはアリスを背負い直すと、来た道を引き返した。
背中に温もりが伝わる。
(ジルのことは、アイツらに任せておけば大丈夫ね)
カリーナは仲間たちを信じ、まずはこの小さな命を地上へ届けるべく走り出した。
「始まったようね」
カリーナは、揺れる天井から落ちてくる砂を払いもしないで、薄暗い地下通路を真っ直ぐ進んでいた。
(もしかして、ここが盗賊団のアジトなのかしら?)
道脇には、粗末な武器や食料が散らばっていて、ただの運搬用通路とは思えなかった。
道なりに進んでいくと、奥の方から、か細く啜り泣く少女の声が聞こえてきた。
「……!」
カリーナは足を速める。
声を追いかけて走ると、道の先は行き止まりになっていて、そこに鉄の檻で囲まれた小部屋があった。
その冷たい檻の中に、髪が黒く汚れ、砂埃まみれのボロボロの服を身に纏った、齢十歳程の少女が、膝を抱えて囚われていた。
少女の頬は、乾いた涙でカピカピになっていた。
カリーナが一歩近づくと、少女の体がビクッと怯えて跳ねる。
「大丈夫。助けてあげる」
カリーナは少女に優しく伝えると、鉄格子を両手で掴み、グニャリと左右に広げた。
(鍵を探すよりも、こっちの方が早い)
「おいで。お姉さんと逃げよう」
屈んで少女に手を伸ばすと、少女は恐る恐る、震える小さな手を伸ばした。
カリーナはその手をしっかり握り返すと、啜り泣く少女を引き寄せて抱きしめ、背中を優しくさすった。
「もう大丈夫だから……」
しばらく、揺籠のようにさすっていると、少女は落ち着いたのか、小さな声で「降ろしてほしいです」と言った。
カリーナは少女を降ろすと、屈んで目線を合わせた。
「名前は言える?」
少女は深呼吸をすると、ぽつりぽつりと話してくれた。
「わたくしの名前は……アリス」
「アリスね。アリスは誰に連れられてここに来たの?」
「ここには、黒ずくめの人たちに捕まって連れてこられたました……お姉さんの名前は?」
「私の名前はカリーナ・マネニッタ。カリーナって呼んで」
カリーナは精一杯の笑顔でアリスにそう伝えた。
「よし、じゃあここから出るわよ」
カリーナはアリスの手を握り、立ち上がった。
出口に向かおうとしたその時、目の前に銀髪の男が現れた。
「ジルの野郎に呼ばれて来てみれば、一体、何がどうなってやがる」
男は、通路の奥から響く爆発音に、苦悶の表情を浮かべていた。
「そこ、どいてくれるかしら」
カリーナはアリスを背中に隠す。
「ここのアジトで暴れてる、豚や龍人はお前の仲間か?」
「そうだけど」
「チッ……面倒ごとを増やしやがって! どうボスに伝えればいいんだ!」
男は苛立ちを露わにすると、壁をドン!と殴りつけた。
カリーナはそれを見て、アリスを安全な場所へ避難させることにした。
「ねぇアリス。この中は嫌だと思うけど、少しだけ我慢してて」
カリーナは広げた鉄格子の隙間から、再びアリスを檻の中に戻し、隠れさせた。
そして、男に向き直った。
「そいつを連れてくのだけは、この『赤蛇』の幹部、ダン様が許さねぇ」
ダンは不敵に口角を上げると、背中から二本の剣を抜き放った。
カリーナが懐から布を取り出し、拳に巻き付けているのを見て、ダンが嘲笑した。
「クハハハ! これは面白い。まさか丸腰でここに侵入したとはな」
「泣くことになるわよ」
カリーナはキュッと布を結び終えると、手を開閉して感覚を確かめた。
(よし、完璧ね)
「死ねーい!」
ダンは、ブン! ブン!と剣を振り回しながら突っ込んでくる。
「どうした! どうした! その程度か!」
カリーナはその大振りでゆったりとした剣筋を、ひらりひらりと躱すと、隙だらけのダンの右腕を思い切り殴った。
ミシっとダンの骨が軋んだ気がした。
ゴッ!
「グオオ……ッ!?」
ダンの右手から剣がこぼれ落ちる。
「や、やるじゃねぇか……」
ダンは、痺れる腕で地面に落ちた剣を握り直す。
(コイツ、無駄に頑丈ね……疲れるわ)
「次はないわ」
カリーナは構え直し、拳を勢いよく突き出した。拳そのものを当てるのではない。
その衝撃を――飛ばす!!
ブォン!
風切り音と共に、圧縮された空気の塊がダンの腹に直撃した。
「ぶべっ!?」
ダンは血反吐を吐き、後方へ吹き飛んだ。
ドゴーーーン!
隣の通路からは、絶えず爆発音が聞こえてくる。多分、ブレイブがまた何か爆破しているのだろう。
吹き飛んで壁に激突したダンとの距離を、ゆっくりと詰めるカリーナ。
ダンはよろよろと立ちあがっているところだった。
「ま、待て……降参だ、やめ――」
ダンは両手を上げて媚び笑いを浮かべるが、そんな言葉を聞く気は毛頭なかった。
「お断りよ」
カリーナは怒りに任せて、思い切りダンの顔面を殴り飛ばした。
ズドオオオオン!
ダンの巨体は、まるで紙切れのように通路の奥へと飛んでいき、暗闇の彼方へ消えた。
アリスを呼びに行こうと振り返ると、震える足でアリスが檻から出て、後ろをついてきていた。
「危ないから、中に入っててって言ったのに……」
カリーナが言い終わる前に、アリスは私の腰にぎゅっと抱きついた。
「だって……怖かったのです……」
「……もう、大丈夫だから」
カリーナはアリスを背負い直すと、来た道を引き返した。
背中に温もりが伝わる。
(ジルのことは、アイツらに任せておけば大丈夫ね)
カリーナは仲間たちを信じ、まずはこの小さな命を地上へ届けるべく走り出した。
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