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第十二話 報酬
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「うるせぇよ、静かにしてろ。その膨れた腹を、俺が食い破るぞ。おい」
地下迷宮から続く階段を登りきると、そんなブルーのドスの利いた声が聞こえてきた。
「ひっ……!」
アリスはその声を聞き、カリーナの背中に顔をうずめて震え上がった。
「お、帰ってきたか。ん? その背中にいるのは誰だ?」
地上の一階部分に戻ると、すでに全員が集合していた。ブルーの太い腕には、ビクビクと震えるジルが、まるで獲物に睨まれた小動物のように大人しく捕まっていた。
「ジルを捕まえてくれたのね、よくやったわ」
カリーナはブルーを褒めた。
「すべて吐いてくれたこいつはもう用済みだが、その背中に背負ってるのは誰だよ」
「何を吐いたの?」
「盗賊団と共謀していたことと、その動機だな。度重なる盗賊団による被害で会長を失脚させたかったんだとよ」
ブルーは、ジルをゴミ袋のように足元に転がすと、カリーナの背中に視線を移した。
「誰だ、それ」
「この子は、この盗賊団に捕まっていた子よ」
アリスを紹介するも、彼女はオークであるブルーを怖がり、顔を背中に押し付けたままだった。
「おい、ジル!テメェも何とか言えよ」
ブルーは急に静かになったジルの体を揺らしてみるが、うんともすんとも反応しなかった。
「なんだ、こいつ死んだのか?」
ジルは、カリーナの背中にいるアリスを見て、目を見開くと全てを悟ったかのように押し黙っていた。
「その子、どうするつもりだ?」
ブレイブが尋ねる。
「とりあえず、私たちの宿に連れて行くわ」
カリーナは背中の温もりに向かって、小声で囁いた。
「大丈夫だからね、アリス」
「てな訳で、私はこの子を宿に連れて行くから、報告よろしくね。あ、アイも一緒に来て」
「分かりました」
◆◇◆◇
「行っちまったな……」
ブルーは、用済み扱いされているジルをズルズルと引きずる。
「仕方ねぇ、俺たちで報告しに行くか」
「地下通路はそのままで良いのか?」
サラマンダーは二人を呼び止めた。
「あー、それは……この国の兵にでも任せとけ」
ブレイブは、面倒くさそうに適当に流してこの場から立ち去っていった。
◆◇◆◇
「バラガはいるかー?」
ブルーが、ボコボコにされたジルを荷物のように引きずりながらロビーに入る。
「ジ、ジル副会長!?」
受付の女性が、変わり果てた上司の姿に驚愕し、悲鳴を上げそうになった。
「おい、ブルー。そんなショッキングなもんを見せるな」
ブレイブは、ジルを隠すように前に立つと、受付嬢に精一杯の爽やかな笑顔を作って誤魔化してみせる。
「手遅れだと思うぜ」
ブルーはぼそりと呟いた。
しばらくして、騒ぎを聞きつけたバラガが、階段を降りてきた。
「……そこでくたばっているのは、ジルか?」
「そうだ。コイツ、商会の地下に盗賊団のアジトを作って、しかも人まで攫ってたゴミ野郎だったぜ」
ブルーは、ジルをバラガの足元に放り投げると、真実を告げた。
バラガは目頭を強く押さえると、沈黙を貫いているジルの首根っこを掴み上げ、無理やり立たせる。
「……バカ野郎ッ!!」
バギィッ!
バラガの拳が、ジルの顔面にめり込んだ。
「貴様! どうしてこんなことを……答えろ!」
バラガは、ジルの首から手を離すと、そのまま力無くその場に膝をついた。
その背中からは哀しみが漂っていた。
ジルは顔を腫らし、伏せたまま、最後まで何も言わなかった。
やがて――駆けつけた街の警備兵に連行されていった。
「すまない……見苦しいところを見せてしまったな」
バラガは老け込んだ顔で軽く頭を下げると、俺たちを応接室に案内した。
◆◇◆◇
全員が椅子に座るのを確認すると、バラガは深呼吸をして話し合いを始めた。
「依頼を達成したから、報酬をくれ」
ブレイブは、遠慮なくバラガに求めた。
「ああ、約束だ。何が欲しい?」
「その、何だ? 最新の飛行船? 何だっけ、サラマンダー」
カリーナからふわっとした話しか聞いていなかったブレイブは、説明できずにサラマンダーに助けを求めた。
そんなブレイブの代わりに、サラマンダーは答えた。
「『スターダッシュ号』。あの試作機を報酬にお願いしたい」
「『スターダッシュ号』か……」
バラガは少し考えた後、顔を上げた。
「良いぞ」
バラガはあっさりと承諾した。
提案が却下されると考えていた三人は、お互いに顔を見合わせた。
「まだ一台しか出来ていなくてな、販売すらしていない代物なんだ。君たちが乗って世界を回ることで、良い宣伝にもなるだろう。喜んで差し上げるよ」
バラガには、商人としての打算的な考えがあった。
「じゃあ、遠慮なく貰ってくぜ」
ブルーがニヤリと笑う。
「どうぞ」
「どこにあるんだ?」
「倉庫に厳重に保管してある。最終調整も兼ねて、明日渡そう。場所はここだ。明日、取りに来てくれ」
バラガは、保管場所が記された紙をブレイブに渡した。
「そうだ!あと、黒い爆発する球も出来るだけ沢山くれ」
「それは構わないが……何個だ?」
「500ぐらい。良いだろ?俺たちが解決しなかったら、多分、この商会潰れていたんだし」
ブレイブは、笑顔でバラガに伝える。
「あ、ああ」
「よし、これで俺たちが頼む報酬は全てだ」
ブレイブとブルーは、飛行船に飽き足らず、更に多くのものを報酬に頼んだ。
「君たち、遠慮というものを知らんのか……」
バラガは小さく呟いた。
「じゃあな、バラガ」
ブルーは席を立った。
「この件を解決してくれて、心から感謝している」
バラガは、テーブルに頭がつくほど深く下げた。
「あいよ」
ブレイブはその感謝を軽く受け取ると、紙をひらつかせながら応接室から出ていった。
◆◇◆◇
宿屋にある風呂場で、アイとカリーナに洗われたアリスは、清潔な服に着替え、二人に髪を拭かれていた。
「綺麗な茶髪ですね」
泥と油汚れを落としたことで、アリスの真っ直ぐで艶やかな茶髪が現れた。
そんな髪を、アイが櫛で梳かしながら撫でる。
「見て、まつ毛もこんなに長いのよ」
カリーナはアリスを後ろから抱きしめ、その愛らしさに頬を緩めた。
アリスは、されるがままに身を任せていた。
「一緒に寝ようね」
「はい……」
カリーナは、アリスと一緒に布団に入る。
ふかふかの布団に包まれると、アリスはすぐに安らかな寝息を立て始めた。
「寝てしまいましたね」
アイは、まるで気絶したように深く眠るアリスの寝顔を見て、微笑んだ。
「そうね……怖かったでしょうに」
カリーナはアリスの頭を優しく撫でた。
その時だった。
バンッ!!!
「おい、カリーナ! 良い知らせだぞ!!」
ブレイブが、勢いよく扉を開けて入ってくる。
「明日だぜ!明日だぜ!」
それに続いて、興奮したブルーもドカドカと入って来た。
その爆音にビクッと反応し、アリスが目を覚ましてしまった。
カリーナは、ベッドから立ち上がると、入り口に立っている無神経な男二人の元へ向かった。
「聞いてくれよ、カリーナ!」
ブレイブが何があったかを嬉々として説明しようとする。
「あんた達のせいで!アリスが起きたじゃないのよ!!」
「は? 知らねぇよ。てか誰だよ、アリスって」
ブルーが間の抜けた声を出す。
「今日、保護した子の名前よ!」
「へー」
ブルーは興味無さそうに反応した。
「はぁ……部屋の外で話しましょう!」
カリーナは小さくため息を吐くと、ブルーとブレイブを強引に部屋の外に押し出し、扉を閉めた。
廊下の薄暗い明かりの下で、四人は向き合う。
「で、何があったの?」
カリーナが腕を組んで三人に尋ねる。
「目当ての報酬を貰えたぞ」
ブレイブが、白い歯を見せて答える。
「……本当!? やったわね!」
カリーナの表情が一変し、ブレイブとハイタッチをした。
「受け渡しは明日だそうだ」
ブレイブは、バラガからもらった地図をカリーナに渡す。
「遂に……何処までも行ける、私たちの足を手に入れられるのね」
カリーナは地図を広げて、満面の笑みを浮かべた。
「足じゃなくて、羽根だろ」
ブルーは、そんなことを呟いた。
地下迷宮から続く階段を登りきると、そんなブルーのドスの利いた声が聞こえてきた。
「ひっ……!」
アリスはその声を聞き、カリーナの背中に顔をうずめて震え上がった。
「お、帰ってきたか。ん? その背中にいるのは誰だ?」
地上の一階部分に戻ると、すでに全員が集合していた。ブルーの太い腕には、ビクビクと震えるジルが、まるで獲物に睨まれた小動物のように大人しく捕まっていた。
「ジルを捕まえてくれたのね、よくやったわ」
カリーナはブルーを褒めた。
「すべて吐いてくれたこいつはもう用済みだが、その背中に背負ってるのは誰だよ」
「何を吐いたの?」
「盗賊団と共謀していたことと、その動機だな。度重なる盗賊団による被害で会長を失脚させたかったんだとよ」
ブルーは、ジルをゴミ袋のように足元に転がすと、カリーナの背中に視線を移した。
「誰だ、それ」
「この子は、この盗賊団に捕まっていた子よ」
アリスを紹介するも、彼女はオークであるブルーを怖がり、顔を背中に押し付けたままだった。
「おい、ジル!テメェも何とか言えよ」
ブルーは急に静かになったジルの体を揺らしてみるが、うんともすんとも反応しなかった。
「なんだ、こいつ死んだのか?」
ジルは、カリーナの背中にいるアリスを見て、目を見開くと全てを悟ったかのように押し黙っていた。
「その子、どうするつもりだ?」
ブレイブが尋ねる。
「とりあえず、私たちの宿に連れて行くわ」
カリーナは背中の温もりに向かって、小声で囁いた。
「大丈夫だからね、アリス」
「てな訳で、私はこの子を宿に連れて行くから、報告よろしくね。あ、アイも一緒に来て」
「分かりました」
◆◇◆◇
「行っちまったな……」
ブルーは、用済み扱いされているジルをズルズルと引きずる。
「仕方ねぇ、俺たちで報告しに行くか」
「地下通路はそのままで良いのか?」
サラマンダーは二人を呼び止めた。
「あー、それは……この国の兵にでも任せとけ」
ブレイブは、面倒くさそうに適当に流してこの場から立ち去っていった。
◆◇◆◇
「バラガはいるかー?」
ブルーが、ボコボコにされたジルを荷物のように引きずりながらロビーに入る。
「ジ、ジル副会長!?」
受付の女性が、変わり果てた上司の姿に驚愕し、悲鳴を上げそうになった。
「おい、ブルー。そんなショッキングなもんを見せるな」
ブレイブは、ジルを隠すように前に立つと、受付嬢に精一杯の爽やかな笑顔を作って誤魔化してみせる。
「手遅れだと思うぜ」
ブルーはぼそりと呟いた。
しばらくして、騒ぎを聞きつけたバラガが、階段を降りてきた。
「……そこでくたばっているのは、ジルか?」
「そうだ。コイツ、商会の地下に盗賊団のアジトを作って、しかも人まで攫ってたゴミ野郎だったぜ」
ブルーは、ジルをバラガの足元に放り投げると、真実を告げた。
バラガは目頭を強く押さえると、沈黙を貫いているジルの首根っこを掴み上げ、無理やり立たせる。
「……バカ野郎ッ!!」
バギィッ!
バラガの拳が、ジルの顔面にめり込んだ。
「貴様! どうしてこんなことを……答えろ!」
バラガは、ジルの首から手を離すと、そのまま力無くその場に膝をついた。
その背中からは哀しみが漂っていた。
ジルは顔を腫らし、伏せたまま、最後まで何も言わなかった。
やがて――駆けつけた街の警備兵に連行されていった。
「すまない……見苦しいところを見せてしまったな」
バラガは老け込んだ顔で軽く頭を下げると、俺たちを応接室に案内した。
◆◇◆◇
全員が椅子に座るのを確認すると、バラガは深呼吸をして話し合いを始めた。
「依頼を達成したから、報酬をくれ」
ブレイブは、遠慮なくバラガに求めた。
「ああ、約束だ。何が欲しい?」
「その、何だ? 最新の飛行船? 何だっけ、サラマンダー」
カリーナからふわっとした話しか聞いていなかったブレイブは、説明できずにサラマンダーに助けを求めた。
そんなブレイブの代わりに、サラマンダーは答えた。
「『スターダッシュ号』。あの試作機を報酬にお願いしたい」
「『スターダッシュ号』か……」
バラガは少し考えた後、顔を上げた。
「良いぞ」
バラガはあっさりと承諾した。
提案が却下されると考えていた三人は、お互いに顔を見合わせた。
「まだ一台しか出来ていなくてな、販売すらしていない代物なんだ。君たちが乗って世界を回ることで、良い宣伝にもなるだろう。喜んで差し上げるよ」
バラガには、商人としての打算的な考えがあった。
「じゃあ、遠慮なく貰ってくぜ」
ブルーがニヤリと笑う。
「どうぞ」
「どこにあるんだ?」
「倉庫に厳重に保管してある。最終調整も兼ねて、明日渡そう。場所はここだ。明日、取りに来てくれ」
バラガは、保管場所が記された紙をブレイブに渡した。
「そうだ!あと、黒い爆発する球も出来るだけ沢山くれ」
「それは構わないが……何個だ?」
「500ぐらい。良いだろ?俺たちが解決しなかったら、多分、この商会潰れていたんだし」
ブレイブは、笑顔でバラガに伝える。
「あ、ああ」
「よし、これで俺たちが頼む報酬は全てだ」
ブレイブとブルーは、飛行船に飽き足らず、更に多くのものを報酬に頼んだ。
「君たち、遠慮というものを知らんのか……」
バラガは小さく呟いた。
「じゃあな、バラガ」
ブルーは席を立った。
「この件を解決してくれて、心から感謝している」
バラガは、テーブルに頭がつくほど深く下げた。
「あいよ」
ブレイブはその感謝を軽く受け取ると、紙をひらつかせながら応接室から出ていった。
◆◇◆◇
宿屋にある風呂場で、アイとカリーナに洗われたアリスは、清潔な服に着替え、二人に髪を拭かれていた。
「綺麗な茶髪ですね」
泥と油汚れを落としたことで、アリスの真っ直ぐで艶やかな茶髪が現れた。
そんな髪を、アイが櫛で梳かしながら撫でる。
「見て、まつ毛もこんなに長いのよ」
カリーナはアリスを後ろから抱きしめ、その愛らしさに頬を緩めた。
アリスは、されるがままに身を任せていた。
「一緒に寝ようね」
「はい……」
カリーナは、アリスと一緒に布団に入る。
ふかふかの布団に包まれると、アリスはすぐに安らかな寝息を立て始めた。
「寝てしまいましたね」
アイは、まるで気絶したように深く眠るアリスの寝顔を見て、微笑んだ。
「そうね……怖かったでしょうに」
カリーナはアリスの頭を優しく撫でた。
その時だった。
バンッ!!!
「おい、カリーナ! 良い知らせだぞ!!」
ブレイブが、勢いよく扉を開けて入ってくる。
「明日だぜ!明日だぜ!」
それに続いて、興奮したブルーもドカドカと入って来た。
その爆音にビクッと反応し、アリスが目を覚ましてしまった。
カリーナは、ベッドから立ち上がると、入り口に立っている無神経な男二人の元へ向かった。
「聞いてくれよ、カリーナ!」
ブレイブが何があったかを嬉々として説明しようとする。
「あんた達のせいで!アリスが起きたじゃないのよ!!」
「は? 知らねぇよ。てか誰だよ、アリスって」
ブルーが間の抜けた声を出す。
「今日、保護した子の名前よ!」
「へー」
ブルーは興味無さそうに反応した。
「はぁ……部屋の外で話しましょう!」
カリーナは小さくため息を吐くと、ブルーとブレイブを強引に部屋の外に押し出し、扉を閉めた。
廊下の薄暗い明かりの下で、四人は向き合う。
「で、何があったの?」
カリーナが腕を組んで三人に尋ねる。
「目当ての報酬を貰えたぞ」
ブレイブが、白い歯を見せて答える。
「……本当!? やったわね!」
カリーナの表情が一変し、ブレイブとハイタッチをした。
「受け渡しは明日だそうだ」
ブレイブは、バラガからもらった地図をカリーナに渡す。
「遂に……何処までも行ける、私たちの足を手に入れられるのね」
カリーナは地図を広げて、満面の笑みを浮かべた。
「足じゃなくて、羽根だろ」
ブルーは、そんなことを呟いた。
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