姫様、国を買う〜亡国の姫は己の拳で金を稼ぐ〜

アジカンナイト

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第十三話 スターダッシュ号

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 翌朝。カリーナ達は、バラガから貰った地図を頼りに、街の外れにある倉庫街へと向かった。
 地図に記された場所には、街に建つ建物よりも飛び抜けて大きい、要塞のような巨大倉庫があり、その前でバラガが腕を組んで待っていた。
 
「バラガさん!」
 バラガを見つけたカリーナが、大きく手を振る。
 
「来たか」
 バラガは、到着したカリーナ達を見て、ニヤリと笑った。
 
「ここにあるのか?」
 ブレイブは、聳え立つ巨大な倉庫を見上げていた。
 
「そうだ、この中だ。お披露目といこうか。これが、ドワーフの技術の結晶……『スターダッシュ号』だ!」
 バラガが合図を送ると、近くで待機していた部下がレバーを操作した。
 
 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!

 地響きと共に、巨大倉庫の鋼鉄製の重厚な扉が、ゆっくりと左右に開かれていく。
 その暗闇の中から姿を現したのは、常識を覆す巨大な飛行船だった。
しかし、それは彼らが知る飛行船とは決定的に異なっている部分があった――空を飛ぶために必須のはずの「ガス袋」が存在しないのだ。
 その代わりに、流線型のボディから、鳥の翼のような巨大な四枚の翼が伸びていた。
 空の色を映したような鮮やかな蒼色に塗装されたその船体は、明らかにこれまでの飛行船とは一線を画す、未知の飛行船だった。
 
「おいおい……袋みてぇなものがついてないぞ、これ」
 ブルーは、ポカンと口を開けてバラガに尋ねる。
 
「この飛行船の動力は別にあるからな。ガスになど頼らん」
 カリーナは、居ても立っても居られず駆け出し、その船体に触れた。
 ひんやりとした金属の感触が手に伝わる。
 
「凄く丈夫だわ……」

 ゴンゴン!

 カリーナは拳で少し強めに叩いてみたが、硬質な音が返ってくるだけで、期待には傷一つ付かなかった。
 
「この飛行船は、全てミスリル鋼で出来ている。ドラゴンのブレスだって効かないぞ」
 バラガは、誇らしげにセールスポイントを語った。
 
「結局のところ、俺が気になっているのは、これを俺たちで操縦できるかって部分なんだよな」
 ブレイブが、心配そうに呟く。
 
「中に入ってくれ。説明する」
 まるでその質問を待っていたかのように、バラガは手際よく飛行船の後ろへと回った。
 カリーナ達もその背中を追う。
 
「アリスも乗りますよ」
 アイは、不安そうに立ち尽くすアリスの手を握り、顔を覗き込んだ。
 
「私も……?」
 アリスは小さな声で聞いた。
 自分がここに居るのは、邪魔なのではないかと思っていたからだ。
 
「はい。ご両親の下に戻るまでは、貴女も私たちの仲間です」
 アイは優しく微笑んだ。
 その言葉に、アリスは小さく頷き、飛行船へと足を向けた。
 
「ここが、この飛行船の入り口の一つだ」
 バラガは、船体の後方についている目立たないボタンを押した。
プシューッ……。
蒸気が抜けるような音と共に、船体の後部ハッチが滑らかに開き、スロープが自動で降りて来た。
 
「な、なんなんだ、こりゃ……」
 ブレイブは、初めて見るその滑らかな動作に、唖然とした。
 カリーナ達も、驚きで言葉を失っていた。
 
「革新的だろう? 見たことないだろう?これがドワーフの凄さだ」
 バラガは鼻高々に言った。
 
「さあ、入ってこい!」
 船内に入る。
 船内は金属の空間が広がっていた。
 
「これは何の突起だ?」
 好奇心を抑えきれないブルーが、壁にあるボタンを押そうとする。
 
「説明するから、まだ触るなよ!」
 バラガが注意する。
 
 ブルーは誤魔化すように笑って、頬をかいた。
 
「ここが操縦席だ」
 バラガは、船首にある四つ並んだ席を指した。操縦席の周りは全面が強化ガラス張りになっていて、外の景色が丸見えである。
 そして、それぞれの席の前には、黒いスティック状のレバーが設置されていた。
 
「このレバーを上下左右に動かして飛行船を操作する。直感的に動かせるはずだ」
 バラガはレバーをガチャガチャと動かして見せた。
 
「四人全員で操縦するのか?」
 ブレイブは尋ねる。
 
「いや、基本は一人だ。四つあるのは交代用というかお守りみたいなものだ」
 バラガは振り返り、船体の後方部分の説明を始めた。
 
「この取手の下は床下倉庫になっている。ここに荷物を詰め込めばいい。それとさっき、そこのオークが押そうとしたボタンだが……それを押すと船体の後方が開き、外に出られる。さっき外から押したボタンと同じだ」

 ブルーがそのボタンを押す。
 
 ヴィィィン……

 低い金属音と共に、船体の後方が再び開く。
 
「なるほどな」
 ブルーが納得したように頷いた。

「飛行船の説明はこんなもんだな。次は操縦方法だが」
 バラガは再び操縦席に戻る。
 
「このレバーを手前に引けば、上昇。奥へ倒せば下降。右は右、左は左に船体が傾く。これだけだ、慣れてくれ」
 
「慣れてくれって……もっとないのかコツとか」
 ブレイブは頭をかいた。
 
「要するに、操縦は単純で簡単ってわけね。簡単よ!」
 カリーナは、ブレイブの背中をバシッと叩いた。
 
「それと燃料は、これだ」
 バラガは、壁に埋め込まれているガラス張りの筒を指差した。中は、青色の液体で満たされていた。
 
「この青いのは“魔素”だ。空気中に存在する魔法の源みたいなものだな。そして、この筒は、大気中の魔素を自動で集めて圧縮して貯めることができる。それをこの壁に埋めることで、動力に変えることができるって仕組みだ」
 
「無くなったらどうするんだ?」
 サラマンダーが質問をする。
 
「放っておけば勝手に補充される。便利だろ?」
 
「なんと……」
 サラマンダーは、その技術力に舌を巻いた。
 
「説明はこれだけだ、後は好きにしてくれ。それと……そうだ」
 バラガは船体から降りようとした時、思い出したように付け加えた。
 
「この船以外にも君たちが、私に頼んでいたものがあったな。隣の倉庫に保管されている。持っていってくれ」
 バラガは軽く手を上げると、颯爽と去っていった。
 
「他に頼んだものって何よ?」
 カリーナが、訝しげにブレイブ達に尋ねる。
 
「色々だ」
 ブレイブはブルーと顔を見合わせると、悪戯小僧のようにニヤリと笑った。
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