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第二十話 酒場の騒動
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カルファス王国の王都。その正門を潜ったカリーナ達が目にしたのは、死んだ魚のような目をして街を歩く人達と沈黙した街であった。
「……よっぽどの悪政を敷いてるみたいだな」
サラマンダーが下を向いて、そそくさと歩く人々を見て吐き捨てるように言った。
「とっとと、この国を蝕む悪い奴をぶちのめすわよ!」
カリーナは両手の拳を合わせる。いつも以上の気合が入っていた。
「カリーナ、口が悪くなっていますよ」
「情報収集と言えば酒場!ついてきて!」
◆◇◆◇
酒場に入ると、王都に漂う空気とはまた違った空気が流れていた。酒の力のおかげか、幾分か活気があり、人々から笑顔が見えていた。
カリーナは、気持ちよさそうに酒を口に運ぶ年老いた男性に話を聞くことにした。
「隣、いいかしら?」
「ん……?見ない顔だな。外から来たのか?物好きな奴だ。座って良いぞ」
男は見定めるようにカリーナの顔を覗くと、カリーナ達を歓迎した。
「ええ、外から来たわ」
「そうか、この国にいても楽しくないだろう。またどうしてこんな国に」
「こんな国になってしまった真相を探りに来たのよ」
カリーナは真意をはぐらかさずに直球で伝えた。
男はカリーナの発言に耳を疑うと、ジョッキをテーブルに置き、周りを確認してから小声で話した。
「滅多なことを言うんじゃない……奴らが聞いていたらどうする?」
「奴らって誰よ」
「正規兵だ」
「でもその正規兵は、ただの貴族のお抱えなのよね?」
男は口に人差し指を当てると、カリーナに静かにするように促した。
「一つ忠告しておくぞ。正規兵に逆らってみろ、直ぐにその首が飛ぶ。明日には広場で晒し首だ」
男の言葉からは、まるで自分がそれを目撃したかのような重みを感じた。
それから男は、追加の酒を頼んだ。
「その貴族の名前を聞いてもいいでしょうか?」
後ろで二人のやりとりを立って見ていたアイが男に尋ねる。
男は届いたジョッキに手を伸ばしながら、アイの方を向くと目を細めた。
「頼むから、ワシをそんな話に巻き込むな。今ある命を大切にしたい」
「分かった、失礼するわ」
カリーナはゆっくりと席を立った。
バタン!
突然、酒場の両開きの扉が大きな音を立てて開かれ、酒場にピンと張り詰めた空気が流れた。
全身を金属の鎧で包んだガラの悪い兵士が数人、酒場に入って来たのである。
その胸元には、蛇の胸章が描かれていた。
「そこをどけ!」
兵士の一人が、まるで命からがら辿り着いたオアシスを奪われたかのような悲痛な表情を浮かべる客を蹴り飛ばし、強引に席を奪い取った。
「良かったわ。手っ取り早く話が聞けそうね」
カリーナは、ゆっくりと兵士が座るテーブルへと歩き出した。
「何だ?お前ら」
兵士の一人が威圧するかのようにカリーナを睨みつける。
「少し質問したいことがあるんだけど」
カリーナはそんな威圧をものともせずにニコニコとしながら話し始めた。
「人にものを尋ねる時は、礼儀ってものがあるんじゃねぇのか?」
座っていた兵士達が次々と立ち上がる。
「礼儀ねぇ。昔に置き忘れてしまったわ」
「テメェ……。ほお?よく見れば可愛い顔をしているじゃねぇか。後ろの女も上玉そうだ」
兵士達がニタニタと気持ち悪い笑みを浮かべながら、カリーナの周りに集まってくる。
サラマンダーがそれを見て、鞘に手をかけた。
何かが弾ければすぐに戦いが始まる。そんな雰囲気が酒場に漂い始め、戦いに巻き込まれたくない客が次々と店の外へと出ていき始める。
「それで、私のお願いを聞いてくれるかしら?」
「言ってみろ。但し、俺たちの願いも聞いてもらうぞ」
「貴方たちを雇っている人は誰?」
「知らねぇな。なぁ、お前ら」
男達はニタニタと笑いながら首を横に振った。
「ほら、答えてやったぞ。次は俺たちの……」
「ありがとうね。それじゃあ」
カリーナは酒場から出ようと入口の方に歩き出す。
「待てよ。誰が勝手に外へ出ていいと言った?俺たちのお願いも聞いてもらうぞ」
兵士達はカリーナの周りを取り囲む。
「邪魔だからどいてくれる?」
「冷たいこというなよ」
兵士の一人がカリーナに手を伸ばそうとしたその時――
ズドン!!ガラガラガラガラ
「うぐぅっ!」
鈍い衝撃音と共に兵士の一人がテーブルを巻き込んで吹き飛び、壁に思い切り叩きつけられた。
「退いてって言ったよね?」
カリーナは握った拳を解く。
「この女ぁ!!」
一人の兵士が剣を抜き、カリーナに襲いかかる。しかしカリーナは、その剣の刃を拳で折ると、そのまま腹に思い切り拳を叩き込んだ。
ズドドドドン!
その拳撃で男は酒場の壁を突き破り、表の通りまで、吹っ飛んでいく。
少し離れたところからカリーナを見守っていたアイは、その光景を見て頭を抱え、サラマンダーは鞘にかけた手を離して笑い、アイに背中を叩かれた。
カリーナに襲いかかる兵士達は次々と投げ飛ばされ、拳に沈められていき、あっという間に全員が地面に倒れたのであった。
「くそ……なんだ、この女」
カリーナは、まだノビていないかった男の元へ近づくと、満面の笑みで質問を投げかける。
「それで、誰が貴方達の主なのかしら?」
「教えねぇよ」
男は吐き捨てるように答えると、意識を手放した。
戦い終わったカリーナの元に、アイとサラマンダーがゆっくりと歩み寄る。
「もう少し穏便に済ますことはできなかったのでしょうか?」
アイは、カリーナの顔を両手で挟むと、壁に大穴が開いた酒場の方へ首を動かさせた。
「あらやだ、私ったら」
視線を逸らしながらカリーナは答える。
「ひ・め・さ・ま」
「いたぞ!こっちだ!」
騒ぎを聞きつけた兵士たちが集まってくる。
「アイ、お叱りは後にして。今は……」
迫り来る兵士たちに懲りずにファイティングポーズを取ろうとしていたカリーナの首根っこを掴んだアイは、サラマンダーと一緒に逃げ始める。
背後から弓矢が飛んでくるが、サラマンダーが綺麗な太刀筋でそれを切り落としていた。
「ねぇちょっと!アイ、どこいくのよ」
「無限に湧いてくるように兵士達とこれから戦い続けるなんて正気じゃないです、今は逃げましょう。キリがありません」
三人は、次々と合流して数を増やしつづける兵士たちを撒こうと王都の入り組んだ路地を駆け回った。
右に左にと道を逸らし、撒こうとするが数の暴力に押され、どの道を曲がっても兵士たちと出会ってしまう。
徐々に逃げ道が塞がれていく。
「どうするのよ、アイ。戦って数を減らすしかないわ」
カリーナは隣を走るアイの顔を見る。
「一旦、諦めて出直すしかありません」
追っ手との距離を離せところでカリーナ達は立ち止まり、呼吸を整える。
しかし、しばらくしてまた追っ手の声が近くで聞こえ始め、逃げざる得なくなってしまった。
「君たち、こっちだ!入りなさい!」
突然、どこからか男の声が聞こえてきた。
「こっちだ!早く!」
声が聞こえる方向に、建物と建物の間に人一人が通れるほどの細い隙間があった。その隙間に立つフードを被った男が、カリーナ達を手招いていたのである。
「いたぞ!犯人がいたぞ!」
兵士たちに見つかり、徐々にその距離を詰められていく。気づけば、通りを挟み込まれていた。
「行くしかないわ」
カリーナ達は、意を決して細い隙間へと入っていった。
「……よっぽどの悪政を敷いてるみたいだな」
サラマンダーが下を向いて、そそくさと歩く人々を見て吐き捨てるように言った。
「とっとと、この国を蝕む悪い奴をぶちのめすわよ!」
カリーナは両手の拳を合わせる。いつも以上の気合が入っていた。
「カリーナ、口が悪くなっていますよ」
「情報収集と言えば酒場!ついてきて!」
◆◇◆◇
酒場に入ると、王都に漂う空気とはまた違った空気が流れていた。酒の力のおかげか、幾分か活気があり、人々から笑顔が見えていた。
カリーナは、気持ちよさそうに酒を口に運ぶ年老いた男性に話を聞くことにした。
「隣、いいかしら?」
「ん……?見ない顔だな。外から来たのか?物好きな奴だ。座って良いぞ」
男は見定めるようにカリーナの顔を覗くと、カリーナ達を歓迎した。
「ええ、外から来たわ」
「そうか、この国にいても楽しくないだろう。またどうしてこんな国に」
「こんな国になってしまった真相を探りに来たのよ」
カリーナは真意をはぐらかさずに直球で伝えた。
男はカリーナの発言に耳を疑うと、ジョッキをテーブルに置き、周りを確認してから小声で話した。
「滅多なことを言うんじゃない……奴らが聞いていたらどうする?」
「奴らって誰よ」
「正規兵だ」
「でもその正規兵は、ただの貴族のお抱えなのよね?」
男は口に人差し指を当てると、カリーナに静かにするように促した。
「一つ忠告しておくぞ。正規兵に逆らってみろ、直ぐにその首が飛ぶ。明日には広場で晒し首だ」
男の言葉からは、まるで自分がそれを目撃したかのような重みを感じた。
それから男は、追加の酒を頼んだ。
「その貴族の名前を聞いてもいいでしょうか?」
後ろで二人のやりとりを立って見ていたアイが男に尋ねる。
男は届いたジョッキに手を伸ばしながら、アイの方を向くと目を細めた。
「頼むから、ワシをそんな話に巻き込むな。今ある命を大切にしたい」
「分かった、失礼するわ」
カリーナはゆっくりと席を立った。
バタン!
突然、酒場の両開きの扉が大きな音を立てて開かれ、酒場にピンと張り詰めた空気が流れた。
全身を金属の鎧で包んだガラの悪い兵士が数人、酒場に入って来たのである。
その胸元には、蛇の胸章が描かれていた。
「そこをどけ!」
兵士の一人が、まるで命からがら辿り着いたオアシスを奪われたかのような悲痛な表情を浮かべる客を蹴り飛ばし、強引に席を奪い取った。
「良かったわ。手っ取り早く話が聞けそうね」
カリーナは、ゆっくりと兵士が座るテーブルへと歩き出した。
「何だ?お前ら」
兵士の一人が威圧するかのようにカリーナを睨みつける。
「少し質問したいことがあるんだけど」
カリーナはそんな威圧をものともせずにニコニコとしながら話し始めた。
「人にものを尋ねる時は、礼儀ってものがあるんじゃねぇのか?」
座っていた兵士達が次々と立ち上がる。
「礼儀ねぇ。昔に置き忘れてしまったわ」
「テメェ……。ほお?よく見れば可愛い顔をしているじゃねぇか。後ろの女も上玉そうだ」
兵士達がニタニタと気持ち悪い笑みを浮かべながら、カリーナの周りに集まってくる。
サラマンダーがそれを見て、鞘に手をかけた。
何かが弾ければすぐに戦いが始まる。そんな雰囲気が酒場に漂い始め、戦いに巻き込まれたくない客が次々と店の外へと出ていき始める。
「それで、私のお願いを聞いてくれるかしら?」
「言ってみろ。但し、俺たちの願いも聞いてもらうぞ」
「貴方たちを雇っている人は誰?」
「知らねぇな。なぁ、お前ら」
男達はニタニタと笑いながら首を横に振った。
「ほら、答えてやったぞ。次は俺たちの……」
「ありがとうね。それじゃあ」
カリーナは酒場から出ようと入口の方に歩き出す。
「待てよ。誰が勝手に外へ出ていいと言った?俺たちのお願いも聞いてもらうぞ」
兵士達はカリーナの周りを取り囲む。
「邪魔だからどいてくれる?」
「冷たいこというなよ」
兵士の一人がカリーナに手を伸ばそうとしたその時――
ズドン!!ガラガラガラガラ
「うぐぅっ!」
鈍い衝撃音と共に兵士の一人がテーブルを巻き込んで吹き飛び、壁に思い切り叩きつけられた。
「退いてって言ったよね?」
カリーナは握った拳を解く。
「この女ぁ!!」
一人の兵士が剣を抜き、カリーナに襲いかかる。しかしカリーナは、その剣の刃を拳で折ると、そのまま腹に思い切り拳を叩き込んだ。
ズドドドドン!
その拳撃で男は酒場の壁を突き破り、表の通りまで、吹っ飛んでいく。
少し離れたところからカリーナを見守っていたアイは、その光景を見て頭を抱え、サラマンダーは鞘にかけた手を離して笑い、アイに背中を叩かれた。
カリーナに襲いかかる兵士達は次々と投げ飛ばされ、拳に沈められていき、あっという間に全員が地面に倒れたのであった。
「くそ……なんだ、この女」
カリーナは、まだノビていないかった男の元へ近づくと、満面の笑みで質問を投げかける。
「それで、誰が貴方達の主なのかしら?」
「教えねぇよ」
男は吐き捨てるように答えると、意識を手放した。
戦い終わったカリーナの元に、アイとサラマンダーがゆっくりと歩み寄る。
「もう少し穏便に済ますことはできなかったのでしょうか?」
アイは、カリーナの顔を両手で挟むと、壁に大穴が開いた酒場の方へ首を動かさせた。
「あらやだ、私ったら」
視線を逸らしながらカリーナは答える。
「ひ・め・さ・ま」
「いたぞ!こっちだ!」
騒ぎを聞きつけた兵士たちが集まってくる。
「アイ、お叱りは後にして。今は……」
迫り来る兵士たちに懲りずにファイティングポーズを取ろうとしていたカリーナの首根っこを掴んだアイは、サラマンダーと一緒に逃げ始める。
背後から弓矢が飛んでくるが、サラマンダーが綺麗な太刀筋でそれを切り落としていた。
「ねぇちょっと!アイ、どこいくのよ」
「無限に湧いてくるように兵士達とこれから戦い続けるなんて正気じゃないです、今は逃げましょう。キリがありません」
三人は、次々と合流して数を増やしつづける兵士たちを撒こうと王都の入り組んだ路地を駆け回った。
右に左にと道を逸らし、撒こうとするが数の暴力に押され、どの道を曲がっても兵士たちと出会ってしまう。
徐々に逃げ道が塞がれていく。
「どうするのよ、アイ。戦って数を減らすしかないわ」
カリーナは隣を走るアイの顔を見る。
「一旦、諦めて出直すしかありません」
追っ手との距離を離せところでカリーナ達は立ち止まり、呼吸を整える。
しかし、しばらくしてまた追っ手の声が近くで聞こえ始め、逃げざる得なくなってしまった。
「君たち、こっちだ!入りなさい!」
突然、どこからか男の声が聞こえてきた。
「こっちだ!早く!」
声が聞こえる方向に、建物と建物の間に人一人が通れるほどの細い隙間があった。その隙間に立つフードを被った男が、カリーナ達を手招いていたのである。
「いたぞ!犯人がいたぞ!」
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