姫様、国を買う〜亡国の姫は己の拳で金を稼ぐ〜

アジカンナイト

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第二十六話 突入

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 反乱軍を事前に弱体化させたことによる余裕。しかし、クラリオはどこか物足りなさを感じていた。
 まるでおもちゃに飽きた赤ちゃんのように彼は次の策を講じると、戦いを終わらせようとしていた。

「アレを出しましょうか。幕引きにしましょう」
 クラリオが、待機している部下に命じたその瞬間、カタカタと茶器が揺れた。

 ◆◇◆◇

 王都上空。物凄い速度で飛行する飛行船が、勢いそのままに下降を始めた。

「おいカリーナ、減速しろ!聞いてるか?」
 ブレイブの必死な訴えは、後ろで操縦桿を握るカリーナの耳には届かない。

「このまま最短距離で突撃するわよ!サラマンダー、準備して!」

 カリーナは強風を受けながらも、飛行船の屋上に立ち続けるサラマンダーに声をかける。

 分厚い雲を抜けると、燃える王都と巨大な城が目の前に現れた。反乱軍の戦いが始まっていたのだ。

 城が眼前に迫ったところで、サラマンダーは鞘に手をかける。深く腰を落とすと、狙いを定めた。

「【奉天雷鳴】(ほうてんらいめい)」

 勢いよく振り抜かれたサラマンダーの刃は風を切り、ガラガラと音を立てて、城の石壁を粉々に砕き、風穴を開けた。

「みんな、衝撃に備えるのよ!!」

 カリーナは操縦桿を前に思い切り押し込むと、サラマンダーが作った大穴に飛行船を突っ込ませた。

 ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!ズズゥ……ン!!
 
 パラ……パラ……パラ……

 凄まじい轟音と共に城壁を砕いた飛行船は、城の中腹で停止した。舞い上がる粉塵で視界は最悪である。
 ハッチが開き、カリーナ達が城の中腹に降り立つ。

「げほっ……げほっ……。頼むから、操縦桿を握るなら減速を学んでくれ」

「ベルトを締めていれば安全よ」

「そりゃそうだけども……」

「さあ、俺の燃え上がる怒りを早く鎮めさせてくれよ」
 ブルーの肌は興奮と怒りで体が紅く変化し始めていた。

「なかなか心地よい風と空の旅だった」
 サラマンダーは飄々とゆったりとした足取りで城に降り立った。

「さぁ敵をぶっ倒して、さっさと王国を救いましょうか」
 カリーナは、両手の拳に布を巻いた。

「な、なんだ!貴様ら。しんにゅう……」

「うるせぇよ」
 兵士が言葉を紡ぐのを許さなかったブルーは、兵士の頭を掴むと床に勢いよく叩きつけた。

 ◆◇◆◇
 
 カリーナ達の飛行船による城への突入による衝撃で、クラリオがお茶を楽しんでいた部屋が揺れる。

 クラリオは動揺を隠せなかった。

「何なんだ、今の揺れは……一体何が起きた!」
 部下の方を勢いよく見やると、言葉を伝えずとも、クラリオの意図を汲んだ部下が急いで確認に向かった。

 しばらくして戻ってきた部下は、城の状況を説明した。

「先ほど、城の二階部分に飛行船が直撃し、城壁が破壊されました」

「ひ、飛行船?何を言っているのですか!?」

「それから……飛行船の搭乗者だと思われる侵入者が数名、城に入り込みました。現在、こちらに向かってきています」

「急いで兵を向かわせなさい!一人たりともここへは来させてはいけない」

 城に届くことすら叶わない反乱軍の刃を眺めていただけのクラリオにとって、その刃が突然、喉元に突きつけられる事態になるとは想像もしていなかったのだった。

 ◆◇◆◇

 城内二階の敵兵士を、カリーナ、サラマンダー、ブレイブ、ブルーの四人が大暴れして蹴散らしていく。

「オラオラオラオラ」
 ブレイブは両手に抱える炸裂球を惜しみなく、敵の集団に投げつける。

「すげぇや。敵さんが空飛んでら」
 
 魔法を唱える時間も剣を構えて突撃する時間すら与えない無慈悲なブレイブによる爆撃は、瞬く間に二階フロアの敵を減らし、二階フロアを破壊していく。

 魔法、剣、体術、戦術、その全てが彼ら『ベルタ』の前では無力であった。

「オークだ……」

「ヴオオオオオオ!!!」
 ブルーの咆哮に兵士が恐怖する。

 ズドオオオオン!!

 ブルーの突進に兵士が紙切れのように吹き飛んでいく。

「おい早く、グウとゴウを呼んでこい!突破されてしまう。この化け物どもを止め――ぐわぁぁぁぁ」
 飛んでいった兵士を見届けると、ブルーは次の兵士に狙いを定めた。

 カリーナとサラマンダーの二人は、ブルーとブレイブが切り開いてくれた道を走り抜けていく。サラマンダーが先陣を走り、襲いかかる兵士を次々と斬り伏せていった。

「このフロアは二人に任せて、私たちは上に行きましょう」

「承知した。障害は斬り伏せよう」

 立ち塞がる兵をサラマンダーが斬り伏せ、カリーナが残党を拳で粉砕する。三階の廊下に到達した時、そこには廊下を埋め尽くすほどの兵士が侵入者を待ち構えていた。

「何人いるのよ、この城に」
 三階の廊下を埋め尽くす敵の数にカリーナは愚痴をこぼす。

「グウとゴウだ」

 カリーナ達の前に大きな薙刀を持った頭から二本の角を生やした巨漢の男が二人現れる。

「退いてくれるかしら、邪魔なのよ」
 カリーナは右拳に力を込めた。

「それは無理だゴウ」

「ここはオデたちが守るんだ!」
 グウが薙刀を振り上げる。

「邪魔よ、退いて」
 カリーナはグウの懐に潜り込むと、思い切りグウを殴り飛ばした。
 ドォォォン!
 その巨体は背後の兵士を巻き込みながら、城の壁を突き破り、城外へと落ちていった。

 隣では、サラマンダーがゴウを斬り伏せ、ズズゥンという地響きと共にゴウの巨体が沈んでいた。

「ものわかりがいいことを願うけど……退いてくれるかしら」

 グウとゴウの力を信じていた兵士たちの顔が恐怖で歪み、体が震える。しかし哀れにも、侵入者を食い止める為に剣を構え直すしかなかったのであった。

「うおりゃああ!」

 カリーナは、右に左に迫り来る敵を殴り飛ばしながら階段を目指して走り出した。

「何としてでも食い止めるんだ!」

 

 

 

 

 

 
 

 
 
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