姫様、国を買う〜亡国の姫は己の拳で金を稼ぐ〜

アジカンナイト

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第三十三話 弱点

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「ブルー、お前大丈夫か?動けるのか?」
 ブレイブは、腫れ上がった右腕をぐるぐると振り回しながら、再び戦いに参加しようとするブルーを心配し、声をかけた。

「一発だけ殴らせてくれ」

「おやおや……またあなたですか。そんな腕で立ち向かえると思うのは、魔物ゆえ脳が小さいからでしょうか?」
 ブレイブを襲おうとしていた兵器がゆっくりと振り返る。兵器の中から聞こえてくるクラリオの嘲笑を、ブルーは鼻で笑って流した。

 スタッ……。

 その時、天井の穴から、数分前に飛ばされたばかりのサラマンダーが静かに舞い降りた。

「すまない、油断した」

「次から次へと蘇る。なんて目障りな種族だ。次は確実に、握りつぶしてあげましょう」
 兵器の三本指が、金属音を立てて開閉した。
 
「ごちゃごちゃうるせぇよ」
 ブルーは足元に転がっていた小さな瓦礫を掴むと、クラリオの顔が見える小窓に向けて投げつける。

 パキッ。

 それは小窓にぶつかり、軽いヒビのような傷がはしった。

 クラリオはそのヒビに目を疑った。どんな攻撃でも弾き返す無敵のミスリル鋼で出来た兵器に傷がつくとは思いもしなかったからだ。

「へ~その窓の部分はミスリルじゃねぇんだ」
 思わぬ収穫にブルーがニタニタと笑う。

「ふむ、なるほど。あの小窓を狙えばよいのか」

 焦ったクラリオは力任せに腕を操作させると、なりふり構わずブルーに目掛けて腕を振り下ろす。長い腕が振り回され、廊下の壁が崩れていく。

 ◆◇◆◇

 忘れ去られたかのように一人取り残されていたブレイブは、床にどっしりとあぐらを組み、勝つための策を考えていた。

  (小窓はミスリルで出来ていない。だが、あの腕が小窓を守ろうと邪魔をする。……何か良い方法はあれば)

 ふと、ブレイブは捲れ上がった大理石の床に目が止まった。そして目の前で腕を振り回しブルー達を追いかけている兵器に視線を移すと、傾いた床に足を取られ、動きづらそうにしている兵器の姿があった。

「これだな」

 ブレイブは立ち上がると、炸裂玉を取り出すとそれを、兵器の足元の床を目掛けて投げつけた。

 ドオオオン!!

 足元にある大理石の床が崩れる。足元の地面が傾いた兵器がそのバランスを崩した。

「何をした!?床が……」

「今だブルー!小窓を殴れ!」
 ブレイブは叫んだ。

 ブルーは地面に嵌まり、その窪みから抜け出そうと、腕を使ってもがいている兵器を捉える。
 そして――腕で防御が出来ず、剥き出しになった小窓を殴りつけた。

「おおおおおおお!!!」

 バリィィン!

 小窓が粉々に砕け散り、怒りと恐怖で顔を歪ませるクラリオの姿が露わになった。

「このぶたがぁぁ!」
 クラリオは兵器の腕を操作すると、追撃をしようと拳を構えていたブルーの体を兵器から引き剥がした。またしても、腕に囚われたブルーの体が宙吊りになった。

「私の存在を忘れてしまっては困る」
 クラリオの目の前には、腰を落としたサラマンダーがいた。
 
「貴様らァァァ!!!」

 サラマンダーの一閃。その斬撃はクラリオの上半身を斜めに切り裂いた。

「ぐあぁぁぁぁぁ」

 (まだ……まだ終わらせませんよ……)
 
 クラリオは操縦席で力無く体を傾けた。操縦者を失った兵器の腕がだらんと落ちる。自由になったブルーの体が地面に落ちた。

「いてぇぇ!!」
 運悪く、腫れていた腕から地面に落ちてしまったブルーは地面を転がった。

 ブレイブがブルー達の元へ駆け寄ってくる。

「終わったみたいだな」

「中々だったぜ、ブレイブ」
 ブルーはゆっくりと上半身を起こすと、ブレイブと拳を合わせた。

「カフッ……ゴフッ……」
 操縦席に座るクラリオの口から血が噴き出る。

「ん?まだ生きてるのか、こいつ」
 ブレイブはクラリオの顔を覗いた。

 口から血を流しているクラリオは、不気味に笑みを浮かべると、操縦席にあるボタンを押す。

 ピコン……ピコン……ピ、ピ、ピ、ピ

 謎の機械音が兵器から聞こえ始める。

「今、何を押した?」
 ブレイブはクラリオを睨みつける。

「何を……押したか……って……?教え……ますよ」
 クラリオは静かに伝えた。

「もうすぐ……この兵器は爆発する……そうすれば……この城も王も王妃も……消えて……なくなる……」

「そして……その……解除は……不可能で……す」

「テメェ!」
 ブルーがクラリオの襟元を掴み上げたが、クラリオはただ笑みを浮かべるだけで、それ以上は何も言わなかった。

「チッ」
 ブルーは舌打ちをすると、クラリオの体を操縦席に叩きつけた。

「ブレイブ、ブルー」
 サラマンダーが呼びかける。

「ああ、カリーナが危ない!」

 三人は、爆発までのカウントダウンが始まった城内で、まだその事実を知らずにいるカリーナを探しに駆け出した。

 ◆◇◆◇

 ピ、ピ、ピ、ピ。

 クラリオは警告音が鳴り響く兵器の中で、死を待っていた。しかしただ己の負けを認めて、死を待っていたわけでない。自爆ボタンを自ら押したクラリオであったが、彼はまだ諦めていなかったのだ。

   (もうすぐ、この地に多くの『赤蛇』の援軍が押し寄せて来る。そうすれば奴らなど終わりだ)

 (さぁ絶望の声を、もっと私に聞かせてくれ)


 
 
 

 
 

 

 
 

 
 

 

 

 
 
 
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