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第四十二話 ベルタ
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あれから数ヶ月が経過した。ブルー、ブレイブ、アイ、サラマンダーの四人は宿屋の一室でのんびりとした日々を過ごしている。
「カリーナはいつ帰ってくるんだよ」
「やりたい事が出来たから待っていて」とだけ言い残して、カリーナは飛行船に乗ってどこかへ飛び去った。彼女が飛び去ってからはかれこれ一ヶ月は経過している。たんまり貰った報酬金があるから日々の生活には困らないものの、退屈であった。なぜならその間、この小さな街から彼ら出られていないのだ。
「ブルー、喚いても帰りが早くなることはないぞ」
目を瞑り胡座をかいて床に座っていたサラマンダーは、うっすらと目を開けてブルーを見やる。
「本当にアイは、カリーナがどこに行ったか聞いてないのか?」
「何回も言ったでしょう。私は何も聞いていません」
アイは戦いで破けたカリーナの服を縫いながら、何度目かのブレイブからの質問を受け流す。
トン、トン。
部屋の扉が叩かれた。
「やっと帰ってきたか!?」
ブルーは立ち上がると、入り口へ駆け出し、扉を思い切り開ける。
外には待ち焦がれていた人物が立っていた。
「あら、ブルー。私がいなくて寂しかった?」
カリーナはブルーの肩を叩くと、部屋へと入っていく。
「ただいま。アイ」
「おかえりなさい」
「どこに何しに行っていたのだ?」
サラマンダーはカリーナに尋ねる。
「見てからのお楽しみよ」
カリーナはみんなを部屋の中心に集めた。少しの緊張感が部屋に張り詰めた。
「さてと……お待たせしたわね。やっと全て終わったわ、さぁ船に乗って!」
「よし来た!」
◆◇◆◇
『スターダッシュ号』船内。飛行船は空を飛んでいた。
「それで……いつになったら教えてくれるんだぁ?」
ブルーは操縦席の背もたれに体重を乗せて、隣の席で操縦桿を握っているカリーナに聞いた。どこに向かって飛んでいるのかを聞かされていないのである。
「もうすぐよ。ほら、見えてきた!」
カリーナが示した先。飛行船の下には、だだっ広い草原が広がっていた。
「ここか?ただの草原じゃねぇか」
「この場所ってもしかして……」
ブレイブはその風景に懐かしさを覚えていた。
「多分、あなたの考えはあっているわよ。ブレイブ」
飛行船は草原の上にゆっくりと着陸する。
「ここがどこかを教えてあげる」
操縦桿から手を離したカリーナは、少し体を伸ばして操縦席を立ち上がると、飛行船後方のボタンを押してハッチを開き、外へ出ていった。カリーナに続いてみんなも外へと出ていく。
陽が当たり、風に草原が揺れ、カリーナは体全体でその風を受け止める。
「ここは『ベルタ王国』。私とアイとブレイブの故郷よ」
ベルタ王国のかつての面影は存在しない。目の前に広がるのは草原である。
「ここがベルタ王国……」
ブレイブが最後に見た王国は、魔物の群れになす術なく崩れる城と逃げゆく国民の姿であった。そんな跡地に広がるのは、のどかな自然である。彼の心は不思議と満たされていた。
アイもまたブレイブと同じく変わってしまった故郷の姿に思いを巡らせていた。
「二人は初めてよね」
カリーナは、ポカンと口を開けているブルーと目を閉じて風を感じているサラマンダーを見て微笑んだ。
「初めてだ」
「本当にここに国があったのか?」
「……あったわよ」
アイには一つ疑問があった。いくら、あの日から月日が経ったとは言え、瓦礫一つ見当たらないのはおかしかったのである。
「ねぇカリーナ。一つ聞いてもいい?瓦礫一つもないのはどうして?」
カリーナは待ってましたと言わんばかりに、アイの手を強く握る。
「これから見せるわ!みんなもついてきて」
カリーナはアイの手を握って駆け出した。
草原を進んだ先、遠くに何かが建っているのが見えた。
「あれはなんだ?家か?」
やがてその建物の全貌が見えると、それは草原のど真ん中にポツンと建った大きな屋敷であることが分かった。
「これを見せたかったのか?」
ブレイブはカリーナに尋ねる。
「ええ、そうよ。ここは私たち達の再出発の場所。ベルタ王国の城よ」
「「はぁ?」」
ブルーとブレイブは声を重ね、カリーナの突飛な発言に目を丸くした。
「ははは、これは面白いことを考えたな」
サラマンダーの大笑いをブルーとブレイブが睨みつける。
「おっと、すまぬ」
「もしかして……カリーナ。黄金は……」
ここに来るまでの間、妙な胸騒ぎがしていたアイは飛行船の地下倉庫を覗き、黄金で溢れていた倉庫が空になっているのを見つけていたのであった。
「そうよ。黄金は全て、この城と瓦礫の撤去に使ったわ。ドワーフって本当にすごくてね、あっという間に片付いたのよ」
カリーナは胸を張って答えた。
「黄金を全て使った!?これに!?」
ブレイブはカリーナを問い詰めた。ベルタ王国を再建することは夢ではあった。しかしその再建のために必要な貴重な黄金が全て、この屋敷一つに消えてしまったとは考えたくもなかったのだ。
「ベルタ城があれば、そこはベルタ王国よ」
「城だけあっても国にはならないだろ!それにこれは、城じゃなくて屋敷だ」
カリーナが城だと言い張るそれは、少し大きいだけの屋敷であり、こんな草原にポツンと屋敷だけがあってもどうにもならなかった。
「いいえ、ここは国だしあれは城よ」
ブレイブはカリーナの圧に折れて、何もない空を見上げた。
「さぁ城の中を案内するわ!」
カリーナは勢いよく屋敷の門を開く。
草原の上に新しい風が吹く。
全てが失われた草原の上に、亡国の姫が城を建てた。
これはベルタ王国の始まりの物語である。
「カリーナはいつ帰ってくるんだよ」
「やりたい事が出来たから待っていて」とだけ言い残して、カリーナは飛行船に乗ってどこかへ飛び去った。彼女が飛び去ってからはかれこれ一ヶ月は経過している。たんまり貰った報酬金があるから日々の生活には困らないものの、退屈であった。なぜならその間、この小さな街から彼ら出られていないのだ。
「ブルー、喚いても帰りが早くなることはないぞ」
目を瞑り胡座をかいて床に座っていたサラマンダーは、うっすらと目を開けてブルーを見やる。
「本当にアイは、カリーナがどこに行ったか聞いてないのか?」
「何回も言ったでしょう。私は何も聞いていません」
アイは戦いで破けたカリーナの服を縫いながら、何度目かのブレイブからの質問を受け流す。
トン、トン。
部屋の扉が叩かれた。
「やっと帰ってきたか!?」
ブルーは立ち上がると、入り口へ駆け出し、扉を思い切り開ける。
外には待ち焦がれていた人物が立っていた。
「あら、ブルー。私がいなくて寂しかった?」
カリーナはブルーの肩を叩くと、部屋へと入っていく。
「ただいま。アイ」
「おかえりなさい」
「どこに何しに行っていたのだ?」
サラマンダーはカリーナに尋ねる。
「見てからのお楽しみよ」
カリーナはみんなを部屋の中心に集めた。少しの緊張感が部屋に張り詰めた。
「さてと……お待たせしたわね。やっと全て終わったわ、さぁ船に乗って!」
「よし来た!」
◆◇◆◇
『スターダッシュ号』船内。飛行船は空を飛んでいた。
「それで……いつになったら教えてくれるんだぁ?」
ブルーは操縦席の背もたれに体重を乗せて、隣の席で操縦桿を握っているカリーナに聞いた。どこに向かって飛んでいるのかを聞かされていないのである。
「もうすぐよ。ほら、見えてきた!」
カリーナが示した先。飛行船の下には、だだっ広い草原が広がっていた。
「ここか?ただの草原じゃねぇか」
「この場所ってもしかして……」
ブレイブはその風景に懐かしさを覚えていた。
「多分、あなたの考えはあっているわよ。ブレイブ」
飛行船は草原の上にゆっくりと着陸する。
「ここがどこかを教えてあげる」
操縦桿から手を離したカリーナは、少し体を伸ばして操縦席を立ち上がると、飛行船後方のボタンを押してハッチを開き、外へ出ていった。カリーナに続いてみんなも外へと出ていく。
陽が当たり、風に草原が揺れ、カリーナは体全体でその風を受け止める。
「ここは『ベルタ王国』。私とアイとブレイブの故郷よ」
ベルタ王国のかつての面影は存在しない。目の前に広がるのは草原である。
「ここがベルタ王国……」
ブレイブが最後に見た王国は、魔物の群れになす術なく崩れる城と逃げゆく国民の姿であった。そんな跡地に広がるのは、のどかな自然である。彼の心は不思議と満たされていた。
アイもまたブレイブと同じく変わってしまった故郷の姿に思いを巡らせていた。
「二人は初めてよね」
カリーナは、ポカンと口を開けているブルーと目を閉じて風を感じているサラマンダーを見て微笑んだ。
「初めてだ」
「本当にここに国があったのか?」
「……あったわよ」
アイには一つ疑問があった。いくら、あの日から月日が経ったとは言え、瓦礫一つ見当たらないのはおかしかったのである。
「ねぇカリーナ。一つ聞いてもいい?瓦礫一つもないのはどうして?」
カリーナは待ってましたと言わんばかりに、アイの手を強く握る。
「これから見せるわ!みんなもついてきて」
カリーナはアイの手を握って駆け出した。
草原を進んだ先、遠くに何かが建っているのが見えた。
「あれはなんだ?家か?」
やがてその建物の全貌が見えると、それは草原のど真ん中にポツンと建った大きな屋敷であることが分かった。
「これを見せたかったのか?」
ブレイブはカリーナに尋ねる。
「ええ、そうよ。ここは私たち達の再出発の場所。ベルタ王国の城よ」
「「はぁ?」」
ブルーとブレイブは声を重ね、カリーナの突飛な発言に目を丸くした。
「ははは、これは面白いことを考えたな」
サラマンダーの大笑いをブルーとブレイブが睨みつける。
「おっと、すまぬ」
「もしかして……カリーナ。黄金は……」
ここに来るまでの間、妙な胸騒ぎがしていたアイは飛行船の地下倉庫を覗き、黄金で溢れていた倉庫が空になっているのを見つけていたのであった。
「そうよ。黄金は全て、この城と瓦礫の撤去に使ったわ。ドワーフって本当にすごくてね、あっという間に片付いたのよ」
カリーナは胸を張って答えた。
「黄金を全て使った!?これに!?」
ブレイブはカリーナを問い詰めた。ベルタ王国を再建することは夢ではあった。しかしその再建のために必要な貴重な黄金が全て、この屋敷一つに消えてしまったとは考えたくもなかったのだ。
「ベルタ城があれば、そこはベルタ王国よ」
「城だけあっても国にはならないだろ!それにこれは、城じゃなくて屋敷だ」
カリーナが城だと言い張るそれは、少し大きいだけの屋敷であり、こんな草原にポツンと屋敷だけがあってもどうにもならなかった。
「いいえ、ここは国だしあれは城よ」
ブレイブはカリーナの圧に折れて、何もない空を見上げた。
「さぁ城の中を案内するわ!」
カリーナは勢いよく屋敷の門を開く。
草原の上に新しい風が吹く。
全てが失われた草原の上に、亡国の姫が城を建てた。
これはベルタ王国の始まりの物語である。
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