姫様、国を買う〜亡国の姫は己の拳で金を稼ぐ〜

アジカンナイト

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第四十一話 王国の始まり

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 次の日。王妃はメイド達のところへ行ったようで来なかったが、王とアリスに呼び出されたカリーナ達は、城の跡地を歩いていた。

「なんだ?地面に散らばってる美術品を報酬にでもするのか?」
 ブルーは、地面に落ちていた焼けこげて破れた絵画を拾うと、目を凝らして品定めをする。もちろん、彼には芸術など理解できないので、それはすぐに捨てられた。

「こっちだ」
 
 王に連れられ、辿り着いた先には瓦礫に埋もれる見上げるほど巨大な金庫があった。
 その金庫は城を崩すほどの爆発による影響を全く感じさせず、「どんなものからも守り抜いてきた金庫である」という王の説明に説得力を与えていた。

 カリーナは徐に先頭に立つと、金庫を囲む瓦礫を掴み投げ捨てていく。

 ガラ……ガラガラ。
 ガッシャァァァン……。

 やがて金庫を問題なく開けられるぐらいのスペースが生まれると、王に向かって振り返り、にっこりと笑ってみせた。

「恐ろしい怪力じゃ」
 王はカリーナの力に少し怯えながらも、金庫の前に立つ。

「好きなだけ持っていけ!」
 王は呪文を唱えた。

「【ラルース】」

 金庫の重厚な扉がまぶゆい光で照らされると、地鳴りのような音を立てながらゆっくりと一人でに開き始める。

「「うおおおお」」
 ブルーとブレイブはその光景に思わず声を上げた。

 みんなの視線が金庫に集中する中、金庫の中身が明らかになった。

 金庫の中は眩い黄金で埋め尽くされている。好きなだけ持っていけるとは言われたものの、好きなだけ持っていくことが現実的に不可能であるほどにあった。

「アイ!あの金庫の中にベルタが見えるわ」

「見えませんよ、カリーナ。あれは黄金です」

「賭け事するのが馬鹿馬鹿しくなる量だ」

「一生食べて遊んで暮らせるぜ」

「武器ではないのか……」

 三人が喜び、一人は冷静、そして一人が肩を落とす。手に入れられる黄金を目にすれば、誰もがその輝きに目を奪われ、思考を奪われ、ただ歓喜するものだが、カリーナ達は様々な反応を見せた。

「では『ベルタ』のみんな……根こそぎ貰っていくわよ!」
 カリーナは腕まくりをすると、金庫へ向かって走り出した。

「俺たちもいくぞ!」

「急げ急げ」

 それにブルーとブレイブが続く。

「焦らなくても、黄金に足は生えてませんよ。ですよね、サラ……」

「武器……武器……」

 ◆◇◆◇

 頭に首に手に腰に足に。体中に黄金を身につけて巻きつけて、カリーナ達は次々と飛行船の倉庫に黄金を積んでいく。

 好きに持っていけと豪語し、アリスがカリーナ達への報酬を弾むと明言していた以上は、黄金を持っていかれるのは仕方のないことだが、そのあまりの遠慮のなさに王は面食らっていた。
 とはいえ、やはり限度はあった。

「くそぉ、もう入らねぇのか」
 ブレイブは、黄金で倉庫も床も埋まった飛行船内を見て残念そうに呟いた。

「これが限界ね。でもこれだけあれば……」
 カリーナは夢の計画を頭に思い描いていた。

 ◆◇◆◇

 『スターダッシュ号』に全てを詰め終えたカリーナ達は、王とアリスに報酬の礼を言いに戻る。

「報酬はこれで足りるか?」

「ええ、十分よ」

「もう行ってしまうのですか?」
 アリスが寂しそうにカリーナの手を握る。

「うん。でもまた会えるわよ」
 カリーナはそんなアリスの手をぎゅっと握って、手を離した。

「兵長さんに、一緒に戦ってくれてありがとうと伝えて欲しい」

「分かった。伝えておこう」

 カリーナが振り返ると、すでに全員、飛行船へと入っていた。

「カリーナ様!この国を救ってくださってありがとうございました!」
 アリスが頭を下げる。

「どういたしまして」
 そう返事したカリーナはアリスの顔を見つめた後、飛行船へと入っていった。
 操縦席に座ると、ガラス窓の外には出発を見送る王とアリスの姿が見えた。名残惜しくもあったが、ベルトを締めるとカリーナはブレイブに出発の指示を出した。

「さぁみんな、飛ぶわよ!」

「ベルト締めろよ」
 ブレイブはエンジンをつけると、操縦桿をゆっくりと後ろに倒し、飛行船を上昇させた。

 ◆◇◆◇

「兵長!空を見て下さい!」
 兵士の言う通りに空を見上げたレオンハートは、空を飛んでいく飛行船を目にすると、街に散らばった瓦礫をどかす作業を続けている兵士たちに呼びかける。

「全員!!あの飛行船を見ろ!」

「胸章に手を!あの空の英雄『ベルタ』に!」

 レオンハートに兵士、そして作業を手伝っていた国民達は、胸に手を当てて空を飛ぶ飛行船に敬意を表した。
 
 ◆◇◆◇

「じゃあね、アリス」

 飛行船は瞬く間に高度を上げていき、カルファス王国を去っていった。

 ◆◇◆◇

「……行ってしまいました」
 アリスは空の彼方へ消えていく飛行船を最後まで見届けた。
 王は空を見つめ続けるアリスの横顔を見て、自分の娘の顔つきが逞しくなったことを感慨深く思う。

「アリスよ」

「なんでしょうか、お父様」

「この国を救ってくれてありがとう」
 王はアリスの顔を見ながら、優しくゆっくりと感謝を伝えた。

「はい!」
 
 アリスは元気よく答えると、父の手を握り、キラキラとした目を向けた。

「でもお父様、ここから大切なのです!!!この国がより良くなるように一緒に頑張りましょう!!!」
 

 

 
 
 

 
 

 
 

 

 

 

 

 

 
 
 

 

 

 
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