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勘違いを続ける彼女と彼女が気になる彼。
可燃物、酸素供給体、点火源。
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2年生は勉強合宿なるものに参加しなくてはならない。これは普通科も特進科も例外はない。5月の連休明けに行われる2泊3日の合宿は名前の通り泊まり込みでみっちり勉強するのだが、時折勉強以外のイベントごとがある。
例えば1日目の夜は、グループごとに自分たちで夕飯メニューを決めて屋外でキャンプさながら調理するのだ。その時のメニューや手際によって、その後の時間の過ごし方も大きく変わる。2日目は肝試しなんてものもあって、勉強の息抜きイベントも用意されているのだ。
先生たちから火の扱いには気をつけるようにと念押しされ、各自グループごとに所定の位置に集まると手分けして調理を開始する。
ちなみに火元とかも原始的な方法でやるように指示を受けている。ガスコンロとか素晴らしいものは存在しない。そこにあるのは薪とおかくず、新聞紙、マッチ、炭などの原始的な道具ばかり……勉強してきたことをここで活かせってことなんだろうが、流石にサバイバルがすぎると思うんだが。
とはいえ、私は小学生の時友達家族とともにキャンプに幾度となく出かけて、その時火の起こし方をマスターしているので問題ない。
同じグループの男子は夕飯はカレーにしようとか言っていたが、意外とカレーは作業工程が多く時間を食うのでその案を却下し、私は焼きそばを推した。こんなときだからこそ、効率を考えたメニューにすべきなのだ。カレーは個人でキャンプ行ったときに勝手に作ってくれ。
野菜やお肉のカットを分担して行うと、私がちゃちゃっと火を起こしてキャンプ場からレンタルした大きな鉄板を使って具材を焼き始めた。
ヘラでじゃんじゃか具材を炒めている光景を眺めながら私は思った。焼きそばだけじゃ物足りない。そうだ、卵を乗せよう。
キャンプ場では使用料金を払えば、自由に食材を使用していいことになっている。なので食材置き場に卵を人数分もらいに行こうと一人移動していると、包丁片手に困った顔をしている悠木君の姿を見つけた。私は卵をもらったあと一旦自分のグループのところに戻り、使い終わったあるものを手にすると、再度引き返した。
「包丁だけじゃ辛いでしょ、家から持ってきたピーラー貸してあげるよ」
私がずずいとピーラーを差し出すと、悠木君は目を丸くしていた。
今まさに人参と包丁と戦っていた悠木君はキョトンとした顔をしている。
「うちはもう皮むき終わって、焼きの作業入ってるからいいよ、使いなよ」
包丁危ないから、と私が悠木君の手から包丁を取り上げると、ピーラーを持たせた。
「もう焼いてんのか、早いな。何作ってんの?」
「うちのチームは焼きそばだよー。楽だから」
邪魔にならぬようすぐに退散するつもりでいたので、そのまま所定の位置に戻ろうとしたのだが、特進科のどこかのグループが飯盒炊爨しようとしているのに火起こしで躓いているのを見かけた。
「着かない?」「すぐに火が消える」と困った風な様子だったので、おせっかいとは思ったけど、私は声をかけた。
「火着かないの? つけてあげるよ」
ここで「やってあげようか?」と疑問系で聞くと、特進の人はプライドが先立って「結構です」と強がりそうなので、私は強引に割ってはいって道具類を奪い去った。
「え、ちょっと」
「任せな。火起こしは小学生の時に習ったんだ。キャンプ行ったときに友達のお父さんから教えてもらったんだ」
まず棒状にした新聞紙の着火材を中心に置く。新聞紙を囲むようにおがくずを置く。そして割りばしなどの細い木や小枝を組む。このとき空気が通るようにべちゃっとつぶさないようにするのがコツ。
「はい、じゃあ新聞紙にマッチの火をつけて」
私が促すと、戸惑った様子の特進科の子が何度かマッチを擦って火をつけた。
「着火剤からおがくず、小枝、少し大きな枝に火が移っていくまでが勝負。ここで慌てて薪を入れると消えるから、じっと我慢しながら火がまわっていくのを待って」
ここでうちわで仰ぐとかは絶対にしてはいけない。気長に待つのが大事なのだ。
しばらく静かに見守っているとじわじわと火種が広がり始めたので、私はさらに少し太い枝を組んでいく。
「ピラミッドのように三角錐をつくっていくの。火は下から上へ上へと向かっていくからこうすることで新聞紙の先端から火が燃え移りやすくなるわけ」
火が消える原因として薪を詰め込んでいくというものがある。薪を詰め込むと空気の通りが悪くなり、せっかく燃えた火が消えてしまうのだ。
三角錐のように立てかけるのは空気の通り道をつくるためだ。最初からうまくいくとは思わない方が無難。二度三度と失敗を重ねるうちにコツがわかってくるもの。私は経験があるからできるだけで、初心者には少々難しいから出来なくとも恥ずかしがることはない。
「薪と薪の間に空間がなければ火は消えてしまうけど、逆に間を開けすぎると熱が逃げていくからそこは気をつけて」
薪に炎が灯ったのを見て、私は飯盒をセットしてあげた。
「多分この後の流れはわかってると思うから大丈夫だと思うけど、火加減には気をつけてね、火力が弱いとお米が半生になっちゃうから」
「美玖ー! 焼きそば出来たよー!」
「おっと、目玉焼き作んなきゃ」
友達が大声で私に焼きそば完成を知らせてきたので私は小走りで自分のグループに戻った。すぐに目玉焼きを作って、グループ全員で目玉焼きのせ大盛り焼きそばを平らげた。鉄板で焼いたからか、隠し味でもはいっているのかめちゃくちゃ美味しかった。
他の班がまだ食事を始めていない段階で私のグループは早々に片付けを済ませてすぐに学習ワークにはいった。合宿期間中に終わらせる必要のある課題もあるので、早めに勉強時間を取れて良かった。
目の疲れや肩こり疲労を大浴場のお風呂でゆっくり癒やした後、ホカホカしながら女子部屋に戻っていると、途中でピーラーを片手に持った悠木君と遭遇した。
「悠木君も今からお風呂?」
悠木君は私の問いに答えることなく、なぜか羽織っていたジャージを脱いだ。そしてさっとそれを私の肩へかけてきた。所要時間約3秒だろうか。
「…なに? 寒くないんだけど…」
むしろ暑いんだけど…
私が寒くて震えているように見えたのか?
「薄着すぎるから着てろ」
「いやこれ…学校の体操着…みんな同じもの着てる…」
合宿期間中はみんなもれなく体操着かジャージ姿だ。以前はパジャマは自前で良かったんだけど、過激なパジャマを着る女子が過去に数名出て風紀が乱れたことがあるそうで、それ以降合宿中は体操着が基本になっている。
体操着姿の私が薄着なら、みんな薄着になるんだがそこのところどうなのだろう。
悠木君は私の背中をグイグイ押すと、女子部屋のある棟の手前まで送ってくれた。その先へは進むつもりが無いようである。そういうところ本当真面目だよね。
「いいな、女子と一緒にいろよ。男子と2人きりになるな!」
「お父さんかあんたは」
今まさに男子と2人きりなんだが、それはいいのか悠木君。そもそも悠木君は男子じゃなかった…?
「あぁじゃあこれ返すね…」
「いいから!」
肩に掛けられたジャージを返そうとしたら受取拒否された。なぜ? 私は寒くないし、際どい格好をしているわけでもないのになぜ私にジャージを着せる。悠木君の中で体操着は卑猥な着用物なのかい? ちょっと流石にその趣味は引いちゃうなぁ…
悠木君は私の問いかけから逃れるように慌てた様子で引き返していった。彼の手にはピーラー。私の私物のピーラーがそのまま持ち去られてしまった。
「…なんで悠木君は顔が真っ赤なんだろう」
私はお風呂上がりで暑いけど、悠木君は……なんだろう。今日の悠木君もおかしいな。たまに情緒不安定になるよね彼。
例えば1日目の夜は、グループごとに自分たちで夕飯メニューを決めて屋外でキャンプさながら調理するのだ。その時のメニューや手際によって、その後の時間の過ごし方も大きく変わる。2日目は肝試しなんてものもあって、勉強の息抜きイベントも用意されているのだ。
先生たちから火の扱いには気をつけるようにと念押しされ、各自グループごとに所定の位置に集まると手分けして調理を開始する。
ちなみに火元とかも原始的な方法でやるように指示を受けている。ガスコンロとか素晴らしいものは存在しない。そこにあるのは薪とおかくず、新聞紙、マッチ、炭などの原始的な道具ばかり……勉強してきたことをここで活かせってことなんだろうが、流石にサバイバルがすぎると思うんだが。
とはいえ、私は小学生の時友達家族とともにキャンプに幾度となく出かけて、その時火の起こし方をマスターしているので問題ない。
同じグループの男子は夕飯はカレーにしようとか言っていたが、意外とカレーは作業工程が多く時間を食うのでその案を却下し、私は焼きそばを推した。こんなときだからこそ、効率を考えたメニューにすべきなのだ。カレーは個人でキャンプ行ったときに勝手に作ってくれ。
野菜やお肉のカットを分担して行うと、私がちゃちゃっと火を起こしてキャンプ場からレンタルした大きな鉄板を使って具材を焼き始めた。
ヘラでじゃんじゃか具材を炒めている光景を眺めながら私は思った。焼きそばだけじゃ物足りない。そうだ、卵を乗せよう。
キャンプ場では使用料金を払えば、自由に食材を使用していいことになっている。なので食材置き場に卵を人数分もらいに行こうと一人移動していると、包丁片手に困った顔をしている悠木君の姿を見つけた。私は卵をもらったあと一旦自分のグループのところに戻り、使い終わったあるものを手にすると、再度引き返した。
「包丁だけじゃ辛いでしょ、家から持ってきたピーラー貸してあげるよ」
私がずずいとピーラーを差し出すと、悠木君は目を丸くしていた。
今まさに人参と包丁と戦っていた悠木君はキョトンとした顔をしている。
「うちはもう皮むき終わって、焼きの作業入ってるからいいよ、使いなよ」
包丁危ないから、と私が悠木君の手から包丁を取り上げると、ピーラーを持たせた。
「もう焼いてんのか、早いな。何作ってんの?」
「うちのチームは焼きそばだよー。楽だから」
邪魔にならぬようすぐに退散するつもりでいたので、そのまま所定の位置に戻ろうとしたのだが、特進科のどこかのグループが飯盒炊爨しようとしているのに火起こしで躓いているのを見かけた。
「着かない?」「すぐに火が消える」と困った風な様子だったので、おせっかいとは思ったけど、私は声をかけた。
「火着かないの? つけてあげるよ」
ここで「やってあげようか?」と疑問系で聞くと、特進の人はプライドが先立って「結構です」と強がりそうなので、私は強引に割ってはいって道具類を奪い去った。
「え、ちょっと」
「任せな。火起こしは小学生の時に習ったんだ。キャンプ行ったときに友達のお父さんから教えてもらったんだ」
まず棒状にした新聞紙の着火材を中心に置く。新聞紙を囲むようにおがくずを置く。そして割りばしなどの細い木や小枝を組む。このとき空気が通るようにべちゃっとつぶさないようにするのがコツ。
「はい、じゃあ新聞紙にマッチの火をつけて」
私が促すと、戸惑った様子の特進科の子が何度かマッチを擦って火をつけた。
「着火剤からおがくず、小枝、少し大きな枝に火が移っていくまでが勝負。ここで慌てて薪を入れると消えるから、じっと我慢しながら火がまわっていくのを待って」
ここでうちわで仰ぐとかは絶対にしてはいけない。気長に待つのが大事なのだ。
しばらく静かに見守っているとじわじわと火種が広がり始めたので、私はさらに少し太い枝を組んでいく。
「ピラミッドのように三角錐をつくっていくの。火は下から上へ上へと向かっていくからこうすることで新聞紙の先端から火が燃え移りやすくなるわけ」
火が消える原因として薪を詰め込んでいくというものがある。薪を詰め込むと空気の通りが悪くなり、せっかく燃えた火が消えてしまうのだ。
三角錐のように立てかけるのは空気の通り道をつくるためだ。最初からうまくいくとは思わない方が無難。二度三度と失敗を重ねるうちにコツがわかってくるもの。私は経験があるからできるだけで、初心者には少々難しいから出来なくとも恥ずかしがることはない。
「薪と薪の間に空間がなければ火は消えてしまうけど、逆に間を開けすぎると熱が逃げていくからそこは気をつけて」
薪に炎が灯ったのを見て、私は飯盒をセットしてあげた。
「多分この後の流れはわかってると思うから大丈夫だと思うけど、火加減には気をつけてね、火力が弱いとお米が半生になっちゃうから」
「美玖ー! 焼きそば出来たよー!」
「おっと、目玉焼き作んなきゃ」
友達が大声で私に焼きそば完成を知らせてきたので私は小走りで自分のグループに戻った。すぐに目玉焼きを作って、グループ全員で目玉焼きのせ大盛り焼きそばを平らげた。鉄板で焼いたからか、隠し味でもはいっているのかめちゃくちゃ美味しかった。
他の班がまだ食事を始めていない段階で私のグループは早々に片付けを済ませてすぐに学習ワークにはいった。合宿期間中に終わらせる必要のある課題もあるので、早めに勉強時間を取れて良かった。
目の疲れや肩こり疲労を大浴場のお風呂でゆっくり癒やした後、ホカホカしながら女子部屋に戻っていると、途中でピーラーを片手に持った悠木君と遭遇した。
「悠木君も今からお風呂?」
悠木君は私の問いに答えることなく、なぜか羽織っていたジャージを脱いだ。そしてさっとそれを私の肩へかけてきた。所要時間約3秒だろうか。
「…なに? 寒くないんだけど…」
むしろ暑いんだけど…
私が寒くて震えているように見えたのか?
「薄着すぎるから着てろ」
「いやこれ…学校の体操着…みんな同じもの着てる…」
合宿期間中はみんなもれなく体操着かジャージ姿だ。以前はパジャマは自前で良かったんだけど、過激なパジャマを着る女子が過去に数名出て風紀が乱れたことがあるそうで、それ以降合宿中は体操着が基本になっている。
体操着姿の私が薄着なら、みんな薄着になるんだがそこのところどうなのだろう。
悠木君は私の背中をグイグイ押すと、女子部屋のある棟の手前まで送ってくれた。その先へは進むつもりが無いようである。そういうところ本当真面目だよね。
「いいな、女子と一緒にいろよ。男子と2人きりになるな!」
「お父さんかあんたは」
今まさに男子と2人きりなんだが、それはいいのか悠木君。そもそも悠木君は男子じゃなかった…?
「あぁじゃあこれ返すね…」
「いいから!」
肩に掛けられたジャージを返そうとしたら受取拒否された。なぜ? 私は寒くないし、際どい格好をしているわけでもないのになぜ私にジャージを着せる。悠木君の中で体操着は卑猥な着用物なのかい? ちょっと流石にその趣味は引いちゃうなぁ…
悠木君は私の問いかけから逃れるように慌てた様子で引き返していった。彼の手にはピーラー。私の私物のピーラーがそのまま持ち去られてしまった。
「…なんで悠木君は顔が真っ赤なんだろう」
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