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勘違いを続ける彼女と彼女が気になる彼。
海水は、96.6%ほどの水と約3.4%の塩分で構成されている。
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海の家のバイトをこなす毎日を送っていたそんなある日のこと。
「美玖ちゃん、これ」
オーナーの奥さんが私に差し出したのはタグが付いたままの新品の水着だった。
「昔買ったんだけど使わなかった水着あげる。妊娠してお腹弛んじゃって今はもうビキニは厳しいから」
白ビキニか。冒険だな。
私は労働のためにここに来てるので、今年も去年も水着は持ってこなかった。ていうかスクール水着しか持っていないので、海でそれはちょっとね。
去年パリピ兄さんたちに海に放りこまれたこともある。あまりにも熱くなったら海でクールダウンも必要なのかもしれない。私はありがたくその水着を頂戴した。
じゅわー…と鉄板の上で熱された生地が音を立てた。たこ焼きを焼きながら外を眺める。今日もギラギラ輝く太陽が砂浜を熱していた。
今日も暑い。過ごしやすい日が無い。暑すぎて頭が働かない……。
現実逃避をしようと、遠くへ視線を送ると太陽の光が反射した海がキラキラ輝いていた。
「美玖ちゃん、今空いているからふたりとも休憩いっておいで。夏生君にも伝えておいて」
オーナーに言われてふと気づいた。海の家の中も、外もだいぶ人がはけた。お昼のピークを過ぎて余裕が出来たのだ。
海の家を出て、砂浜のどこかでたこ焼きを売り歩いているであろう悠木君の姿を探すと、案の定水着ギャルに逆ナンパされている彼の姿を発見する。
毎日毎日同じことの繰り返しだな。あれだけ女体を眼前にやられたらさすがに麻痺してしまうものなのだろうか。
「悠木くーん」
私が大声を出して呼びかけると、悠木君の肩がピクリと跳ねた。そしてスッと逆ナンギャルの包囲網から抜け出していた。
「いま空いてるからふたりとも休憩行ってきていいってさ」
賄いは海の家の冷蔵庫に置いてあるからね。
オーナーからの伝言を伝えると私はじゃ、と手をあげる。
「え? お前どこ行くんだ?」
私は履いていたサンダルをその場で脱ぐと砂浜に着地した。太陽に熱された砂が足の裏を容赦なく熱している。続いて着ていたパーカーのチャックを下ろした。上着を脱いで下の短パンも脱ぎ去る。
「海で泳いでくるのさ!」
暑くて暑くてたまらないんだ! 私は泳ぐんだ!
私がキメ顔で水着になると悠木君は固まっていた。口をぱかーんと開けて呆然とこちらを見ている。
なに、どうした。私が水着になるとは思わなかったのか。私だって泳ぐ時は泳ぐぞ。ちなみにこの白ビキニは私の趣味ではないからね。
悠木君の動きが再開したのは一拍置いてからだった。
ぐっと歯を食いしばった悠木君は何やら顔を真っ赤にさせてこちらにずんずん近づいてきた。私の腕に引っ掛けたパーカーを取り上げると、それをパサリと肩にかけてきたではないか。
「……なに?」
「危険だ」
「熱中症のこと? 海入ってれば平気だよ。…悠木君、顔が赤いよ、頭クラクラしない?」
「…誰のせいだと」
悠木君の首元を触ると、私の手のひらよりも熱を持っていた。これはいけない、このままじゃ熱中症になってしまう。
熱中症は怖いんだぞ。早く体を冷やしたほうがいい。私は心配して声をかけたのに、悠木君はなにか言いたそうに、だけど言葉が出てこないのか悶絶していた。
どうしたんだ情緒不安定の病が飛び出してきたのか。
「ばんじゅうと売上を店に置いたら海においでよ。一緒に泳ごう」
息抜きして身も心もリフレッシュしたほうがいい。扇風機の風を浴びるよりも一気に涼しくなるからおすすめだよ。
私の提案に乗るのか、悠木君はダッシュで砂浜を駆け去っていった。うんうん、いい加減暑くて海に入りたかったんだな、きっと。暑いよね、わかるわかる。
私は衣類とサンダルを一箇所にまとめると、その場で準備運動をした。海はプールとは違う。足つって溺死とか洒落にならん。
アキレス腱を伸ばしてストレッチしていると、ずざぁとスライディングしてくる人影。蹴られた地面が抉れ、砂が飛び散る。
「早かったね」
走って出戻ってきた悠木君は先程よりも顔を赤くしていた。
熱中症一歩手前なのに走ったりするから余計に体温が上がってるんじゃないの?
悠木君の手を引っ張ると、私は海に誘うように砂浜を蹴った。波打ち際に足の裏を乗せれば、濡れた砂浜に足の裏の痕がくっきり残る。そこに波が流れてくると跡形もなく消え去った。じゃぶ、と波が足首までを覆うとその冷たさに私は震える。
あー冷たい。
猛暑日の今日だからきっと海水温も高いはずだけど、暑い場所で働いていたのでひんやりする。去年パリピ兄さんに海に落とされたアレ結構楽しかったけど、海を守る指導員に怒られちゃうかもだし、安全とは言えないからアレは無理かな。シンプルに泳ぐだけにしたほうが良さそうだ。
「冷たくて気持ちいいね」
後ろを振り返って悠木君に尋ねると、悠木君は空いた手で目元を隠して何やらモゴモゴ言っていた。顔だけじゃなく首元や胸元まで赤くなっている。…めまいでも起きているんだろうか。
「大変だ。早く海に入ろう」
早めに海水に浸からせたほうがいいのかもしれない。両腕の力で悠木君を引っ張って海へと誘導する。
どこまで行こうか。遊泳エリアと禁止水域の境界まで泳いでみるか。胸元まで水が浸かる深さに到達したので、悠木君から手を離して海に潜水した。そのまま平泳ぎで泳ぐ。その後に続くように悠木君も泳いでいた。
会話もなくただただ本当に泳いで海を満喫した。
「イッタ…!」
少し泳ぎ疲れたので休憩がてら砂浜へ上陸すると、グサリと足裏に鋭い物が突き刺さって私は痛みに悲鳴を上げた。
左足をさっとあげて砂浜を見下ろすとそこには割れた瓶の破片。これを踏んで足裏を怪我してしまったようである。
私の声を聞いて心配した悠木君が素早く駆け寄ってきてくれた。
「どうした!」
「破片踏んじゃった」
イテテと左足を庇うようにしてぎこちなく歩くとふわりと身体が浮いた。
「手当しよう」
「!? ちょっと! 私重いからいいよ!」
お姫様抱っこされた私は気恥ずかしくなって慌てて止めようとしたが、悠木君の動きは早かった。さささーっと海の家に戻ると、店番をしていたオーナーに救急箱はないかを聞いて、さくさくと私の足裏の怪我を手当してくれた。
「海はもう禁止。海の中は雑菌でいっぱいだからな」
上着を肩に掛けられながら海禁止令を出されてしまった。
「少し切っただけなのに」
「駄目だ」
あんたは私の保護者がなにかなのか。海で泳ぐのを断固禁止されてしまった。
その日は海岸からお客さんが引けるのも早く、バイトも早上がりできたので、下宿先の民宿に早めに戻った。海水でベタベタする身体をシャワーで流してお風呂から出ると、悠木君がまた怪我の手当をし直してくれた。……流石に心配し過ぎだと思うんだけど。
「調子が悪くなったら早めに言えよ」
「足裏怪我したくらいでそんな大事にならないよ」
心配性にも程があるだろう。
私達のやり取りをオーナーの奥さんがニヤニヤ見ていたので私が怪訝な顔をしていると、悠木君が救急箱を戻しにどこかへ行った時、奥さんにこんなことを言われた
「愛されてるねぇ、美玖ちゃん」
「え…?」
愛…? 愛とは…?
親子・兄弟などが慈しみ合う気持ち、特定の人をいとしいと思う心。互いに相手を慕う情……神が人類を慈しみ、幸福を与えること。また、他者を自分と同じように慈しむこと…つまり、アガペーか…
私が哲学的なことへ連想し始めていると、奥さんは微笑ましそうに笑っていた。
「美玖ちゃんは気づいてないみたいだけど、夏生君の態度は特別な人に対するものに見えたよ?」
特別…?
私と悠木君は友達だ。親しい私には心許してくれている。悠木君はその容姿も相まって散々な目に遭ってきたので、女子を警戒している面もあるから余計にそう見えるんだと思う。
「美玖ちゃんもそうなんじゃないかな?」
「……」
私はなんて答えたらいいのかわからず黙り込んでしまった。指摘された言葉に戸惑い、胸の中がもやつく。
私が悠木君を特別な相手としてみている…?
「青いね、青春だ」
わからなくて難しい顔で考え込んでいると、奥さんはあの頃が懐かしいなぁと自分の青春時代に思いを馳せていた。
「美玖ちゃん、これ」
オーナーの奥さんが私に差し出したのはタグが付いたままの新品の水着だった。
「昔買ったんだけど使わなかった水着あげる。妊娠してお腹弛んじゃって今はもうビキニは厳しいから」
白ビキニか。冒険だな。
私は労働のためにここに来てるので、今年も去年も水着は持ってこなかった。ていうかスクール水着しか持っていないので、海でそれはちょっとね。
去年パリピ兄さんたちに海に放りこまれたこともある。あまりにも熱くなったら海でクールダウンも必要なのかもしれない。私はありがたくその水着を頂戴した。
じゅわー…と鉄板の上で熱された生地が音を立てた。たこ焼きを焼きながら外を眺める。今日もギラギラ輝く太陽が砂浜を熱していた。
今日も暑い。過ごしやすい日が無い。暑すぎて頭が働かない……。
現実逃避をしようと、遠くへ視線を送ると太陽の光が反射した海がキラキラ輝いていた。
「美玖ちゃん、今空いているからふたりとも休憩いっておいで。夏生君にも伝えておいて」
オーナーに言われてふと気づいた。海の家の中も、外もだいぶ人がはけた。お昼のピークを過ぎて余裕が出来たのだ。
海の家を出て、砂浜のどこかでたこ焼きを売り歩いているであろう悠木君の姿を探すと、案の定水着ギャルに逆ナンパされている彼の姿を発見する。
毎日毎日同じことの繰り返しだな。あれだけ女体を眼前にやられたらさすがに麻痺してしまうものなのだろうか。
「悠木くーん」
私が大声を出して呼びかけると、悠木君の肩がピクリと跳ねた。そしてスッと逆ナンギャルの包囲網から抜け出していた。
「いま空いてるからふたりとも休憩行ってきていいってさ」
賄いは海の家の冷蔵庫に置いてあるからね。
オーナーからの伝言を伝えると私はじゃ、と手をあげる。
「え? お前どこ行くんだ?」
私は履いていたサンダルをその場で脱ぐと砂浜に着地した。太陽に熱された砂が足の裏を容赦なく熱している。続いて着ていたパーカーのチャックを下ろした。上着を脱いで下の短パンも脱ぎ去る。
「海で泳いでくるのさ!」
暑くて暑くてたまらないんだ! 私は泳ぐんだ!
私がキメ顔で水着になると悠木君は固まっていた。口をぱかーんと開けて呆然とこちらを見ている。
なに、どうした。私が水着になるとは思わなかったのか。私だって泳ぐ時は泳ぐぞ。ちなみにこの白ビキニは私の趣味ではないからね。
悠木君の動きが再開したのは一拍置いてからだった。
ぐっと歯を食いしばった悠木君は何やら顔を真っ赤にさせてこちらにずんずん近づいてきた。私の腕に引っ掛けたパーカーを取り上げると、それをパサリと肩にかけてきたではないか。
「……なに?」
「危険だ」
「熱中症のこと? 海入ってれば平気だよ。…悠木君、顔が赤いよ、頭クラクラしない?」
「…誰のせいだと」
悠木君の首元を触ると、私の手のひらよりも熱を持っていた。これはいけない、このままじゃ熱中症になってしまう。
熱中症は怖いんだぞ。早く体を冷やしたほうがいい。私は心配して声をかけたのに、悠木君はなにか言いたそうに、だけど言葉が出てこないのか悶絶していた。
どうしたんだ情緒不安定の病が飛び出してきたのか。
「ばんじゅうと売上を店に置いたら海においでよ。一緒に泳ごう」
息抜きして身も心もリフレッシュしたほうがいい。扇風機の風を浴びるよりも一気に涼しくなるからおすすめだよ。
私の提案に乗るのか、悠木君はダッシュで砂浜を駆け去っていった。うんうん、いい加減暑くて海に入りたかったんだな、きっと。暑いよね、わかるわかる。
私は衣類とサンダルを一箇所にまとめると、その場で準備運動をした。海はプールとは違う。足つって溺死とか洒落にならん。
アキレス腱を伸ばしてストレッチしていると、ずざぁとスライディングしてくる人影。蹴られた地面が抉れ、砂が飛び散る。
「早かったね」
走って出戻ってきた悠木君は先程よりも顔を赤くしていた。
熱中症一歩手前なのに走ったりするから余計に体温が上がってるんじゃないの?
悠木君の手を引っ張ると、私は海に誘うように砂浜を蹴った。波打ち際に足の裏を乗せれば、濡れた砂浜に足の裏の痕がくっきり残る。そこに波が流れてくると跡形もなく消え去った。じゃぶ、と波が足首までを覆うとその冷たさに私は震える。
あー冷たい。
猛暑日の今日だからきっと海水温も高いはずだけど、暑い場所で働いていたのでひんやりする。去年パリピ兄さんに海に落とされたアレ結構楽しかったけど、海を守る指導員に怒られちゃうかもだし、安全とは言えないからアレは無理かな。シンプルに泳ぐだけにしたほうが良さそうだ。
「冷たくて気持ちいいね」
後ろを振り返って悠木君に尋ねると、悠木君は空いた手で目元を隠して何やらモゴモゴ言っていた。顔だけじゃなく首元や胸元まで赤くなっている。…めまいでも起きているんだろうか。
「大変だ。早く海に入ろう」
早めに海水に浸からせたほうがいいのかもしれない。両腕の力で悠木君を引っ張って海へと誘導する。
どこまで行こうか。遊泳エリアと禁止水域の境界まで泳いでみるか。胸元まで水が浸かる深さに到達したので、悠木君から手を離して海に潜水した。そのまま平泳ぎで泳ぐ。その後に続くように悠木君も泳いでいた。
会話もなくただただ本当に泳いで海を満喫した。
「イッタ…!」
少し泳ぎ疲れたので休憩がてら砂浜へ上陸すると、グサリと足裏に鋭い物が突き刺さって私は痛みに悲鳴を上げた。
左足をさっとあげて砂浜を見下ろすとそこには割れた瓶の破片。これを踏んで足裏を怪我してしまったようである。
私の声を聞いて心配した悠木君が素早く駆け寄ってきてくれた。
「どうした!」
「破片踏んじゃった」
イテテと左足を庇うようにしてぎこちなく歩くとふわりと身体が浮いた。
「手当しよう」
「!? ちょっと! 私重いからいいよ!」
お姫様抱っこされた私は気恥ずかしくなって慌てて止めようとしたが、悠木君の動きは早かった。さささーっと海の家に戻ると、店番をしていたオーナーに救急箱はないかを聞いて、さくさくと私の足裏の怪我を手当してくれた。
「海はもう禁止。海の中は雑菌でいっぱいだからな」
上着を肩に掛けられながら海禁止令を出されてしまった。
「少し切っただけなのに」
「駄目だ」
あんたは私の保護者がなにかなのか。海で泳ぐのを断固禁止されてしまった。
その日は海岸からお客さんが引けるのも早く、バイトも早上がりできたので、下宿先の民宿に早めに戻った。海水でベタベタする身体をシャワーで流してお風呂から出ると、悠木君がまた怪我の手当をし直してくれた。……流石に心配し過ぎだと思うんだけど。
「調子が悪くなったら早めに言えよ」
「足裏怪我したくらいでそんな大事にならないよ」
心配性にも程があるだろう。
私達のやり取りをオーナーの奥さんがニヤニヤ見ていたので私が怪訝な顔をしていると、悠木君が救急箱を戻しにどこかへ行った時、奥さんにこんなことを言われた
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「え…?」
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私が哲学的なことへ連想し始めていると、奥さんは微笑ましそうに笑っていた。
「美玖ちゃんは気づいてないみたいだけど、夏生君の態度は特別な人に対するものに見えたよ?」
特別…?
私と悠木君は友達だ。親しい私には心許してくれている。悠木君はその容姿も相まって散々な目に遭ってきたので、女子を警戒している面もあるから余計にそう見えるんだと思う。
「美玖ちゃんもそうなんじゃないかな?」
「……」
私はなんて答えたらいいのかわからず黙り込んでしまった。指摘された言葉に戸惑い、胸の中がもやつく。
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