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意識し始めた彼女と積極的に動く彼。
世人之を聞けば皆頭を掉り、東風の馬耳を射るが如き有り
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拡散された写真は盗み撮りされたものだろうとみんな噂していた。
写真の中で悠木君は雨宮さんを見下ろしていた。ちょうどいい感じにくっついて、見つめ合っているようにも見える。何も知らない人が見れば交際している恋人同士にしか見えなかった。
ネット記事上では、そんな2人に対する反応はまるで彼氏彼女に宛てたものばかりで、“お似合い”だってコメントがずらりと並んでいた。
別にこの2人は付き合ってないのに…と私はひとりムカムカしていた。
学校が特定されるのも一瞬で、正門前には他校の生徒…今回は雨宮さん目的の男子も集まるようになり、去年よりも騒然となった。
人に注目されるのが大好きな雨宮さんは押し寄せてきた人たちにも嫌な顔せずに写真撮影をさせてあげている姿を見かけた。
私がバイトに行くために自転車に乗って正門を通過する時すれ違ったけど、彼女はこちらの存在に気づくなりなにやら意味ありげに笑っていた。
何あのドヤ顔。
……悠木君と一緒に有名になってやったって優越感から来る笑顔?
むかぁ…と苛ついたのはここだけの話だ。言っておくが、別に雨宮さんのことが羨ましいとかそういうわけじゃないから。
雨宮さんがどこぞの男子校のイケメンに告白されたとか、【可愛すぎる女子高生特集】の一角に飾られたとか、彼女への注目度は日に日に増して行った。彼女の噂を聞かない日は無いくらいだった。
一方の悠木君は逃げの一手である。日に日に彼の元気がなくなっていくのだけはわかった。
早朝バイト先で品出しをしていると、ピロリーンピロリーンと来客チャイムが鳴り響いた。
この時間はもしかすると…ひょこっと顔を出して「いらっしゃいませー」と声をかけると、やっぱり悠木君だった。
「おはよ。悠木君」
「はよ」
私が挨拶すると、悠木君がふにゃと柔らかい笑顔を浮かべた。
あぁ、この笑顔をこれから曇らせることになるとは…私は心が傷んだが、言っておかなきゃいけないことがあるのだ…
「あのね、怖がらずに聞いてほしいの。ここのマンションの外で怪しい女の人が待ち伏せしてたから、見つからないように登校したほうがいいよ」
「…マジか。またかよ」
去年と同じ流れである。またもや住所特定したらしい女による待ち伏せ行為をされていると知った悠木君は見るからにげんなりしていた。
「昨日もモデル事務所の人間とかいう怪しい人が高校前で待ち伏せしてたし……大変だね、悠木君も」
「はぁ!?」
「先生たちが追い払っていたけどね」
悠木君は夕課外があったから知らなかっただろうが、昨日の放課後、正門前で怪しい人が無関係の生徒達から悠木君情報を引き出そうとしていたんだ。流石に危険だと判断した先生が警察呼んで追い払わせていた。
説明してあげると悠木君の表情が引きつっていた。言わなきゃよかったね、ごめん。
悠木君は自分の容姿で人の注目を浴びようとは考えてない人だから今の状況はとても不本意だろうな。──そもそも、あのツーショット写真はどういう状況で撮影されたんだろう。
「悠木君、雨宮さんと一緒に写った写真…実際のところどう思っているの?」
見るからに悠木君が迷惑しているのはわかったけど、なんだか私は心がモヤついて晴れないのだ。悠木君の言葉ではっきりしてほしかった。
「どうもこうも……」
私の質問に悠木君は顔に疑問を浮かべて、そして何やら合点がいったのか、嬉しそうに笑った。
「え、何妬いてんの?」
その返しに私は何も返せない。じわじわと頬が熱くなるのがわかった。
桐生さんの助け舟により自分の感情に気づいてしまった私には否定できない。…そのとおりだ。私はらしくもなくヤキモチを妬いているのだ…!
「もういいよ! 早く買い物して早く学校に行きなよ!」
私がぐいぐいと背中を押すと、悠木君が「なんだよぉー」よにへらにへら笑いながら今日のお昼ごはん分の食料を購入していた。会計後も私をからかおうとする悠木君を追い立てるように退店させると、頬の熱を冷まそうと深呼吸した。
だめだ、やっぱり調子が狂う。
「はー独り身つれぇわー。カップル爆発してほしいわー」
横でわざとらしく漏らされた言葉に私はグッと唇を噛み締めた。同じシフトの大学生バイトまで私をからかう始末である。
今の私は態度に出まくっているのだろうか…それはそれでどうなんだろうと自分が恥ずかしくなったが、悠木君を前にすると調子が狂うんだからどうしようもないのだ。
■□■
【生徒のお呼び出しを申し上げます。2年A組悠木夏生君、1年4組雨宮聖良さん、至急指導室までお越しください…】
SNS騒動が収まるどころか余計に広まり、他の生徒にも影響が出始めた頃、とうとう彼らは呼び出されてしまった。
生徒指導室内でどんなやり取りをしたのかはわからないが、お話を終えて戻ってくる悠木君は目に見えて落ち込んでいた。
「悠木君」
彼を呼ぶと、悠木君は顔を上げて私を瞳に映した。その瞳が悲しそうに揺れていて、私は悠木君のメンタルが心配になった。
「大丈夫…?」
「…去年のことがあるからな、流石に凹む」
去年の生徒会役選のときも悠木君は沈んだ顔をしていた。
あの頃はそこまで悠木君と親しい間柄じゃなかったけど、それでも彼は目に見えて落ち込んでいた。きっと目に見えない悪意が怖かったに違いない。
今年は鑑賞物として見られているだけで、明確な悪意は感じないけど、それでも彼には息苦しい状況には変わりないはずだ。
「またまたそんなこと言ってぇ。私可愛いからぁ噂になって嬉しいでしょぉ?」
ぬっと目の前に割り込んできたその影は、馴れ馴れしく悠木君の腕に抱きつくと得意げに笑っていた。
自分に自信があることはいいことだが、今はそんなことを言っていい状況じゃない。それがわからないか。悠木君は落ち込んでるんだぞ。
「……雨宮さん、誤解を受ける行動は控えなさい」
私が注意すると、彼女はふふっと小馬鹿にするような笑い方をした。先輩に対する敬意のかけらもないその態度に私は眉をピクリと動かした。
「おい、離せって」
「嫉妬ですかぁ? 私って可愛いから、夏生先輩と並ぶとお似合いですもん。みんなそう言ってますよ、羨ましいんでしょー?」
悠木君が彼女の腕をほどこうとしているが、ガッチガチに抱きついているようで解くのに苦慮しているようだった。
この状況は彼の本意ではない。それは見たらわかる。
「今のあなたの行動で悠木君が迷惑してるのがわからないかな? 離しなさい」
「なんですかー? 羨ましいならそう言ったらいいのにー」
カッとなって言い返しそうになるが、私の冷静な部分が『この子は挑発して楽しんでいるだけだ』とストップをかける。
多分何を言っても彼女はまともに受け入れないだろうなって諦めの気持ちもあった。
「…雨宮さんは女の子でしょ。変に目立つと、心無い相手に傷つけられることもあるんだよ」
気になる男子と噂になって嬉しいのはわかるが、彼女の行動はどうかと思う。目立つために何でもしてやろうとしているように見える。
……それは危険な行いにも映る。
彼女は単体でも目立つ。いい意味でも悪い意味でも。彼女に近づいて来る人間は下心あって近づいてくるんだろうし、行動には気をつけないといつか痛い目に遭うと思うのだ。日本は思うほど安全じゃない。危険思想を持つ人なんてうまく隠れているだけで、その辺に潜んでいるはずなのだ。雨宮さんみたいな綺麗な女の子は尚更警戒したほうがいいと思う。
「お説教なら結構ですぅ。余計なお世話ですよぉ」
心からの心配だったのだが、ハッと鼻で笑われてしまった。もう暖簾に腕押し状態だ。
写真隠し撮りされて知らない内にネットに拡散されて、それを元に知らない人が押し寄せてくるのって普通は怖くなるもんじゃないだろうか。
彼女の反応は悠木君のそれとは違ってやはりどこか異様に見えた。
写真の中で悠木君は雨宮さんを見下ろしていた。ちょうどいい感じにくっついて、見つめ合っているようにも見える。何も知らない人が見れば交際している恋人同士にしか見えなかった。
ネット記事上では、そんな2人に対する反応はまるで彼氏彼女に宛てたものばかりで、“お似合い”だってコメントがずらりと並んでいた。
別にこの2人は付き合ってないのに…と私はひとりムカムカしていた。
学校が特定されるのも一瞬で、正門前には他校の生徒…今回は雨宮さん目的の男子も集まるようになり、去年よりも騒然となった。
人に注目されるのが大好きな雨宮さんは押し寄せてきた人たちにも嫌な顔せずに写真撮影をさせてあげている姿を見かけた。
私がバイトに行くために自転車に乗って正門を通過する時すれ違ったけど、彼女はこちらの存在に気づくなりなにやら意味ありげに笑っていた。
何あのドヤ顔。
……悠木君と一緒に有名になってやったって優越感から来る笑顔?
むかぁ…と苛ついたのはここだけの話だ。言っておくが、別に雨宮さんのことが羨ましいとかそういうわけじゃないから。
雨宮さんがどこぞの男子校のイケメンに告白されたとか、【可愛すぎる女子高生特集】の一角に飾られたとか、彼女への注目度は日に日に増して行った。彼女の噂を聞かない日は無いくらいだった。
一方の悠木君は逃げの一手である。日に日に彼の元気がなくなっていくのだけはわかった。
早朝バイト先で品出しをしていると、ピロリーンピロリーンと来客チャイムが鳴り響いた。
この時間はもしかすると…ひょこっと顔を出して「いらっしゃいませー」と声をかけると、やっぱり悠木君だった。
「おはよ。悠木君」
「はよ」
私が挨拶すると、悠木君がふにゃと柔らかい笑顔を浮かべた。
あぁ、この笑顔をこれから曇らせることになるとは…私は心が傷んだが、言っておかなきゃいけないことがあるのだ…
「あのね、怖がらずに聞いてほしいの。ここのマンションの外で怪しい女の人が待ち伏せしてたから、見つからないように登校したほうがいいよ」
「…マジか。またかよ」
去年と同じ流れである。またもや住所特定したらしい女による待ち伏せ行為をされていると知った悠木君は見るからにげんなりしていた。
「昨日もモデル事務所の人間とかいう怪しい人が高校前で待ち伏せしてたし……大変だね、悠木君も」
「はぁ!?」
「先生たちが追い払っていたけどね」
悠木君は夕課外があったから知らなかっただろうが、昨日の放課後、正門前で怪しい人が無関係の生徒達から悠木君情報を引き出そうとしていたんだ。流石に危険だと判断した先生が警察呼んで追い払わせていた。
説明してあげると悠木君の表情が引きつっていた。言わなきゃよかったね、ごめん。
悠木君は自分の容姿で人の注目を浴びようとは考えてない人だから今の状況はとても不本意だろうな。──そもそも、あのツーショット写真はどういう状況で撮影されたんだろう。
「悠木君、雨宮さんと一緒に写った写真…実際のところどう思っているの?」
見るからに悠木君が迷惑しているのはわかったけど、なんだか私は心がモヤついて晴れないのだ。悠木君の言葉ではっきりしてほしかった。
「どうもこうも……」
私の質問に悠木君は顔に疑問を浮かべて、そして何やら合点がいったのか、嬉しそうに笑った。
「え、何妬いてんの?」
その返しに私は何も返せない。じわじわと頬が熱くなるのがわかった。
桐生さんの助け舟により自分の感情に気づいてしまった私には否定できない。…そのとおりだ。私はらしくもなくヤキモチを妬いているのだ…!
「もういいよ! 早く買い物して早く学校に行きなよ!」
私がぐいぐいと背中を押すと、悠木君が「なんだよぉー」よにへらにへら笑いながら今日のお昼ごはん分の食料を購入していた。会計後も私をからかおうとする悠木君を追い立てるように退店させると、頬の熱を冷まそうと深呼吸した。
だめだ、やっぱり調子が狂う。
「はー独り身つれぇわー。カップル爆発してほしいわー」
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今の私は態度に出まくっているのだろうか…それはそれでどうなんだろうと自分が恥ずかしくなったが、悠木君を前にすると調子が狂うんだからどうしようもないのだ。
■□■
【生徒のお呼び出しを申し上げます。2年A組悠木夏生君、1年4組雨宮聖良さん、至急指導室までお越しください…】
SNS騒動が収まるどころか余計に広まり、他の生徒にも影響が出始めた頃、とうとう彼らは呼び出されてしまった。
生徒指導室内でどんなやり取りをしたのかはわからないが、お話を終えて戻ってくる悠木君は目に見えて落ち込んでいた。
「悠木君」
彼を呼ぶと、悠木君は顔を上げて私を瞳に映した。その瞳が悲しそうに揺れていて、私は悠木君のメンタルが心配になった。
「大丈夫…?」
「…去年のことがあるからな、流石に凹む」
去年の生徒会役選のときも悠木君は沈んだ顔をしていた。
あの頃はそこまで悠木君と親しい間柄じゃなかったけど、それでも彼は目に見えて落ち込んでいた。きっと目に見えない悪意が怖かったに違いない。
今年は鑑賞物として見られているだけで、明確な悪意は感じないけど、それでも彼には息苦しい状況には変わりないはずだ。
「またまたそんなこと言ってぇ。私可愛いからぁ噂になって嬉しいでしょぉ?」
ぬっと目の前に割り込んできたその影は、馴れ馴れしく悠木君の腕に抱きつくと得意げに笑っていた。
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「……雨宮さん、誤解を受ける行動は控えなさい」
私が注意すると、彼女はふふっと小馬鹿にするような笑い方をした。先輩に対する敬意のかけらもないその態度に私は眉をピクリと動かした。
「おい、離せって」
「嫉妬ですかぁ? 私って可愛いから、夏生先輩と並ぶとお似合いですもん。みんなそう言ってますよ、羨ましいんでしょー?」
悠木君が彼女の腕をほどこうとしているが、ガッチガチに抱きついているようで解くのに苦慮しているようだった。
この状況は彼の本意ではない。それは見たらわかる。
「今のあなたの行動で悠木君が迷惑してるのがわからないかな? 離しなさい」
「なんですかー? 羨ましいならそう言ったらいいのにー」
カッとなって言い返しそうになるが、私の冷静な部分が『この子は挑発して楽しんでいるだけだ』とストップをかける。
多分何を言っても彼女はまともに受け入れないだろうなって諦めの気持ちもあった。
「…雨宮さんは女の子でしょ。変に目立つと、心無い相手に傷つけられることもあるんだよ」
気になる男子と噂になって嬉しいのはわかるが、彼女の行動はどうかと思う。目立つために何でもしてやろうとしているように見える。
……それは危険な行いにも映る。
彼女は単体でも目立つ。いい意味でも悪い意味でも。彼女に近づいて来る人間は下心あって近づいてくるんだろうし、行動には気をつけないといつか痛い目に遭うと思うのだ。日本は思うほど安全じゃない。危険思想を持つ人なんてうまく隠れているだけで、その辺に潜んでいるはずなのだ。雨宮さんみたいな綺麗な女の子は尚更警戒したほうがいいと思う。
「お説教なら結構ですぅ。余計なお世話ですよぉ」
心からの心配だったのだが、ハッと鼻で笑われてしまった。もう暖簾に腕押し状態だ。
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