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意識し始めた彼女と積極的に動く彼。
0°≦θ≦180°のとき、次の不等式を解きなさい。
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学校が終わった後にお弁当屋さんで夜のバイトをしていると、自動ドアの開く音が聞こえた。
「いらっ…」
「匿って!!」
入店してきた人物は、店内に設置しているチルド品冷蔵ケースの影に素早く身を隠し、外からその姿が見えないようにしていた。
彼の顔は青ざめ、ぷるぷると震えていた。まるで命でも狙われているかのような怯えようである。
「……また追い回されてるの? 悠木君」
「学校から逃げてきた」
夕課外を終えた彼は、細心の注意を払って学校を出ていったそうだが、女子に見つかり追いかけ回されていたのだという。
家に直行しようにも住所を知られるのが嫌だったから回り道をしてたんだってさ。
どのくらい走っていたのだろう。苦しそうに肩で息をしていた。
……SNSで悠木君情報が広がるのは初めてじゃないし、去年も似たようなことが起きていたけど、今年は雨宮さんが加わったことで色んな意味で規模が大きくなっているような気がする。
学校SNSでは、雨宮さんが芸能界入りするんじゃないかとか、悠木君がモデル事務所に入ったとか根も葉もない噂が流れている。悠木君は否定しているが、雨宮さんが変な風に煽ってどんどん噂が変な方向に流れていっている。
彼女は今の現状を更に加熱して楽しんでいる風にも見える。
私はカウンターで仕事をしながら、窓ガラスの外を観察する。
大通りに面したここは人の出入りが激しい。女子高生が何人も店の前を通過するけど、今丁度帰宅時間とかぶっているので、どれが追いかけてきた女子高生かわからない。
「眼鏡呼び出す?」
私が送っていけたらいいけど、まだバイト終わんないから無理なんだな。
「いや、大輔も生徒会で忙しいから……最後の手段でタクシーで帰る」
なんと贅沢な。と思ったけど、身の安全のためなのだろう。
悠木君はうちのお店でお弁当を購入するついでに私への差し入れに果物ゼリーを買ってくれた。その後弁当屋の隅っこで息を潜め、アプリで呼んだタクシーが到着するなり周りを警戒しながらコソコソ乗車して帰宅の途についていた。
──悠木君は見るからに疲れていた。こんな風に追い回されたら女嫌いもなるよね。好きで目立っているわけじゃないなら尚更に。
眼鏡は生徒会の仕事があるため、悠木君とずっとは一緒にいられないし、私が気にしてやるにもクラスも違うし、バイトもある……現在の悠木君は孤軍奮闘しているようなものであった。
……すごく心配だ。いつもであれば何よりもバイトを優先するはずなのに、今日に限っては拘束してくるバイトが憎たらしくなった。悠木君は無事か不安だったし、一緒について行けたらいいのにと悔しい思いをした。
その日のバイトが終わってからスマホを見ると、悠木君からメッセージが届いていた。無事帰宅できたそうだ。
【明日からカムフラージュとして眼鏡をつけようと思う】
眼鏡というのは伊達眼鏡ってことかな。
悠木君が眼鏡をかけてもただのイケメンなだけだと思う。別の人まで引き寄せちゃうかもよ……。
どうせなら前髪ボサボサにして、思いっきりジミメンに扮したほうが──…しかし、眼鏡装着は彼なりの策なのだろう。黙っておいた。
□■□
翌日から眼鏡をつけた悠木君は早速、学校中の噂の的になった。眼鏡というアイテムは悠木君の可能性を更に広げてくれたらしい。さり気なく髪型も真面目ヘアに変えていたが、それはそれで知的なイケメンになっただけだった。
そんな悠木君を見て「くそぅ、カッコいい」と密かにときめいたのは秘密である。
ただ、悠木君の顔を写真でしか知らない外部の女子学生達は、眼鏡をつけた彼を見逃していたそうなので、悠木君は安全に正門を通過できたようである。
しかし、この手段がどのくらい使えるかという課題もある。一人が見つけたら再び追い回される未来待ったなしになる。その前に彼女たちが諦めてくれたらいいのだが……
「フワァ……」
私は大きなアクビをしながら、お昼寝スポットに移動していた。
お昼ごはんのあとはお昼寝。それが私のルーチンワークなのだ。いつものお昼寝スポットは4階の社会科準備室。階段を登って少し進めばすぐに到着するはずなのに、あと一歩のところで足止めを食らっていた。
「ですからぁ、私とお付き合いしてますーって宣言すれば、あの女達蹴散らせるんですよー?」
「断る」
階段の踊り場で悠木君が雨宮さんに絡まれていたのだ。この光景も見慣れたものなんだが、やっぱりくっついている姿を見るのはこちらとしても面白くない。自分の気持ちを自覚したら尚更に。
雨宮さんは自身の注目度が上がったことで気分がノリノリのようで、悠木君の拒絶にも更に押せ押せの姿勢で攻めていた。
私が助け舟を出そうかと一歩足を踏み入れると、雨宮さんがこちらを見た。──そして
「あっ! 痛い! コンタクトずれちゃった!」
なにやら彼女は片目を抑えて目が痛いと訴え始めた。
目が大きく見えるカラコンでもいれてんのかな。アレあんまり目に良くないらしいから止めたほうがいいと思うんだけど…と呆れ半分で眺めていると、雨宮さんの腕が持ち上がった。
そして油断した悠木君の首に腕を回して、彼の顔を引き寄せたのだ。そして、重なり合う顔。
……雨宮さんは私の目の前で、悠木君の唇を奪った。
私は一歩足を踏み出した体勢で銅像のように固まっていた。目の前から色が無くなったように感じた。
「ちょっマジでお前ふざけんなよ!」
「やだぁ先輩照れてるんですかぁ? ──あ、森宮先輩見ていたんですか?」
彼女がニヤリと笑う瞬間を見た私は、わざと見せつけたのだと悟った。
遅れて私の存在に気づいた悠木君が慌てた様子で雨宮さんを引き離したけど、私は彼の顔が見られなかった。
頭ではわかってるんだ。悠木君は被害者だって。
だけど、私以外の女の子とキスした彼を前にして冷静でいられる自信がなかったのだ。
「森宮」
声をかけられたけど、私はぷいっと顔を背けて彼らの横をすり抜けて階段を駆け登った。
口を開けば、悠木君を罵ってしまいそうだった。私は告白の返事を先延ばししている立場だ。偉そうに言える資格なんて無いのに、一丁前にヤキモチなんか妬いている。じりじりと胸を焦がすこの気持ちが嫉妬の気持ち。
恋というのはこんなにも感情を揺さぶられるものなのか。
悠木君と友達のままでいられたらこんな気持ちにはならないはずだったのに。一喜一憂してあちこちに気を取られる今の自分、あんまり好きじゃないや。
「待って、森宮」
「ちょっとぉ夏生せんぱぁい!!」
私の拒絶には気づいているはずなのに、悠木君は追いすがってきた。雨宮さんは置いてきたみたいだ。階段下からきんきん騒ぐ声が反響して聞こえてくる。私はその全てを無視してその場から逃げようとした。
「待てって!」
だけど後ろから悠木君に手を掴まれて捕獲されてしまった。
「今のは」
「私は何も言うこと無いから」
別に付き合っているわけじゃないもん。言うことなんか一つもない。
今は一人にしておいてくれと掴まれた手首を振り払うも、悠木君は私の肩を掴んで正面から顔を覗き込んできた。
「避けた! ほら、頬に口紅付いてるだろ!」
悠木君が左頬を見せつけて来たので渋々視線を持ち上げると、彼の白い頬に真っ赤なリップの色が残っていた。頬と口端の中間地点といったところだろうか。
キスは回避したと悠木君は言うが、ほっぺにキスはされたんだろう。私はそれも嫌だ。
言いたい言葉を抑えて、心の奥から吹き出す激情に戸惑う。慣れない感情の高ぶりに目頭が熱くなってきた。
「そんなの見せないで! 見たくない!」
ぼろりと熱い雫が頬を流れ落ちた。
それに目の前の悠木君が息を呑んだ気配がした。
やだ、なんで私泣いてんだろう。
慌てて手の甲で拭うも、涙が止まらない。
他の女の子が悠木君に触れたことがこんなにも嫌だなんて。まるで独占欲である。
「ごめん!」
ガバッと身体を抱き込まれた私は息を呑み込んだ。
悠木君の腕の中に閉じ込められた私はドキドキするどころか余計に感情的になってしまい、ドンと拳で彼の胸を叩いた。
「悠木君のバカ! バカバカお馬鹿!!!」
子どもが泣きじゃくるみたいにべそべそ泣く私の罵倒を真正面から受け止めた悠木君は、何度胸を叩かれても私を離さなかった。
「ごめん」
ただ、私が泣き止むまで、落ち着くまで背中を撫で続けていた。
なんだよこれ、抱きしめられて優しくされておとなしくなるとか、まるで私がちょろい女みたいじゃないか。
悠木君の馬鹿。悠木君が私にこんな気持ちを抱かせるから、こんなに苦しくなるんだよ。
「いらっ…」
「匿って!!」
入店してきた人物は、店内に設置しているチルド品冷蔵ケースの影に素早く身を隠し、外からその姿が見えないようにしていた。
彼の顔は青ざめ、ぷるぷると震えていた。まるで命でも狙われているかのような怯えようである。
「……また追い回されてるの? 悠木君」
「学校から逃げてきた」
夕課外を終えた彼は、細心の注意を払って学校を出ていったそうだが、女子に見つかり追いかけ回されていたのだという。
家に直行しようにも住所を知られるのが嫌だったから回り道をしてたんだってさ。
どのくらい走っていたのだろう。苦しそうに肩で息をしていた。
……SNSで悠木君情報が広がるのは初めてじゃないし、去年も似たようなことが起きていたけど、今年は雨宮さんが加わったことで色んな意味で規模が大きくなっているような気がする。
学校SNSでは、雨宮さんが芸能界入りするんじゃないかとか、悠木君がモデル事務所に入ったとか根も葉もない噂が流れている。悠木君は否定しているが、雨宮さんが変な風に煽ってどんどん噂が変な方向に流れていっている。
彼女は今の現状を更に加熱して楽しんでいる風にも見える。
私はカウンターで仕事をしながら、窓ガラスの外を観察する。
大通りに面したここは人の出入りが激しい。女子高生が何人も店の前を通過するけど、今丁度帰宅時間とかぶっているので、どれが追いかけてきた女子高生かわからない。
「眼鏡呼び出す?」
私が送っていけたらいいけど、まだバイト終わんないから無理なんだな。
「いや、大輔も生徒会で忙しいから……最後の手段でタクシーで帰る」
なんと贅沢な。と思ったけど、身の安全のためなのだろう。
悠木君はうちのお店でお弁当を購入するついでに私への差し入れに果物ゼリーを買ってくれた。その後弁当屋の隅っこで息を潜め、アプリで呼んだタクシーが到着するなり周りを警戒しながらコソコソ乗車して帰宅の途についていた。
──悠木君は見るからに疲れていた。こんな風に追い回されたら女嫌いもなるよね。好きで目立っているわけじゃないなら尚更に。
眼鏡は生徒会の仕事があるため、悠木君とずっとは一緒にいられないし、私が気にしてやるにもクラスも違うし、バイトもある……現在の悠木君は孤軍奮闘しているようなものであった。
……すごく心配だ。いつもであれば何よりもバイトを優先するはずなのに、今日に限っては拘束してくるバイトが憎たらしくなった。悠木君は無事か不安だったし、一緒について行けたらいいのにと悔しい思いをした。
その日のバイトが終わってからスマホを見ると、悠木君からメッセージが届いていた。無事帰宅できたそうだ。
【明日からカムフラージュとして眼鏡をつけようと思う】
眼鏡というのは伊達眼鏡ってことかな。
悠木君が眼鏡をかけてもただのイケメンなだけだと思う。別の人まで引き寄せちゃうかもよ……。
どうせなら前髪ボサボサにして、思いっきりジミメンに扮したほうが──…しかし、眼鏡装着は彼なりの策なのだろう。黙っておいた。
□■□
翌日から眼鏡をつけた悠木君は早速、学校中の噂の的になった。眼鏡というアイテムは悠木君の可能性を更に広げてくれたらしい。さり気なく髪型も真面目ヘアに変えていたが、それはそれで知的なイケメンになっただけだった。
そんな悠木君を見て「くそぅ、カッコいい」と密かにときめいたのは秘密である。
ただ、悠木君の顔を写真でしか知らない外部の女子学生達は、眼鏡をつけた彼を見逃していたそうなので、悠木君は安全に正門を通過できたようである。
しかし、この手段がどのくらい使えるかという課題もある。一人が見つけたら再び追い回される未来待ったなしになる。その前に彼女たちが諦めてくれたらいいのだが……
「フワァ……」
私は大きなアクビをしながら、お昼寝スポットに移動していた。
お昼ごはんのあとはお昼寝。それが私のルーチンワークなのだ。いつものお昼寝スポットは4階の社会科準備室。階段を登って少し進めばすぐに到着するはずなのに、あと一歩のところで足止めを食らっていた。
「ですからぁ、私とお付き合いしてますーって宣言すれば、あの女達蹴散らせるんですよー?」
「断る」
階段の踊り場で悠木君が雨宮さんに絡まれていたのだ。この光景も見慣れたものなんだが、やっぱりくっついている姿を見るのはこちらとしても面白くない。自分の気持ちを自覚したら尚更に。
雨宮さんは自身の注目度が上がったことで気分がノリノリのようで、悠木君の拒絶にも更に押せ押せの姿勢で攻めていた。
私が助け舟を出そうかと一歩足を踏み入れると、雨宮さんがこちらを見た。──そして
「あっ! 痛い! コンタクトずれちゃった!」
なにやら彼女は片目を抑えて目が痛いと訴え始めた。
目が大きく見えるカラコンでもいれてんのかな。アレあんまり目に良くないらしいから止めたほうがいいと思うんだけど…と呆れ半分で眺めていると、雨宮さんの腕が持ち上がった。
そして油断した悠木君の首に腕を回して、彼の顔を引き寄せたのだ。そして、重なり合う顔。
……雨宮さんは私の目の前で、悠木君の唇を奪った。
私は一歩足を踏み出した体勢で銅像のように固まっていた。目の前から色が無くなったように感じた。
「ちょっマジでお前ふざけんなよ!」
「やだぁ先輩照れてるんですかぁ? ──あ、森宮先輩見ていたんですか?」
彼女がニヤリと笑う瞬間を見た私は、わざと見せつけたのだと悟った。
遅れて私の存在に気づいた悠木君が慌てた様子で雨宮さんを引き離したけど、私は彼の顔が見られなかった。
頭ではわかってるんだ。悠木君は被害者だって。
だけど、私以外の女の子とキスした彼を前にして冷静でいられる自信がなかったのだ。
「森宮」
声をかけられたけど、私はぷいっと顔を背けて彼らの横をすり抜けて階段を駆け登った。
口を開けば、悠木君を罵ってしまいそうだった。私は告白の返事を先延ばししている立場だ。偉そうに言える資格なんて無いのに、一丁前にヤキモチなんか妬いている。じりじりと胸を焦がすこの気持ちが嫉妬の気持ち。
恋というのはこんなにも感情を揺さぶられるものなのか。
悠木君と友達のままでいられたらこんな気持ちにはならないはずだったのに。一喜一憂してあちこちに気を取られる今の自分、あんまり好きじゃないや。
「待って、森宮」
「ちょっとぉ夏生せんぱぁい!!」
私の拒絶には気づいているはずなのに、悠木君は追いすがってきた。雨宮さんは置いてきたみたいだ。階段下からきんきん騒ぐ声が反響して聞こえてくる。私はその全てを無視してその場から逃げようとした。
「待てって!」
だけど後ろから悠木君に手を掴まれて捕獲されてしまった。
「今のは」
「私は何も言うこと無いから」
別に付き合っているわけじゃないもん。言うことなんか一つもない。
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「避けた! ほら、頬に口紅付いてるだろ!」
悠木君が左頬を見せつけて来たので渋々視線を持ち上げると、彼の白い頬に真っ赤なリップの色が残っていた。頬と口端の中間地点といったところだろうか。
キスは回避したと悠木君は言うが、ほっぺにキスはされたんだろう。私はそれも嫌だ。
言いたい言葉を抑えて、心の奥から吹き出す激情に戸惑う。慣れない感情の高ぶりに目頭が熱くなってきた。
「そんなの見せないで! 見たくない!」
ぼろりと熱い雫が頬を流れ落ちた。
それに目の前の悠木君が息を呑んだ気配がした。
やだ、なんで私泣いてんだろう。
慌てて手の甲で拭うも、涙が止まらない。
他の女の子が悠木君に触れたことがこんなにも嫌だなんて。まるで独占欲である。
「ごめん!」
ガバッと身体を抱き込まれた私は息を呑み込んだ。
悠木君の腕の中に閉じ込められた私はドキドキするどころか余計に感情的になってしまい、ドンと拳で彼の胸を叩いた。
「悠木君のバカ! バカバカお馬鹿!!!」
子どもが泣きじゃくるみたいにべそべそ泣く私の罵倒を真正面から受け止めた悠木君は、何度胸を叩かれても私を離さなかった。
「ごめん」
ただ、私が泣き止むまで、落ち着くまで背中を撫で続けていた。
なんだよこれ、抱きしめられて優しくされておとなしくなるとか、まるで私がちょろい女みたいじゃないか。
悠木君の馬鹿。悠木君が私にこんな気持ちを抱かせるから、こんなに苦しくなるんだよ。
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