79 / 79
番外編
クリスマスなんてただの口実【悠木夏生視点】
しおりを挟む
テレビをつければどのチャンネルもクリスマスソングがBGMとして流れている。『今日はクリスマス、どんな風に過ごしますか?』とインタビュアーが道を行き交う通行人に質問する。それを見た俺は自分が聞かれたわけでもないのに、ムッと顔をしかめてしまった。
──余計なお世話だ。
いつもは何とも思わないクリスマスの空気だが、今の俺はふて腐れていた。
今日は特別忙しいだろう。バイト先まで会いに行って彼女のバイトの邪魔したくない。特に今日は日曜ということもあり、カップル連れも多いはずだ。
せめて塾の冬期集中ゼミがあれば気が紛れていいのに、今日に限って休講だし、雪降ってて寒いし。勉強するにもやる気がでない。
俺は寝間着姿のままベッドに転がり、スマホを触ってぐーたら過ごしていた。
姉貴は彼氏とデートで、今日は帰らないそうだ。
実家の親はいつも通り仕事だし、どうせ正月には顔見せに帰るから別に今帰る必要はない。
こういうとき相手にしてくれそうな大輔は、礼奈から一人じゃ行けない店について来てほしいとまどろっこしい方法でデートに誘われていたので、俺はその邪魔をせぬようふたりの進展をお祈りしている。
礼奈も変なところ消極的だからなぁ。あいつ変なプライドで自分から告白しようとは思ってないっぽいし、大輔もイマイチよくわからないし…。だけど俺はそこに火を付けようとは思わない。間違いなく面倒なことになるとわかっているからだ。
あのふたりがくっつくことはまだしばらくないだろうな…
──ピンポーン
スマホをベッドに投げ出してぼんやりと天井を眺めていると、インターホンが鳴った。
宅配便かな。また姉貴が通販で物を買ったんだろうか。面倒くせぇなと体を起こして、部屋を出るとインターホンカメラ越しに来客者を確認した。
俺は目を疑った。
あれ、俺は夢を見てるんだろうかと正気すら疑った。
画面の中に映っているのは寒さで鼻を赤くしている彼女の姿だったのだ。
「美玖!?」
応答ボタンを押してすぐに彼女の名を呼ぶと、画面の中の彼女の表情がぱぁっと明るくなった。
『えへへ…来ちゃった』
…なにこれ、盛大なサプライズだろうか。それともやっぱり俺の願望から来る夢?
とにかく上がってもらおうとオートロックを解錠すると、俺は慌てて寝間着を脱いで私服に着替えた。さすがにダラダラしていた姿を見られるのは恥ずかしい。ダッシュで支度をしていると、玄関のインターホンが鳴った。寝癖を水で濡らして何となく直したら、俺は直接玄関に出向いた。
玄関の扉を開くとそこにはマフラーに顔を埋めた美玖の姿。寒そうにしていたので彼女の手を引いて家に上げると、外気によって冷えた手の感触が伝わって来る。
あ、幻覚じゃない。よかった。
「もしかして寝てた?」
彼女の指摘に俺は頬を触った。寝転がったときに跡が付いてしまったんだろうかと思ったけど、美玖は俺の頭を指差した。
「寝癖があるから」
「いや、単にごろごろしてただけだよ。それよりお前まさか気にしてバイト休んだのか?」
俺の寝癖よりも美玖のバイトだ。
今日は夜までバイトだろうって話じゃなかったか? 俺のこと気にして休んだとか言われたら複雑な気持ちになるんだが…
「違う違う、バイト先の商品全部売れちゃって予定よりも早く閉店して早上がりになったの」
例年よりも売り切れるのが早かったそうだ。いつもは夫婦二人三脚でお店の商品を作っているが、今年ばかりは店長一人。そしてバイトは美玖ただ一人。追加を作るのも大変だからって今日は早々に店じまいしたんだと彼女は言った。
バイトが終わって時間ができたので、俺に会いに来た彼女。
最初は俺が家にいるか連絡して確認しようと思ったけど、驚かせたかったので駄目元で抜き打ち訪問したのだという。やっぱりサプライズじゃねぇの。
でも嬉しい。
今日は会えないと思っていたから尚更。クリスマスなんてただの口実で、会えたことが何よりも嬉しいのだ。
「今から外に出かけるか? あ、でもレストランキャンセルしちまったし。そうだ、港の方に行ってイルミネーションとか…」
「ううん、ここでいい。ただ会いたかっただけだから」
目を伏せて照れ臭そうに彼女は言った。
──可愛い…!
俺は浮かれる心を抑えながら、美玖を自分の部屋で待っているように告げると、体が冷えているであろう彼女のために姉貴のしょうが紅茶を拝借してあたたかいお茶を用意した。
「…ごめんね、付き合ってるのに彼女らしいことできなくて」
お茶を出したタイミングで美玖から謝られた俺は目を丸くして固まった。
彼女らしいこと? あぁ、今日の約束破ったってってこと?
そりゃあクリスマスに一緒に過ごせなくてがっかりしたけど、これには事情があるし、美玖は最初から目的があって頑張ってるんだ。それを知った上で好きになったんだからなにも言わない。
「そんなことない」
気にしてしょげている彼女に手を伸ばす。彼女の頬に触れると冷えていたので両手でさすって温めた。
「正直にいえば寂しいけど、目標に向かって頑張るお前が好きだから我慢できる。こうして会いに来てくれたしな」
何かを言おうと口を開いた彼女の唇を自分のそれで塞いだ。
上唇を舐めると彼女の唇が震える。遠慮せずに舌を入れると、縮こまっている彼女の舌に絡めた。
息継ぎなしにキスをしまくる。噛んで吸って、彼女の咥内を飲み込む勢いで貪ると、腕に囲った身体が寄り掛かってきた。
どうしたんだと思って一旦口を離すと、体の力が抜けたっぽい美玖は顔を真っ赤にさせ、息を切らせてぼんやりしていた。酸欠でも起こしてしまったのだろうか。
肩を上下させて酸素を求めている彼女の様子を伺っていると、半開きの口から覗く赤い舌がこれまた目を引いたので更にキスしてやった。普段は絶対に見せない、俺にしか見せないその媚態。
下半身に直撃したのは言うまでもない。彼女はびっくりするくらい可愛かった。
ちょっとくらい触ってもいいよな? と俺の下心が囁く。
彼女の服の上からそっと胸を触った。それに美玖が驚いてビクッとしていたが、嫌がる素振りはない。恥ずかしそうにこっちを見上げるその目が潤んでおり、あまりにも可愛いので再度唇を奪った。
服の上からもにもにと手を動かしていた俺は衝撃を受けた。
えっなにこれ、やわらか…どこもかしこもふにゃふにゃしてる…服の上でこんなもにゃもにゃしてたら実際はもっとすごいに違いない。
「ちょ、ちょ、ちょっと待って!」
しかし服の中に手を入れたタイミングで彼女からストップがかかった。
拒否られた……
いい雰囲気だったのにここで拒絶されるとは…まだ早いとか? 交際3ヶ月目まではキスまでルールだったりする? 俺としては告白の返事待ちというお預け期間が長かったので、これ以上のお預けは辛いのですが。
俺から体を離した美玖はおもむろに持っていたかばんへ手を突っ込み、黄色い箱を取り出した。そして俺の目の前に突き出す。
「お願いします!」
顔を真っ赤にさせた彼女にお願いされた。俺は渡された箱を受け取ってまじまじ観察する。
パンケーキを食べるファンシー熊のイラストのせいで何かわからなかったが、なるほどこれは避妊具である。
「…用意はしてるのに」
彼女の勢いを思い出すと、おかしくて笑ってしまう。
こういうのって男側が準備する物だと考えていたけど、まさか彼女からお願いしますと箱ごと渡されるとは思わなかった。
「だ、だってお姉ちゃんが高校生の妊娠はまずいって」
「そうだな。…そういうのは社会人になってからだよな」
俺は美玖を絶対に傷つけない。万が一の時は責任を取る覚悟もある。言っておくけど口だけじゃないからな。
頬を赤らめている彼女に軽いキスをすると、美玖は俺の首に抱き着いてきた。
着ていたニットワンピースを脱がせてやると、彼女が寒さに震える。暖房は入っているけどそれでも寒いかな。風邪を引かせるわけにはいかないので、そのままベッドに誘導して押し倒すと掛け布団を被る。
俺のベッドにほぼ裸な美玖が寝転がっている。これだけで鼻血物である。
可愛らしい下着に隠れた柔らかそうな2つの膨らみが目に飛び込んできた。俺はそれを下着の上から両手で揉みしだき、魅惑の谷間に顔を埋めてその柔らかさを堪能しようとした。
「夏生くぅぅん聞いてぇぇ! あいつったら私よりも仕事が大事なんだってぇぇ!!!」
ドカーンとドアの蝶番が壊れてしまいそうな勢いで部屋の扉がぶち開けられたのはそのタイミングであった。
「……」
「あ、あら? もしかしてお楽しみ中だった?」
侵入者である姉は化粧がどろどろになるくらい泣いていたらしく、目の回りが真っ黒になっていた。
普段であれば泣いている姉を気遣うくらいはするけど、今はそんな気分になれない。
「…ふざけんなよ」
「やだぁごめん! 夏生君ごめんねぇ!」
いいところを邪魔してくれた姉貴に俺が地の底を這うような声で威嚇すると、姉貴は血相を変えて謝り倒してきた。
謝って済むなら警察は要らねぇんだよ…!!
「あっはっはっは!!」
そんな俺達の様子を見ていた美玖が大笑いしたことで、そういう雰囲気はすべて吹き飛んでしまった。
姉貴を追い出してもう一度やり直しってのもあれなので、今度に先延ばしになった。今度いつこういう雰囲気になるのかは不明だけどな。
そのあとは姉貴が衝動買いしてきたケーキとパーティセットを囲んで3人でクリスマスを過ごした。
姉貴が彼氏の愚痴と惚気を交互に吐き出す会みたいになっていたけど、こうなった姉は聞いてあげなきゃ面倒なので適当に聞いている振りをした。そのうち泥酔して寝るだろ。それまでの辛抱である。
「あいつなんか仕事と結婚しちゃえばいいのようー!」
くだを巻く姉にうんざりしていると、ぎゅっとテーブルの下で手を握られた感触がして隣を見ると、美玖がしたり顔で笑っていた。俺は握られた手を握り返して彼女と笑いあった。
…なんか締まらないけど、美玖と一緒に過ごすという目的は達成したからまぁいいか。
──余計なお世話だ。
いつもは何とも思わないクリスマスの空気だが、今の俺はふて腐れていた。
今日は特別忙しいだろう。バイト先まで会いに行って彼女のバイトの邪魔したくない。特に今日は日曜ということもあり、カップル連れも多いはずだ。
せめて塾の冬期集中ゼミがあれば気が紛れていいのに、今日に限って休講だし、雪降ってて寒いし。勉強するにもやる気がでない。
俺は寝間着姿のままベッドに転がり、スマホを触ってぐーたら過ごしていた。
姉貴は彼氏とデートで、今日は帰らないそうだ。
実家の親はいつも通り仕事だし、どうせ正月には顔見せに帰るから別に今帰る必要はない。
こういうとき相手にしてくれそうな大輔は、礼奈から一人じゃ行けない店について来てほしいとまどろっこしい方法でデートに誘われていたので、俺はその邪魔をせぬようふたりの進展をお祈りしている。
礼奈も変なところ消極的だからなぁ。あいつ変なプライドで自分から告白しようとは思ってないっぽいし、大輔もイマイチよくわからないし…。だけど俺はそこに火を付けようとは思わない。間違いなく面倒なことになるとわかっているからだ。
あのふたりがくっつくことはまだしばらくないだろうな…
──ピンポーン
スマホをベッドに投げ出してぼんやりと天井を眺めていると、インターホンが鳴った。
宅配便かな。また姉貴が通販で物を買ったんだろうか。面倒くせぇなと体を起こして、部屋を出るとインターホンカメラ越しに来客者を確認した。
俺は目を疑った。
あれ、俺は夢を見てるんだろうかと正気すら疑った。
画面の中に映っているのは寒さで鼻を赤くしている彼女の姿だったのだ。
「美玖!?」
応答ボタンを押してすぐに彼女の名を呼ぶと、画面の中の彼女の表情がぱぁっと明るくなった。
『えへへ…来ちゃった』
…なにこれ、盛大なサプライズだろうか。それともやっぱり俺の願望から来る夢?
とにかく上がってもらおうとオートロックを解錠すると、俺は慌てて寝間着を脱いで私服に着替えた。さすがにダラダラしていた姿を見られるのは恥ずかしい。ダッシュで支度をしていると、玄関のインターホンが鳴った。寝癖を水で濡らして何となく直したら、俺は直接玄関に出向いた。
玄関の扉を開くとそこにはマフラーに顔を埋めた美玖の姿。寒そうにしていたので彼女の手を引いて家に上げると、外気によって冷えた手の感触が伝わって来る。
あ、幻覚じゃない。よかった。
「もしかして寝てた?」
彼女の指摘に俺は頬を触った。寝転がったときに跡が付いてしまったんだろうかと思ったけど、美玖は俺の頭を指差した。
「寝癖があるから」
「いや、単にごろごろしてただけだよ。それよりお前まさか気にしてバイト休んだのか?」
俺の寝癖よりも美玖のバイトだ。
今日は夜までバイトだろうって話じゃなかったか? 俺のこと気にして休んだとか言われたら複雑な気持ちになるんだが…
「違う違う、バイト先の商品全部売れちゃって予定よりも早く閉店して早上がりになったの」
例年よりも売り切れるのが早かったそうだ。いつもは夫婦二人三脚でお店の商品を作っているが、今年ばかりは店長一人。そしてバイトは美玖ただ一人。追加を作るのも大変だからって今日は早々に店じまいしたんだと彼女は言った。
バイトが終わって時間ができたので、俺に会いに来た彼女。
最初は俺が家にいるか連絡して確認しようと思ったけど、驚かせたかったので駄目元で抜き打ち訪問したのだという。やっぱりサプライズじゃねぇの。
でも嬉しい。
今日は会えないと思っていたから尚更。クリスマスなんてただの口実で、会えたことが何よりも嬉しいのだ。
「今から外に出かけるか? あ、でもレストランキャンセルしちまったし。そうだ、港の方に行ってイルミネーションとか…」
「ううん、ここでいい。ただ会いたかっただけだから」
目を伏せて照れ臭そうに彼女は言った。
──可愛い…!
俺は浮かれる心を抑えながら、美玖を自分の部屋で待っているように告げると、体が冷えているであろう彼女のために姉貴のしょうが紅茶を拝借してあたたかいお茶を用意した。
「…ごめんね、付き合ってるのに彼女らしいことできなくて」
お茶を出したタイミングで美玖から謝られた俺は目を丸くして固まった。
彼女らしいこと? あぁ、今日の約束破ったってってこと?
そりゃあクリスマスに一緒に過ごせなくてがっかりしたけど、これには事情があるし、美玖は最初から目的があって頑張ってるんだ。それを知った上で好きになったんだからなにも言わない。
「そんなことない」
気にしてしょげている彼女に手を伸ばす。彼女の頬に触れると冷えていたので両手でさすって温めた。
「正直にいえば寂しいけど、目標に向かって頑張るお前が好きだから我慢できる。こうして会いに来てくれたしな」
何かを言おうと口を開いた彼女の唇を自分のそれで塞いだ。
上唇を舐めると彼女の唇が震える。遠慮せずに舌を入れると、縮こまっている彼女の舌に絡めた。
息継ぎなしにキスをしまくる。噛んで吸って、彼女の咥内を飲み込む勢いで貪ると、腕に囲った身体が寄り掛かってきた。
どうしたんだと思って一旦口を離すと、体の力が抜けたっぽい美玖は顔を真っ赤にさせ、息を切らせてぼんやりしていた。酸欠でも起こしてしまったのだろうか。
肩を上下させて酸素を求めている彼女の様子を伺っていると、半開きの口から覗く赤い舌がこれまた目を引いたので更にキスしてやった。普段は絶対に見せない、俺にしか見せないその媚態。
下半身に直撃したのは言うまでもない。彼女はびっくりするくらい可愛かった。
ちょっとくらい触ってもいいよな? と俺の下心が囁く。
彼女の服の上からそっと胸を触った。それに美玖が驚いてビクッとしていたが、嫌がる素振りはない。恥ずかしそうにこっちを見上げるその目が潤んでおり、あまりにも可愛いので再度唇を奪った。
服の上からもにもにと手を動かしていた俺は衝撃を受けた。
えっなにこれ、やわらか…どこもかしこもふにゃふにゃしてる…服の上でこんなもにゃもにゃしてたら実際はもっとすごいに違いない。
「ちょ、ちょ、ちょっと待って!」
しかし服の中に手を入れたタイミングで彼女からストップがかかった。
拒否られた……
いい雰囲気だったのにここで拒絶されるとは…まだ早いとか? 交際3ヶ月目まではキスまでルールだったりする? 俺としては告白の返事待ちというお預け期間が長かったので、これ以上のお預けは辛いのですが。
俺から体を離した美玖はおもむろに持っていたかばんへ手を突っ込み、黄色い箱を取り出した。そして俺の目の前に突き出す。
「お願いします!」
顔を真っ赤にさせた彼女にお願いされた。俺は渡された箱を受け取ってまじまじ観察する。
パンケーキを食べるファンシー熊のイラストのせいで何かわからなかったが、なるほどこれは避妊具である。
「…用意はしてるのに」
彼女の勢いを思い出すと、おかしくて笑ってしまう。
こういうのって男側が準備する物だと考えていたけど、まさか彼女からお願いしますと箱ごと渡されるとは思わなかった。
「だ、だってお姉ちゃんが高校生の妊娠はまずいって」
「そうだな。…そういうのは社会人になってからだよな」
俺は美玖を絶対に傷つけない。万が一の時は責任を取る覚悟もある。言っておくけど口だけじゃないからな。
頬を赤らめている彼女に軽いキスをすると、美玖は俺の首に抱き着いてきた。
着ていたニットワンピースを脱がせてやると、彼女が寒さに震える。暖房は入っているけどそれでも寒いかな。風邪を引かせるわけにはいかないので、そのままベッドに誘導して押し倒すと掛け布団を被る。
俺のベッドにほぼ裸な美玖が寝転がっている。これだけで鼻血物である。
可愛らしい下着に隠れた柔らかそうな2つの膨らみが目に飛び込んできた。俺はそれを下着の上から両手で揉みしだき、魅惑の谷間に顔を埋めてその柔らかさを堪能しようとした。
「夏生くぅぅん聞いてぇぇ! あいつったら私よりも仕事が大事なんだってぇぇ!!!」
ドカーンとドアの蝶番が壊れてしまいそうな勢いで部屋の扉がぶち開けられたのはそのタイミングであった。
「……」
「あ、あら? もしかしてお楽しみ中だった?」
侵入者である姉は化粧がどろどろになるくらい泣いていたらしく、目の回りが真っ黒になっていた。
普段であれば泣いている姉を気遣うくらいはするけど、今はそんな気分になれない。
「…ふざけんなよ」
「やだぁごめん! 夏生君ごめんねぇ!」
いいところを邪魔してくれた姉貴に俺が地の底を這うような声で威嚇すると、姉貴は血相を変えて謝り倒してきた。
謝って済むなら警察は要らねぇんだよ…!!
「あっはっはっは!!」
そんな俺達の様子を見ていた美玖が大笑いしたことで、そういう雰囲気はすべて吹き飛んでしまった。
姉貴を追い出してもう一度やり直しってのもあれなので、今度に先延ばしになった。今度いつこういう雰囲気になるのかは不明だけどな。
そのあとは姉貴が衝動買いしてきたケーキとパーティセットを囲んで3人でクリスマスを過ごした。
姉貴が彼氏の愚痴と惚気を交互に吐き出す会みたいになっていたけど、こうなった姉は聞いてあげなきゃ面倒なので適当に聞いている振りをした。そのうち泥酔して寝るだろ。それまでの辛抱である。
「あいつなんか仕事と結婚しちゃえばいいのようー!」
くだを巻く姉にうんざりしていると、ぎゅっとテーブルの下で手を握られた感触がして隣を見ると、美玖がしたり顔で笑っていた。俺は握られた手を握り返して彼女と笑いあった。
…なんか締まらないけど、美玖と一緒に過ごすという目的は達成したからまぁいいか。
22
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
陰キャ幼馴染に振られた負けヒロインは俺がいる限り絶対に勝つ!
みずがめ
恋愛
★講談社ラノベ文庫新人賞佳作を受賞しました!
杉藤千夏はツンデレ少女である。
そんな彼女は誤解から好意を抱いていた幼馴染に軽蔑されてしまう。その場面を偶然目撃した佐野将隆は絶好のチャンスだと立ち上がった。
千夏に好意を寄せていた将隆だったが、彼女には生まれた頃から幼馴染の男子がいた。半ば諦めていたのに突然転がり込んできた好機。それを逃すことなく、将隆は千夏の弱った心に容赦なくつけ込んでいくのであった。
徐々に解されていく千夏の心。いつしか彼女は将隆なしではいられなくなっていく…。口うるさいツンデレ女子が優しい美少女幼馴染だと気づいても、今さらもう遅い!
※他サイトにも投稿しています。
※表紙絵イラストはおしつじさん、ロゴはあっきコタロウさんに作っていただきました。
元男装傭兵、完璧な淑女を演じます。――嫁ぎ先はかつての団長でした!?
中野森
恋愛
貧乏男爵家の長女クラリスは、弟の学費を稼ぐために男装して傭兵団へ入団した。
副団長にまで上り詰め、団長をはじめとした仲間から信頼を得るが、決して正体は明かさなかった。
やがて戦争が終わり、傭兵団は解散となる。
出稼ぎするために流した嘘の悪評により、修道院入りを覚悟していたクラリスだったが、帰郷した彼女を待っていたのは父からの「嫁ぎ先が決まった」という一言だった。
慌ただしく始まる淑女教育、そして一度も未来の夫と顔合わせすることなく迎えた結婚式当日。
誓いの言葉を促され隣からきこてくる声に、クラリスは凍りつく。
……嘘でしょ、団長!?
かつての想い人でもある傭兵仲間が今は夫となり、妻の正体には気づいていない――気づかれてはいけないのだ、絶対に!
本作品はゆるふわ設定、ご都合主義、細かいことは気にしたら負け!
※この小説は、ほかの小説投稿サイトにも投稿しています。
苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」
母に紹介され、なにかの間違いだと思った。
だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。
それだけでもかなりな不安案件なのに。
私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。
「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」
なーんて義父になる人が言い出して。
結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。
前途多難な同居生活。
相変わらず専務はなに考えているかわからない。
……かと思えば。
「兄妹ならするだろ、これくらい」
当たり前のように落とされる、額へのキス。
いったい、どうなってんのー!?
三ツ森涼夏
24歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務
背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。
小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。
たまにその頑張りが空回りすることも?
恋愛、苦手というより、嫌い。
淋しい、をちゃんと言えずにきた人。
×
八雲仁
30歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』専務
背が高く、眼鏡のイケメン。
ただし、いつも無表情。
集中すると周りが見えなくなる。
そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。
小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。
ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!?
*****
千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』
*****
表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101
会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)
久留茶
恋愛
地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。
しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。
「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」
――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。
なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……?
溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。
王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ!
*全28話完結
*辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。
*他誌にも掲載中です。
距離感ゼロ〜副社長と私の恋の攻防戦〜
葉月 まい
恋愛
「どうするつもりだ?」
そう言ってグッと肩を抱いてくる
「人肌が心地良くてよく眠れた」
いやいや、私は抱き枕ですか!?
近い、とにかく近いんですって!
グイグイ迫ってくる副社長と
仕事一筋の秘書の
恋の攻防戦、スタート!
✼••┈•• ♡ 登場人物 ♡••┈••✼
里見 芹奈(27歳) …神蔵不動産 社長秘書
神蔵 翔(32歳) …神蔵不動産 副社長
社長秘書の芹奈は、パーティーで社長をかばい
ドレスにワインをかけられる。
それに気づいた副社長の翔は
芹奈の肩を抱き寄せてホテルの部屋へ。
海外から帰国したばかりの翔は
何をするにもとにかく近い!
仕事一筋の芹奈は
そんな翔に戸惑うばかりで……
虐げられ続けてきたお嬢様、全てを踏み台に幸せになることにしました。
ラディ
恋愛
一つ違いの姉と比べられる為に、愚かであることを強制され矯正されて育った妹。
家族からだけではなく、侍女や使用人からも虐げられ弄ばれ続けてきた。
劣悪こそが彼女と標準となっていたある日。
一人の男が現れる。
彼女の人生は彼の登場により一変する。
この機を逃さぬよう、彼女は。
幸せになることに、決めた。
■完結しました! 現在はルビ振りを調整中です!
■第14回恋愛小説大賞99位でした! 応援ありがとうございました!
■感想や御要望などお気軽にどうぞ!
■エールやいいねも励みになります!
■こちらの他にいくつか話を書いてますのでよろしければ、登録コンテンツから是非に。
※一部サブタイトルが文字化けで表示されているのは演出上の仕様です。お使いの端末、表示されているページは正常です。
羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。
泉野あおい
恋愛
人の気持ちに重い軽いがあるなんて変だと思ってた。
でも今、確かに思ってる。
―――この愛は、重い。
------------------------------------------
羽柴健人(30)
羽柴法律事務所所長 鳳凰グループ法律顧問
座右の銘『危ない橋ほど渡りたい。』
好き:柊みゆ
嫌い:褒められること
×
柊 みゆ(28)
弱小飲料メーカー→鳳凰グループ・ホウオウ総務部
座右の銘『石橋は叩いて渡りたい。』
好き:走ること
苦手:羽柴健人
------------------------------------------
まずはお嫁さんからお願いします。
桜庭かなめ
恋愛
高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。
4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。
総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。
いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。
デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!
※特別編7が完結しました!(2026.1.29)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想をお待ちしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる