不幸ヤンキー、"狼"に狩られる。〜跳躍〜

蒼空 結舞(あおぞら むすぶ)

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花人の謎

不幸ヤンキー、”狼”に奪われる。【2】

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 玉緒のを読んでの鋭い発言に、彼は侮蔑するような視線を見せてはクツクツと笑いを零していた。すると今度は幸を指さし、玉緒は舌なめずりをするのだ。
「やはりですか…。幸君、コイツの言葉に惑わされてはいけません」
「えっ…それはどういう?」
「私があなたを守ります。だから幸君はコイツの、狡猾で卑怯者の言葉に惑わされないで」
 彼女の言葉に幸は驚くと心は彼を守るように小さな背中で幸の前に出る。普段の温和な目つきとは違い鋭い眼光を向けている小さな少女に…玉緒はビクつくこともない。逆に汚い笑いをしていていたのだ。そんな彼は笑いを抑え、肩をすくめた。
「そんな威嚇するような真似せぇへんでもええで、嬢ちゃん?」
「あなたは威嚇するには十分ですよ。…この
 彼女のその言葉に玉緒は冷酷な視線を向けた。しかしそれでも心は幸の前から離れない。しかし呆然としている幸とスピードは訳も分からないという様子だ。そんな彼らに玉緒は深く息を吐いた。
「まぁ確かに…、嬢ちゃんだけのシルバーを奪ったとしては割に合わなすぎるな~。…だってワイが使っているこのにも限度はあるし?」
 そして苦しんでいる哉太とフライを一瞥をしては舌打ちを打ったのだ。
「…それに”狼”2人、しかも片方は”一匹狼ロンリーウルフ”として近い存在の男を拘束させてるんやで。……いつ、このグラサン”狼”が、ワイの能力を解いて殺しにかかってもおかしくは無いわな~?」
 しかしそれでもどうして自分を指さしたのか…分からずにいた幸ではあるが、気が付いた。
 …そうだ、俺にも哉太さんとフライからシルバーアクセサリーを貰った。でも、手放しくたくは無い。
 だから幸も眼光を鋭くさせていやらしく笑う玉緒へ向けて言い放ったのだ。
「心の言葉であんたの目的は分かった。…なぜだかは知らねぇけれど、想いが込められたシルバーアクセサリーが欲しいらしいな」
「ほぉ~、察しの良い兄ちゃんで助かったわ。じゃあ取引を―」
「残念だがそれは無理だ。…が俺を守ってくれるのなら、俺も心を守る」
 拳を握りしめて向かおうとする幸ではあるが、察したかのように心が彼の手を取って強く握った。
「心…どうして?」
「幸君、今は抑えて」
 少し驚きを見せる幸に彼女は攻撃を止めるように首をわずかに揺らした。人を嘲るあざけるようなピエロのような笑い方に、幸は憤りを感じ心の手を振り払おうとするものの彼女は再び強く握るのだ。
「幸君、冷静になって。…この人は私達を
「試す…? 心、それはどういう―」
 彼女の言葉に幸が耳を傾けようとすれば今までうずくまっていた2人がさらにうめき声を上げたのだ。それに3人は驚き目を見張ったのだ。
「哉太さん、フライ!?? 大丈夫かっ!??」
 駆け寄ろうとする幸と彼の手を離さないでいる心に今度はある人物が動いたのだ。
「どういうことかは知らないけど、…これ以上、フライ先輩を苦しめるなっ!!!」
 事態が把握しきれないでいる幸に対し、今まで黙っていたスピードは笑っている玉緒に攻撃を仕掛けた。
「スピードっ!???」
「スピード君!!! 待って!!!」
 心の静止を聞かずにスピードは玉緒に突進し回し蹴りを繰り出した。既に”狼”ではないものの、後天的な”狼”だったからなのか。武術に長けているスピードの攻撃を玉緒は直に受け止める。すると懐から零れ出た五寸釘を打たれているハートのネックレスがジャラリと落ちそうになった。それを取り上げようとスピードが手を伸ばせば、今度は玉緒は自身が嵌めている右中指のリングに呪文を素早く唱えたのだ。
「兵士召喚…ハッ!!!」
 するとなんということだろうか。中指から骸骨の兵士が飛び出しスピードを瞬く間に拘束してしまったのだ。驚きを見せるスピードは骸骨に羽交い締めにされてしまう。
「ぐぁっ!?? なんだ、こいつ…ら?」
「スピード!?? 大丈夫かっ!??」
 幸は再び驚き今度はスピードの元へ駆け寄ろうとする。だが心が強く彼の手を握りしめてくるのだ。その様子に玉緒は確信を得たらしい。
「やっぱり嬢ちゃんのそのアクセサリーの力はホンマもんや…。その兄さんがワイに攻撃仕掛けようとして止めたのも、を読んだからやろ~?」
「…やはりそうだったのですね。隠している様子ですが、シルバーの力であれば…あなたの複雑な心も手に取るように分かります」
「そうか~。やっぱりさっさと商談しておけば良かったわ」
 …こいつ、このことも計算をしていたのか。
 すると心は幸の手を強く握り締めた。どうやらそうであることを心が教えてくれているようだ。そんな彼らに玉緒は面倒な顔を浮かべた。
「でも惜しいことしたな~。…兄さんがワイにシルバーをくれたら、めっちゃ強いアクセサリーがも手に入ったのになぁ~?」
「なんで…それを、知っていて?」
 自身のシルバーアクセサリーのことなど心にさえも教えていなかったのに、どうしてしているのだと幸は狼狽する。そんな彼に玉緒はあざけるように言い放った。
「知ってるもなにもワイは商売人。を調達するに必要な情報をぎょうさん集めんのは当たり前や!」
「武器…だと?」
「そう。ワイの武器は、想いの入ったアクセサリーを使うことや。それがワイの”狼”としてのや」
 決まったようなセリフを言う玉緒は水を得た魚のように意気揚々と話していく。そんな彼ではあるが、落としかけていたシルバーアクセサリーを再び握り締めては2人に選択させるのだ。
「さぁ、取引や。…兄さんと嬢ちゃん、合わせて3つのシルバーアクセサリーをワイに渡せばそれでええ。…でも嬢ちゃんはともかく、兄さんがワイの言葉を無視してそのけったいな能力を発動させれば…」
 息を呑む幸に玉緒は笑ってから五寸釘が打ち込まれたハート…”ハートイータ―”と中指のリング、”スカルウェポン”に力を込めるように呪文を唱えた。
「うぐっ!?」
「い…だい…!」
 すると哉太とフライは胸を抱えたまま再び唸りだし、骸骨に捕えられたスピードの首筋には剣を向けさせられていた。
「てめぇ…」
 さすがの幸でも堪忍袋の尾が切れかかっている。そんな彼に玉緒は余裕綽々で持ち掛けるのだ。
「これは単なる脅しでないで。…って言うとるやろ?」
 緊迫した状況の中、心は自身の最大限の力を発動する。そして悶絶している哉太とフライの意識に訴えかけるのであった。
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