不幸ヤンキー、"狼"に狩られる。〜跳躍〜

蒼空 結舞(あおぞら むすぶ)

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花人の秘密

不幸ヤンキー、”狼”に咲き誇る。【1】

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 とある1室にて。樹木に絡みついているおかげで動けずにいる人形が居た。ドレスを身に纏った長く美しい髪の人形…いや。彼女は人間なのだ。もちろん、生きてもいる。…ただ動かないだけだ。意識さえも無いが。
 ―だが生きているからこそ、彼女は兄と共に本当のを作り出す事ができたのだ。まるで本物のような人間を。… という名のを。そして彼女は、ジュジュを作ってから兄を残して深い深い眠りについてしまったのだ。
 …花音かのんはまだ目が覚めない…か。
 大きな樹木に囚われている妹を見つめる彼に1体の人形が心配そうな顔をした。やはり彼女は人間にしか見えない。…それだけ囚われている少女が生み出したジュジュは精巧に造られた人間にしか見えないのだ。
 ―しかし彼女は地面に咲いた花を見て疑問を抱いた。
花月かげつ様、…この床に咲いている見事な赤い花は…一体?」
 ジュジュこと”ZZ-10号”は突如として咲いた赤い花をマスターである樹々根きぎね 花月かげつに尋ねる。妹と共に作り上げたジュジュという名の動くは彼女が兄妹共に最高傑作だと認めた人形でだ。だが皮肉なことに、そのせいで妹である花音かのんは深い眠りについてしまったのだ。
 …しかし、この儚げだが見事な彼岸花を見た花月かげつは少々驚いては含むような笑みを零した。
「…マスター、どうして笑っておられていて―」
「ジュジュ。お前の出番だ。…彼岸花 幸と接触して来い。…今度はクラスメートやら友人なんて甘っちょろい関係として様子を見るのは無しだ」
 花月かげつの言葉に驚きつつも頷くジュジュに彼はまた深く笑い、椅子に座って足を組んだ。優雅に微笑む彼にジュジュは不思議な顔をするが、彼はそれでも彼女に命令を下す。
としてだ。…その為なら手段は問わない。俺の力を使っても良い」
「はい、分かりました…」
 どこか気まずそうなジュジュを尻目に花月かげつは眠っている妹の傍に駆け寄り頬を撫でる。…やはり温かさがあった。それにも安心をして優しく笑うのだ。
「…あぁ花音かのん。…ようやくお前を助けられるよ? …俺達の本当の目的もこれで果たせるからな?」
 右脚に刻み込まれた”狼”の入れ墨を撫でてから樹木に絡まる花音の首元。…左鎖骨を緩く撫でる。そこには”狼”紋章が刻み込まれていた。


 ひいらぎ つばめはバイトに来ている麗永の妹、春夏冬あきなし うららと彼女の幼馴染で同級生の琴平ことひら 音刃おとはにコーヒーを優雅に淹れていた。今日の休憩で出るおやつはマドレーヌだ。
 音刃はよく「美味しいものを作ってくれる人に悪い奴は居ない!」という謎理論を持っている。だから来てしまうのだが、よく押しかけるにも関わらずこの小さな少年は嫌味を言わない。まるでエサを与えるようにいつもお菓子をくれるのだ。
 ―だから音刃はそんな彼のことも好きだし、打ち明けてはいないが恋愛感情としてうららのことも好きだ。…告白はまだ勇気が出ないのでしていないが。
 いつものバイト休憩が行われる…誰もがそう思っている。
 ―しかし異変が起こった。コーヒーを淹れ終わり、うららがマドレーヌと一緒に運ぼうと燕に声を掛けようとした…その瞬間。
「…っひ…がんばな…さん?」
 ―――バタンっ!
「…つばめ君っ!??」
 燕の青い瞳が輝いたかと思えば彼はゆっくりと、まるで予期していたかのように床に倒れてしまった。幸い、少年が大事にしているコーヒーカップは割れ無かったのだが、倒れた衝撃で淹れたてのコーヒーが零れた。
「つばめ君、大丈夫!!??」
 突然倒れてしまった燕の介抱をするうららと何事だとキッチンへと入る音刃ではあるが彼は驚いた。
 ―なぜならば床一面に彼岸花の、真紅に染まる血のような赤く艶やかな花が咲き誇っていたのだから。音刃は驚き口に出してしまった。
「……っ、なんだ…よ、これ…は?」
 一面に、燕の周囲を囲むように生えてきては咲き誇る彼岸花に、2人は驚きと恐ろしさを抱いた。そんな中で、意識を少しだけ回復させた燕は床に咲く彼岸花を掴んでは苦しむように叫ぶのだ。
「ひがんばなさん…、駄目だ!!!」
「つばめ君、何を言って?」
「…早まっては…いけ…ない…」
 そしてまた燕は意識を手放した。
「…つばめ君!!!?」
「と、とりあえず、救急車呼ぶから! お前は燕君を見てやれ!」
「うん、分かった!」
 そして音刃は救急車を呼び、うららは様子を見守った。
 ―その艶やかで、しぶとい生命力を持つ彼岸花を手放して、燕は意識を閉ざした。
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