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狼と赤ずきん。
【閑話休題】不幸ヤンキー、”狼”に恥辱される。《前編②》
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彼女の姿を見届ければ、庭園から出てきた人物がこちらへやって来た。恐らく煙草休憩をしていたのだろう。ヤニ臭さを感じさせる。
「よぉ麗永!」
…またこの人は。
煙草が嫌いな彼を見て楽しげにニヤニヤとしている煙草臭い人物は、たとえ友達だろうが何だろうが人の不幸が大好きな嫌な人間の撫子である。そんな彼は苛立ちを見せる麗永へ手を上げて嫌に笑った。
「疲れた顔してるなぁ~!」
「……そんなことより近づかないで頂けますか。煙草が嫌いなので」
「面白そうなことになっているだろ?」
…この人はまったく僕の話を聞いていませんね。
ニヤつく彼に深い息を吐いてから麗永は答えた。
「面白いも何もありませんよ。こっちはせっかくの休日が台無しですし…」
「はっはっは~!!!」
「良かったですよ。…あなたも相変わらず、他人の不幸が大好物で」
「他人の不幸は蜜の味って言うだろ~?」
嫌味を笑って返している撫子に呆れつつも麗永は彼に問い掛けた。とりあえずこの状況を作り出した張本人に麗永は耳を傾けたかったのだ。
「…それで、場磁石君は?」
「あぁ、場磁石は部屋で原稿を書かせてるぜ~?」
…この人、場磁石君とはいえ怪我人でさえも容赦をしないのですね。
―まるで鬼だな。
「クシュッンっ! 誰か俺の噂をしているのか~?」
「…誰でしょうね」
「まぁ付いてきな!」
撫子から香る煙草の匂いは一旦置き、撫子は麗永を哉太の部屋に案内をする。煙草の匂いは依然として変わらずに本当は消臭剤でも掛けたいほどであるが、話がずれてしまうのを恐れたのでハンカチで鼻を覆った。
ちなみにだが、幸の家は一軒家だがローンは無い。しかし固定資産税を払ってはいてその他はほぼ光熱費と水道代ぐらいだ。以前までは、幸自身がバイト代から払っていたそうだ。だが今は哉太が払っているらしい。だから幸は進学したい大学に充てる費用としてバイトで稼いでいるそうだ。
階段を上がりながら撫子は爛々として1室にノックもせずに入る。…そこには頭に氷嚢を乗せてパソコンに一心不乱に向かっている人物…場磁石 哉太であった。
「撫子~、俺は今、傷心中なの! 勝手に入ってくん…なって―」
勝手に入室してきた撫子に怒ろうとして振り向けば…そこには抑えていたハンカチを退けて仁王立ちをしている敏腕警部補の麗永が居た。左頬を真っ赤に染め上げているのだろう。湿布を貼っている哉太は麗永の姿を見て仰け反ってしまう。
「げぇっ、なんで麗永が居るの!??」
「僕が居てはまずいのですか?」
「…うわぁ~最悪。説教されるの確定じゃん」
数少ない友人の1人に対しても失礼な態度を取る”狼”こと場磁石 哉太に麗永は怒りを通り越して呆れ果て、息を吐く。そして鋭い視線を向けた。
「説教はちゃんとさせて頂きますよ。…そんなことより、何があったのですよね。まさか、彼岸花君に何かいやらしいことでもしたんじゃ―」
麗永の言葉にビクついた哉太の姿を見て確信した。「やはりな」と。だから彼は怖いほどにこやかに笑ってから哉太に近づき…言葉を紡いだ。
「あなたに選択肢を与えましょう。1つ。彼岸花君は恐らく、いやかなりの確率で被害者です。これを警察に訴えてあなたを牢屋にぶち込むか…そして、もう1つ―」
冷や汗ダラダラの哉太に麗永は軽やかに笑ってからもう1つの案を出す。
「疲弊してはいますが。僕が話を聞いてそれによっては手を貸してあげましょう。…あなたみたいな人間は、彼岸花君という健気でしっかりしていて、それでいて裏切らず、信頼もしている方の傍に居た方が、良いですしね? まぁ悪さも出来ないでしょうし。ですが、あなたにとって今は幸せでしょうが…彼岸花君は幸せかどうか。それは本人にしか分かりませんので存じませんけど」
「そ、そんなの、花ちゃんだって…多分。その…幸せだと…思ってくれてる…だろうし…」
普段の幸を”花ちゃん”と呼ぶ声は段々と小さくなっていき、そして項垂れてしまう哉太に麗永はもう一度深い溜息を吐いてから聞き出すことにした。
「そんなのはどうでもいいですから。ちゃんと話して下さい。話さないと、どういう対応を取れば良いのか分からないでしょう? …さぁ、早く」
聞き出そうとする麗永とニヤついている撫子の2人に哉太は肩を落としつつも彼を見上げる。今日も室内だというのに黒いサングラスを掛けていた。しかし微かではあるが隙間から真紅に宿るその瞳には後悔と懺悔を彩らせている。
「…怒らない?」
「あなたが最低クズ人間なのは周知ですから。まぁ内容によりますが…良いでしょう。怒りませんから。……面倒なので」
呆れ果てている麗永が怒らないことを確認した哉太は、腫れている左頬を触りながら喧嘩の内容を話していくのだ。
「よぉ麗永!」
…またこの人は。
煙草が嫌いな彼を見て楽しげにニヤニヤとしている煙草臭い人物は、たとえ友達だろうが何だろうが人の不幸が大好きな嫌な人間の撫子である。そんな彼は苛立ちを見せる麗永へ手を上げて嫌に笑った。
「疲れた顔してるなぁ~!」
「……そんなことより近づかないで頂けますか。煙草が嫌いなので」
「面白そうなことになっているだろ?」
…この人はまったく僕の話を聞いていませんね。
ニヤつく彼に深い息を吐いてから麗永は答えた。
「面白いも何もありませんよ。こっちはせっかくの休日が台無しですし…」
「はっはっは~!!!」
「良かったですよ。…あなたも相変わらず、他人の不幸が大好物で」
「他人の不幸は蜜の味って言うだろ~?」
嫌味を笑って返している撫子に呆れつつも麗永は彼に問い掛けた。とりあえずこの状況を作り出した張本人に麗永は耳を傾けたかったのだ。
「…それで、場磁石君は?」
「あぁ、場磁石は部屋で原稿を書かせてるぜ~?」
…この人、場磁石君とはいえ怪我人でさえも容赦をしないのですね。
―まるで鬼だな。
「クシュッンっ! 誰か俺の噂をしているのか~?」
「…誰でしょうね」
「まぁ付いてきな!」
撫子から香る煙草の匂いは一旦置き、撫子は麗永を哉太の部屋に案内をする。煙草の匂いは依然として変わらずに本当は消臭剤でも掛けたいほどであるが、話がずれてしまうのを恐れたのでハンカチで鼻を覆った。
ちなみにだが、幸の家は一軒家だがローンは無い。しかし固定資産税を払ってはいてその他はほぼ光熱費と水道代ぐらいだ。以前までは、幸自身がバイト代から払っていたそうだ。だが今は哉太が払っているらしい。だから幸は進学したい大学に充てる費用としてバイトで稼いでいるそうだ。
階段を上がりながら撫子は爛々として1室にノックもせずに入る。…そこには頭に氷嚢を乗せてパソコンに一心不乱に向かっている人物…場磁石 哉太であった。
「撫子~、俺は今、傷心中なの! 勝手に入ってくん…なって―」
勝手に入室してきた撫子に怒ろうとして振り向けば…そこには抑えていたハンカチを退けて仁王立ちをしている敏腕警部補の麗永が居た。左頬を真っ赤に染め上げているのだろう。湿布を貼っている哉太は麗永の姿を見て仰け反ってしまう。
「げぇっ、なんで麗永が居るの!??」
「僕が居てはまずいのですか?」
「…うわぁ~最悪。説教されるの確定じゃん」
数少ない友人の1人に対しても失礼な態度を取る”狼”こと場磁石 哉太に麗永は怒りを通り越して呆れ果て、息を吐く。そして鋭い視線を向けた。
「説教はちゃんとさせて頂きますよ。…そんなことより、何があったのですよね。まさか、彼岸花君に何かいやらしいことでもしたんじゃ―」
麗永の言葉にビクついた哉太の姿を見て確信した。「やはりな」と。だから彼は怖いほどにこやかに笑ってから哉太に近づき…言葉を紡いだ。
「あなたに選択肢を与えましょう。1つ。彼岸花君は恐らく、いやかなりの確率で被害者です。これを警察に訴えてあなたを牢屋にぶち込むか…そして、もう1つ―」
冷や汗ダラダラの哉太に麗永は軽やかに笑ってからもう1つの案を出す。
「疲弊してはいますが。僕が話を聞いてそれによっては手を貸してあげましょう。…あなたみたいな人間は、彼岸花君という健気でしっかりしていて、それでいて裏切らず、信頼もしている方の傍に居た方が、良いですしね? まぁ悪さも出来ないでしょうし。ですが、あなたにとって今は幸せでしょうが…彼岸花君は幸せかどうか。それは本人にしか分かりませんので存じませんけど」
「そ、そんなの、花ちゃんだって…多分。その…幸せだと…思ってくれてる…だろうし…」
普段の幸を”花ちゃん”と呼ぶ声は段々と小さくなっていき、そして項垂れてしまう哉太に麗永はもう一度深い溜息を吐いてから聞き出すことにした。
「そんなのはどうでもいいですから。ちゃんと話して下さい。話さないと、どういう対応を取れば良いのか分からないでしょう? …さぁ、早く」
聞き出そうとする麗永とニヤついている撫子の2人に哉太は肩を落としつつも彼を見上げる。今日も室内だというのに黒いサングラスを掛けていた。しかし微かではあるが隙間から真紅に宿るその瞳には後悔と懺悔を彩らせている。
「…怒らない?」
「あなたが最低クズ人間なのは周知ですから。まぁ内容によりますが…良いでしょう。怒りませんから。……面倒なので」
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