俺は善人にはなれない

気衒い

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第11章 軍団戦争

第227話 軍団戦争6

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「ひぃ~っ!」

「な、何なんだよ!」

「ば、化け物!」

"碧い鷹爪"の冒険者達は混乱の渦の中

にいた。原因は彼らを追いかけ回す1人

の鬼人にあった。

「逃げるなよ。お前らが売った喧嘩だ

ろ」

両手に2本の刀を持ち、無詠唱で魔法を

発動させながら、ゆっくりと冒険者達へ

迫る鬼人。逃げ惑う冒険者達は運の悪か

った者から順にやられていき、逃げ場も

どんどんなくなっていった。中には諦め

て無謀にも立ち向かおうとした者もいた

が、攻撃が当たる筈もなく、次々と刀で

斬られていく始末。もう駄目か……………

そう考え始めた彼らにここで救いの声が

聞こえた。

「お前ら!ここは俺に任せて逃げろ!」

「「「「「レ、レックスさ

ん!!!!」」」」」

それは"碧い鷹爪"の幹部、レックス・

シップだった。顔中に傷があるその男は

佇まいから、歴戦の猛者を思わせる何か

があった。大剣を楽々と肩に担ぐその筋

力も只者ではない。ただ唯一、解せない

のは口に木の棒を咥えていることだっ

た。

「お前があの"朱鬼しゅき"だ

な?」

「"あの"ってのがどれを指してるのか

は分からないが、確かにそう呼ばれてる

な。ところでお前は?」

「俺はレックス。"倒木"とも呼ばれて

る」

「へ~」

「え?由来を知りたいってか?仕方ねぇ

な。そんなに知りたきゃ教えてやるよ」

「聞いてないから」

「修行の為に大剣を振り回してたら、周

りの木が倒れてたんだ。そこから」

「自信満々そうに話すから、何かと思え

ば随分と薄っぺらいな。アタシの時間を

返せ」

「ほぅ。大した度胸だな。今まで俺にそ

んな態度をした奴はこの世にいないぞ」

「周りがYESマンばかりだからか?」

「いや、そんな態度をする奴ら

は……………全員、あの世へ送ってやった

からだ!」

「なるほどな。その殺気、アタシら以外

じゃ耐えるのキツいだろ。ってか、お

前、仲間の中で一番強いんじゃない

か?」

「よく気が付いたな。実はそうだ」

「何故、そんな奴が幹部をやってる。ま

さか、リーダーに興味がないのか?」

「それもある。だが、一番の理由は俺が

ブレス様を崇拝しているからだ。あの方

こそ、至高。そして、あの方はいずれ冒

険者の世界でトップになるんだ」

「……………お前、今何て言った?」

「っ!?おいおい、嘘だろ…………なん

て殺気だ」

「よく覚えとけ、馬鹿。冒険者の頂点に

立ち、いずれこの世界を統べる王はただ

1人……………それはシンヤ・モリタニ

だ」







――――――――――――――――――







「おい、止まれ!」

「何?」

「お前、"銅匠"だな!俺は幹部のサ

ブ!」

「?」

「俺が相手をしてやる!」

「望む、ところ」

他の場所でも幹部と幹部の戦いが始まっ

ていた。ノエがハンマーを振り回し、敵

を蹴散らしたかと思えば、

「"雷落とし"」

「あべべべべべっ」

「あら?さっきの威勢はどうしたんです

か?」

「な、なん………で…………こう、なっ

た?」

アスカが雷と薙刀で敵を蹂躙。

「つまらんのぅ。もうちっと骨があるか

と思ったぞよ」

「こ、こいつ、イカれてやがる」

「安心せい。シンヤに戦いを挑むお前ん

とこのリーダーの方がイカれとるからの

ぅ」

「なんだと!」

「お、まだ気力が残っておるではない

か。では第二ラウンドじゃな」

別の場所ではイヴが妖しく微笑みなが

ら、鎌を持ち上げ、それを振り下ろす。

「ぬるいっ!」

「くっ!あの時とはレベルが違う!やは

り、竜人族は格が…………」

「種族の差などさして変わらん!現に我

らのリーダーは人族だぞ!そんなことに

囚われているようだから、お前はその程

度なのだ」

ラミュラは敵の幹部に傭兵時代の顔見知

りがいた為、その者を相手に遠慮のない

言葉と技で翻弄。

「ちぃっ!お前が情報屋をしている時、

依頼をしてやった恩を忘れやがって!」

「その節はどうも………………って言って

もお前のことなんか覚えてないけどな」

「んだと!」

「昔のことをネチネチとうるせぇな。も

う俺は情報屋じゃない。今は探偵をやっ

ている」

「似たようなもんじゃねぇか!」

「いや、本業は冒険者だ。それも最高の

仲間達と共にな」

ドルツは幾本もの短剣を敵へ容赦なく投

下。

「早くきやがれデス!」

「眠いの」

「くそがああぁぁ!」

「これでもくらえ!」

スィーエルとレオナはそれぞれ控えめに

攻撃。とはいっても周りに陥没した箇所

はいくつもあるが。

「これでアンタ達の周りには大量の罠が

設置されたわ。覚悟して、動くことね」

「く、くそっ!これじゃあ、不用意に動

けねぇ!」

「も、もう我慢できねぇ!…………ぐは

あっ!」

「おい!適当に動くな!」

敵の悲鳴と共に爆発音が響く。そこはロ

ーズによって大量の罠が設置された危険

地帯になっており、不用意に近付く者は

手痛い洗礼を受けていた。

「小さいのに何てパワーしてやがる!」

「小人だからって、馬鹿にした?言って

おくけど、かつて邪神を封印した者達の

中に小人族もいたからね」

「だが、そんなものは例外!例外っての

は1つだけで十分だ!」

「あっそ」

一方、ニーベルの場合は敵が道具を使う

タイプでそれを愛用武器である斧で破壊

していた。あちらこちらで展開する様々

な戦い。軍団戦争レギオン・ウォー

は着実に終わりへと近付いていた。
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