俺は善人にはなれない

気衒い

文字の大きさ
234 / 416
第12章 vs聖義の剣

第234話 救援

しおりを挟む
怒号や悲鳴が辺りに響き渡り、魔法によ

って所々が燃えている森の中。そんな中

を疾風のごとく駆け回る集団がいた。全

員、女で構成されたその集団の数は8

人。黒衣を靡かせ、それぞれ違う武器を

携帯した彼女達の胸には一風変わったク

ランマークがついている。と、徐に先頭

を走る者が言葉を発した。

「ここからは別行動をしましょう。敵は

見つけ次第、即殲滅。分かっていると思

うけど、情けは無用よ」

「「「「「はい!!!!!」」」」」






「ひぃっ!こ、来ないでくれ!」

「見逃して~!」

「俺達はただ静かに暮らしたいだけなん

だ!」

森の中を逃げ惑う人々。それを執拗に追

う"聖義の剣"。側から見れば、どちら

が加害者でどちらが被害者なのかは一目

瞭然だ。しかし、彼らにとって、そんな

ことはどうでも良かった。

「「「うわあっ!?」」」

「ったく、面倒かけさせやがって」

「ようやく追い詰めたぜ」

「見逃す訳ねぇだろ」

戦いの経験がない者と人を痛め付けるこ

とに慣れている者。その鬼ごっこではど

ちらに軍配が上がるのか明白だった。い

くら鬱蒼と茂った森の中であろうと戦闘

のプロを撒くことは容易ではない。結

果、人々は白い修道服を着た悪魔達に捕

まってしまうのだった。

「ゆ、許してくれ」

「みっともねぇな。命乞いかよ」

「たとえ、みっともなくても命が助かる

のなら、どんなことだってする!俺には

帰りを待つ家族がいるんだ!」

「あっそ。そういうの俺、一番嫌いなん

だわ。ってことで……………逝け」

瞬間、これから訪れる恐怖に対して目を

瞑る男。その間に時間の流れがゆっくり

となり、これまで生きて経験してきたこ

とが走馬燈となって頭の中に………………

流れることはなかった。と同時に痛みも

やってこない。

「ん?おかしいな」

違和感を覚えた男はゆっくりと目を開け

て周りの状況を確認してみることにし

た。すると周りでも同じことを思ったの

か、徐々に目を開ける人々がそこにはい

た。そして、肝心の悪魔達の方だ

が……………

「がはっ!な、なんだお前………」

「うるさいです。大人しく逝って下さ

い」

「ぐはあっ!」

「本当に救いようのない奴ら」

2人の少女の手によって、片付けられて

いた。一瞬、何が起きたのか分からない

人々は揃って呆けた顔をする。すると1

人がちょうど振り返り、目が合った彼女

はこう言った。

「そこの貴方!」

「お、俺!?」

「はい!」

「…………な、何でしょうか?」

「貴方はみっともなくなんてないです」

「へ?」

「貴方は自分の大切な人達の為に何もか

もを捨てて生き残ろうとした……………そ

の心意気は称賛されこそすれ、見下され

るようなことではありません!むしろ、

みっともないのはこいつらの方です」

男は突然かけられた言葉に込み上がるも

のがあった。何故、自分は年下の女の子

に助けられ、あまつさえ優しく慰めても

らっているのか……………彼女の言葉によ

って、勇気付けられた心と身体が立ち上

がれと訴えてかけてくる。まだ自分にも

何か他にできることがあるんじゃない

か。ここにいる人と協力して、無事に生

き延びる方法がどこかに残されているん

じゃないのか。だが、まずはその前にや

ることがあった。助けてもらったお礼を

まだ言っていない。男は震えそうになる

声を必死に誤魔化しながら、彼女へ感謝

の念を述べようと

「あの、先程は……………」

「皆さん、よく頑張りましたね。もう大

丈夫です」

したが、それよりもはっきりとした大き

な声で遮られてしまった。そして、今度

は少女達が2人共、人々を見渡しながら

言葉を続ける。

「ここからは私達がご一緒させて頂きま

す。あ、自己紹介が遅れました。私、ク

ラン"黒天の星"の遊撃部隊、新兵のセ

ーラと申します」

「同じく新兵のサクヤだよ。よろし

く~」

「"黒天の星"!?」

「あの有名な!?」

「た、確かに黒衣を着ているし、クラン

マークもそうだ」

驚いた空気が流れたがそれも一瞬のこ

と。人々はハッと我に返ると皆、頭を下

げて先程声をかけられた男を先頭に謝意

を述べた。

「セーラさん、サクヤさん、この度は命

を助けて頂き、誠にありがとうございま

す」

「「「「「ありがとうございます」」」」」

「このお礼は必ず致します」

「でしたら、私達からは1つだけ要望が

あります」

「何でしょうか?」

「必ず生きて、帰るべき場所へと帰るこ

と……………これをお約束して下さい」

「っ!?は、はい!分かりました!」

「よろしい。では行きましょうか」

「あ、あの!ちょっとお待ち下さい!」

「はい?」

「あっちにもまだ取り残された人達がい

るんです!助けてもらっておいて、こん

なことを言うのが図々しいのは百も承知

なんですが、その人達も助けて頂くこと

はできないでしょうか?」

その訴えに対し、何故か満面の笑みを浮

かべたセーラはこう返した。



「心配なさらずとも大丈夫ですよ。なん

せ、あちらには私以上に頼りになる人達

がいますから」
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

目つきが悪いと仲間に捨てられてから、魔眼で全てを射貫くまで。

桐山じゃろ
ファンタジー
高校二年生の横伏藤太はある日突然、あまり接点のないクラスメイトと一緒に元いた世界からファンタジーな世界へ召喚された。初めのうちは同じ災難にあった者同士仲良くしていたが、横伏だけが強くならない。召喚した連中から「勇者の再来」と言われている不東に「目つきが怖い上に弱すぎる」という理由で、森で魔物にやられた後、そのまま捨てられた。……こんなところで死んでたまるか! 奮起と同時に意味不明理解不能だったスキル[魔眼]が覚醒し無双モードへ突入。その後は別の国で召喚されていた同じ学校の女の子たちに囲まれて一緒に暮らすことに。一方、捨てた連中はなんだか勝手に酷い目に遭っているようです。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを掲載しています。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

最弱スキルも9999個集まれば最強だよね(完結)

排他的経済水域
ファンタジー
12歳の誕生日 冒険者になる事が憧れのケインは、教会にて スキル適性値とオリジナルスキルが告げられる 強いスキルを望むケインであったが、 スキル適性値はG オリジナルスキルも『スキル重複』というよくわからない物 友人からも家族からも馬鹿にされ、 尚最強の冒険者になる事をあきらめないケイン そんなある日、 『スキル重複』の本来の効果を知る事となる。 その効果とは、 同じスキルを2つ以上持つ事ができ、 同系統の効果のスキルは効果が重複するという 恐ろしい物であった。 このスキルをもって、ケインの下剋上は今始まる。      HOTランキング 1位!(2023年2月21日) ファンタジー24hポイントランキング 3位!(2023年2月21日)

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

処理中です...