俺は善人にはなれない

気衒い

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第15章 親子喧嘩

第331話 面会2

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「起きろ、57番!お前に面会希望者が

来ている」

「……………ようやくか」

「おっ、やっと喋ったな。お前が一言も

話さないから、看守達は気味悪がってい

たぞ」

「……………話す必要性がない」

「まぁ、それはそうなんだが」

「……………それよりも早く案内してく

れ」

「はぁ。分かったよ」







―――――――――――――――――――――







「俺はシンヤ・モリタニ、冒険者をして

いる。お前が"キョウ・モリタニ"で間

違いないか?」

「ああ…………こうして、対面で接する

のは初めてだな」

「間接的には接したことがあるからな。

封筒の件だろ?ありがとな。助かった

わ」

「……………その分じゃ、暗号は解読でき

たみたいだな。しかし、俺が言っている

のは何も封筒の件だけじゃない。記事然

り、吟遊詩人の歌然り……………レムロス

での演説に至っては現場でお前の勇姿を

見ていた」

「なるほど……………しかし、妙だな。

お前程の男・・・・・に見られてい

たのに俺は全く気が付かなかった。一体

これをどう説明する?」

「俺が大したことのない人間だからだ

ろ。だから、群衆の中に紛れていても気

が付かれないんだ」

「過剰な過小評価も大概にしろ。こうし

て目の前にいて、分かる………………キョ

ウ・モリタニ。お前は只者ではない」

「………………」

「だから、納得がいかないんだ。お前程

の男に見られているのに気が付かなかっ

たということに………………何より、俺の

プライドが許せそうにない」

「…………1つフォローをしとくと俺に

は特殊な固有スキルがあってな、そのせ

いでお前が気が付かなかっただけだ。特

別、気に病む必要はない」

「………………」

「………………」

ここで突然、2人の間に沈黙が訪れた。

お互いの真意を汲み取ろうとするかのよ

うに視線が交錯する。もし、ここに第三

者がいたのなら、この空気に耐えきれず

に思わず部屋を飛び出してしまうだろ

う。それほどの緊張感がそこには漂って

いた。

「……………止めだ。今、ここで互いの腹

を探り合ってもしょうがない……………に

しても食えない男だな」

「それはお前もだ、シンヤ・モリタニ」

「「……………ふっ」」

2人は全く同じタイミングでニヤリとし

た笑みを浮かべた。そして、その直後に

立ち上がったシンヤはこう言った。

「お前をここから出す。聞けば、"食い

逃げ"で捕まったらしいじゃないか。だ

から、ここへ来る前にその店の店主や看

守長へ金を払って話をつけてきた」

「…………すまんな。ちゃんと金は返

す」

「…………お前、わざと捕まっただろ?

本当は金も持っていて、ちゃんと払う意

思もあった。だが、お前には何か目的が

あって捕まった…………違うか?」

「人生、そんなに考え過ぎるとつまらな

くなるぞ?」

「暗号を発した奴がよく言うな……………

もし、お前の目的というのが俺に会うこ

とだとしたら、この時期のタイミングが

一番いい。なんせ、色々なことが一段落

したばかりだからな。それにお前が使っ

た"モリタニ"という名字………………こ

れは最近、結婚したばかりでその名字と

なった妻達にとっては非常に敏感な単語

だ。そこで俺が妻達を不安にさせないよ

う、確実に動くと踏んだお前はあえてそ

の名字を使った」

「よく回る頭だ」

「常に回さなければ、組織は終わる。こ

れは俺個人の問題じゃない」

「つまり、俺がお前らに被害を及ぼすか

もしれないと?」

「それは分からない。だが、お前からは

今まで会ったどんな者とも違う空気を感

じる………………これほどやりにくい相手

は初めてだ」

「あの"黒締"にそこまで言ってもらえ

るのは光栄だな」

「思ってもないくせに白々しいことを言

うな」

「バレたか」

「当たり前だろ」

「じゃあ、バレたついでにもう1つバラ

すわ」

「ん?」

面会室から出ようとドアノブを捻るシン

ヤに男はこう言った。


「実はな、俺ってお前の父親なんだわ」
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