俺は善人にはなれない

気衒い

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第15章 親子喧嘩

第332話 ステータス

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「訓練場か……………地下にこんなものま

であるとは流石だな」

あの後、シンヤはキョウを連れて真っ直

ぐフリーダムまで帰ってきた。その際、

会議室や応接室へと向かわず、訓練場へ

と足を運んだのには理由があった。

「本当に俺が勝ったら、教えてくれるん

だろうな?」

「ん?」

「だから、面会室で最後にお前がした発

言についてだ」

「ああ、いいぜ。俺と戦って、お前が勝

てば教えてやるよ」

「その言葉、忘れるなよ?」

現在、訓練場にはシンヤ達の戦いを見守

ろうと"黒天の星"の全メンバーが駆け

つけ、観客席に静かに座っていた。実は

シンヤがキョウの元へと向かった直後、

ティアはクランメンバー全てに店や冒険

者活動を臨時休業させ、いつでも動ける

よう待機させていたのだ。そして、シン

ヤからクランハウスへと戻る旨を魔道具

によって知らされたティアは急いで全メ

ンバーを訓練場へ向かうよう指示し、今

に至る。通常、シンヤがどんな敵と戦っ

たり、対話しようがこうして全メンバー

がいちいち集まることはない。しかし、

今回に至っては今までのどんな敵とも違

うものをキョウに対して感じ取ったティ

アは2人の戦いをこの目に焼き付けよう

と訓練場までやってきた。加えて、この

一戦はティアだけではなく、クランメン

バー達も見なくてはならない……………直

感的にそうも感じた為、全員をこうして

呼んだのだ。

「戦いを始める前に1ついいか?」

「何だ?」

「俺がお前の父親であるということの証

拠を1つ提示しよう」

"父親"という単語に流石に黙ったまま

ではいられないのか、ザワザワとしだす

観客席。そんな様子を軽く無視したキョ

ウは言葉を続けた。

「"ステータス"。攻撃力や防御力、魔

力量などを数値化し、それに加えて"固

有スキル"や"武技スキル"、"魔法"

などがまとめられた総合戦闘力を表すも

のだ。通常、この世界で生まれた者・・・・・・・・・・"ステータス

"というものの存在を知らずに生きてい

る。戦闘を生業とする冒険者であっても

それは例外ではない。皆、感覚的に自分

にはどんな魔法が使え、何が得意である

のかを理解している状態だ」

「………………」

「ところが、元々他の世界で生まれ、こ

っちへとやってきた者にそれは当てはま

らない。召喚だろうが、転生だろうが、

はたまた転移だろうが………………異世界

人は皆、等しく"ステータス"の存在を

知り、それを見ることができる。これは

とてつもないアドバンテージだ」

キョウの言葉に驚きと戸惑いが入り混じ

った反応をする観客席。とはいっても"

ステータス"というものが存在すること

に対してではない………………キョウが"ステータス"に関して・・・・・・・・・・・・・色々と知りすぎていることに対して・・・・・・・・・・・・・・・・だった。

「観客席も戸惑っているな。何故、俺が

このことを知っているのか不思議でたま

らないらしい………………だが、シンヤ・

モリタニ…………お前はその理由にとっ

くに察しがついているはずだ。そして、

それこそがお前の父親であるということ

の証明にもなる」

「………………」

キョウの言葉にしばしの沈黙で以って返

すシンヤ。その間、ざわめきは収まった

ものの、観客席もどこか落ち着かない様

子で2人を見守っていた。すると、少し

してシンヤは鋭い眼光をキョウへと向け

たまま、刀を抜いた。

「俺の動揺を誘ったみたいだが……………

残念だったな。今、そんなことを聞かさ

れたところで俺はどうともならん」

キョウとの距離を歩きながら、少しずつ

詰めるシンヤ。対するキョウはその場を

一切微動だにしなかった。

「なんせ、5分後には……………」

「っ!!」

2人の距離が2m程となった直後、駆け

出したシンヤはティア達であっても視認

できるか分からない速度でキョウへと迫

り、刀を振り下ろした。

「お前の口から洗いざらい吐いてもらう

からな!!」

「いいなっ!!その意気だ!!かかって

こい!!」

キョウはそれを左腕の手甲で以って、受

け止めた。こうして、彼らの今後の運命

を左右する一戦が幕を開けたのだった。
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