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第46話 夕餉
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「お待たせしました。夕餉の支度が整いました」
廊下からそう声をかけてきたのは、さっきと同じメイドさん――だけど、表情も仕草も完璧にプロの顔になっていて、昼間にクッションを拾ってた人とはとても思えない。
「あっ、もうそんな時間?」
エリナがミルラの髪を優しく撫でながら立ち上がると、ミルラは「うーん……おなかすいたぁ……」と呟いて目をこすっていた。完全に充電切れ状態だ。
俺もソファから腰を上げると、ミルラがとことこ歩いてきて、当然のように俺の手をぎゅっと握ってきた。
「ゆーりくん、いっしょにごはんいくの!」
「えっ、あ、うん。じゃあ……一緒に行こうか」
ちらりとエリナの顔を見ると、「ふふ、行こう」と微笑んで頷いた。
そのとき、隣で立ち上がったレオンがにっこりと笑って、朗らかに声をかける。
「さあ、晩餐の席へ行こうじゃないか! 今日はうちの自慢の料理人が腕をふるってるぞ!」
「ええ。せっかくの客人なのだから、いつもより少し贅沢にしておいたわ」
ミレティアも優雅に立ち上がりながら、こちらに柔らかい微笑みを向ける。
「ユーリくんのための夕餉よ。どうぞ、くつろいで楽しんでね」
「は、はいっ……!」
なんだか急にちゃんとしたおもてなしモードに入った気がして、思わず背筋がしゃんと伸びる。
そうして俺たちは、広い館の廊下を抜け、夕餉のための食堂――というには豪華すぎる部屋へと通された。
「……っわ、広っ!」
思わず声が漏れた。
長いテーブル。天井まで届きそうな窓に、繊細な刺繍のカーテン。壁には古そうなタペストリーが掛かっていて、足元には厚い絨毯。中央には、信じられないくらい豪華な晩餐がずらりと並んでいた。
「さぁさぁ、遠慮はいらんぞ!今日はお客様なんだからな!」
レオンが大きな声で俺の背中をどんと押す。重い。
「お席はこちらでございます、ユーリ様」
メイドさんに案内され、俺はレオンの隣、その向かいにエリナ、さらにその隣にミルラという配置に座ることになった。
「ゆーりくんのとなりがよかったー!」
「はいはい、次のときね……ね?」
ミレティアが優しく言い聞かせるように声をかけると、ミルラは口をとがらせながらも、しぶしぶ椅子によじ登った。そのやり取りがまた、どこか微笑ましくて――まるでどこにでもある、あったかい家族の風景だった。
(……なんか、こういう食事のマナーとか難しいのかなって思ってたけど)
席に着くと、エリナがこっちがフォーク、こっちはナイフよとさりげなく教えてくれた。誰も気取った態度を取らないのが、ありがたい。
緊張してた肩の力が、じわじわと抜けていくのを感じながら、俺は目の前の料理に目を丸くしていた。
肉、肉、肉、スープ、魚、サラダ、パン、そして肉。なんかやたら肉が多い。
「おっ、驚いたか?これはこの領地で育てたロクホーン牛のローストだ!名物なんだぞ」
「ロ、ロクホーン……?」
「六本の角があるんだよ。雄だけな。で、気性が荒いから育てるのも一苦労でな。俺の若い頃は、それを追い回してたもんさ!」
「……また武勇伝が始まったわね、レオン様」
ミレティアがさらりと皮肉っぽく言うと、レオンは「はっはっはっ」と笑って飲み物を飲み干した。
「さあ、ユーリくん。たんと食べてくれ。村ではここまでの料理は出ないだろう?」
「……正直、初めて見ました。こんな大きな肉……!」
「でっかいおにくっ!!」
ミルラも大興奮。フォークを握った手をぶんぶん振り回しながら、エリナに「切ってー」とせがんでいた。
俺もナイフを持ち直し、そっと一口。
(……うまっ)
表面は香ばしく、中は柔らかくてジューシー。ちょっと笑いそうになるくらい、贅沢な味だった。
「うちの料理長が腕によりをかけて用意したんだ。気に入ってもらえたなら何より!」
レオンが誇らしげに鼻を鳴らす。
歓迎されてるのはバッチリ伝わってきた。
……でもさすがに、肉が多すぎじゃない!?
あっちも肉、こっちも肉、スープにまで肉の出汁の香りが漂ってるし……どんだけ肉尽くしなんだ。
――あ、いや。
たしかロクホーンの肉が名物だったっけ。
そういえば前に来たときは、ここまで肉の主張強くなかった気がするけど……あれは市場とか軽食ばっかだったからか?
……うん、今回は正式なおもてなしってことなんだろう。ご当地の全力、恐るべし。
なら納得。……いや、やっぱりちょっと多いけど、納得。
「そういえば、ユーリくんの噂――かなり広まってるわよ」
料理の合間、ふとミレティアがそう言った。
「……え?」
「小さな英雄だとか、雷の王子なんて呼ばれているらしいわよ。誰が言い出したのかしらね」
「雷って、剣の技の名前だったんだよね?」
エリナが俺の方をちらりと見て、レオンが豪快に頷いた。
「俺も後から聞いて驚いたぞ。蒼雷流の雷閃で、魔獣を真正面から打ち倒したって話じゃないか!」
「ちょ、そんな大げさじゃ……!」
慌てて否定しようとした俺に、ミルラがすかさず「ゆーりくん、すごいのっ!」と自慢げに言ってくるもんだから、逃げ場がない。
「その話、ぜひ詳しく聞かせてくれ!」
レオンがぐっと身を乗り出してくる。
「森にいた魔獣って、たしかナイトウルフの大型種だったんだろう?あれを子ども一人で相手にするなんて、普通じゃできないぞ」
「……いえ、本当に、必死だっただけで……」
「謙遜はいい!それで、どうやって倒したんだ?」
興味津々の視線に囲まれながら、俺はおそるおそる、その時のことを語り始めた。
「夜の森で、子どもたちがいた場所にいきなり現れて襲ってきて……最初はどう動くか探りながら、なんとか応戦して……」
「……距離を取って、動きのクセを見ていたのね。冷静な判断だわ」
ミレティアが驚いたように目を細める。
「それで、踏み込むときに右脚に重心がかかるクセを見抜いて……その瞬間、左脚が浮くから、そこに剣を合わせて雷閃を――」
「おおっ、読んで仕留めたのか!」
レオンが大きく頷き、思わず手を叩く。
「やっぱりすごいな、ユーリくん!」
「……分析して、行動に移せるのって……すごいよ」
エリナの呟きが小さく聞こえてきて、思わず手が止まる。
「えっ」
「……な、なんでもない!」
エリナが急にパンをちぎってごまかし始めた。横で見ていたミルラが「おねーちゃん、かおまっかー」と言ってて、場がなんとも言えない空気に包まれた。
「雷の王子って異名、やっぱりぴったりね」
エリナがふと口にすると、レオンが笑って頷いた。
「うむ!小さな英雄も悪くないが、やっぱり雷の王子のほうが格好いいよな!」
「ちょっと、それ本人の前で言いすぎですよ……!」
俺が苦笑いしながら返すと、ミルラがフォークを握ったまま身を乗り出してくる。
「ゆーりくんって、雷の王子ってよばれてるんだよね?」
「う、うん。なんか、町ではそう言われてるみたいで……」
ちょっと照れながら答えると、ミルラはさらに目を輝かせて、こんなことを言った。
「だってゆーりくん、やさしくて、いっぱいあそんでくれるし――なんかね、ほんとのおうじさまみたいなんだもん!」
「お、おうじさま……?」
「うん!ミルラのおうじさまっ!」
そう言って、椅子の上でぴょこんと跳ねるように喜ぶミルラ。
その様子に、エリナがくすっと笑い、ミレティアも微笑ましそうに頷いていた。
「雷の王子が町を歩いてたって、商人の間でちょっとした騒ぎになったって聞いたわ」
ミレティアの一言に、俺は「そんな大げさな……」と頭を抱えた。
「ふふ、でもね。みんながいい噂をしてくれてるって、とても素敵なことよ。ここでこうして歓迎されるのも、あなたがそれだけのことをした証だわ」
「歓迎されてるのは、ありがたいんですけど……なんか、ちょっと恥ずかしいです」
と、そこでふと、心に引っかかるものがあって、俺はつい小声で尋ねてしまった。
「……あの、この雷の王子って異名、王族の方とかに知れ渡ったら……大丈夫なんですかね?」
すると、レオンがフォークを止めて、どかっと笑った。
「はっはっはっ!心配するな!王子ってのはあくまで愛称だ。誰も本物の王族と間違えやしないさ!」
「……でも、なんか誤解されそうな気もして……」
「もし誤解されたら、うちの公爵家がちゃんと説明してやるさ。安心しろ!」
「……は、はい」
「なにより、君自身が堂々としていればいい。異名なんてのは、ついて回るもんだからな。いい名が広まるのは、むしろ誇るべきことだぞ、ユーリくん」
その言葉に、ミレティアも静かに頷いて微笑んでくれた。
「……うん、わかりました」
顔が熱くなるのを感じつつ、俺はお肉の皿に目を戻す。あー、うん。冷めてないのありがたい。庶民とは住む世界がちがう、ってこういうことかも。
「ねぇ、もっとおはなしきかせてー!」
ミルラが両手をぱたぱたさせながら俺に身を乗り出してきた。
「え、なにを?」
「ゆーりくんがたたかったおはなしー!」
「あー……うん、じゃあ……その前に倒した魔獣の話とか?」
「やったーっ!」
そのあとの夕食中は、俺の武勇伝おかわりタイムになっていた。
戦った魔物の特徴とか、自警団の人たちとのやりとりとか、村の人に変なあだ名をつけられた話まで――
「それにしても、ユーリくんほんとによく食べるのね」
「え?あっ、す、すみません!」
(……ああ、だめだ。ついつい普段食べられないからって庶民根性が出て、がっついちゃってるな、俺)
「ふふ、いいのよ。見ていて気持ちがいいもの」
ミレティアが微笑み、レオンが「もっと食べてけ!」と皿をどんと差し出してくる。そこにはまた肉、肉、そして……さらに肉。
「ええぇ、また肉ですか!?いや、美味しいけども!」
「名物だからな!」
「いや、そりゃそうなんですけど、もはや肉で構成された夕餉じゃないですか……!」
思わず突っ込みを入れると、エリナがくすっと笑った。
「……でも、そうやって素直に反応してくれるのって、見ててほっとするのよね」
「……あー……うん。なんか……貴族の館ってもっと堅いのかと思ってた」
「ここはうちの家族が住んでる場所だもの。堅苦しくなんてしたくないわ」
「だな!堅苦しさなんてうちには似合わん!」
レオンの豪快な声に、ミルラが「おにくー!」と叫びながらパンを振り回してて、エリナが「ちょっと、落ち着いて!」と慌てていた。
廊下からそう声をかけてきたのは、さっきと同じメイドさん――だけど、表情も仕草も完璧にプロの顔になっていて、昼間にクッションを拾ってた人とはとても思えない。
「あっ、もうそんな時間?」
エリナがミルラの髪を優しく撫でながら立ち上がると、ミルラは「うーん……おなかすいたぁ……」と呟いて目をこすっていた。完全に充電切れ状態だ。
俺もソファから腰を上げると、ミルラがとことこ歩いてきて、当然のように俺の手をぎゅっと握ってきた。
「ゆーりくん、いっしょにごはんいくの!」
「えっ、あ、うん。じゃあ……一緒に行こうか」
ちらりとエリナの顔を見ると、「ふふ、行こう」と微笑んで頷いた。
そのとき、隣で立ち上がったレオンがにっこりと笑って、朗らかに声をかける。
「さあ、晩餐の席へ行こうじゃないか! 今日はうちの自慢の料理人が腕をふるってるぞ!」
「ええ。せっかくの客人なのだから、いつもより少し贅沢にしておいたわ」
ミレティアも優雅に立ち上がりながら、こちらに柔らかい微笑みを向ける。
「ユーリくんのための夕餉よ。どうぞ、くつろいで楽しんでね」
「は、はいっ……!」
なんだか急にちゃんとしたおもてなしモードに入った気がして、思わず背筋がしゃんと伸びる。
そうして俺たちは、広い館の廊下を抜け、夕餉のための食堂――というには豪華すぎる部屋へと通された。
「……っわ、広っ!」
思わず声が漏れた。
長いテーブル。天井まで届きそうな窓に、繊細な刺繍のカーテン。壁には古そうなタペストリーが掛かっていて、足元には厚い絨毯。中央には、信じられないくらい豪華な晩餐がずらりと並んでいた。
「さぁさぁ、遠慮はいらんぞ!今日はお客様なんだからな!」
レオンが大きな声で俺の背中をどんと押す。重い。
「お席はこちらでございます、ユーリ様」
メイドさんに案内され、俺はレオンの隣、その向かいにエリナ、さらにその隣にミルラという配置に座ることになった。
「ゆーりくんのとなりがよかったー!」
「はいはい、次のときね……ね?」
ミレティアが優しく言い聞かせるように声をかけると、ミルラは口をとがらせながらも、しぶしぶ椅子によじ登った。そのやり取りがまた、どこか微笑ましくて――まるでどこにでもある、あったかい家族の風景だった。
(……なんか、こういう食事のマナーとか難しいのかなって思ってたけど)
席に着くと、エリナがこっちがフォーク、こっちはナイフよとさりげなく教えてくれた。誰も気取った態度を取らないのが、ありがたい。
緊張してた肩の力が、じわじわと抜けていくのを感じながら、俺は目の前の料理に目を丸くしていた。
肉、肉、肉、スープ、魚、サラダ、パン、そして肉。なんかやたら肉が多い。
「おっ、驚いたか?これはこの領地で育てたロクホーン牛のローストだ!名物なんだぞ」
「ロ、ロクホーン……?」
「六本の角があるんだよ。雄だけな。で、気性が荒いから育てるのも一苦労でな。俺の若い頃は、それを追い回してたもんさ!」
「……また武勇伝が始まったわね、レオン様」
ミレティアがさらりと皮肉っぽく言うと、レオンは「はっはっはっ」と笑って飲み物を飲み干した。
「さあ、ユーリくん。たんと食べてくれ。村ではここまでの料理は出ないだろう?」
「……正直、初めて見ました。こんな大きな肉……!」
「でっかいおにくっ!!」
ミルラも大興奮。フォークを握った手をぶんぶん振り回しながら、エリナに「切ってー」とせがんでいた。
俺もナイフを持ち直し、そっと一口。
(……うまっ)
表面は香ばしく、中は柔らかくてジューシー。ちょっと笑いそうになるくらい、贅沢な味だった。
「うちの料理長が腕によりをかけて用意したんだ。気に入ってもらえたなら何より!」
レオンが誇らしげに鼻を鳴らす。
歓迎されてるのはバッチリ伝わってきた。
……でもさすがに、肉が多すぎじゃない!?
あっちも肉、こっちも肉、スープにまで肉の出汁の香りが漂ってるし……どんだけ肉尽くしなんだ。
――あ、いや。
たしかロクホーンの肉が名物だったっけ。
そういえば前に来たときは、ここまで肉の主張強くなかった気がするけど……あれは市場とか軽食ばっかだったからか?
……うん、今回は正式なおもてなしってことなんだろう。ご当地の全力、恐るべし。
なら納得。……いや、やっぱりちょっと多いけど、納得。
「そういえば、ユーリくんの噂――かなり広まってるわよ」
料理の合間、ふとミレティアがそう言った。
「……え?」
「小さな英雄だとか、雷の王子なんて呼ばれているらしいわよ。誰が言い出したのかしらね」
「雷って、剣の技の名前だったんだよね?」
エリナが俺の方をちらりと見て、レオンが豪快に頷いた。
「俺も後から聞いて驚いたぞ。蒼雷流の雷閃で、魔獣を真正面から打ち倒したって話じゃないか!」
「ちょ、そんな大げさじゃ……!」
慌てて否定しようとした俺に、ミルラがすかさず「ゆーりくん、すごいのっ!」と自慢げに言ってくるもんだから、逃げ場がない。
「その話、ぜひ詳しく聞かせてくれ!」
レオンがぐっと身を乗り出してくる。
「森にいた魔獣って、たしかナイトウルフの大型種だったんだろう?あれを子ども一人で相手にするなんて、普通じゃできないぞ」
「……いえ、本当に、必死だっただけで……」
「謙遜はいい!それで、どうやって倒したんだ?」
興味津々の視線に囲まれながら、俺はおそるおそる、その時のことを語り始めた。
「夜の森で、子どもたちがいた場所にいきなり現れて襲ってきて……最初はどう動くか探りながら、なんとか応戦して……」
「……距離を取って、動きのクセを見ていたのね。冷静な判断だわ」
ミレティアが驚いたように目を細める。
「それで、踏み込むときに右脚に重心がかかるクセを見抜いて……その瞬間、左脚が浮くから、そこに剣を合わせて雷閃を――」
「おおっ、読んで仕留めたのか!」
レオンが大きく頷き、思わず手を叩く。
「やっぱりすごいな、ユーリくん!」
「……分析して、行動に移せるのって……すごいよ」
エリナの呟きが小さく聞こえてきて、思わず手が止まる。
「えっ」
「……な、なんでもない!」
エリナが急にパンをちぎってごまかし始めた。横で見ていたミルラが「おねーちゃん、かおまっかー」と言ってて、場がなんとも言えない空気に包まれた。
「雷の王子って異名、やっぱりぴったりね」
エリナがふと口にすると、レオンが笑って頷いた。
「うむ!小さな英雄も悪くないが、やっぱり雷の王子のほうが格好いいよな!」
「ちょっと、それ本人の前で言いすぎですよ……!」
俺が苦笑いしながら返すと、ミルラがフォークを握ったまま身を乗り出してくる。
「ゆーりくんって、雷の王子ってよばれてるんだよね?」
「う、うん。なんか、町ではそう言われてるみたいで……」
ちょっと照れながら答えると、ミルラはさらに目を輝かせて、こんなことを言った。
「だってゆーりくん、やさしくて、いっぱいあそんでくれるし――なんかね、ほんとのおうじさまみたいなんだもん!」
「お、おうじさま……?」
「うん!ミルラのおうじさまっ!」
そう言って、椅子の上でぴょこんと跳ねるように喜ぶミルラ。
その様子に、エリナがくすっと笑い、ミレティアも微笑ましそうに頷いていた。
「雷の王子が町を歩いてたって、商人の間でちょっとした騒ぎになったって聞いたわ」
ミレティアの一言に、俺は「そんな大げさな……」と頭を抱えた。
「ふふ、でもね。みんながいい噂をしてくれてるって、とても素敵なことよ。ここでこうして歓迎されるのも、あなたがそれだけのことをした証だわ」
「歓迎されてるのは、ありがたいんですけど……なんか、ちょっと恥ずかしいです」
と、そこでふと、心に引っかかるものがあって、俺はつい小声で尋ねてしまった。
「……あの、この雷の王子って異名、王族の方とかに知れ渡ったら……大丈夫なんですかね?」
すると、レオンがフォークを止めて、どかっと笑った。
「はっはっはっ!心配するな!王子ってのはあくまで愛称だ。誰も本物の王族と間違えやしないさ!」
「……でも、なんか誤解されそうな気もして……」
「もし誤解されたら、うちの公爵家がちゃんと説明してやるさ。安心しろ!」
「……は、はい」
「なにより、君自身が堂々としていればいい。異名なんてのは、ついて回るもんだからな。いい名が広まるのは、むしろ誇るべきことだぞ、ユーリくん」
その言葉に、ミレティアも静かに頷いて微笑んでくれた。
「……うん、わかりました」
顔が熱くなるのを感じつつ、俺はお肉の皿に目を戻す。あー、うん。冷めてないのありがたい。庶民とは住む世界がちがう、ってこういうことかも。
「ねぇ、もっとおはなしきかせてー!」
ミルラが両手をぱたぱたさせながら俺に身を乗り出してきた。
「え、なにを?」
「ゆーりくんがたたかったおはなしー!」
「あー……うん、じゃあ……その前に倒した魔獣の話とか?」
「やったーっ!」
そのあとの夕食中は、俺の武勇伝おかわりタイムになっていた。
戦った魔物の特徴とか、自警団の人たちとのやりとりとか、村の人に変なあだ名をつけられた話まで――
「それにしても、ユーリくんほんとによく食べるのね」
「え?あっ、す、すみません!」
(……ああ、だめだ。ついつい普段食べられないからって庶民根性が出て、がっついちゃってるな、俺)
「ふふ、いいのよ。見ていて気持ちがいいもの」
ミレティアが微笑み、レオンが「もっと食べてけ!」と皿をどんと差し出してくる。そこにはまた肉、肉、そして……さらに肉。
「ええぇ、また肉ですか!?いや、美味しいけども!」
「名物だからな!」
「いや、そりゃそうなんですけど、もはや肉で構成された夕餉じゃないですか……!」
思わず突っ込みを入れると、エリナがくすっと笑った。
「……でも、そうやって素直に反応してくれるのって、見ててほっとするのよね」
「……あー……うん。なんか……貴族の館ってもっと堅いのかと思ってた」
「ここはうちの家族が住んでる場所だもの。堅苦しくなんてしたくないわ」
「だな!堅苦しさなんてうちには似合わん!」
レオンの豪快な声に、ミルラが「おにくー!」と叫びながらパンを振り回してて、エリナが「ちょっと、落ち着いて!」と慌てていた。
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