スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ

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16話 この国を支配する王と騎士は

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 漆黒の神を伸ばす人物は、王宮の警備にあたる2人の衛兵に止められていた。
 
 「ここから先は入ることは出来ません。ハーシュ様」
 「それなら問題はない」

 ハーシュは服に手を入れると、1枚の紙を取り出した。
 
 「国王様に話は通してある」
 「許可状……そ、それは大変失礼致しました! どうぞお入りください!」

 2人の衛兵は慌てて頭を下げると、ハーシュは紙をしまい王宮に足を進めた。
 
 必ずあいつらに罪を問わせてやる。
 ライにしたことを許すわけがない。

 ハーシュの瞳には怒りだけが映り、国王の元へ向かって行った。





 なぜ私はライのためにここまで動くのだろうか。
 別に好きというわけでもないし、幼馴染みというわけでもない。
 ただ、パーティーを組んであった時から、何故か守らなくてはいけないような気がした。
 逆にあれだけライが殴られたりしていて、守ろうとしない者もどうかと思うが。
 
 ……そんなこと今はどうでもいい。
 今すべきことは、あいつらがライにした事を国王に話し、罪に問わせる。
 そして、必ずライに再開する。

 この前1人で洞窟に行ってみたが、ライの姿はなかった。

 やはり無事に生きている。
 だが、同時にハーシュの頭には嫌な想像が浮かんでしまった。
 魔物に襲われてしまった可能性。
 
 ハーシュはそんな想像を無くすように、頭を左右に振った。 
 ライは必ず生きている。
 私はライを信じる。
 今は、私がやるべき事をやるしかない。




 
 「うーん……困ったなぁ……」
 
 ハーシュは玉座の間で、騎士に護衛される国王と話をしていた。
 ドラウロ達がしてきた事を嘘偽りなく伝え、ハーシュは国王の返答を待った。
 あいつらが罪に問われれば、ライがこれから傷つくこともなくなる……!

 だが、そんな希望は一瞬にして崩れ去った。

 「その件に関しては口外せぬように」
 「え……」

 国王の口から発せられた言葉は、全く想像もしていなかった返答だった。

 口外せぬように……?
 それだけか……?
 他にもまだ言うことがあるんじゃないのか……?

 「ラ、ライは想像を絶するほどの酷い目に遭わされたのだ! それなのに、口外せぬようにとはどういうことだ!」
 「貴様! 勇者だからといって無礼だぞ」

 ハーシュが国王に声を荒げたことで、数人の騎士に剣を向けられたが、怯むことなくその騎士達を睨みつける。

 「ぅ……」

 ハーシュの睨みに少し怯んだのか、数人の騎士が剣を少しだけ下げた。
 
 「あんな勇者を放って置いていいのですか! あいつらは許されざる行為を――」
 「だから口外せぬように言っておるのだ」

 急に話を遮られた挙句、意味のわからないことを言われハーシュは呆然とする。
 国王は伸びた髭を触り、上から見下ろしながら話を続けた。
 
 「もしそのことがバレたら、この国の政治体制にも問題があると言われかねん。勇者は国の象徴だからなぁ。それに、勇者達は民に好かれている。だから、その事実を公にしたら色々困るのだよ。分かるだろう? 仕事が増えるのだ。それに……」

 こいつは何を言ってる……?
 私の耳がおかしいのか……?
 これは幻聴か……?

 国王の口から出る言葉とは思えない発言に、ハーシュはなんと言ったら良いのか分からず、ただひたすらに話を聞くだけになってしまった。
 だが、さらに国王から続けられた言葉に、ハーシュは怒りに染められる。

 「ライは勇者の中で1番弱い。それ故支持率も低いしなぁ。勇者は6人選ばなければいけないのだ。お前達はすぐに勇者として決まったが、6人目が中々決まらず仕方なく冒険者の中でましだったライを選んだのだ。
 あいつは勘違いしておるかもしれんが、別にいなくてもいい存在なのだ。代わりはいくらでもいる。
 この国にとって、あいつは道具のようなものだ。だから、死んでも構わんのだよ」
 「我ら騎士団の方がよっぽど役に立つ」
 「勇者1人では何もできまい」

 騎士達からは笑いが起こり、ライへの侮辱が始まった。
 これがこの国の国王と騎士の姿なのだ。

 仕方なく……?
 勘違い……?
 道具……?

 ふざけるな……。
 ふざけるな!
 
 私はライが陰で努力していたのを知っている!
 どれだけ民を守ろうと行動していたか知っている!
 それなのに仕方ない? 勘違い? 道具?
 そんなわけがない!
 ライが、ライこそが本当の勇者だ!
 誰よりも相応しい本当の勇者だ!

 力だけが強さではない!
 ライは強い人間だ!
 強い人間こそ勇者なのだ!
 それなのに、代わりはいくらでもいると言いやがって!
 ライの代わりがいるわけがない!
 ライこそが勇者なのだ!
 
 「なんだ? 不満そうではないか? そんなに死んだ勇者が恋しいか?」
 
 ゲスな笑みを向ける国王を、ハーシュは強く睨みつける。

 「……すな……」
 「なんだ? 聞こえんなぁ? もっとはっきり――」
 「勝手にライを殺すなぁ!」
 「ぅぅ……!」

 今にも殺しにかかりそうな瞳とその鋭い怒号に、国王は一筋の汗を流す。

 「ライは強い人間だ! お前達とは比にならないほど強い! そんなライが死ぬわけがない! お前達の判断で勝手に殺すなぁ!」
 「貴様ぁ! 国王様に向かってその口の利き方は処刑に――」
 「私を処刑にしたいならすれば良い! だが、必ずに抵抗する! お前達騎士を皆殺しにしてもだ!」
 「勇者如きが言わせておけば!」
 「我ら騎士に敵うと思っているのか!」
 「所詮は勇者という称号を与えられただけの冒険者! 訓練を重ねた我ら騎士が負けるわけないだろう!」

 1人の騎士が剣を振りかぶり、剣を引き抜いていないハーシュに向かっていく。
 今頃、剣を引き抜いてももう遅い。
 あとはただ斬られるだけ。
 その場にいた全員が思った。
 
 「スキル《魔法操作》。魂を奪う魔法クフェーナス
 「あぇぁ……」
 
 だが、結末は予想外の方へと動いた。
 斬りかかった騎士は、その剣を振り下ろすことなく膝を折り地面に倒れたのだ。
 
 「一体何をしたぁ!」
 
 1人の騎士が怯えながらも声を荒げる。
 目の前で起こった出来事を理解できたものは、ハーシュ以外に誰もいない。
 
 
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